Time after Time

イーボシの選ぶこの世の名曲TOP100に、シンディ・ローパーの「Time After Time」は間違いなく入ると思います。

数年前、スカパー系で放送され、めっぽう気に入ったアメリカのドラマに「マイ・ネーム・イズ・アール」というのがありました。

これ、かなりおバカなドラマ。
どうしようもない最低ダメ男が宝くじが当たった瞬間に交通事故に遭い、それから急に「因果応報」という言葉を信じるように。
そこで今まで酷いことをした人達にお詫びと何か手助けをして許してもらおう、というストーリー。

主人公アールはAC/DCのTシャツを着て、働きもせず昼間っからビールを飲むような男。
本人はハードロックファンの設定ですが、制作してる人達の音楽センスがなかなか自分好みでよろしい。
Styxの「Mr.Roboto」とかナンシー・シナトラの「These Boots Are Made for Walkin’」なんてのが突然かかったりする、やっほー。そんな音楽も魅力の一つでした。

さて、このアールには、ちょっと頭の弱い弟ランディというのがおりまして。

女にフラれたそのランディが、シンディ・ローパーの「Time After Time」をラジカセで聴きながら一緒に泣きながら歌うというシーンがあって、超ツボにはまりました。大爆笑。
そしてその傷心のまま、メキシコに旅立てば、そこでもまたその曲をロス・パンチョスみたいなメキシコ人の流しのオヤジがスペイン語で歌ってるし(笑)。

それを見たら急に「このナンバーは世界中でカバーされているに違いない!」と思いついた。そして一時バカみたいにこの曲のカバーを捜しまわったことがあります。

さすが名曲、歌入りやインスト、すんごい人数のアーティストがカバーしてるのよね~。

マイスル・デイビス(マイルスのこのナンバーはライブが一番)やカサンドラ・ウィルソン、ポール・アンカ(こちらはあっけらかんと明るくて好き)やエヴァ・キャシディとかさ。素晴らしいアーティストになればなるほど、ただのカバーじゃなく、まるで自分が作った曲のように個性的。
お陰さまで、私のi-podには結構な数の「Time After Time」が入っております。

けど、どこの国の人もなぜかオリジナルの英語歌詞で歌っちゃうんだな~、これが。
いやいやいや、自分が欲しいのは自国の言葉で歌う「Time After Time」なんだよぅ。
中国語とかスペイン語は捜せたんだけど、ロシア語とかペルシャ語とかタイ語とかあってもいいと思うんだよね~。てか、絶対に存在するよね!

せっかく調べたアラビア文字でタイムアフタータイムをYouTubeで検索してもなぜかご丁寧に英語のタイトルのものが出てくる。いや、そうじゃないから。
ヒンディー語で検索したら、こちらはちゃんとヒンディー語が出て来たけど、歌とはまったく1ミリも重ならず。
ああ、思いっきり弾けたヒンディー語のインドポップスで聴きたかった・・・。

うう~ん、タイトルが違うのかね。
ハンガリー人なら訛った英語で歌わずにマジャル語で歌わんかい!
やっと見つけたベトナム語は素人さんのライブ映像だしさ。

実は同じタイトルでもっと古い曲もありまして。
1947年に、ジュール・スタインが書いたジャズの定番は、シナトラをはじめ様々なアーティストが歌い、また演奏している、めちゃ有名なスタンダードナンバーです。

なかには溺愛するスモーキー・ロビンソンの「Timeless Love」というスタンダードナンバーばかりを歌った名アルバムに収録された「Time After Time」のように、こちらを歌いつつ、ラストギリギリでシンディ・ローパーに転調するという荒業を披露しているアーティストもいたりする。

そういう意味ではシンディのこの曲も、すでにスタンダードナンバーなんだなぁ。

My Name Is Earl シーズン1トレイラー

ランディ €Time after Timeを歌う
Nancy Sinatra  €€These Boots Are Made for Walkin’
↑(彼女はあのフランク・シナトラのお嬢さん)

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新少林寺/SHAOLIN(2011年香港・中国)

監督
陳木勝(ベニー・チャン)

出演
劉德華(アンディ・ラウ)
謝霆鋒(ニコラス・ツェー)
成龍(ジャッキー・チェン)
于海(ユエ・ハイ)
呉京(ウー・ジン)
范 冰冰(ファン・ビンビン)
余少群(ユイ・シャオチュン)
行宇(シン・ユー/シー・イェンレン)
熊欣欣(ホン・ヤンヤン)

武術監督
元奎(ユン・ケイ)

武術指導
元徳(ユン・タク)
李忠志(ニッキー・リー)

スクリーンにほんの少し映し出された表情やカットを見ただけで「ああ、これだけに料金払ってもいい!」と思うものがあったりします。

この映画の中で、アンディ・ラウが泣きながらうどんを食べるシーン。
自分にとってはそれだけで1800円払う価値がありました。

それに加えて久々映画館で観た「くまきんきん」こと熊欣欣の功夫とか、すっかり貫禄のついた素晴らしい役のウー・ジンとか、久々の現場復帰のうえ、キレのある動作披露のユエ・ハイさんの方丈とか、実寸大の信じられないほどよく出来た少林寺のオープンセットとか、派手な爆破シーンとか、ほんと充分おつりがきます。

そんななかで、やはり成龍の役は一番おいしいところ。
さすがのキャラクター。功夫の達人じゃなくてもいいんです。センスですよセンス。
最後に彼が難民を先導して山を登るという設定も良かった。
あの醸し出される温かみはなんですかね、神様からの贈り物としかいいようがないな。
うらやましい。

あと子供たちにね、銃を発砲する兵士に微笑みながら饅頭を差し出して「家族の待つ家に帰りなさい」なんて台詞言わせるなんて禁止。泣いてしまうがな~。

それにしてもベニー・チャンってすごいなぁ、これ、違う監督ならちょっと破綻してたかもと思うくらいな部分もあったりするのだけど、ちゃんとまとめた上に、こうして泣かせたりするんだから!もぅ。

エンドロールの雪の中の修行シーンもよかった。
もう少し修行を見せてくれ~というファンの期待に最後の最後、応えてくれました。
壮絶で虚しい闘いのあとに登場する、平和だった頃の少林寺の静謐な風景には流れる涙を抑えることができません。
あれこそが主人公の語った「みなの心に永遠にある少林寺」の姿なのでしょう。
そこに流れるアンディ作詞、歌唱の「悟」が、また素晴らしい。
彼の歌をすごく久しぶりにきちんと聴きましたが、本当にうまい。
帰ってさっそくDL。今もその曲を大音量でリピートしています。

それにしてもこういうスケールのデカイ映画は、やっぱり映画館で観るべきものだなぁ。
どんな大きな液晶画面でも得られないものが、そこにはある。
ウイークディの午後イチということで、お客さんが少なくて残念。こういう映画って若い人は馴染みがなくて興味ないのかなぁ。若い人にこそ観て欲しいです。
きっと好きになってくれると信じてるから。

↓いつまでも若々しい「くまきんきん」。ジェットよりひとつ年上なのね。

新少林寺日本公式サイト(最近の武打片の中じゃすごく丁寧な作り)
新少林寺公式サイト(中文繁体/普通/英文)
新少林寺 新浪娯楽
Shaolin (新少林寺)トレイラー
新少林寺/SHAOLIN 日本語予告編
SHAOLIN 《新少林寺》 – Making Of Part 1 /8
SHAOLIN 《新少林寺》 – Making Of Part 2 /8
SHAOLIN 《新少林寺》 – Making Of Part 3 /8
SHAOLIN 《新少林寺》 – Making Of Part 4 /8
SHAOLIN 《新少林寺》 – Making Of Part 5 /8
SHAOLIN 《新少林寺》 – Making Of Part 6 /8
SHAOLIN 《新少林寺》 – Making Of Part 7 /8
SHAOLIN 《新少林寺》 – Making Of Part8/8
新少林寺主題曲 — 悟 劉德華
新少林寺エンディングロール(号泣必至)

冒頭ニコラスのアクションシーンの構えが、動きが、おお、詠春拳!
そういえば彼はTVドラマで詠春拳の主役を演じてました。
↓その、いつの時代の人かまったくわからないイカしたニコラスをどうぞ 。
「詠春 The Legend of WINGCHUN」予告
キャストがびっくりするほど豪華!


 

 

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三国志英傑伝 関羽 日本語字幕版を試写室で―ドニー・イェン 甄子丹

とうとう「関雲長」が来年の2012年1月14日から東京で公開されることに決定。驚いた。
自分、これ絶対公開ないと勝手に思いこんでたわ。
当然大喜びなわけですが、一方でこれと「武侠」がコケたらまた当分、ドニー映画の公開がなくなるんじゃないか、などと、いらぬ心配までしてしまう常にネガティブな思考をなんとかしてください。

さて、この「三国志英傑伝 関羽」(日本タイトル長いよう)
最初に観たのが中国簡体字の字幕しかないソフト。
なのに、どうしても、どーしても台詞の意味が知りたかった自分。
三国志すらまるで分ってもないのに、チマチマと手打ちで翻訳サイトに簡体字の省略漢字を入力し、意味がまるで繋がらなかったら、その度にいちいち中国語辞書で慣用句なんかを調べて、3日かけてこの映画の概要を想像するという信じられないような執念深いことをしました。

あまりの字の多さに、その時にコペピ用のシンプルな簡体字辞書を、手打ちで作ってしまったほど。
でも、その荒療治のお陰で随分中文へのハードルが下がったみたいで。
この間、ある韓流アクション映画を1本、中文字幕で観ることができてしまったのには笑えました。人間、何でもやってみるもんす。

そこで今回、秘かに楽しみにしてたのが、自分の理解したストーリーとどこまで合っているのか、果たして台詞のニュアンスは掴んでいたのか、その答え合わせ。

ものすごく大雑把にですが話の流れはあってました。嬉しい。
でも細かく理解できなかった台詞も結構あって、今更「そういう含みがあったのか!」と驚いたり納得したり。
特に、自分の青龍偃月刀をなぜ榮陽の関所で太守の元に置いていったのかが理解できなかったのが、やっと解った。
長年の便秘が解消されたみたいにスッキリ。ああ、日本公開が決まって本当に良かった。

のちに取り寄せた香港版BDで10回近くは観てしまっているので、最初の頃に書いた疑問やモヤモヤなんかはすっかり霧散しており、普通にアイドル映画の如く、ドニーコスプレ作品として楽しめる境地にまで至っております。

だから試写室でも、ひたすら古装のカッコいいドニーさんのクローズアップや、アクションでの動きの素晴らしさに脳味噌を痺れさせながら、この身を委ねるのみ。

でも時折、自分の直訳だと殺伐としていたはずの台詞が日本語字幕ではソフトになっているのに気がついたりして。
特に顔良のところに攻め入る直前、関羽が曹操の騎馬軍を鼓舞する最後の言葉、本当は「殺!殺!殺!」だもんなぁ。それが日本語だと「いざ!まいる!」みたいになってたし。なんとなく、そんなニュアンスの差も新たに興味深かったです。

しかし、今日あらためて自分の家よりデカイスクリーンで観て思ったのだけど、ドニーさん、どえりゃー男前になったなぁ。
つい最近、89年の直撃証人の香港BDを流し観したせいかもしれないけど、演じるキャラの違いや表情も含めて、なんだかその変わりようにまずしみじみ驚いてしまいました。

そして劇場でめちゃ観たかったアンディ・オンとの武打シーン。
やはり、あれは絶対に大きな画面で観るべきですよね!感涙。嬉しゅうございます。
あの狭い路地を活かしたアクションを観ていると、劉家良監督が昔、設計した「武館」や「セブンソード」のシーンをルーツとして思い出したりして。
ああ、こうして功夫映画は少しづつ形を変え色彩を変えてゆくのだなぁと別の意味でも、その伝統の大きさを感じます。

ただひとつ気になったのは、洛陽の関での毒矢にやられたあとの1対100の室内アクション。
照明が暗すぎるううう。BDで観た際にはそこまで感じなかったけど、試写だといきなり暗すぎ。
あんな凄いことしてるのに勿体ない。
あそこは苦しい表情や細かい動きや長刀の扱いなど、みどころ満載なのに、映画館に来たお客さんには何をやっているのか、よく分らないかもしれない、とまた心配顔。

なんであんなに暗くなっちゃったんだろ。昔、笑っちゃいそうなくらいの早回しをしていた時に特に思ったのだけど、彼や彼の周りにいる人達って動体視力よすぎるんじゃ?

ま、とにかく、三国志はいったん忘れてもいいから(忘れるのか!)、この古装で男前のドニーさんをゆっくりご堪能くださいませ。

関雲長 中国普通語簡体字字幕版DVD―ドニー・イェン 甄子丹

関雲長メイキング
三国志英傑伝 関羽 日本公式サイト
三国志英傑伝 関羽特報予告(日本語版)

 

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阿羅漢 南北少林(1986年・香港、中国)

監督
劉家良(ラウ・カーリョン)

出演
李連杰(リー・リンチェイ)
胡堅強(フー・チェンチアン)
黄秋燕(ホァン・チューイェン)
于承惠(ユー・チェンウェイ)
于海(ユエ・ハイ)
計春華(チー・チェンホア)

武術指導
劉家班のみなさん

1986年といえば、
ジョン・ウー監督の「男たちの挽歌」がぶっちぎりで香港の興行成績をあげた年。

この「阿羅漢」、リンチェイの「少林寺」3部作の3作目にあたるとされているけど、キャストがほぼ同じなだけで3つともまったくの別物。まぁ、功夫映画にはありがちなことですね。

主演のリー・リンチェイが17歳で映画、「少林寺」に初主演したのは1982年。
劉家良監督、劉家輝主演のあの名作「少林寺三十六房」公開の4年後のことでした。

リンチェイの「少林寺」がなければ、世の中の学校に「少林寺拳法部」というのはなかっただろう、とどなたかが書いているのを読んだことがあります(どこで読んだか覚えていなくてごめんなさい)。

私もその意見に激しく同意します。
正直、この2本の映画がなければ、日本全国の様々な大学や高校で「少林寺拳法部」などというものは存在しなかったでしょうし(ちなみに、中国少林寺と日本の少林寺拳法、当初はごっちゃに考えられていたようですが、本当はまったく別の拳法です)こうして私が阿羅漢を日本語吹き替え付きDVDで観るなどということもあり得なかったかもしれません。

ところで、今現在も、どこかの学校に少林寺拳法部というのは存在するのでしょうか。
私の時代は必ずあったような気がする。空手とも、もちろん柔道部とも違う、当時演劇部の自分にはかなり謎の多いクラブだった、少林寺拳法部。

さてリンチェイの出世作となった少林寺、1作目がヒットした次の年、1983年に2が公開されました。そして、その3年後にこの「阿羅漢」が公開。

キャストはヒットした少林寺1,2とほとんど同じメンバー。
しかし、それまでの2作と違うところは、監督が、あの劉家良であるということ。これは正直デカイ。

ストーリーの着地点とすれば、やはり同じ復讐の物語。
が、正直、むしろそれはオマケみたいなもの。(とりあえず闘う理由が必要なわけだし)
劉家良師父にとって、その作品で最も大切だったことは恐らく、北派少林の嵩山(すうざん)少林寺と南派少林の甫田(ほでん)少林寺が出逢って互いにその武術を認め合い、協力し悪を倒すってことだから。

映画はひたすら、その南北の少林寺の拳法の違いをアクションで描くことを主眼に進められてゆきます。
が、そこはさすが、香港の人気監督。
ところどころで、坊主の癖にヘビを喰っちゃうとか、幼い時からの婚約者エピソードとか(しかも、それを結ぶのが足に着けた銀の鈴ってとこがいいですね)予期せぬリンチェイの女装とか、軽くてキュートな青春ストーリーもちりばめられているところが、思いっきり劉家良ワールドを醸し出してる。

彼女が自分の婚約者と分った時のリンチェイのうろたえぶりなんか(なぜそこでバク転する?)、可愛かったですね。また登場する女子がツンデレ傾向にあるのも、いつものパターン。

それにしても紫禁城、少林寺、桂林、万里の長城とまさに中国の様々な場所でロケしたのには今更ながらに驚きました。

きっと師父も「キャッホー!」な気分だったのでしょう。
総督の誕生祝いの紫禁城のシーンでは衣装の豪華さもさることながら、お得意の獅子舞から(技術的にも相当スキルが高かった!)雑技団や京劇など、それまでの香港映画にない結構な数のエキストラと本格的な技が登場し、監督のウキウキ度が伝わるようでこちらも大変嬉しかったです。

そしてなんといっても、阿羅漢3000人(とは日本の予告編ちょっとフカしすぎ)と言われた実際の武術家達を使った武打シーン。

とにかく南拳と北拳の違いを含め、棍や槍、双刀や剣、縄鏢(じょうひょう)などの武器を使った動作など、少林寺の技や武術の良さと個性を思う存分フイルムに収めたい、という監督の一念で成り立っている映画。
その被写体としては、リンチェイはまさにうってつけだったでしょう。

加えて、脇を固めるメンツも、それぞれが中国武術チャンピオンですからね!
みなさん、動きがキレキレです。船の上や下での闘いなど、隅々まで本当に見ごたえがありました。
さぞコレオグラフは楽しかったに違いない、と思いますわ。

そんななか、なんとなく気になったのはオープニングクレジットで、いつもなら絶対にあるはずの武術指導の名がなく、ぼんやりとエンドロールのみに武術指導「劉家班」とひとまとめで表記されていたところ。

普通に考えて、劉家良が監督ということは当然動作指導も本人のはず。
まして南北少林の武術の違い、などという監督にとってこの上ない題材ですよ、なのにOPクレジットに武術指導として名が出ないなんてありえなくないですか。しかもショウブラなのに。

契約か何かの問題かもしれませんが、なんでだろ~、めっちゃ気になる!

それにしてもこの並み居るチャンピオンの中で、ひとりスバ抜けてリズムが違ってたのが、やはりリンチェイ。さすが世界の大スターになるだけあります。あらためて感心しきり。

そしてもうお一人、ラストバトルで、ユエ・ハイが見せてくれた「北派、蟷螂拳」は椅子からひっくり返るかと思うほど素晴らしかったです!
私的にはこの映画のハイライトのひとつ。

おまけにリンチェイのとダブルで見られたし(そういや彼はドラゴンキングダムでも披露してましたっけ)。

蟷螂拳というと、デビッド・チャンの「激突!蟷螂拳」とか、レオン・カーヤンのヤバい映画「癲螳螂」とかTVドラマ甄子丹版「洪熙官」のン・ティンイップくらいしかパッと思い付かないのだけど、ユエ・ハイのそれは一瞬観ただけで本格的だと分りました。
すんばらしい。やっぱ、すごいんだわ。感激。
彼は今公開中の「新少林寺」にも出演しているんですよね。
これも楽しみですねぇ。

ああ、これ書いてたら思い出した。
毎度甄子丹のことばかりで申し訳ありません。
若かりし頃の彼が武術大会で披露しYouTubeにアップされてる表演も、そういえば蟷螂拳でした。
こんな自分でもすぐに覚えられた蟷螂拳(とうろうけん)。カマキリの名の通り、動きに特徴があります。英語ではMantisと書くそうな。

阿羅漢 南北少林 トレイラー1
阿羅漢 南北少林 トレイラー2
阿羅漢 南北少林 日本版トレイラー
そのユエ・ハイさんの蟷螂拳表演(素晴らしい!)
こっそりおまけ若き甄子丹蟷螂拳表演

ちなみに于海さんと甄子丹は同じ動きをしております。
こうして見較べると、キャリアの差はやはりありますね。
ドニーさん、若い若い(笑)。

 

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打擂台 GALLANTS(2010年・香港)邦題:燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘

どうも。
「イップマン序章」で香港金像奨の最優秀動作設計賞を、あのサモハンとともに一緒に受賞した梁小熊(トニー・リャン、彼は師匠のひとりとしても出演)が、あの梁小龍(ブルース・リャン)の実弟だと最近知ったイーボシです。

もうね、香港功夫映画は見る度ごとに「あれま!」という繋がりを知ることができて、興味が尽きることがありません。すごいすごい。

この「打擂台 GALLANTS」ももっと早くに観たかったのですが、とりあえず最低限の基礎知識を知ってからと少し時間を置いたつもり。

が、とうとう我慢できずに観てしまいました~。

監督
郭子健(デレク・クォック)、鄭思傑(クレメント・チェン)

監製
林家棟(ラム・カートン)

出品人
そのラム・カートンに誘われて資金投資した、劉 徳華(アンディ・ラウ)

出演
陳観泰(チェン・クアンタイ)
梁小龍(ブルース・リャン)
秦迪羅賓(テディー・ロビン)
陳 惠敏(チャーリー・チャン)
羅奔(ロー・マン)
邵音音(スーザン・ショウ)
黄又南(ウォン・ヤウナム)
賈曉晨(ジャー・シャオチェン)
歐陽靖(MC Jin)
李海濤(リー・ハイタオ)

動作指導
元徳€(ユン・タク)

これは前評判にたがわぬ、ものすごくいい映画でした。
2011年度の第30回香港金像奨の作品大賞に選ばれ、秦迪羅賓(テディー・ロビン)が助演男優賞、邵音音(スーザン・ショウ)が助演女優賞を獲った作品です。

なんつーかオープニングクレジットからカッコよすぎ。
演武のシルエットに重なる毛筆繁体字、サイコーだ。まさに60、70年代の功夫映画を思わせる始まり。わくわく。
そして音楽もなんだかブルース・リーの「ドラゴン怒りの鉄拳」のオープニングを彷彿とさせる歌声。てか、まんま怒りの鉄拳だし!と思うほど似てる(笑)おおおお、いいやん、いいやん!
とにかく、これだけで血がたぎってくる。

自分なんか功夫映画をほんの少ししか観てないけど、それでも近作とかで、その伝統と昔の作品へのリスペクトとか愛着とかを感じる瞬間が見られたりするだけで、いいなぁとうっとりしてしまう単純バカ。そんな自分が感激しないわけがない。

もう随分前から香港功夫映画は死んだ、みたいな言われ方をされているけど、こうしてまた昔の武打星を主役で起用する映画が作られるんだから、いやいや、細々とかもしれないけど「まだまだ死んじゃないぜ」と思わせてくれて、とにかく嬉しいっす。

往年の武打星からは、陳観泰(チェン・クアンタイ、言わずと知れたショウブラ作品のトップスター)梁小龍(ブルース・リャン、あの成龍の蛇拳と酔拳、そしてワンチャイシリーズをプロデュースしたことでも知られる呉思遠が監督時代に見いだした武打星。倉田さんとの走りまくりキックの応酬は名場面。信じられない跳躍力スキルを持つ男)。
そして陳 惠敏(チャーリー・チャン、日本では成龍のプロジェクトA2の悪役で有名)羅奔(ロー・マン、あのチャン・チェ監督の五毒拳のひとり。近年は甄子丹の「イップマン/葉問」の羅師父役でも出演)という目の覚めるようなキャスティング。

若者代表は、「イップマン序章」や最近「功夫・詠春」でも観た黄又南(ウォン・ヤウナム)と賈曉晨(ジャー・シャオチェン)。

武術指導は、あの中国戯劇研究学院、七福星のひとり元徳ツ黴€(ユン・タク)。
あああ、私の貧相な文才ではまったくもって、この素晴らしさ伝えきれない。
もうね、みなまで言うな、とにかく観ろ、そんな映画。

特に30年の昏睡から覚める師父役の泰迪羅賓(テディ・ロビン)がサイコー!にいかしてる。

この作品、とにかくこの師父がキモ。
行動も台詞もキャラクターもその存在すら、なにもかもがキモ。キモったらキモ。
そら、助演男優賞獲りますわ。

細部にわたるまで最高にいい。
そして細部にわたるまで功夫愛にあふれてる。
観てるだけで胸がいっぱいです。

ラストバトルでは、もうなんというか、身体が震えてきましたよ。
最後は泣けました。

ちなみに劇中オッチャンたちがカラオケで歌うのはブルース・リャンが陳真役でヒットした亜州電視のTVドラマ「大侠 霍元甲」の主題曲「万里長城永不倒」。かっこいい曲だ!
このドラマ、当時大流行して繰り返し再放送もされ相当人気があったらしい。(武術指導に、あの袁祥仁)なにしろブルース・リャンはTVで3度も陳真を演じている俳優。
(最後はなんと2001年に陳真の後日譚を演じている)

が、彼の持ち味は何と言ってもその足技!今作でも、その体系からは想像もつかないような痺れるキッカーぶりを披露。すんばらしい~。

そして、いつまでも男くささを保ち続けるチェン・クアンタイ。
長い事稽古してなかったものだから、最初はちょっとやられちゃったりしますけど、訓練を重ねて終盤はカッコいいところを見せてくれます。
ロー・マンとのバトルは鼻血が出るかと思うほど興奮しました。

結論としては、
息を切らしたオッサン達の、真功夫をとくと見やがれ!
そして師父と弟子のその絆の深さに感動するといい!

今も衰えぬ彼らの技に驚き、笑えて、じんわり泣けてくる、本当にいい作品でした。
これが大賞取るんだから、香港映画は捨てたもんじゃない。

【打擂台】GALLANTS TRAILER
【打擂台】オープニングクレジット
ドラマ「大侠霍元甲」主鬚・ネ「万里長城永不倒」
主役のオッチャン達がカラオケで合唱する歌声に乗せてメイキングをば
【打擂台】エンディングテーマ(その「万里長城永不倒」をラップでどうぞ)

最後に、師父の大切にしてる「蝋鴨」。
昏睡が30年なので恐らくそれくらいの年数、窓に吊るされている物なんだろうけど、もともとは正月の料理として食べられることの多い縁起物らしい。
なにか過去の映画と関わりがあるのかといろいろ検索してみたけれど、見つからず。
最後、その鴨をみんなで食べるシーンが出てくるけれど、燻製とはいえ果たして30年物って食えるのか?

それにしても、ああ、お願いします、頼みます、ぜひ日本で公開してください。(日本では2010年の東京国際映画祭で公開されたのみ)
ダメならせめてDVDスルーで。日本語字幕で観たいったら観たい。

 

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福興弁当

とうほく食文化応援団、第5回目は仙台駅の駅弁特集。

知っていましたか?

日本の駅で販売される駅弁の種類が一番多いのは、実は仙台駅だそうで。
最近は駅弁としてではないものも、駅内で売っていたりするので線引きは難しいでしょうが、とりあえず、そういうことらしい。

自分は出張がとにかく多く、結構駅弁のお世話になっているほうだと思います。

なので、定期的に立ち寄る様々な地方の駅弁は大抵把握していると自負していますが、実はこの仙台、仕事を初めて3年も経つというのに、まったく把握しきれてない!

と、いうのも上記のとおり、種類が多すぎるから。
理由としては、地元の業者の勢いが昔からよく、しのぎを削って来た経緯から、それぞれが創意工夫に力を注いできたゆえ。

そんな仙台駅弁についてうかがう機会がありました。
で早速、JR系の日本レストランエンタプライズを訪ねることに。

お勧め商品を眺めると、仙台駅弁のひとつの特徴が分ってきた。
さすが食の宝庫、東北。とにかく食材を身近なところで揃えているのが特徴。
当然、それは「売り」になるので、とにかく地元臭がめっぽう強い。

例えば、塩竃の藻塩を前面に打ち出した商品とか。

各地の温泉女将がプロデュースした地元の食材を使った商品とか。

そのなかで、目を引いたのが「東北福興弁当」。
ご覧ください、この酒飲み的に非常に嬉しいおかずの豊富さと秋田青森岩手山形宮城福島、東北6県の名物を一気に詰めた、このお得感。

東北に仕事で行くと気づくのですが、東北では「ふっこう」を「復興」と書かず、多くは「福興」と表現する。
その字には福島を「フクシマ」と書く無神経な表記に対する抵抗と同じような気持ちを「個人的」には感じたりします。

いいじゃありませんか、福興弁当。

 

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2011年NHK杯 その2

前日の男子SPでは、ブランドン・ムロズ選手によるGPシリーズでの初の4回転ルッツ成功という珍しいものを見てグンとテンションの上った自分。

この日のFSでテンションを上げてくれたのは、イタリアのサミュエル・コンテスティ選手。
彼はいつも個性的で素敵なプログラムを滑る選手。
しかし、最近はジャンプミスが多く、そのカッコいいプログラムをパーフェクトに見せてくれることが少なくなってきていました。

2シーズン連続で滑る素晴らしいコレオグラフィーのSPも、前日ではジャンプのミスが影響し、最後まで乗り切れぬまま7位発進。

一方、FSは新プログラム。
衣装も曲も彼に似合ってとてもおしゃれです。

まずは、緊張の3A。おおおおおお決まったぁぁぁぁぁ、しかもキレイだよ~。加点もらえるんじゃない?やれば出来るじゃないか!

続いて、3F。これまた美しい。このあたりで少し心配になってきた。いやいやいや、先は長いぞ、ぬか喜び禁止。期待しすぎてガッカリはいやん。
すると難なく3Lzも決めてしまいました。
うわうわうわ、これってまさか、何か取り憑いてる?サミュエル。

そんなこっちの動揺(?)をよそにスピンに突入。スピンはうまいんです、スタミナさえ切れなければ心配ないんです。

そしていよいよ、懸案事項のアクセルからの3連続コンビ。
もう祈るような気分ですよ。まずはアクセル、決まった!次は2T、これも成功!最後に、もいっちょ!降りたー!転ばなかった!
会場は一気に解放されたような歓声に包まれます。

もうこうなったら、いてこましたれー、サミュエルー!

続く3Loではお手付き。あああん、でも転倒じゃないからね、ね、ね。
本人も手ごたえを感じてきたのか、コレオステップではノリノリですわ。ステップからの2Aなんか軽い軽い。そこまでの良いデキに観客が励ますかのように手拍子。
普段はめったに手拍子をしない自分が、思わずみなさんと一緒にしてしまいました。それほど、彼に最後まで素敵な演技をして欲しかった。

後半の3S-2Tはふたつめが詰まったものの、いいんすよ、絶対に転ぶな!残りはあとひとつだ!
すると、最後のシークエンスも見事決めてしまいました、やった、やったよ、サミュエル、転ばんかったやん!サミュエル!

とにかく、会場中が同じ気持ちで見守っていたのでしょう、エンディングでは弾けた様な祝福の拍手の嵐。ご本人も充実感をたたえた表情で挨拶。当然、自分はスタオベでございます。
よかったね、サミュエル、私もそれが見られて良かったよ、そんな気分。

ほんと、前日のSPが嘘みたいな演技です。
かと思うと、SPでいい演技をしてもFSでボロボロになる選手もいる(ああ、ブランドン・・・)。
トップクラスの選手だけを見ているとSPFS両方最小限のミスで揃えてくるのは当り前のことにも思えます(だからこそトップだし、トップ選手でもそれは実はすごく難しいことで、いつもできることではありません)。

だからでしょうか、なかなか、それがまとめきれない、どころか揃うのは両方残念な演技ということもあったりする選手が本人比でいい演技ができ、またそれを見ることができた時の喜びは、また格別。

それは、順位とは関係ないところにある、フィギュアスケートという競技の不思議な魅力の一つでもあります。

去年より今年、昨日より今日、誰と比べるのでもない、本人比で上手くいったからこそ一緒に喜べる、そんな連続性がフィギュアという競技を見る最大の魅力ではないでしょうか。

だからこそ、ランキング上位じゃない選手の演技も飽きずに見ることができたりするんだなぁ。

2011NHK杯フィギュア 公式サイト

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2011年NHK杯 その1

週末、北海道にNHK杯フギュアを観に行ってきました。
毎年、誰かしら友人と行くのだけど、今年はみんな忙しくて結局1人観戦することになりました。
考えたら、1人で旅行するの初めてなんだわ。

海外にも1人で移動はあるけど、それは現地集合とか現地に友人が待ってるとか、そんなんだからなぁ。

今回1人計画してみて発見したことは、いつもは何だかんだと事前に念入りに下調べするのに、自分のためだけだとそういうことを一切しない、ってことに気がついた。わっかりやすいなぁ。

で、思い切り最悪のスタートを切ってしまいました。
当日、起きたらなんと朝10時。え、えーと自分、たしか8時の飛行機チケット購入してましたよね?つまり新千歳にとっくに着いているはずの時間に起きたのでやんす。

見ると、いつもは3回くらいに分けてアラームかけてるはずの携帯すら、セットせずに、いつの間にか気絶していたことが判明。
「誰かと待ち合わせしない」ということが、こんなに顕著に出る女。なんなんだ、アンタはよぉぉぉ!

なんすかね、あの脱力感。もう、一気になんもする気がせん。
ダッシュして出かける準備をしなきゃいけないのに、ダラダラ普通にカプチーノとか淹れてるし。

ああ、あんなに観たかったイリニフ・カツァラポフ組が、シブタニ兄妹がリード姉弟が、そしてダンスのみならず、ペアの高橋トラン組やサフチェンコ・ゾルコビー組、川口・スミルノフ組が~~~~~~~!!!!

とにかく気力を振り絞り、羽田まで行きました。道中、一番早く新千歳に向かうフライトの予約。
今回、旅行代理店で「ホテル付きお得なパック」なるものを頼んで相当旅費を節約できたと喜んでたんですが、それは当然変更のきかないチケット。
別に出費することになった当日売りの正規フライト料金を聞いたら、朝から、いや、昼からものすごくブルーっすわ。

羽田に着いたら着いたで、搭乗ゲートは間違えるわ、途中チケットを落とすわ、(どなたが存じませんが拾って届けてくださってありがとう)もうね、なんだか「私を北海道に行かせまい」としている力が働いているのでは、と思うほどの間の悪さ。

ようやっと、私が会場に着けたのは、男子のSPに間に合いそうな時間。
ほんとうにねぇ。ダンスやペアも楽しみでこのチケット取ったのに、何をやっておるのだ、私は!!!おおばかものーーーーーー!!!!

キャシーのブレードに踏みつけられ、リフトのトップ位置からスミルノフに真下に叩きつけられても文句は言えないこの不覚。

隣の席のスケートやってます、みたいな少女に聞いたら高橋成美、マービン・トラン組は銀メダルだったらしい。ぐお~~~~見逃がした!

ま、気を取り直して男子のSPですよ。

ここで、なんともスゴイものを観ました。ブランドン・ムロズ選手の4ルッツ。
基礎点13.60という大技です。
「なんか凄いもんを観ちゃったよ!」という興奮に瞬時にして包まれる。
こんな私のテンションを一気に上げてくれてありがとう!!!ブランドン!
彼に「マック・ザ・ナイフ」が凄く似合ってる。振り付けはジェフリー・バトルなんすね、いい選曲だ。

町田樹選手は、昨シーズンからの持ち越しの素敵なプログラム「黒い瞳」。
ジャンプも綺麗に決まって「よっしゃ!」と思ったとたん、フライング・シットスピンでまさかの転倒。
これもフィギュアスケート。
「もったいない~」という場面をフィギュアで今までに何度観たことか。これからのいい経験にしてくださることを願います。次こそは!

小塚選手はジョー・ヘンダーソンのジャズ「 Inner Urge」。振付したのは、デビッド・ウイルソンとか。小塚くんは相変わらず、選曲が一味ちがう。ビッグバンド編成のこの曲は始まりからして痺れるほどかっこいい!
それにしても難しいステップだ~。なんというか、とても彼の個性が感じられるプログラム。
いいなぁ。このノリは他の選手にはない部分だけに、極めて欲しい、そう思わせる方向性です。

高橋選手もまたD.ウイルソン振り付け。
このNHK杯SPで非常に完成度の高い演技を見せて高得点。これまた素晴らしいコレオグラフィー。
怪我をしてからずっと詰まり気味だったコンビや3Aも綺麗に着氷が流れるようになっているのが嬉しい。スピンも本人比でスムーズにスピードアップしていますよね。
高橋選手が、またこういう世界観を見せてくれたことに感激しました。
現役続行してくれてよかった、そう心から思います。

明日のFSもみんながんばれー。

夜は女子FS。
この日、気に入ったひとつがワシュリー・ワーグナー選手の「ブラック・スワン」
同じ選手を何年か見ていると「あ、一皮むけた」と気がつくシーズンがあったりするものですが、今シーズンのワシュリーはまさにそんな年。
そんなプログラムを生で観られるというのは、どんなに嬉しいことでしょう。
思わずスタオベしてしまいました。よかった!

一方、ガーシュインの名曲「I Got Rhythm」を滑ったのはキーラ・コルピ選手。
この曲は、アイラ&ジョージが1930年に初演した「ガール・クレイジー」というミュージカルのために作ったナンバー。
それをのちに、MGMがミッキー・ルーニーとコンビで青春ミュージカル映画を撮っていた時代のジュディ・ガーランドを主演に「ガール・クレイジー」というタイトルで1943年に公開。そのなかで歌われた曲としても有名です。
(これはまた、92年に「クレイジー・フォー・ユー」というタイトルでブロードウエイでリメイク舞台化。日本では劇団四季で有名なミュージカルですね)

キーラといえば、こちらも昨シーズンから持ち越しの「虹の彼方へ」という素晴らしいSPを滑りましたが、FSでこの曲を選ぶとは、なにげに只今ジュディ・ガーランド祭り開催中?
最近の彼女は、そのゴージャスな容姿と雰囲気を生かしたプログラムと衣装が特徴になりつつありますね。せっかくのあの類まれな個性なんですもん、この路線、大好きです。
しばらく続けてください、とつい思ってしまいます。

日本からは、鈴木明子選手、浅田真央選手、石川翔子選手が出場。

石川さんは、6分間練習中なんでもないところで転んでしまい、ひやりとする瞬間も。
その影響があったのでしょうか、演技終了後にキスクラではなく別の場所に座って、コーチやトレーナーに囲まれて何やら脚か靴を気にしている様子がとても心配になりました。
怪我でないといいと願っていましたが、その後のEXに元気に出てきてくれたので違ったようです、よかった。

浅田さんは、ジャンプが抜けたりせずご本人も手ごたえを感じた演技だったようです。久しぶりに彼女の心からの笑顔を見た気がしました。
彼女が跳ぶ前はいつも会場中が固唾を飲んで見る雰囲気があります。
残念ながら今回3Aは跳ばない選択をしたようでしたけれど、このFSでは着氷する度に観客が大歓声だったのが、とても印象的。やはりすんごい人気ですね!

鈴木明子さんは、今シーズンも5種ジャンプを入れた構成で、ジャンプのミスがあったものの、途切れそうになる集中力をなんとか立てなおして演技を終えることが出来ました。
こういうことって、簡単そうに見えて実はとても難しい事かと想像します。リカバリーも含め、まとめ切ったところはさすがです。
鈴木さんといえば観客を引き込むステップが有名ですが、それに加えて彼女のキャメルの力強くて美しいこと。もちろんレベル4。
前日の完璧なSPの得点がものを言いました。ショートでの3T-3T成功おめでとう、そして優勝おめでとう!

ダンスペア女子の皆さんはお疲れさまでした。
男子の皆さんはフリーもがんばれー!

2011NHK杯フィギュア 公式サイト

 

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マジック・ブレード(1976年・香港)

これもかなり以前に観たのですが、なんとなく書きそびれていました。
しかし、気に入ったのは確かで、その後すぐにDVDを買い求めたほど。

監督
楚原(チュー・ユアン)

出演
狄龍(ティ・ロン)
羅烈(ロー・リエ)
谷峰(クー・フォン)
井莉(リリー・リー)
李菁(リー・チン)

武術指導
鮟ヴ|基(ホアン・ペイチ)
唐佳(トン・ガイ)

この作品、金庸とともに武侠小説を代表する作家、古龍の「天涯・明月・刀」が原作。
ティ・ロン演じる傅紅雪は、その古龍の書いた何本かの小説の主人公です。
そしてロー・リエ扮する燕南飛はライバル剣士。

この時代、たくさんの数の武侠映画が製作されました。
そのなかでも武侠小説の世界を上手に表現する監督のひとりが、チュー・ユアンなんだと最近やっと分ってきました。
(この監督は、武侠映画以外のジャンルも多く撮り、また俳優として有名な作品に出演したりもしています)

のっけから、ティ・ロンさん、
「孤独な旅をするものは、真夜中に命を失う。道に迷うと死ぬのだ」
と文学的な台詞を言い放つ。

それを聞いたロー・リエは杯を地に叩きつけると、派手に繰り広げていた夜中の宴会を止めさせます。従者が全員全速力で逃げ去ったあとの、本来のその街の姿である廃墟で対峙する宿命の男ふたり。

「心の準備は?」そう訊くロー・リエに対し
「殺すのに心の準備は要らん。ただし、なぜお前を殺したいのか忘れた」
と答えるティ・ロン。

おお、ハードボイルド。かっこいい台詞だ~。
こんな調子でずっと続くのなら、一度武侠小説を読んでみたくなる、そんな始まりです。

やがてロー・リエが抜刀し、2,3度振るとそれだけで灯籠は倒れ、家屋の窓が崩れ落ちる。
それに負けじとティ・ロンが刀を抜いた。
まるで雙拐(トンファー)のような取っ手がついた特別な刀で、クルクルと刃が廻る廻る。
まさにマジック・ブレード。
これは原作において、速すぎて対戦相手がその刀が見えないという、彼の技の表現なのでしょうか。いや、たまげた。

そこで、思い出したのが「錦衣衛(邦題 処刑剣14BLADES)」(2010)で主人公、青龍が見せた手の平の刀くるくる技。
ああ、あれは、この映画に対する大いなるリスペクトだったのだな、と今更ながら実感した次第。

昔の香港武侠映画や功夫映画を観ていると、時折こうして「なるほど」と欠けていたピースが埋まる瞬間を迎えることがあります。
自分としては、そこもまた面白くて魅力的なんだな。

互いのデモンストレーションが終わったところで、やおら始まる剣戟。
音楽もないなか、互いの剣が「ひゅっ」と空を切る音と「キン!キン!」と打ちあう音。

と、そこへ、いきなり大木が動きだしその幹から、そして地面から手が出てその地中から、別の刺客どもが現れます。
何でもありィの超人技。これぞ武侠映画の得意とするところ。

そんな奴らを見事返り討ちにしたふたりは、なぜか仲良く酒を酌み交わすわけです。
そしてその店では、ティ・ロンがことごとく自分達をつけ狙う刺客を看破ってゆく。

「下にいるあの物乞いは本当は目が見える、刺客だ」
「その傍の女は殺気に満ちている、刺客だ」
「向こうにいる2人の客は、俺たちをいつ斬りかかろうかと相談している」
そして彼の言うとおり、楽しそうに通り過ぎようとした子供すら殺し屋だった!のには笑えました。

そう、この作品の素晴らしいところは、こうしてみんなが大真面目であればあるほど観ているこちらは笑ってしまうとこ。

特筆すべきは、次々登場してくる命を狙う刺客たちとの想像をはるかに超えたバトル。
「琴、棋、詩、画、剣」という彼ら(+鬼老婆)はその名の通りの闘いぶりを披露するわけですが、その凄さは言葉では言い尽くせないほど。
出で立ちやキャラ、武器や闘い方も、その存在意義すら怪しんでしまうくらいにブッ飛んでる。

これを観ていて、なぜか思い出しだしたのが「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」。

当然、チュー・ユアン監督がパイソンズを参考にしたとは到底思えません。だってこれは別にコメディじゃないし。

実は昔の香港コメディが苦手な自分は、デフォルメしすぎた演技に加え「ギャグがくるぞくるぞ」と予感させドッカンくる作風がちょいと不得意。(近作はあまり観る機会がないので保留)
一方、笑わせるつもりなど(多分)ない、香港功夫や武侠ものによく見られる唖然とする展開や登場人物や動きが出てくる作品は、ある意味コメディとして、もんのすごく大好物。

モンティ・パイソンの初期のこの映画から発する狂気的な熱(特にバカバカしさにおいて)は、どことなく60年代後半から70年代の真面目に作ったショウブラ武侠映画に通じるものがある気がする。(ショウブラ離脱後の、ジミーさんの映画もそうか!)

かといって、このマジックブレードには、そんな特別な熱気はありません。
むしろ、よくある商業的なショウブラ映画の1本とも分類できるわけで。
なのに、同じノリを感じさせてしまう香港映画の底力。

しかもパイソンズの場合は狙って作っているのに対し、香港のこの人たちは、まんま「天然」で作りあげてしまっていることに心からの驚愕と感嘆を禁じ得ません。

これは香港映画人の感性がそうさせるのか、それとも原作である武侠小説がすごいのか、どっちだ!

この作品を初めて観た際のメモを読んでみると、最初に「江湖の人ってヘン」と記してある。
その「ヘンさ」に魅かれ、ラストのティ・ロンの台詞に痺れることが出来たなら、立派な武侠ファンへの一歩になるのかもしれませんね。

続けて書いてあったのが、DVDを注文した理由。
「寂しくなったらこの映画を見よう」とある。
この一文がすべてを表しているでしょう。

ものすごくお気に入りの1本です。

おまけ
そういえば、今年2011年、北京電視台がこの「天涯・明月・刀」をテレビドラマとしてリメイク。
楚原(チュー・ユアン)監督作以降、4度めのリメイクです。
ちらりとも観ていませんが、このドラマを観ても恐らくパイソンズを連想したりはしないでしょう。
それだけは、なぜか確信があります。
↓ポスターはこんな感じ。

傅紅雪役は香港の歌手であり俳優の鐘漢良という方だそうで。
つか、よく見るとここに姜大衛(デビッド・チャン/ジョン・チャン)の名前と写真が!
以前はジョニー・トーの「エレクション(黒社会)」やアンディ・ラウのラブコメなどで懐かしいお姿を見せてくれましたが、最近は、内地のTVドラマにも頻繁に出ているようですね~。
あと香港の生命保険会社のCMでも見たよ!(60歳以上からでも入れる、みたいなヤツ)
ご活躍、なによりでございます。

The Magic Blade Trailer 1
The Magic Blade Trailer 2

Monty Python and the Holy Grail-Trailer

環球信諾保險「頤安保」- 姜大衛電視廣告 (音量注意)

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ヌレエフ版「ロミオとジュリエット」

この間友人とバレエダンサーのマニュエル・ルグリの話になったので、もんのすごい久しぶりに、手持ちのヌレエフ版「ロミオとジュリエット」を観ました。

これは、あの天才ダンサーであり名演出家、振付家でもあったルドルフ・ヌレエフが、最後に自身により選んだ配役で、彼が亡くなった後の1995年に上演した舞台を収録したもの。

いやぁ、改めて感激しました。

ロミジュリといえば、それこそヌレエフが初演で踊ったケネス・マクミラン演出が有名ですが、当時あの難易度の高い踊りを超えるものなどないのでは、と言われたマクミラン版より、もうひとつ複雑な振り付けをつけたヌレエフは、やはりすごいです。

自身が他の追随を許さない超絶スキルを持っていただけに、彼が演出振り付けをした古典は、それまでの女性中心の踊りから、ダイナミックさと細かい技功を生かした男性パートを新たに加えた新構成という特徴をもっています。

このロミジュリでもその個性はいかんなく発揮され、登場する男性キャラには、それぞれに目の覚めるほどの見せ場がたっぷりある。いわば男祭り。いやっほう。

エトワールは、ロミオが若き日のマニュエル・ルグリ、ジュリエットにモニク・ルディエール。
パ・ド・ドゥは、人間こんな難しいことが出来るのか!とビビるほどの超絶技巧の連続です。

それでいて、ジュリエットはあくまでも可憐でロミオは上品。ふたりとも驚くほど難度の高い振り付けを実にさりげなく踊るところが本当に素晴らしい。
バルコニーのシーンなど、終わった後はモニターの中の観客と一緒に思わず「ブラボー!」と拍手してしまったほど。

昔、本人振り付け演出でヌレエフがロミオ役、マーゴット・フォンティーンのジュリエット版を見てその技術のハンパなさにやはり驚いたことを思い出します。

が、そんなヌレエフによる容赦ない「パリオペラ座芸術監督・ヌレエフ虎の穴」で鍛え上げられただけあって、ルグリ、ルディエールの2人は、この舞台でマジ、驚愕の技術を見せてくれます。
(事実、この虎の穴、シルビィ・ギエム、シャルル・ジュド、エリザベット・プラテル、などなどビックリするほどの数々の有名エトワール&その後の世界のバレエ界をリードする人材を輩出したことでも知られております)

悲劇のラスト、仮死状態になっているジュリエットを、ロミオが抱きよせ「ああ、ジュリエット、どうしてまだそんなに美しいのか?」と嘆く場面。
この2人が行き違いで死ぬ場面は、マクミラン版での印象的なコレオグラフィーが有名。

ヌレエフバージョンも、そのマクミラン版を踏襲しつつ、一層丁寧に細かく演出されていて、ジュリエットがぐったりとしたままの状態をうまく活かした振り付けが見事です。
単純だけど、こんなにも死んだ状態を美しく踊りに仕上げるって、すごく難しいし、何より演じるほうのスキルも相当なもの。

あらためて演出家振付家としてのヌレエフ先生の、ダンサー達のリミッターの外しっぷりには心から感心いたします。

ちなみに、この場面を見る度になぜか上方落語の「らくだ」を思い出してしまう自分。(決して自分にとっては悪い意味ではありませんので誤解のなきように)
ありえないことですが、「らくだ」を一番、この世で完璧に演じることが出来るのはひょっとしたらバレエダンサーではないか、あああ、いっぺんでいいから観てみたい、バレエ「らくだ」。
そんなことをつい、想像してしまうのです。

と、そんな自分が、再度観て新たに思ったことがひとつ。
この95年版でものっけから、モンタギュー家とキャピレット家との派手な小競り合いの場面があるのですが、そこで自分が過去と違う視点になっていることに気がつきました。

そう今回、見事なまでの、この「アクションシーン」に非常に感心してしまったのです。
功夫映画、香港アクション映画好き(いや、この場合はドニー映画好きとすべきか)として今観ると結構なもんです。ワイヤーもCGもカット割りもマットレスもなしだぜ!

「バレエダンサーとは喧嘩するな」とは、かの空手バカ一代、大山倍達先生が残した言葉らしいですが、まさにその通りかも。

ちょっと稽古したら、この人たち簡単に関節技やルチャ・リブレなんか決めちゃうだろうな、と思わせる体幹の強さとジャンプ力とスピード!
そのうえ、脅威的なあの体力ですぜ。

実際、格闘シーンを踊ってるのを見ていて、ヘッドシザーズ・ホイップとか決める高さやタイミングなんか、ぜんっぜん余裕であったもん。
(そこで足取ってヒールホールド決めてしまえ!とバレエを観ながら心の中で叫んだのは内緒)

ヌレエフ版「ロミオとジュリエット」(amazon)

 

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