映画 功夫・詠春(2010年・香港)

以前、ドニーさんの「関雲長」を中国語字幕しかないDVDで見た時に、三国志がよく分らん自分は台詞がどうしても知りたくて、普通語の漢字をいちいち手打ちで翻訳サイトに入力し、意味がサッパリな訳文になったら、その都度辞書やネットで慣用句とかを確認してみるという、信じられないような執念深いことをしたことがあります。

その効果でしょうか。
それ以来、中文に対しての苦手意識がやわらぎ(ヒアリングとかは絶対無理)、今じゃ英語字幕より中国語字幕の方が字数も少ないし観るのが楽になりつつある自分に驚いています。(所詮アクション映画程度だけど)

いや~、人間何でもやってみるもんだ!

今回のこの作品も、途中から字幕を英語から中文に切り替えてしまいました。
まさにパッと見、慣れると漢字の方が楽だし早いもんな~。
さすがに「関雲長」のような執念深いことは二度としていませんが、どこまで正確に理解できてるかどうかは・・・謎(笑)。

監督
張同祖(ジョー・チョン)

出演
白静(バイ・ジン)
余少群(ユー・シャオチュン)
惠英紅(クララ・ワイ/ベティ・ワイ)
鄒兆龍(コリン・チョウ)
元華(ユン・ワー)
元秋(ユン・チウ)
惠天賜(オースティン・ワイ)

アクション監督
董迹求iトン・ワイ)
江道海(コン・タオホイ)

ドニー・イェンの「イップマン序章」と「イップマン葉問」がむこうで大ヒットしたおかげで、その後、追随作品が結構作られました。
例えば杜宇航(デニス・トー)主演の「葉問前傳」とか。(そういや、デニスは実際に詠春拳の達人)
実はこの前傳のテイストが自分の好みとは少し違ったのもあって(デニスは、とってもよかったけどね!)、この「功夫・詠春」のことはあまり気にしていませんでした。
が、キャスト、スタッフを見るとやたら豪華じゃありませんか。
そして決め手になったのが「酔拳」「蛇拳」そしてワンチャイシリーズを制作した呉思遠(ン・シーユン)がプロデュースしたという一文。

これは観るしかない。

そして観てよかった!
これ、かなりの良作です。さすが呉思遠!

まず、200人の中からオーディションで選ばれたという主役の白静ちゃんが、非常に良かった。
「元気ハツラツ」って言葉を久々に思い出しましたよ!日本なら間違いなく「オロナミンC」のCMやるね。

アクション監督はトン・ワイとコン・タオホイ。もう大御所2人ですもん、心配はないどころか、この2人の要求に見事応えた彼女の能力の高さに痺れました。
わぁ~久々出てきた本格的な女武打星の今後に期待しますよ~。
武術を習っていたわけではなく踊りが得意ということですが、どうかどうかお願いします、アクションやり続けてねセンスあるもん!白静ちゃん!

ストーリーは、詠春拳の創始者といわれる厳詠春が主役。
ドニーさんとミシェル・ヨー姐さんの「詠春拳」と非常によく似てる、てか多分これリメイクだよね。

実家は豆腐屋だし、婚約者も梁博菫ヲで同じ名前だし(キャラクターは相当違うけど)。あれから、山賊を抜いて少林寺の焼き打ちエピ+詠春の修行を足した感じでしょうか?

さて、詠春の婚約者、梁博菫ヲを演じるのはあの陳凱歌監督「花の生涯 梅蘭芳」で少年時代を演じた余少群。
あの時の彼の存在感はハンパなかったです。また共演した王学圻の演技も目を瞠るほど素晴らしく、2人のシーンは見ごたえがあったわ~。

そんな彼もすっかり大人になりました。
そういや最近、ウイルソン・イップ監督の「倩女幽魂」でも観たよ~。レスリーの後はプレッシャー大変だったろうなぁ。
秋に公開される「新少林寺」や成龍の「1911」にも出演してるとか。すっかり売れっ子ですね。
彼のアクションを今回初めて観ましたが、結構いい感じです。今後も時々はアクションしてください、あなた、めちゃくちゃ辮髪古装似合うから。
新少林寺では少林僧のひとりなんだよね、どれくらい上達してるかアクション楽しみ。

脇を固める役者衆も激しくよろしいです。
まずは詠春の師匠役の惠英紅と、敵役のコリン・チョウ。
いやいや、この2人がいるだけでアクションに説得力が出ますね。
特にコリンはあんないい人そうな顔をして悪い奴だからなぁ。ラストバトルも彼がいたからこそのシーン。ブラボー!コリン!

最近は悪役ばかりですが、サモハンの下でキャリアを積んでいた頃はなかなか繊細な好青年も演じてたんだし、たまにはいい人役のコリンも見てみたいです。
中華版アジョシみたいなので、ひとつ、どうでせう。
前半、おもいっきしくたびれさせて。実年齢もビジュアルもなにもかもリアル大叔、ええやないですか。

そん時は仕方ない、コリンのためだ、あのベトナム人の役でドニーさんをお貸ししましょう(笑)。顔もちょっと系統似てるし。
その代わり、あのファイトシーンは長くディープにしまっせ~。なかなか決着つかずに7分くらい殴り合ったり関節技かけますから。・・・ってまた話が横道にそれました。

話を戻します。
梁博菫ヲの両親役で登場するのが、「カンフーハッスル」以来すっかりコンビとして定着した感のある元華&元秋(笑)。「カンフー麻雀」でも観たけど、この2人、あれ以来一体何本の映画にコンビで出てるんだろ?

あと惠英紅の実兄である惠天賜も出演。かつては京劇出身の武打星として人気を博したお人。
実はこの方、ドニーさんのSPLと導火線にも出ています。このふたつの作品で男前のナイスミドルが登場したら、それが彼(笑)。
それにしても、すんごい美形兄妹だなぁ。

余談ですが、アクション監督のトン・ワイも映画に出てた若い時はすごく可愛かったんですね、最近、昔の写真見て腰抜かしそうになるほど驚きました。

てな具合に、スタッフキャストを見ただけで、この映画の本気度がわかる。

ラストバトルは接近戦に強く狭い所で闘うと効果をより発揮する詠春拳だけに、色々場所を移動してのアクションに工夫がありました。
なにしろ闘うのが若いお嬢さんとコリンですからねぇ、嘘っぽくならないように相当知恵を絞ったに違いない。
まぁラストバトルも終盤近くになると、もはや詠春拳じゃないじゃん!と突っ込みもいれたくなりますけど、まぁあの高速連打を彼女ができるわけもなく、映画なんだから細かいことはキニスンナ!ということで。

とにかく女性が主役のアクション映画としては最近のなかでは秀逸の出来です。
特に古装ものなのにアクションがファンタジーに振れ過ぎてなかったところに、とっても好感を持ちました。←これ重要。
リミッターが外れた瞬間なんか「詠春・怒りの鉄拳」になってたし(笑)いいよいいよ~。

そしてアクションが素晴らしい上に、出てくる男たちの辮髪のよろしいこと!
特に余少群の辮髪は、この現代を生きる人と思えぬほど似合ってます。この衝撃はリンチェイの辮髪を初めて観た時と同じくらいか。

本格的辮髪欠乏症の方には、騙されたと思って観なさい、と声を大にして言いたい。
麗しいのから、ちょっと間抜けな感じまで老若取り揃えて、辮髪好きの皆さんをお迎えします。これ1本で随分補えるはず。いや、マジで。

そういや最後の最後に「そこで葉問パクリネタくるか!」ってのが(笑)。
ま、これも御愛嬌御愛嬌。

もう色んな意味で、充分に満足できました。強力にお勧め。
DVDスルーでいいから日本語版でないかなぁ。

功夫・詠春予告編

残念なことに主演の白静ちゃんは2012年、惜しくも亡くなってしまいました。
彼女への追悼エントリー

 

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