追龍(原題、2017年・香港中国)@HK⑤レビュー – ドニーさん 甄子丹

それではざっくりと感想レビューを。これで最後になる・・・はず。ネタバレ

上映時間は2時間08分とドニー映画としてはやや長めなのですが、これもっと長くてもよかったなと観た後思いました。もう少し時間をかけて人物を掘り下げてくれてもよかったなと。が、それは反面ダレずに最後まで突っ走った感覚を持てたということでもあります。

なにしろ、跛豪と五億探長の2本(探長は前後編だから正確には3本?)を1本にまとめた格好です。どうしても駆け足になりますわな。その分テンポが速くて見やすかった気もするし難しいところですね。

香港ではこのモデルとなった2人の実在の人物のことを知ってるという前提があったのかもしれません。かといえ大陸ではまったく知られていない人物のはず。いくら有名作のリメイクとはいえ、このような超ドメスティックな香港黒幇映画で勝負したのはずいぶん思い切ったなとも思います。

当局の検閲があるため、作ろうとしても結果画竜点睛を欠くことになりかねないジャンルのひとつ黒幇片ですが、イギリスを完全な悪者にすることで回避できたのは王晶の手腕だとレビューに書いた評論家もいました。

アクションは今までのドニー映画とは違い、ジャーマンスープレックスや三段蹴り、チェーンパンチも登場しません。「この役は、喧嘩屋だけどマーシャルアーツの達人じゃないし」というのがドニーさんの言い分です。そもそも足をやられて片足が不自由な役だし。

主演が彼でなければ普通にアクション映画として持て囃されるほどにはちゃんとアクション映画です。特に不満を感じなかったのは、もっと少ないのではと覚悟してたのと、何度も言いますが、舞台設定や音楽の力が大きかったと思います。

特に九龍城は非常に楽しかった。關智耀共同監督によると山のような資料を収集し当時そこで生活した人から話を聞き、道具に至るまで細心の注意を払ったといいます(香港映画人の言う事だから話は絶対盛ってそうだけど、笑)。

以前見た記録映像や唯一持ってる本『九龍城探訪 魔窟で暮らす人々』にくらべると汚しが足りなくて100倍ほど綺麗だし、よく見ると少々ちゃちい部分もあるかもですが、それでも自分は充分気に入りました。カメラワークもあいまって画面がおもしろくて飽きなかった。

途中、追われて逃げるアンディが階段をジャンプして降りると足元の水なのか油なのかで滑って転ぶという動作があったけど、あれなんかすごく九龍城あるあるって感じがして匂いまでしてきそうでしたわ。このシーンはかなりの緊迫感。テンパったアンディ、凄い色気。かっこよすぎっしょ。

やはりアクションは場所の制約とかあると面白いです、上から落ちて配線や謎のパイプに引っ掛かるとか。今回ドニーさんは設計段階で時間をかけてカメラ位置を捜したそうです。

ところで、最初の大乱闘でドニーさんの靴が脱げ途中で喻亢が投げて寄こしたのをまた履いて戦うという実に細かい動きがありました。ここなんかすっごいドニーさんでしたよね。ご本人が喋ったわけじゃありませんけど、仮に尋ねたら「主人公が功夫の達人じゃないことを表現するのに、わざと入れた演出。本当の武術家なら最中に靴が脱げるようなミスはしないだろ?」とドヤ顔するんやろなぁと想像して笑っちゃいました。

さて、その乱闘シーンのあった香港の外景は中国仏山市にある西樵山国芸影視城で撮影しています。私の記憶が正しければ『イップ・マン 最終章』のために建てたオープンセットでその後多くのドラマや映画に使われているところ。

イップ・マンといえば継承を撮影したオープンセットは、かの有名な上海・松江区にある勝強影視基地。ここはもともと巨額の資金と年月をかけて『孫文の義士団』のために作られた街並みなので、クオリティは当然上海のほうが勝るのですが、仏山にしたのはスケジュールなのか、金額の問題か、香港から車で通う事も可能という立地が決め手だったのか、はたまたドニーさんの映画で4度目になるのを嫌ったか(ほかには『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』もそう)。

九龍城はどこのセットに組んだのでしょう、クランクイン直後に香港のショウ・ブラザーズのスタジオを利用していると読んだ気がするんですが、ごめんなさい。確認してません。

が、ドニーさんが今回苦労した点で自宅に帰っても役が抜けずに大変だったとボヤいてたので、案外香港というのは間違ってないのかも。俳優は香港だらけだしね。ホテルのいい部屋に何カ月も泊めるより自宅から通ってもらった方が安くつくもん。

いつものドニー映画としてはレビューがかなり冷静な気もしますが、いや、映画がおもしろくなかったわけじゃありませんよ。むしろ連続鑑賞によくある睡魔にも襲われなかったし、なんといってもアンディとのコンビがすごく新鮮でした。

お、そういえば今回ドニーさんは演技にこだわったようで、テレビシリーズの『精武門』を思い出す表情もいっぱい見れました。渾身の演技だったからいろいろ取り憑いてたんだろうなぁ(笑)。

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追龍(原題、2017年・香港中国)@HK⑤レビュー – ドニーさん 甄子丹 への1件のフィードバック

  1. ぱおぱお のコメント:

    こんにちは!初めまして。
    凄く観たくって香港まで行ってしまいました、0泊3日の強行軍で4回観ての帰国です。
    言葉を追ったり映像を追ったりと忙しいでしたが本当に楽しめる映画でした。
    観終わったそばからもう一度観たくなりますね(笑)
    DVDやブルーレイに日本語字幕も入れての発売をして下さらないかと願っています。フォースに祈るしかないのかな?

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