づけはマグロだけやないんやで~

とうほく食文化応援団 第3回

仙台名物というと、なにが思い浮かびますかね。
まずは「牛タン」と「笹かまぼこ」が上位に入ることは間違いないでしょう。

もちろん、この2つも名物として申し分ないのですが、何度も仙台に足を運んでいると
「いやいやいや、他にも美味しいものは一杯ありまっせ~」
と声を大にして言いたくなる。
しかも、これが東京に比べてお安いのなんの。

宮城は食の宝庫。
米どころとして知られるだけに日本の農業を支える県のひとつでもあり、宮城牛で有名になった高級和牛の産地でもあります。

そして何といっても全国有数の水揚げを誇る漁港も持っている。
仙台に行ったら、私は必ず魚を食べます。近海ものの美味しいものがたくさんあるんだよぅ。

そして、そんな仙台に新名物があるそうな。
向った先は文化横丁にある寿司屋「新富寿司」。

ここで食したのは仙台の新名物として近年売り出し中の「仙台づけ丼」。

「づけ」というと、自分はマグロくらいしか思いつかなかったのですが、仙台では、近海ものの、主に白身魚を「づけ」にして提供しているところが一味ちがいます。

この日は、あいなめ、真鯛、すい、白魚が載っておりました。
しかもお値段がびっくりするほどお安いときた!ランチに戴くとより一層お得感があります。
小鉢と味噌汁がついて1,050円也。

マグロのづけと違うのは、白身はもともとが淡泊だけに、そのづけダレも繊細な塩梅で作られていて、その魚の持つ甘みや味わい、食感を壊さないように、むしろそれを引き立たせるような工夫がされている。

当然、季節や各店舗によってづけダレや魚の種類も違うので、それぞれに個性が出るわけです。


↑奥から左、「寿司勝」のづけ丼。右「新富寿司」
手前「富貴寿司」仙台づけ丼 (内容は季節や日によって変わります)

白身魚をこよなく愛する自分としては、これは願ったりのメニューですわ!

東日本大震災以来、東北の豊かな食文化はすべてにおいて大打撃を受けました。
こちらのお店も、魚が手に入らないために最近まで閉店を余儀なくされたほど。
やっと再開出来たという店舗はここだけではないでしょう。

そしてそれは魚を出す店だけではないに違いありません。

懸命に頑張る生産者や、逆境と闘う食を支える人達を応援する意味でも、自分は東北の美味しいものを、これからも食べ続けますよ!

仙台食文化応援団

 

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新・片腕必殺剣(1971年・香港)

↑2004年のカンヌ映画祭、クラシック部門で再上映された際のポスター。
美しいですよね!

監督
張徹(チャン・チェ)

出演
姜大衛(デビッド・チャン)
狄龍(ティ・ロン)
谷峰(クー・フェン)
李菁(リー・チン)

武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)
唐佳(トン・ガイ)

もうずいぶん前に観たのだけど、あまりの素晴らしさに何と書いていいか分らず、少々時間が経ってしまいました。

江湖でバリバリ売り出し中、若き侠客、双刀使いのレイ・リ(姜大衛)。
その彼が、悪人ながら抜け目なく大侠として人望を集めるロン・イーチ(谷峰)の策略に嵌められ、闘うところから話は始まります。

全身白で決めたこの時の衣装は、姜大衛にとてもよく似合います。てか、この人はなに着ても似合うんだけれど。

血気盛んな若者は、ロン大侠の老獪な罠にかかったうえ、その三節棍に破れ、約束通り自分で右腕を切り落としてしまいます。

飛んだ腕をもう片方の刀で木に刺して、みせしめにする谷峰。
あああ、ものすごい狡猾だけど風格のある悪人役、非常にハマってます、悪いやつだ~谷峰。

ここからがチャン・チェ監督の腕の見せどころ。

血まみれでよろよろと肩を押さえながらその場を去り、坂道を転げ落ちる場面は当然のことながら、お約束のスローモーション。
そして不安感をあおるギターの音色が重なって、どこを切っても見事なチャン・チェ節。

やがて野ざらしにされた腕が白骨に変わり、その残骸は時間の経過を冷酷に伝えるのです。
うまいなぁ。

2年後、自ら腕を切り落としたレイは場末の食堂で、笑わない寡黙な使用人として働いていました。
主人には不気味がられ客からは片腕であることを嘲笑される毎日。
唯一、父親の酒を買いに来る鍛冶屋の娘パー・チアオ(李菁)を除いては、誰ひとりとして普通の人間とすら認めてくれません。

「負けたら武術からは足を洗う」という、あの日交わした約束を頑なに守る彼は、たとえなぐさみに殴られても手を出せない。

絶望にさいなまれ荒んだ彼の本当の姿を見抜いたのは、客としてその店を訪れた同じ二刀流の高手、フォン・チュンチェ(狄龍)。

自分を理解してくれるこのフォンの出現によって、片腕になって初めて笑顔を見せるレイ。これにはパー・チアオも嫉妬ですわ。でもチャン・チェなんだから仕方ない。

しかもこの男、武術を捨て切った彼の生き方に感化され、自分も武術を捨てるから一緒に田舎に行って農業をやろうというではありませんか。
兄弟と呼び合い、嬉しそうに互いの肩を抱き合うレイとフォン。

しかし、観客は知っています。
姜大衛と狄龍、この2人が武術を捨て、仲良くうふあはと田舎にすっ込んで農作業をやるなどと、世界中が許しても監督のチャン・チェが決して許すはずなどないことを!

予想通り、武林で頭角を現してきたフォンは、「出て来た杭は打ちまくる」ロンの計略に引っ掛かり(文字通り)凄惨な死を遂げるのです。
もうね、この時の谷峰の顔がね、ほんっと憎たらしい。

そんなことも知らず、日の暮れる前から街角で狄龍の帰りをひたすら待つ、姜大衛のその姿の切なさよ。いやいやロミジュリにもまったく負けてませんな。なんという悲劇。

フォン大哥が戻らぬまま、夜になって店に来たロンの手下の話から事実を知ったレイ・リ。

彼は白装束に身を包み二度と握るまいと決心した刀を手に、復讐を誓うのです。
この時の姜大衛の、なんとまぁ驚くくらいに美しいこと。

そしていよいよ、クライマックスは復讐の焔をたぎらせて長橋での獨臂100人斬りへと突入。

武術指導は、劉家良と唐佳。
単調になりがちなソードアクションですが、リズムに変化があり、足技やアクロバティックな動きも交えてバッタバッタと手下どもを斬りまくり。気持ちいい~。
さっっっすが武術指導のゴールデンコンビ!!

それにしてもこの頃の役者さんはスキルが違うなぁ。
狄龍のシーンでも思いましたが、とりあえず闘うときはワンカット10手前後は当り前。長いと、20手近くは優にある。
特に受け身がみんな異常に上手い。
試しに自宅で片腕を身体につけて、姜大衛のごとく床をゴロゴロ転がってみたのですが(これで40過ぎの大人)2回転しただけでくじけてしまいました。

ほとんどカメラもブレないから、その俳優のスキルがマジで見えてくる。
それでいて、この見事なシーンですからねぇ。本当に溜息がでますわ。

ラストファイトで特筆すべきは、敵をなぎ倒す素早いリズムと、次のターゲットに向かう時の無言の長い間合いとのコントラスト。

台詞も音楽もないところに微かに聞こえる風の音といい、この辺りは、日本の時代劇から大いなる影響を受けたという当時の香港映画の鳴動が感じられて感無量でした。

待ちかまえる谷峰に向かい長橋を歩く後ろ姿のロングショットと、その足音には痺れまくり。
うう~~~カッコよすぎます!デビッド・チャン!

これは間違いない、武侠映画の傑作です。

今作では、片腕である食堂の使用人ということで、結構珍しい姜大衛のお姿も拝見出来てラッキーな気分にもなれる。
片手で宙に放り投げた卵を連続して割ったり(当然すべてワンカットじゃないけど、落ちてくる卵を見ずに取り割るだけですごい)左手一本で石ころをジャグリングするなんて、CGなんかない時代だけにその器用さには驚きます。

と同時に瞠目すべきは狄龍のロープ1本に寝そべる姿。
それはリラックスできるのか?

もうね、色んな意味で堪能しましたよ、満足しました、大好きな映画です!

THE NEW ONE-ARMED SWORDSMAN Trailer

 

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マラソンコースの計測は、こうするのだ

いま、NHK第一ラジオで毎週火曜日の20時05分からの「渋谷スポーツカフェ」という番組に出演しております。
タイトルの通り、スポーツにまつわる様々な立場の方をゲストにお迎えしてお話をうかがう50分。

その番組に国際陸上競技連盟のマラソンコースA級計測員の平塚和則さんをお招きした時のこと。

普段何気なく見てるマラソン。
あれってたとえ毎年同じコースを走る場合でも必ず42.195キロ、レースの直前までに距離を測るんですね、知りませんでした。

その計測の仕方ですが、現在は「自転車に装着したカウンターで測る」方法と「50メートルのステンレスワイヤーで尺取り虫のように手で測る」方法の2種類があるそうです。

ええええええ、ワイヤー使ってチマチマ手で測るの!
それを平塚さんから聞いた時、かなり驚きました。
今時、そんな原始的な方法で測っているとは。

さすがに、尺取り虫方式は人数や技術など物理的に難しい国も多く、現在では日本くらいしかその方法を取り入れているところはないそうですが、それでも日本ではいまだにあるわけですよね、すごい。

この方式、必要な人数は交通整理もふくめ20人近くの人手が必要。
50メートルのワイヤーで42.195キロを7,8人がかりでマークして繰り返すこと844回!

当然歩きっぱなしで朝から晩まで測り続けて丸2日はかかる。過酷だ~。

もちろんカーブなどを計測する時は路肩から30センチ、センターラインの側になるとラインから30センチと決められている。

路肩から30センチっていっても工事をしていたり路上駐車の車があったりと障害物も多いはず。
そういう際には工事の人に事情を話して中に入れてもらったり、時には路上駐車の車の下に身体を入れてワイヤーを通し測ることもあるのだそうです。ひぃ~。

現在はステンレスワイヤーが使用されていますが、昔はこれを50メートルの竹尺で計測したそうです。竹はある程度弾力がありつつ、しなりますからね。

そして、その正確さは世界一!

この尺取り方式で測った距離は何度他の方法で確認しようが誤差などはでたことはないという。さすがです日本人。

もう一方の自転車方式は、自転車にとりつけたカウンターで測る方法。

しかしこれはこれで、3台の自転車で路肩30センチのラインを時速20キロから25キロで走行、5キロごとにカウンターをチェック。

しかもノンストップで自転車を走らせなければ意味がないので、自転車方式の場合、レース当日、交通規制が行われた後に計測することがほとんどだそうで。

レースによってはスタート3分前に出発し、トップランナーの約1キロ先を走る、ということも。

沿道を埋めたファンでも先頭を行く自転車が計測員だとご存知のコアなファンは、やはりいる。
「計測員が来たからもうすぐランナーが来る」と理解している観客や「お疲れさまです!」と声援を送ってくれる人がいて嬉しいとお話していました。

けれど、マラソンコースというと結構な登り坂もあったりするわけで、自転車とあなどるなかれ、相当の体力が必要です。
そのために平塚さんも普段からの体力作りには気を遣っていらっしゃるそう。

さて、その自転車につけるカウンターとやらを見せて頂きましたが、これがものすごく玩具みたいな感じで(笑)拍子抜けしてしまいました。

まさか「チャチイ」とは言えないので(笑)「凄くシンプルなカウンターですね」と感想を言ったら「これでも最近改良されてカウンターが縦に表示されるようになったんですよ」とのお答え。そういう問題なのか!

ちなみに誤差はでないのか、という疑問に対しては、当然誤差も考慮したうえでの計測になっているそうで、1キロを0.1%の誤差分を足して1001メートルで測るのがルール。

誤差は多いぶんにはいいけど短いのは絶対に許されない。
なので42.195キロと謳っていますが正確であればあるほど、実際は42メートル長くなるというわけです。

普段なにげなく観戦するマラソンですが、こういう方々の働きがあってこそなんですねぇ。
お話を聞いていて思わず拝みたくなりました。

渋谷スポーツカフェ平塚和則氏

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ソフトバンク 福田秀平選手

こういう商売をしていると、自分の名前でネット検索なんて滅多にしません。
なんつっても気が弱いんですから。

ところが、何かの都合で、どうしてもしなくちゃいけない時がある。
昨日もそういう瞬間がありました。
ズラリと並んだ一覧で、ある文字が目にとまりました。
<福田秀平と飯星景子は似ている?>というタイトル。

かつて何度か似たようなタイトルを目にした事はありますが、その時は別に気にしませんでした。
しかし今度は聞き慣れない相手のお名前に妙に興味が湧いたのです。
開いてみたところ、その方はプロ野球チームであるソフトバンクホークス売り出し中の若手外野手ということがわかりました。
その投票に、一体何人の人がポチッたのか、そこまでは確認しなかったので分りません。

ただ、写真を見た彼の印象は「ウルトラマンだってどっかで必ず言われただろうな」ということ。

そして、かつて私が務めた番組を去る際に、スタッフが書いてくれた寄せ書きの中央にウルトラマンをデフォルメした自分にそっくりな似顔絵があったことを思い出したのです(シュワッチ!)。
多分、この鷲鼻が似てるんだな~。

鼻以外に彼と私が似ているかどうかはおいとして(笑)そうかそうか、福田選手と自分は恐らくウルトラマン繋がりなんだと、一瞬にして理解した次第。

(というか、彼の横顔はむしろロッテ今岡誠選手に似ていて、かといって、今岡さんと私は全く似ていないという、よくあるパターン)

福田秀平選手は1989年神奈川県生まれ。
あの後藤久美子さんを輩出した多摩大学附属聖ヶ丘高校から、2006年の高校生ドラフトにて1順目で指名され、プロの道へ。

2010年シーズンやっと1軍入りし、おもに代走として出場。

今シーズンは夏に怪我があったりと苦労した時期もあったようでしたが9月に入って、ダルビッシュ投手から長打2本とか、優勝争いをするなかでのお立ち台とか、またシーズン優勝を決めた試合のウイニングボールを好捕するなど、目を瞠る活躍をみせて頭角を現しました。

しかも昨日のクライマックスシリーズ最終戦、12回の裏には牧田投手から堂々の2ベース。
見事サヨナラのベースを踏んだわけです。
日本シリーズ進出、おめでとうございます。

つか、あなた何か持ってるかも!

思えばホークスは8年振りの日本シリーズ。
8年前というと、あのタイガースとの2003年以来なのか。

行きましたよ、福岡ドームも含め7戦全部。
ドームのレフトスタンドで、バックスクリーンにドカドカ飛び込んでくるホークスのHRを口半開きにして見た記憶が・・・。
何度隣でハリーホークがむくむくと膨らんだことやら(遠い目)。

こうなったら、今年の日本シリーズはホークスを応援しますか!

福岡ソフトバンクホークス公式サイト
ソフトバンクホークス公式選手名鑑 福田秀平
Sponichi Annex ホークス選手名鑑 福田秀平
SoftBank-hawks@Ustream.TV/福田選手ヒーローインタビュー
円谷ステーション 円谷プロ公式サイト

 

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泣きぼくろ

ある日の夕食の席で友人が「ひょっとしたら会社を設立するかも」と言いだしました。
「いざ、社名を考えるとさぁ、なかなかコレ!てのを思い付かなくて」と溜息をつく。

聞くとどうやらフランス語で考えてるらしい。
別にフランス語を喋るわけではない彼女。なぜフランス語?と思うけど、人って案外そういうもの。

単純な私が「自分の名前をひっくり返したら?」とアドバイスすると「それもとっくに考えたわ」とそのひっくり返した言葉を聞かせてくれました。
おお、なかなか響きがいい。

それでいいんじゃないの?と私が答えると「なんか芸がない」と我儘を言う。

「じゃあさ、発想を転換して、あなたの昔好きだった映画スターとかアイドルとかから考えたら?」と提案してみました。
世の中には案外そういう理由で名前をつけている経営者も多いのです。

「う~ん、私の最初のアイドルって言ったら、やっぱり、ジュリーかなぁ」

ジュリーといえば沢田研二。沢田研二と言えば、泣きぼくろ。

「泣きぼくろをフランス語で検索してみなよ」と言うと「そんなの日本以外に絶対にないよ」と彼女。いや、あるかないかは調べてみないとわからんでしょう。

そういえば、昔読んだアレクサンドル・デュマの「ダルタニャン物語」全11巻や佐藤賢一の本なんかで「泣きぼくろ」が出て来た気がする。

当然翻訳で日本語になってるから「泣きぼくろ」なんだけど、ファッションとして「つけぼくろ」が流行ったお国柄。そんな単語があっても不思議はない。しかも彼女のお望みのフランス語じゃん!

じゃあ、私が調べてあげるよ、とその場で安請け合いをしてしまいました。

んで、いざ調べてみたらば、これがやはり見つからない。
いや、ほくろという単語はありますよ、le-grain-du-beaute。なんつー長い。
le-grainは、小麦の粒や、穀物の種、肌のきめという意味らしい。
そこに「美しい」という単語のbeauteをつけてほくろ。
実際ネット辞書を検索しても「泣きぼくろ」という単語は出てこない。

一方、16世紀から18世紀に流行った「つけぼくろ」は蠅という意味のmouche。

どうやら白い肌に黒々とした点でさらに白さを強調する効果から、なぜか蠅という言葉で呼ばれたようで。
しかしそのつけぼくろに関連した単語「泣きぼくろ」も残念ながら無料仏語辞書サイトの限界か、捜せずじまい。ファッションとして流行したんなら、泣きぼくろという単語くらい作っとけ、フランス人、と心の中で悪態をつく。
てか、そもそも蠅じゃ社名にならんし!

つい面白くなって色々調べてみると、このつけぼくろ、なかなか興味深い。
初期は布や革を星や三日月、十字架などに切り取って貼ったそうですが、やがて現実のほくろに近いものからどんどん巨大化していったそう。

それもひとつやふたつじゃなく、ものすごい数をつけている肖像画も見つけてしまったので、たくさん貼るのも不思議じゃなかったみたいだ。

もちろん、白い肌を強調するための視覚効果を狙ったという一方で、当時悩まされていた天然痘の傷跡であるアバタを隠すという合理的な事情もあったのだとか。なるほど。
当時の貴婦人や紳士たちはお化粧の最後に顔のどこにほくろをつけるか、を仕上げの重要なポイントとして考えていたようです。

日本でもほくろ占い、なんてものが存在しますが、フランス社交界でもつける場所によってそれぞれ意味が違ったみたいで「私って情熱家だし」とか「奔放な性格よ」とか「慎重な性格だから軽々しく口説かないでね」と無言のメッセージが込められていたらしい。

フランス宮廷を舞台にした小説や映画を見る度に「自分は絶対にこの世界では生き残れないだろうな」という感想をまず持つのですが、このつけぼくろのエピソードはその思いを新たに強くさせてくれました。

さて、残念ながらフランス語で「泣きぼくろ」を発見することはできなかった私。

それならば世界で映画の字幕が一番短くて済む、というほど、言葉の意味が豊富な中国語の漢字はどうかと調べたところ、ほくろは中国語で「黒痣」。まんまやん!

けれど「美人ほくろ」という単語は存在するようで、そちらは「美人痣」という。
しかし例文をいろいろ捜しても「どこどこにある美人痣」という表現しかなくて、結果こちらでも「泣きぼくろ」という言葉は捜すことができませんでした。

やれやれ、友人の社名のためとはいえ、ものすごく頑張ってしまいましたよ。
もうさ、四の五の言わずに名前をひっくり返して社名にしなよ!覚えやすいんだから。

 

 

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ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳 武館激突(1981年・香港)

監督
劉家良(ラウ・カーリョン)

出演
劉家輝(ラウ・カーフェイ/リー・チャーフィ)
惠英紅(ベティ・ウェイ/クララ・ウェイ)
王龍威(ワン・ロンウェイ)
小侯(シャオ・ホウ)
谷峰(クー・フェン)

武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)
小侯(シャオ・ホウ)
京桂(チン・チュー)

主人公が黄飛鴻で、しかもワンチャイ後にソフト化されたせいでしょうか。
なぜか邦題についてしまう「ワンス・アポン・ア・タイム」
ううむ、とてもじゃないけど覚えられません。その点原題の「武館」はあっさりしててよろしい(検索かけると、めんどくさい事になるけど)。

オープニングから劉家良師父が、実演を交え細かく獅子舞のルールを教えてくれます。
(ちなみに、相手に向かって瞬きとか足を上げるとか、相手の獅子のお尻の匂いをかいじゃダメなんだって)

世界には数え切れないほどの映画が存在すると思いますが、中国獅子舞の注意事項をこれほどまでに細かく教えてくれる作品は、映画史上、唯一コレだけでしょう。

解説が終わったところで、本編はその獅子舞シーンから。
で、これを一目見てつい、心の中で叫んでしまいました。

「師父が獅子舞で、バズビー・バークリーしてるううう!」

バズリー・バークリーとは1930年代、トーキーになった直後のハリウッド映画界に現れ、以降、天才演出家兼振付家として一世を風靡した革命児。
彼がその後のミュージカル映画をはじめとする映像手法に与えた影響は、今もなおそのスタイルの模倣でしかないと言われるほど強く、測り知れないほどです。

たくさんのコーラスガールを使った群舞を天井カメラから狙った、万華鏡のような映像。
写真を見れば、ああ、これか、とお分かり頂けるかも。

んで、武館に話は戻ります。
ここで、監督は男どもの人力でもって三層に重ねられた獅子舞のダイナミズムを上からのカメラでとらえます。
リズムに合わせて、全員が片手を離したり、上を見上げたり。

おお、バズビー・バークリー功夫じゃん!

と、思わずうなるその構図(いや、表現したかった方向性は真逆なんだけどね)。

作品を見る度に師父の新たなる才能にハッとさせられますが、ここでもまたのっけからやられちゃいました。

ストーリーはいつものようにシンプルです。
敵対する武館同士がモメて、あれやこれやの大騒動。
そこに北からやってきた一風変わった達人が相手の道場に食客として居つく。

この王龍威演じる達人が、なかなかよろしい役で。
普段は悪役としてその個性をいかんなく発揮している彼ですが、この映画では単純に悪い奴じゃない。卑怯なことはしたくないと、ちゃんと信念を持ち合わせてる。

だからこそ、ラストの劉家輝との闘いが清々しいわけですね、監督。
このラストバトルは、もう言葉にはできません。
リズムといい、カメラワークといい(ここでも真上からのショットがすごく効果的)そして北拳と南拳の技術の違いといい、なんというミラクルなバトル。
いや、これはもう、見てもらうしかない。

狭い路地を充分に活用したこの2人の闘いは、この先どんな映画を観ようとも、恐らく「イーボシの選ぶベストバウトTOP20」(あれ、なんか英語ヘン?ま、いっか!)に間違いなく入ります。

それにしても、この映画の王龍威はいいですねぇ。
それほどアクの強い顔でないので、一見そんな強い人に見えない時があるのだけど、いや、そのスキルの高さには脱帽です。

80年代後半以降の彼が出ている現代ものの映画を見たことがありますが(当然のことながら悪役)時代も過ぎてしまうと純粋な功夫映画というよりは、銃を使ったアクション映画に趨勢は変化していて、今、思い返せば勿体ない使い方をしていたんだなぁと、つくづく感じます。
仕方ない事なのでしょうが。

そういえば、ユエン・ウーピン監督、ドニー・イェンも出演した「タイガー刑事」にも登場したっけか王龍威さん。
ショウブラをほとんど知らなかった初見時には、こんな素晴らしいスキルをお持ちの方とは存じませんでした。すみませんでした!

とにかく、この映画はなんといってもアクションが命。
最初の獅子舞と最後のラストファイトだけでも充分おつりがくる、功夫ファン必見の作品です。

 

50年後の功夫映画にも影響を与えた(笑)そのバズリー・バークリーのめくるめくミュージカルシークエンスを↓
By a waterfall(1933年/邦題:フットライトパレード/演出振り付けバズビー・バークリー)
Spin a Little web of Dreams(1934年/FASHIONS OF/流行の王様/バズビー・バークリー)

Martial Club Trailer 1
Martial Club Trailer2

 

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Le retour du Grand Maître

ネットでドニーさんの動画をあれこれ見ていたら、無性にフランス語吹き替えの葉問師父が見たくなってしまいました。
なんでか知らないけど、フランス語って不思議な魅力がありますよね。
どってことない言葉でもフランス人に喋らせると、そこはかとなく色気がでてくるというか。
彼らが囁くと「石坂浩二も見たゴム人間独占写真!」という東スポの見出しすら艶っぽく聞こえるかもしれません。

存分に全編通して師父のフランス語にこの身をゆだねてみたいぜ!
そう思ったら次の瞬間には仏アマゾンに飛んでいて、ポチッとしておりました(笑)。

酒なんか飲んでない、まったくのシラフにも関わらずです。
恐るべしフランス語の魔力。
どうせなら一括配送でどうよと、数本をまとめて。
仕様を眺めていて分ったのですが、仏版には作品によってちゃんと広東語、普通話、仏語の三種類の音声が入ってたりするのね。うらやましいなぁ。

ところでアメリカや欧州のショップから商品を買おうとするとたまに「海外発送お断り」というものがあったりして、いざ買おうとしたらいきなり切ない思いをすることが、ままある。
だけど、これらはストックありでちゃんと海外発送してくれる商品でした。ラッキー。

この感想を書くかどうかはわかりませんが、自分のことだから声が気に入ったら、そのうちにフランス人ドニー配音演員を執念で捜し出して、どこかで報告したりして。
マジっすか?いや、嘘です、嘘。

昔からダンス関係とかフィギュアスケートとか音楽ものとかの海外ソフトを買う機会はあったのですけど、よもや香港映画を欧米から買う羽目になろうとは思ってもいませんでした。
だって、ものによっちゃ香港版より立派な特典がついたものを出してたりするもんだからさぁぁぁぁぁ。油断ならん。

こんなことばっかやってるから色んな国のアマゾンやHMVから「これ買え」メールが届きまくるんだな。気がつけば、世界中からDonnie Yenを勧められてる自分って・・・とほほ、どうなのよ。

さて、先日フランスから届いたメールのクリスマスのお勧めのなかに、仏プロラグビーチームの毎年恒例ヌードカレンダーのメイキングDVDが。
おいおい、ドニーさんの映画買ったら、いきなりそうくるわけですかそうですか。

ドニーを買ったら送られてきたこの新商品のご案内、女子限定なのか、それとも男子にも平等に勧めているのか、どっちだアマゾン。

話だけではなんなんで、そのお勧めされたカレンダーメイキングDVDのアマゾンのページ。
たどってゆくと結構なことになっております。
Dieux Du Stade, Making Of Calendrier 2012

↓再度ですが仏語配音予告。
IP MAN2 Bande Annonce
FlashPoint €Bande Annonce

追記:
荷物が届きました。
どうやら映画によって声優は違うようです。
例によって、クレジットは当然のことパッケージやブックレット、資料を捜してもどこにも名前はなし(声優を気にするのは実は日本だけなのかも)。

にも関わらず、葉問に関しては執念深くなくても、びっくりするくらい簡単に調べられました。

葉問の仏語配音演員は、舞台や、映画ドラマなどの吹き替えとしてフランスで活躍するAlexis Victor氏。孫文の義士団も彼。
ブラッドレイ・クーパーやジョシュ・デュアメル、ピーター・サースガード、ジュード・ロウなどの吹き替えを担当しています。(と、いうことは結構中堅から若手の人か?フランス人は見た眼では年がわからん)顔も含めてこんな人です。

Maître Ip(葉師父)の声はドニーさん本人というよりは、普通話の陳浩老師にとても似ている感じで、すごくよかった、気に入りました。

最後に、驚いたのは「錦衣衛」の字幕の多さ。
フランス語1 デンマーク語 フィンランド語 アイスランド語 ノルウェー語 スウェーデン語 フランス語2 と、なんと7つもの字幕がついていました。
どうやら、北欧向けのソフトだったようです。そこにちょっと日本語も入れてくれてれば。ねぇ?

配音演員

追記2:
1年以上たってから追記するのも人としてどうよ、と思うのですが、ほかに書く場所とタイミングがなかったので抜けてたことを記しておきます。

実は「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」の仏語トラックには、なんとあの「あちゃおおッ」の怪鳥音が収録されていません。吹き替えどころかドニーさんの声ですら入ってない、つまり本来「ほあたッ!」と聞こえるはずのところがまったくの無音なのです。ななななんということでしょう!

技術的なポカでないのなら、この仏語制作をした演出家はじめ俳優スタッフは誰ひとりとして、まったくもってブルース・リーを知らなかったとしか言いようがありません。
ひょっとしたら現場で
声優「カントク~このアクション中の奇声も吹き替えるんすか?」
ディレクター「う~ん、ヘンだしなくても別にいいんじゃね?」
声優「よかった~なーんか難しいんすよねコレ」
というような会話とかが交わされたりしたのでしょうか。ゆ・・・ゆるせん、そこへ直りなさい。

さぞ、フランス語圏のドニー・イェンおよびブルース・リーファンは怒り心頭、「最悪~!」「こんななら無理して吹き替えなんかつけなくていいのではないでしょうか?」「発売する側に誠意が感じられないデキ」「ファンなめてんのかオラ!」などという言葉でコメント欄が埋め尽くされているのじゃなかろうか。

そこでAmazon Frを覗きに行ったら(←悪趣味)別に誰も怒ってなかった、というか話題にもしてなかったのに二重に驚いてしまい、むしろ何の問題にもしていない彼らに対し「ちょ、お前ら!」と本末転倒ながら妙に腹立たしくなってしまったことを付け加えておきます。

 

 

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実家に帰ったみたいな温卵カレー

こけしでも有名な宮城県大崎市、鳴子温泉。
ここで今、温泉街ならではの名物料理があります。
それをいただいたのは昭和の佇まいも懐かしい店構えの「たかはし亭」。

このお店、昔から地元の人達に親しまれてきた自宅兼診療所を新たに店舗として再利用したもの。

入った瞬間、スタッフのひとりがまず「懐かしいなぁ~、うちの実家にそっくり!」と声をあげました。
そう、誰しもが感じる昭和の香りが残った空間は、訪れた人を和ませる雰囲気を持っています。

代表の髙橋絢子さんにお話をうかがったら、このお店、地元の主婦10人で運営しているのだとか。
「私たちはみんな、子供の頃からこちらの髙橋医院にお世話になっていました。ここの先生が亡くなられて、しばらくして別の土地でやはりお医者様をなさってるお嬢さんがこの家を取り壊すという話を聞いて・・・なんとか、この診療所とお家を残せないかと。そこで思い付いたのが、これでした」

出していただいたのは鳴子の新名物「温卵カレー」。
カレーの上にとろりとろける温泉卵が乗っています。

もともとは家庭や温泉旅館などで「まかない」として食べられていたものが、あまりの評判の良さに地元の飲食店などで出すようになったのだそう。

食べることが大好きな私は、お仕事などでもさまざまなお店で食事する機会があります。
実は好きなタイプのお店のひとつが、プロっぽすぎない、すんごく料理上手な奥さんが作ったみたいな味。
そういう意味では、ここはまさに普通の奥さん達が作るだけあって非常に理想的!

そのうえ、温卵がのってますからねぇ。どのタイミングでこの卵を割るのか、こう、考えるだけで食べつつワクワクしてしまいます(笑)。

お皿の載った御膳も塗りのしっかりしたもの。
「この御膳も、床の間に飾った甲冑も、すべてこちらの御宅に昔からあったものをそのまま使わせて頂いてます、ひな祭りの時などは、それはそれは立派なお雛様を飾ることができるんですよ」

建物だけじゃなかったのですね。
みてください、この立派な1本でできた梁。

そしてこの窓。

「実家に帰ったみたい」
と言われるのが一番嬉しいと、髙橋さん。
(まさにうちのスタッフがそう言いましたよ!)

今はまだなかなか難しいそうですが、将来、自分達のあと若い人たちがここで働けるよう、今後はこの建物とお店を引き継いていけるようにするのが目標なのだとか。

文化を守る、そういうととても壮大で大上段に構えた様な響きがしますが、本当はこういう自分の身近な「想い出」を守ることが原点なんですよね。
その皆さんの目標が是非、達成されますように。

仙台放送 とうほく食文化応援団
http://www.ox-tv.co.jp/shoku/

 

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40過ぎたら石巻

2年前から、仙台放送でアサヒビール提供の「とうほく食文化応援団」という番組を担当させていただいています。

今年はいよいよ3シーズン目。
第一回目のロケは石巻焼きそば。
最近はB1グランプリをはじめとしてご当地グルメイベントが大盛況で、地方色豊かな焼きそばが沢山ありますが、そのなかでもこの「石巻焼きそば」は個性的。

なにが特徴かと言うとやはり麺。
石巻茶色い焼きそばアカデミー事務局長の島英人さんによると、ここの麺は普通の麺を二度蒸しするんだとか。すると、麺に含まれた「かんすい」が反応して茶色に変色するのだそうです。

その麺を、炒めるのではなく魚介を使ったスープを麺に含ませるべく蒸し焼きにする。
具はいたってシンプル。ネギと豚肉ともやしとトッピングに半熟目玉焼き。

これは初めての味でした。
変な話、この歳になって初めての味というのは、めったに出逢うことはありませんが、このようなものが存在したとは。

見た目は普通の焼きそばとさほど変わりはありません。
が、茶色く見えるのはソースではなく麺の色。ソースをかけずとも、その魚介の出汁がきいていて充分味わいが深い。

取材したお店八鶏飯蔵の店長、林正徳さんいわく「最後にソースをかけて食べるとまた味が変わっていいですよ」とのこと。

んん~確かに最後にウスターソースをかけると、また違った世界が広がるじゃありませんか。これにビールがまた合うんだわ!

私も自宅で面倒くさい時など、ちゃちゃっと焼きそばを作って食べることがありますが、自分で作るとあのソース味が時々胃にもたれるようになりました。

しかし、この石巻焼きそばはあっさりしていて最後までものすごく美味しい。「40過ぎたら石巻だな!」などと分ったような分らんような感想をつい言いたくなりました。
機会があったら、一度是非お試しあれ!

追記
お話を伺った島さん、実は製麺所を経営していらっしゃいます。
この5月に東松島に個人的にボランティアに参加した際、被害の大きかったこの石巻沿岸を見る機会があり、その変わり果てた姿に茫然としました。

島さんの製麺所も津波にやられて全てダメになり、その後大変な思いをして再開した、ということを以前ニュースで見たことがあります。

明るく元気にお話ししてくださった島さんですが、その陰で様々な御苦労があったことと思います。
町おこしから、全国に広まったこの石巻焼きそばですが、石巻の人々にとって今はまた違う思いのこもったものになっているに違いありません。

石巻焼きそばアカデミー
http://yakisoba.hp2.jp/

居酒屋 八鶏飯蔵
http://www.hattori-h.com/

仙台放送 アサヒビールプレゼンツとうほく食文化応援団
http://www.ox-tv.co.jp/shoku/

 

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観世能楽堂にて

以前の話になりますが、渋谷にある観世能楽堂にお能を見に行ったときのこと。

能は久しぶり。
席について、友人と後ろの方だけど真正面の席に大喜び。

ところが、観世能楽堂はあんな素晴らしい立地と舞台を持ちながら、大変残念なことに客席の傾斜が少ないうえに前後の席の配列をずらしていないため、前にどんな人が座るかによって舞台の見え方が大きく変わってきます。

この日は運の悪いことに私の前の席に中年の男性客。

そしてもっと不運なことに、そのオッチャンは大変な能ファンでありました。
彼が絶え間なく頭を動かすので、そのたびにこちらも頭を逆に振らなければ前がまったく見えない。
いっそ寝ててくれれば、こちらも落ち着いてみられるのに(笑)と何度思ったことでしょう。

しかも手に台本を持って観劇しているために、始終顔を台本と舞台に交互にせわしなく動かしやがる。
やがて持つ手が疲れるのか台本を上げたり下げたり。
そして老眼なんでしょうな、その都度腕をあげて眼鏡をかけたりはずしたり。

これは結構ききました。
正直言って、舞台よりその彼のすることが、気になって気になって(笑)。

この人はなぜ能舞台の屋根を見やるのに、視線だけではなく、顔ごとあげないと眺められないのだろう。
ところで頭に乗せた眼鏡があんなに変形して見えるのは、あれは眼鏡自体が曲がっているのか、それとも頭の形がおかしいのか。
くっそー、襟が後ろ半分中に入り込んでいるのを後ろからぐいっと引っ張り出してやりたいぜ!

もう途中から、舞台そっちのけでオッチャン観察に(笑)。

やっと休憩になり、やんわり注意しようかと思った矢先、席を立った彼は上機嫌で地謡(じうたい)を謡っているじゃありませんか!

・・・もうね、そこまで好きなんだったら何も言いませんよ、あたしゃ。

仕方ないので休憩で中正面の空いている自由席に移りました。
そりゃ、まだあと狂言も仕舞もあるし最後にもうひとつ番組(能では演目のことを番組と呼ぶ)も残ってる、てかあと2時間以上もあるのね。

でも、オッチャンに倣って休憩中に次の番組の台本を買いました。
これがあると謡の内容を必死に聞きとらずにすむし、すごく楽。

そこはあの人に感謝です。
でも、台本を動かして後ろの人の迷惑にならないように気を遣わないと(笑)。

見渡すと、観客には男女ともに結構若い人が目立ち、メモをとっているようなしぐさも見られました。
そういえば、大学生がゼミの研究の一環で観に来るケースも多いみたい。多分、そんな学生さん達だったのかも。

てか、あのオッチャン、ひょっとしてどっかの大学の教授かなんかだったのか?

 

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