『ローグ・ワン/ スター・ウォーズ ストーリー』がいよいよ地上波ゴールデンタイムで放映

待ってたよ!この日をどんなに待ちわびたでしょう。ローグ・ワンの地上波放映。放送日は2月1日、21:00~ 日本テレビ系列「金曜ロードSHOW」にて。

2016年の封切り以来、それこそ何度も観ております。ベイダー卿の悪役としての本領、デススターの美しさと恐ろしさ。戦争に翻弄される苦しみや無益さ、怒涛のように繰り広げられるSWらしい宇宙戦、これらが色褪せることはありません。

ところで先日若い友人とこの映画の話になった際、彼女が「野晒しマスタースイッチとかアンテナのリセットに何故あそこまで行くのか等、色々しんどかった」と言ってるのを聞いて「だよなぁ」と。

これがスピンオフとしてEP4に続く話でなければ、ああいったビジュアルにはならなかったでしょうけど、直後が1977年公開作品だからねぇとしか言いようがない。

相変わらずヤヴィン4の司令部に並んだパネル(モニター)の青いラインが一体何を表すのか、当時もよく分からなかったけど今見てもまったく分からないことに私なぞ軽く感動を覚えたほどであります。

さて、金ローですが。
噂ではノーカット放送らしく、嬉しいことでございます。しかしさすがにエンドクレジットまで全部ってことではないんですよね?

まさか例の台詞でバッサリということもないでしょうから、直後のあのテーマをひとくだりは流してくれるのかなぁ。

このクレジット曲の後半、ウィルズの守護者→SW 希望のテーマ、で景気良くフィナーレかと思いきや、オーラスにジンのテーマのメロディがひそやかに流れてすべてが収斂される、あの流れがとにかく大好きなのです。
作曲は、マイケル・ジアッチーノ。SWの既成曲もうまく取り込みながらとても良いスコアでした。(サントラ発売日にすぐ手に入れましたが、チアルートファイトのナンバーが収録されてないのが残念)

ジンのテーマが続くことに初めて気がついたのは劇場での3回目ぐらいだったでしょうか。
最終日の最終回では、終了後に誰からともなく拍手が起こったことも懐かしい思い出です。

関連レビュー
ローグ・ワン スター・ウォ―ズ ストーリー(2016年・米)
ローグ・ワン スター・ウォ―ズ ストーリー(小ネタ) – ドニー・イェン甄子丹

おお、そういえば
ディエゴ・ルナが演じたキャシアン・アンドーを主役にテレビドラマが作られるようですね。すごいすごい。
ディズニーはいよいよ自社ストリーミングサービスを立ち上げるそうで、そこでのオリジナルドラマということだそうです。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』前日譚がドラマシリーズ化!ディズニーが発表
ディエゴ・ルナ主演のテレビドラマ版「ローグ・ワン」の製作総指揮が決定
ギャラとかスケジュールとか、色々ハードルは高いと思うんだけどさ。連続でなくてもいい2時間単発ドラマでいいのでベイズとチアルートでワンチャンないですかねぇ?ディズニーさん!どうかご検討くださいませ。

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イップ・マン外伝 マスターZ@HK(葉問外傳:張天志:2018年・香港、中国)

日本公開がこんなに早いなんて聞いてないよ!すでに香港に観に行っちゃったよう。
けど、こんな想定外なら大歓迎。はっきり申し上げて、ユエン・ウーピン先生の傑作がまたひとつ生まれました。ネタバレ全開です。

正月明けの香港でさっそく観て来ました。
もう、むっちゃくっちゃ面白かった。
溜めに溜めたところで、
木人キターーーーーーーーーーーー!
と快哉を叫びましたよ。そのカタルシスはヒーロー映画と呼ぶにふさわしい。

なによりアクションがね、すんごく袁家班。

動作中キメショットのタイミングと角度、文字通り空中戦であるワイヤーワークの華麗さ、刀が頭スレスレを掠め髪がはらりと切れる懐かしのシークエンス。粉々になるテーブル、派手に割れ飛び散るガラス、攻撃のすごさを表現するためなら何だってそこにあるものを壊しまくる。それが袁家班。

おまけに、ある種永遠の課題「功夫は銃に勝つことができるか」にもひとつの理想が示されていて痛快。

そしてそして、大昔に鮮烈なシーンとして焼きついてるウーピンさんの父・袁小田(ユエン・シャオティエン)と成龍との箸を使ったおかずをめぐる食事シーンのやり取り。
『グランド・マスター』では餅合戦を哲学として昇華させて見せ、今度はウィスキーの注がれたグラスで展開する外連味。
しかもそれがマックス・チャンとミシェール・ヨー姐さんときた。おしっこチビりそう。アクション監督は袁家の三男・袁信義(ユエン・シュンイー)。

そんな複雑なアクションにくらべてドラマになると途端にシンプルな構図なることもふくめ、かつて「アクションでは数限りなくテイクを重ね、ドラマでは2回以上撮らない」と言われた監督、ユエン・ウーピン。さすがです。

Crouching Tiger Hidden Dragon: ソード・オブ・デスティニー』では、正直あのウーピン先生を以ってしても少々枯れた印象を受けてしまったのですが、あれはプロデューサー主義のアメリカ製作と肌が合わなかっただけなんですね。いやいやどうして、まだまだご健在です。今後の監督作にも大いに期待しますよ。

主演のマックス・チャンはすでに『グランド・マスター』で香港電影金像奨・助演男優賞を受賞しておりますが、この張天志は現時点で最大の当たり役にして代表作。

彼については『イップ・マン 継承』のパンフレットに評論家の江戸木純さんがこう書いておられます。

「この映画は、イップ・マン映画の第三作であると同時に、マックス・チャンという逸材が主演スターとなるための卒業試験だったといっても過言ではない。そして誰の目にも明らかなように、彼はその試験に見事期待を超える点数で合格した。」

もうね、この一文に尽きます。

まさにその卒業証書を同じ役でこういう形にしてくれた製作の天馬電影のレイモンド・ウォンにはお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

今作は、継承の後にたくさんの人がもっとこんな天志が見たいと思った姿やシーンが、まるでラーメン次郎のトッピングのごとく、天高くテンコ盛りだ!

あれから武館をたたみ武術を捨て、細々と雑貨店を営む天志。かつては「師父」「徒弟」と互いを呼んだ親子も、今では「爸爸(パパ)」「老板(社長という意。店の切り盛りを息子フォンが手伝ってるから)」と声を掛け合う。
けれど、口に出さなくても息子はパパが師父だったことは決して忘れないし、パパにとっても心のどこかでは息子のヒーローでいたいのです。そして約束を守れなければヒーローでいる資格はない。

そんな願いとは裏腹に、悲しいかな父は相変わらず社会や権力から虐げられる市井のひとり。
しかし、そこは黙ったままおとなしく耐える男じゃないぜ張天志。やられたらやり返す、オレのやり方で!とばかりに詠春拳を封印したまま、敵をなぎ倒し蹴り飛ばす。
詠春じゃないもんね、派手な回し蹴りもガンガン決めまっせ。本シリーズと区別化するため、なによりマックスの個性的なアクションを際立たせようと、この封印のアイディアは非常に有効でした。

ところでこの映画をご覧になって「ここまで英国人警察官を悪者にしなくても・・・」という人もいそうな気がしますが、当然誇張はあるにせよ、一時の香港はこういう社会だったんですよ。

当時についての文献や小説などを読むと統治したイギリスの階級制度や人種差別がどんなものか、香港での弾圧と圧倒的な不平等がいかほどであったか一端を理解できるかもしれません。
アヘンについてもかつて民国時代は合法だったし、香港は密輸の拠点であったために撲滅するのに本当に長い長い時間がかかりました。今作に限らず、この時代を背景にアクション映画を撮れば取り上げる機会の多くなる要素なのです。

監督のユエン・ウーピンは、日本の敗戦によりイギリスが再び香港を植民地にした1945年生まれ。彼自身この時代を知る1人でもあることをどうかお忘れなく。

さて、今作は脇を固める俳優陣もすこぶる魅力的。

まず、デイヴ・バウティスタ。
強い、すごい、演技もうまい。このキャラがまた一ひねりあったのがよかった。彼がある人物を軽々と持ち上げた時、え、まさかパイルドライバーすんの?と全身が粟立つほどゾッとしたのも彼の演技力の賜物(最終的にはしなかったけど、90年代の袁家班ならさせたかも)。
とにかく、ラスト天志が挑むもまったく歯が立たないの。実力差体格差、絶望しか浮かばない説得力がありまくり。天晴れでした。

天志を助け仲間になる虎哥を演じた釋彥能(シー・イェンノン。早い話がシン・ユー。やっと名前が落ち着いたようです)もええ役でした。なかなかよろしい面構えになってきはりましたな。
屋上でのシーンは割りとシリアス展開のなか楽しいシークエンスでお客さんにも受けてました。アクションの見せ場もバッチリ。天志とともに敵地に乗り込むとこなんか痺れちゃう。水を得た魚のように動きもとてもよく、さすが元リアル少林寺。僧侶であった時に少林寺ツアーに選抜され代表として世界中を回った男だけある。
これを機に、映画人はもっと丁寧に彼を使ってほしい。そして劇中もうちょっとでいいから幸せにしてやってくれ。

とはいえ、この葉問外傳:張天志でケタ違いの存在感を示したのはやはりこの人、楊紫瓊(ミシェール・ヨー)。

またこんな最高なミシェール姐さんを見ることができて本当に本当に幸せです。出てくれてありがとう。彼女は世界でもそう例のないアクションせずとも主役を張れるアクション俳優(逆の人は多いんだけどね)。
ドラマでも見せ場がありましたが、その芝居が特によくてね。彼女の演技力の確かさを見せ付けてくれました。

イップ・マン 継承でウーピン先生とマックスの相性がいいのは皆さんご承知のとおりですが、あらためてミシェールのアクションには彼女とウーピンとが築き上げてきた歴史というべきものがぎっしりと詰まっており、素晴らし過ぎて言葉もありません。

ところで、ミシェールさんの弟役の鄭嘉穎(ケビン・チェン)。
彼は実はテレビドラマ版『イップ・マン』(日本でもソフトが出てるよ)で主役の葉問を演じた人なんです。今回見事に悪役を憎々しげに演じておりました。ドラマを観ればわかるけど、今作とは別人ですから。このあたりの配役も絶妙。
ミシェールとケビン、2人を交互に眺めるとなるほど似てる気がするのも面白かった。

さて、ラストファイトではバウティスタにまったく歯が立たない天志が、いよいよ詠春の封印を解くのだけれど、一度捨てた男が再びその手に大事なものを取り戻す、そのカッコよさたるや。この瞬間のためにこの映画はあるんですよね?ね?ね?

人生で、内股の男にここまで惚れ惚れすることがあったでしょうか。いや、私はなかったよ。しかも覚醒のバックにかかるのは、あの曲!(今作のスコアは戴偉)憎い演出だ。

とにかく袁家班にとっても近年のベストワーク。彼らのノビノビさが伝わってきて、こちらも超ハッピーでございます。ウーピン先生、マックス・チャンという逸材をここまで活かしてくれて本当にありがとう。

『イップ・マン外伝 マスターZ』(で決定なのかな邦題)はおそらく春ごろに日本公開では?という巷の噂。正式に公開発表になるのが楽しみです。

最後に、香港映画はトニー・ジャーをゲスト俳優として消費するのをとっとと止めて、もう一度きちんと主演作を撮ってください。(これは周秀娜に関しても同じことを言いたい。『29歳問題』で主演した香港女優をもっと大切に!)

そしてユエン・ウーピン監督ミシェール姐さん主演の1994年作『詠春拳』をデジタルリマスターして早いとこ再販しやがれ。脂の乗り切った2人が組んだこの大傑作をぜひ多くの人に見てもらいたいです。

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逆流大叔(原題:2018年、香港)

ネタバレなし。2018年夏に香港で観た作品で一番気に入ったのがこれ。なかなか地元産の映画に足を運ばない香港人も大いに気に入ったみたいで、ロングランヒットになりました。このために恐らく増量したであろう、呉鎮宇(ン・ジャンユー)がとにかく良かった。

香港での正式公開は8月2日。私が香港に行ったのが28日。なのに普通にガンガン上映されており、お客さんも多かった。その後9月の終わりになってもまだ劇場にかかっていたので、2ヶ月以上はロングランしていたのではないでしょうか。

舞台、内容、規模ともに香港ドローカルものでしたが、ロングランヒットという事実に、この作品がいかに愛されたかが分かるというもの。

ストーリーはいたってシンプル。
仕事も人間関係もパッとせず、特に夢も目標も持たない中年男の阿龍(ン・ジャンユー)が、成り行きからドラゴンボートのチームに加入。そこでレースの優勝を目指すというスポ根中年版という趣。

ジャンユーだけでなく、登場するキャラクターがどれも個性が際立っていて共感を呼ぶ。人情味も展開にも捻りが効いていて、観た後笑顔になれる。

もうね、とっても好きだった!

スクリーンいっぱいから、一丸となって楽しんで作っているのが伝わり、こればっかりは港中合作の大作には絶対に出せない味わい。冴えない中年男どもが主人公ですもん、観客はさすがに大人が多く劇場では笑い声が絶えませんでした。

監督は、多くの脚本を手がけ、小説家でもあり、また香港演藝學院電影電視學院で講師もつとめる陳詠燊(サニー・チャン)。今後の作品も楽しみです。

大げさになりすぎない笑いどころや間合い、そしてニヤリとする台詞など、本当に愛おしく面白かった。まぁ、なんせチーム名が「英雄本色」だし(笑)。
そう、観客はみーんなジャンユーの阿龍を応援したんだよね。青春スポ根ならば違ったカタルシスを望んだかもしれませんが、そこは大人特有のビターさも混じってる。

「それでもみんな明日を生きてゆくんだ」という清々しい感想を抱かせてくれる秀作。
日本でも是非どこか買い付けてほしいです。

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L風暴(原題:2018年、香港)

ネタバレなし。今年の夏、ドニーさんの『大師兄』のために香港に行った際この映画を観ました。遅ればせながらのレビュー。

いまや出演作が目白押しで、一体いつ休んでいるのだ?と訊いてみたくなる古天楽(ルイス・クー)主演。

実はこの映画、香港の廉政公署(ICAC)の主席調査主任・陸志廉(英語役名William ルイス・クー)を主役にした『Z風暴(原題・2014年)』『S風暴(原題・2016年)』に次ぐ3作目というシリーズもの。

香港の映画やドラマをよくご覧になる方ならばお馴染み、廉政公署(れんせいこうしょ、Independent Commission Against Corruption,略して ICAC )。
英国人幹部も含めた香港警察のあまりの汚職の酷さにブチ切れた当時の宗主国イギリスが1974年に創立した警察に対する独立汚職調査機関であります。

つまりは香港警察を舞台にした汚職と金をめぐるパワーゲームがベース。

そこに、警察と税関が組織する香港政府のマネーロンダリング対策チーム、聯合財富情報組(JFIU)の張智霖(チョン・チーラム)がバディとして加わり、騙し騙されの頭脳戦が繰り広げられ、最後は派手にドンパチやる、というノリ。

今夏公開していた香港産映画の中で成績がよく、夜の上映回はお客さんがたくさん。一体どんなマーケティングで成功したのか、なかでも中高生といった年代の男子グループが多くてそんな彼らに囲まれての鑑賞となりました。

ところで、
ルイス・クーという人はかなり懐の深い俳優だと思う。
なにしろ香港映画を支えるそうそうたる監督からのオファーが絶えない。

コメディよし人情ものあり、情けないダメ男からチンピラ、表情を一切変えない黒社会の構成員やファンドマネージャー、鬼畜系のヴィランまで、演じる役の幅の広さはかなりのもの。

かといって、肉体改造や体重を増減するというアプローチはせず、特殊メイクもしないし、古装じゃなきゃ前髪を下ろすか上げるか以外ヘアスタイルさえ変える事は滅多にありません。画面に映るのは、どんな役でもいつもルイス・クーそのままの外見。形から役に入るということがないどころか拒絶してる感すらある。ここが一番ユニーク。

これは、ただの想像でしかありませんけど。
彼って、非常にニュートラルなプロ意識を持った人なのかなぁと。

どんな役も厭わず、自分の事よりまず作品全体を考える視野を持ち合わせ、そのうえあの謙虚な人柄ですもん、香港映画界で絶大なる信頼を寄せられているのかもしれません。

もううんと昔から「ルイクーはいつ影帝になるんだ?」と言われ続け、今年やっとやっとやーっと、第37回香港電影金像獎の主演男優賞を『SPL 狼たちの処刑台』で獲得。世界中の香港映画ファンが「おめでとう!」と祝福した瞬間でした。

さて、そんなルイス主演の『L風暴』です。

監督は1作目から続投の、林德祿(デイビッド・ラム)。彼は1980年代に廉政公署がプロモーションをかねて製作した廉政公署ドラマを長らく担当していたという経歴を持つ人で、いわば得意分野。

これがシリーズ3作目なんですけど、たしか1作目2作目ともに大ヒットしたというイメージもなく(日本では未公開)続編が作られたというのを不思議に思っていたぐらいなのに、こうして3作目にして香港のみならず大陸でもヒットさせたんですから想像以上にルイスやチョン・チーラム人気というのは根強いのかもしれません。すごいなぁ。

ここでのルイスは、シュッとした男前で冷静沈着キャラ、てか、題材がそれですからね。基本、スーツを着たかっこいい男女がわんさか。主演・ルイスのイメージとしては『ホワイト・バレッタ』からミステリアス濃度を薄めた感じ?
私個人的としては、もっとアクの強い役の方が好みなのですよね。

警察内部の汚職を調査する者と調査される者。
今作では罠に嵌められた主人公を今度は調査する側として、同じICACの「L班」主任役で鄭嘉穎(ケビン・チェン)が登場。はたして彼は敵か味方か。

このように立場の逆転やゲストキャラクターの見せ場をうまく演出できれば今後も主要俳優を入れ替えて続けられるよなぁと思っていたら、さっそく第4弾の『P風暴』が作られるかもと聞いて笑ってしまいました。さすが天馬電影のレイモンド・ウォン。

私は前2作を観ていないままの風暴シリーズ。
これは大陸との合作ではないので、予算的には少なかったかもしれません。アクション監督は袁家班の凌志華(リン・チーワー)。

銃撃戦などのアクションシーンが昔の刑事ドラマっぽい雰囲気もあり、どことなくノスタルジックな印象を持ちました。
が、一方で様々な経済用語や警察用語などの飛び交う台詞や人間関係が把握できずに面白さがよく分かっていなかったのでは?と残念です。

こういうのこそ、本当は日本語字幕がほしいよねぇ。

役者として多くの顔を持つルイス・クー。一糸乱れぬスーツ姿のシュッとしたヒーロー然としたルイスがお好きなら、絶対に見逃しちゃいかんシリーズです。

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狂獣 欲望の海域(狂獸:2017年、香港)

「お願いします(棒)」
「もっと心をこめて」
「・・・お願いします」
笑っちゃった。コントかよ。

なにかと色々格好いいとこ困ったとこが同居しておりましてね。一気に懐かしい気持ちになりました。フフフ、最終的には90年代の香港アクションムービーの味わい。

上映始まってすぐ日本語?と思ったら誰よりも早く登場した倉田保昭。渋い。
ほんと倉田さんは今、香港や中国大陸への出演がとても多い。長く中華圏で活躍されたキャリアが活き、再びこうして多くのオファーがくるということは一ファンとして大変うれしいことです。過去すでにノミネートはされておりますが、数年内には金像奨の助演男優賞を獲れそうなほどの雰囲気がすでに漂ってますよね。

さてさて、今一押しの武打星、張晉(マックス・チャン)の主演映画ですもの。
観ているこちらの期待もマックス(ああ、今まで何人のファンが同じことを書いたかしら)。

とにかく、さぁ、どんなアクションを見せてくれるんだ、めいっぱい痺れさせて欲しい!と祈るような気持ちでスクリーンを見つめる。

閉所でのアクションは少々照明が暗いものの、キメのポーズで赤や青のライトが差し色になってめっちゃクール。おおお、男前!とうっとりとしていると、警棒や懐中電灯を使い敵を薙ぎ倒してゆくのが素敵。アクション監督は李忠志(ニッキー・リー)。

今作を観ながら、あらためて感じました。
マックス・チャンは現在、華のある動きの出来る武打星の筆頭だ、と。
格闘シーンはもちろんですが、すれ違う車にギリギリ滑り込むとか。
身体能力の基準値が元からケタ違い!とばかりにガツンと見せつける動きが光る。さすがスタントマン出身。

これは明らかに、ドニーさんやウー・ジンくんとも違う個性です。もちろんマックスにはしっかりした武術の基礎があってのことなんですが、プラス、こういうアドバンテージがあるってすごく大切ではないでしょうか。

そして、この映画で相棒の刑事役を演じたのが『SPL 狼たちの処刑台』で一躍その名を日本に知らしめた吴樾(ウー・ユエ)。よろしいですねぇ。彼に関して正直に申し上げると、キャラクター的には処刑台のほうが断然好き。けれど動きとしては個人的にこちらのほうが好みだったかも。

これまでは大陸テレビドラマへの出演が多く、日本での知名度はなかったかもしれません。
が、なんといってもキャリアが長い。あの「陳真」を演じたことのある本格派武打星です。しかも演技が上手いときたら無敵。

ここ数年港中合作作品でよく見るなぁと思ったら、どうやら2014年に香港の事務所と契約を交わしたようで、今後ますます映画に出る機会は増えるはず。ファンの方は期待してください。

そして、この映画のサプライズはまだありました。

何も知らず、太保(タイポー)が出てきたのには腰抜かすかと思うほど驚いた。
彼は、成龍がゴールデンハーベストでガンガンヒット作を量産してた頃の成家班の中心メンバー。
「生きとったんか、ワレェ!」とスクリーンに向かって叫ぶところだったぜ。

この太保とその息子、そしてめっちゃ鬼畜なオーラ出しまくりの余文楽(ショーン・ユー)がよくってねぇ。ショーンはいつの間にあんなにムキムキになっておったのだ。
ビジュアルを初めて見たときから、これはイケるやんと感じておりましたが、動くとその200倍はよかった。

無表情で無慈悲に人を殺めるシークエンスなど、「コイツがラスボスなのね!」と、まさにマックス・チャンとウー・ユエにとって不足なし。

やがて相棒のウー・ユエが拉致され、人質を交換すべく駐車場で始まったアクションは、動きもさることながら「時間がない!」という緊張感が張り詰めていて見応えがありました。
本当、このあたりはマジ面白くて、これはひょっとしてすごい傑作を見ることになるのかもとワクワクしっ放しだったのですよね。

が、貴重な太保が死んでしまってから、なぜかガラリと変わってしまった映画のノリ。
破綻したキャラクターやストーリー程度で呆れていては香港映画などハナから観れないんで、そこは別に気にしない。

けれど、肝心のアクションがラストにむかうにつれ「あれれ?」となってしまったのが悔やまれました。

せっかくの最悪最凶鬼畜ショーン。
ラストファイトで死ぬほど格好良く、それこそスタントダブルを使いまくってでも派手なバトルシーンに仕上げてくれれば、台風船上水中も見なかったことにして盛り上がれたのではと、心から残念。

そう考えるとね、昔からよくある暴力刑事のテイストと後半失速するのまでふくめて、90年代の香港映画を思い起こさせ、懐かしい気持ちになってしまったのでした。

に、してもマックスは誰かに拒否られて悲しそうな顔をさせたら天下一品ですな。

すでに香港で公開されてる新作、イップ・マンのスピンオフ『葉問外傳:張天志』でもそんな表情がたくさん見られる予感がして楽しみ。

私は予告を数回再生したきりで我慢しておりますが、これ絶対に鉄板で面白いやつ。

袁和平(ユエン・ウーピン)先生は、間違いなく葉問シリーズからアクションの方向性を変えてくると思うんですよね。

功夫アクションに関しては何の問題もなく誤魔化しも必要ないマックス・チャンの一番の利点は、加えてワイヤーを使った動きが非常に上手いこと。それこそ、スタントマンとしての経験がものをいい、見事に彼の個性につながってる。

ウーピン先生との相性の良さはすでに『イップ・マン 継承』で確認済み。今、一番楽しみにしている作品だし、必ずヒットすると思う。

そういえば、ウー・ユエも来年公開予定の『葉問4』に出演するんですよね。
『SPL 狼たちの処刑台』でその個性を見極めたウィルソン・イップ監督だけに、ウー・ユエの参加にめちゃ期待しております。

さて、スピンオフのほかにはもう1本、フルーツ・チャン監督作『九龍不敗』も控えているマックス・チャン。こちらのアクション監督は董瑋(トン・ワイ)なので、まだまだ快進撃は続くはず!

狂獣 欲望の海域 : 作品情報 – 映画.com

狂獣 欲望の海域予告

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アイスマン 宇宙最速の戦士 日本公開(冰封侠 時空行者:2018年・香港、中国)ー ドニー・イェン 甄子丹

なんと、今年、香港、中国大陸やアジアで公開されたドニーさんの「アイスマン2」こと「冰封侠:時空行者」が来年2019年早々に日本で公開されることが発表されました。
邦題は 『アイスマン 宇宙最速の戦士』!

ついこの間香港で観てきたアイスマン2が、来年2019年1月に新宿武蔵野館、2月に大阪・シネマート心斎橋で上映されるというから驚きです。

うお~~~~、ドニーさん主演作としては恐らく『ドラゴン危機一発 ’97』以来の日本最速上映ではなかろうか、すごーーーー。

ツインさん、配給ありがとう。
そして新宿武蔵野館、シネマート心斎橋、さすがでございます、愛してる!

私が11月に香港まで観にいった時は、当然こんなに早く日本で公開されるなどと夢にも思わず、なんなら「ここを逃すとスクリーンで観るチャンスは巡って来ないかも」ぐらいの勢いだったのですが、こんな短時間で日本公開されるとは本当に嬉しい誤算。

どうやら日本ではアイスマンの続編というよりも、「ドニー・イェン VS 倉田保明 アクション界の二大スーパースター頂上決戦!」を売りにしたようで、いや、その方がよろしいかと、正直私も思(略)

今回はツイン恒例の中華まつり、タイトルもズバリ 【2019 中華最強映画まつり】 と題して上映されるうちの1本。

ほかには

ツイ・ハーク監督の判事ディーシリーズ第3弾
『王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン』

ソイ・チェン監督、西遊記シリーズ3作目、アーロン・クォックが孫悟空を演じる
『西遊記 女人国の戦い』

との同時期上映でござりまする。

おお、なにげにシリーズ映画そろい踏み。しかもすべて続編とはすぐには分からない日本語タイトルですぞ。まぁ、この3作品に関しては前作を知らなくても別に困らない作りにはなってるのか。

いやいやいや、アイスマンの1作目『アイスマン 超空の戦士』に関しては、あんなラストだったじゃないの??と訝しく思った方は、私の香港でのレビューをよかったらお読みください↓

冰封侠:時空行者(アイスマン2:香港・中国、2018年)@HK ー ドニー・イェン 甄子丹

こんなに早く日本公開されるとは思ってなかったので、なんというか結構動揺もあるっちゃあるんですが、どうかハードルは低めに(笑)。
ドニードニーランドのアトラクション映画を観に行くぐらいの優しいお気持ちでお出かけください。

ご覧になった皆様の、真顔いやもとい、笑顔を楽しみにしておりますよ!!!

【2019 中華最強映画まつり】は、2019年1月19日(土)より新宿武蔵野館。2月2日(土)よりシネマート心斎橋にて上映。公開したらなるべく早く劇場に足を運ばれることをお勧めいたします。

王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン
王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン : 作品情報 – 映画.com
「王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン」予告編

西遊記 女人国の戦い
西遊記 女人国の戦い : 作品情報 – 映画.com
『西遊記 女人国の戦い』予告編

2019年中華最強映画まつり/TWIN公式

アイスマン 宇宙最速の戦士
アイスマン 宇宙最速の戦士 : 作品情報 – 映画.com
↓まだ日本語字幕の予告ができてないようで。広東語版予告
《冰封俠時空行者》(Iceman The Time Traveler)

【バクサカ関連レビュー】
香港で観た『アイスマン 宇宙最速の戦士』
冰封侠:時空行者(アイスマン2:香港・中国、2018年)@HK

第一作目『アイスマン 超空の戦士』のレビュー
冰封俠 重生之門 ICEMAN 3D(2014年、香港・中国)@HK
€冰封俠 重生之門 ICEMAN 3D(2014年、香港・中国)その2

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修羅 黒衣の反逆( 繍春刀 修羅戦場:2017年・中国)

前作よりサスペンス度、アクションともにパワーアップ。『ブレイド・マスター』の続編のつもりでいたら、まさかの前日譚だった件。とにかく張震(チャン・チェン)がかっこよすぎる!

猫とたわむれるチャン・チェン。
前作に引き続き女には弱いチャン・チェン。
そんで女に刀を折られちゃうチャン・チェン。
髪振り乱し血塗れのチャン・チェン。

どの瞬間もお美しい。お腹一杯になりました、ありがとうございます。

とはいえ、主人公は錦衣衛ですもんね。所詮は皇帝の犬。どうしたって宮廷ドロドロの陰謀劇になりますわね。
毎度こういうの見るたびに私なんぞこの時代にこの立場なら、映画は10分ともたず、失脚するか殺されてるから。ほんとこんな時代に生きてなくてよかった。

今作ですが、一層良かったと感じたのがアクション。
アクション監督は桑林(リン・サン)が続投。彼はこれで2017年度台湾の金馬賞の最佳動作設計を受賞。

様々な武器あり、一対一、一対多勢あり、女剣士も登場とバリエーションも豊富。

なかでも赤い衣装をまとった鄭掌班の遣う「流星錘 (りゅうせいすい)」という、鎖の先に錘(おもり)のついた暗器との闘いがよかった。こういう多節鞭系の扱いを見るのホントときめいちゃう。
しかも、これ両端に錘のついたタイプの双流星で、一方には剣と小さな玉の二段構え。しかも玉には火を仕込んであって、顔の前で吹いて目とか潰しにくるんですよ。んもう、なんて素敵なの。

どう考えても、こんな扱いの難しい武器を考えるなんておかしいだろと思うんですけど、Wikipediaによると「明代には軍の装備として広まった」とあり、マジ中国人変態(褒めてる)。

この流星錘の遣い手を演じたのは、劉峰超(リュウ・フォンチャオ)という武術大会で何度も優勝経験のあるお人でして。成龍とサモ・ハンが中国の武術学校でスカウトし『拳師~The Next Dragon~』に抜擢したという逸材。そりゃ、そういう人でなきゃ扱えませんよね!足でさ、こうパシッと鎖を押さえて反動で繰り出す攻撃、めちゃくちゃカッコいい。

難点は、今回人間関係や役職が結構ややこしかったか。

最初の事件現場にいたすっごいヤな奴、凌雲鎧。彼は、北鎮撫司百戸で正六品の主人公沈煉より、役職が下の総旗(正七品)。なのにあんなに威張ってたのは魏忠賢の甥だったから。あからさまに、役職を狙って沈煉のアラを探してました。

一方で人数が多い分、曲者キャラもおります。

南鎮撫司百戸の裴綸は登場からいけ好かなさ満点だったけど、物語が進むうちに主人公と共闘するという美味しい役所。いい味出してました。コヤツどっかで見たなぁと考えてたら、そうだ東京・中国映画週間で観た『ルームシェア~時を超えて君と~』の雷佳音(レイ・ジャーイン)だ。あれすごく楽しい映画だったけど、あちらのほうが手放しで無邪気なキャラだったな。
この役はなんとなく、若いころの千秋実とか藤木悠が演じそうなクセのある感じで面白かった。

とはいえ、最終的にはすべてチャン・チェンのために。
まぁ、男前が過ぎるのでファンの方は必見でございます。

そして実は川井憲次祭りでもありました。もう冒頭一発で「あ、川井さんだ!」と思うくらい。すごく川井サウンドで、これがまた血塗れのチャン・チェンの悲劇的シーンに似合いすぎました。大好物。

『修羅:黒衣の反逆』予告

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シシリアン・ゴースト・ストーリー(Sicilian Ghost Story:2017年・伊、仏、瑞)

まず、この映画は実話をもとにしていると知ってからご覧になったほうがいいかと思います。とはいえ登場人物は少年以外架空のキャラクター。最後まで観て、監督2人がなぜこの事件をモチーフにこのようなファンタジーを編み出したのか、その思いに胸がかきむしられるような悲しみと、なぜか優しさも同時に胸に湧き上がってくる、不思議な感覚を抱きました。

舞台はイタリアのシチリア。この村は私の想像するシチリアからはるかに離れた静かすぎる沈黙の場所でした。

鍾乳洞のような地下水路が延々映し出される不穏な空気がスクリーンを支配するオープニング。
やがてその管を通って出た水を飲む少年。これが主人公のジュゼッペです。
そして彼のために書いた手紙を握り締めた少女が少年を追い森へと分け入ってゆく。
その少女ルナのすらりと伸びた脚が踏みしめる不安定なリズムが彼女の胸の鼓動とシンクロする見事な冒頭の描写。

13歳の少年と少女。
幼さの残る彼らの一途な想いと真っ直ぐな視線が、次の瞬間には引き裂かれてしまう衝撃の大きさに打ちのめされるのですが、映画はそこから彼らの愛情と魂の共鳴、唯一残された想像力が綾なす世界を幻想的に、時には現実に引き戻しながらも、まるで薄手のシフォンを折り重ねるように丁寧に積み上げてゆきました。

監督のファビオ・グラッサドニアとアントニオ・ピアッツァはともに、この事件の起きたシチリア、パレルモ出身。監督たちにとって事件は脳裏にこびりついて離れなかったと言います。過酷で無慈悲な現実がどれほどの苦痛をもたらしたか、2人がドキュメンタリーではなくあえてファンタジーという手法をとることには相当の覚悟がいったことと想像します。

劇中、忽然と姿を消した少年に対する大人たちの無関心や諦観は恐るべき事実。
そもそも、シチリアという土地は歴史的にもマフィアと密接な結びつきがあり、今なおマフィアに関することは誰もが固く口を閉ざし、でなければ生きて行けない暗黙の支配下にあるといいます。

そういえばゴッドファーザーで若きパチーノがシチリアで逃亡生活を送る場面がありました。どうしてシチリアだったのか、なぜ彼はそこでほとぼりを冷ますことができたのか考えれば合点がゆく。

映画は、世界中でたったひとり少年を片時も忘れず、平然と沈黙を守る大人たちに真っ直ぐな疑問を怒りをもって投げかける存在としてルナを創造しました。

「必ず彼を見つけ出す」狂気すら孕んだ彼女の想いと行動、ルナからの手紙だけを生きる希望として抱き続けたジュゼッペ。

2人の監督は、変えられない事実に抗い、同調する心と彼を決して諦めない少女を加えたことで冷酷な現実を突きつけられたジュゼッペにせめて映画の中だけでも彼を愛で満たしてあげたいと切に願ったのだと信じています。それを受けとった私は流れる涙を抑えることができませんでした。

『シシリアン・ゴースト・ストーリー』は壮大なレクイエムとして輝きを放ち、またひとつ映画の持つ可能性を示してくれたように思います。

12月22日、東京シネマカリテを皮切りに、全国順次公開。

公式サイト

予告

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悪女 AKUJO (악녀:2017年・韓国)

観た。アクションがすごいと聞いていたけど、メイキング、アクションシーン抜粋動画も一切見ずに臨んだ自分を褒めてあげたい。最高。

オープニング直後、雑居ビルの狭い廊下を歩く足音。
「なんだ。お前誰だ?」と声をかけた遠くの男へ放たれた銃弾。

なにがいいって、イントロも人間関係のヘッタクレもない。上映即、勝負のゴング。
スクリーンから一気に押し寄せるパッションと狂気。それだけで勝ったも同然。私にはお金を払う価値があります。

『殺人の告白』をヒットさせたチョン・ビョンギル監督は「スタントマン出身」とあちこちのプロフィールにあったけれど、監督のインタビューによると、アクションスクールで6ヶ月かけて履修したものの、スタントマンでもアクション俳優でもない、とのこと。

韓国発のスタイリッシュアクション映画「悪女/AKUJO」の監督を直撃インタビュー

にしても、その才能を買って好きな映画を撮りなさいと出資してもらえたという事情の羨ましさよ。そこで女性が主役のアクション映画を選んでくれて、ビョンギル監督、本当にありがとう。

一番アガったのは、冒頭の一人称から三人称に切り替えたポイント。お見事。
アクション監督クォン・ギドク、そして撮影監督はパク・ジョンフン。
『ハードコア』のレビューで、
「この映像はある意味早い者勝ちでそうそう何度も使える手じゃない、今後も、新たな技術やメディアの交わりにより新しい表現方法は増えるはず。それをワクワクしながら待ちたい」と書きましたが、このポイントとバイクシーンはまさに『ハードコア』から一歩進んだものとして受け取ることができ、めっぽう楽しかった!

あと、ラスト付近スクヒがボンネットに乗り、斧で体を支えながらバスを追いかけるシークエンスね、いや、笑った。オーラスもそのまま斧だし!

斧といえば、昔は香港映画の専売特許でしたが今では見なくなったし現代アクションともなればすっかりスタイリッシュになっちゃったので、韓国でこうして斧、ナタ、ハンマーが活躍しているのを見るのはとても喜ばしい。キム・オクビンのような美女が傷だらけで斧を振り回す、それがこれほど興奮するとは。ごぼう抜きで我が「斧バトルトップ3」に堂々ランクイン。愛してる!

せっかくこんな奇跡のような女性ハードアクション映画が出現したのだから、皆もっとはしゃいでるのかと思いきや、世間ではドラマ部分がダルイとかメロドラマなどという人もいるので驚いちゃった。

私にすればこれくらい、アクション映画に腐るほどある「謎の脱ぎ要員女優」や「主人公のモチベのためのレイプシーン」が突きつけるノイズの比じゃないっすよ!と正直思う。

ただ、ひとつだけ注文をつけるとすれば、今後も様々な国で女性を主人公にするサスペンス映画やアクション映画は製作されるのでしょうから、せめて脚本家に1人でいいから女性を加えて欲しいところ。足りないものは補ったほうがいいに決まってます。

これだけのことをやってのけたキム・オクビンはもちろん賞賛に値します。3ヶ月訓練したそうですが、それにしても彼女の身体能力とそのガッツにはいくら賛辞を送っても、まだ足りない。素晴らしい。

加えて「日本映画界にはアクション俳優がいないからダメ」説をまた覆してくれる証明になったのも痛快。アクションはね、人だけじゃない。時間と予算配分をどれだけかけるか製作トップの覚悟ですよ覚悟。

最後に。
一連のインタビューで一番驚いたのは、アクション撮影の裏話より何よりビョンギル監督が通ったというアクションスクールが合格さえすれば授業料は無料だということ。監督の通ったのは韓国の著名アクション監督チョン・ドゥホンが設立したソウルアクションスクール。

アクション映画に一番必要なスタントマンを養成することへの重要さが分かってる韓国映画界なら、この先もガンガン傑作を生み出すことでしょう。期待。

公式サイト

予告編

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アイ.トーニャ 史上最大のスキャンダル(I, Tonya:2017年、米)

亡くなった父に関するあるエピソードについて、以前家族と語り合う機会がありました。そのとき一番驚いたのは、私や他の家族の記憶がおのおの違っていたこと。

熟れた桃を強く握ると、その人の指の形に跡を残すのと同じ。私のと彼らの指の形は違うのです。そして誰も触らなかった桃には二度と戻らない。

『アイ, トーニャ』の最も優れた点は、無意識意図的に関わらず、記憶は人によって違うのだと念頭に置いたこと。

食い違う話もそのままにインタビュー形式のスタイルを挟んで、ドラマはリズミカルに当時のヒットソングを散りばめスタイリッシュに「羅生門」をキメる。

この映画の存在を知ったときは、20年以上前の事件をなぜ今さら?と正直思ったのだけれど、観れば「なぜ今だったのか」充分納得できました。ショーンの実家の壁に貼られたレーガンのポスターをトランプに換えれば見事に合点がゆく。まさに「今もここにある」状況と、ある意味普遍的な人間の剥き身の姿。

製作者は「ケリガン襲撃事件」の真相を明らかにする気はありません。

今作の凄さは、誰がどんな楽しみ方でもできるよう多角的に構成されていることに尽きます。

濃いキャラクターの登場人物、キャストの見事な演技、安全地帯から眺める貧困やクズの連鎖と人生の崩壊。しかもすべて実話に基づくという驚き。オシャレなBGMが常に流れる演出と小気味よい編集、そして、どうやって撮ったのかと思わせるスケート場面の大胆なカメラワーク。事件はおろか、トーニャ・ハーディングを知らなくても一気に観客を惹きつけるパワーと魅力に満ちていることに舌を巻きました。

そのうえで、対象となるトーニャとの距離感が絶妙。

母や夫からの暴力に晒され(あれほど自然で流れるように妻を殴る夫には驚きました。本当に一切の無駄を排した動きだった)、唯一のよりどころの「スケート」からも拒絶されるトーニャを見て同情しそうになる、と、すぐさま彼女が第四の壁を越え、もしくはインタビュー画面から観客に話しかける。

トーニャを魅力的に描きながらも、過剰に感情移入させないよう配慮された脚本には恐れ入ります。

昔からのフィギュアスケートファンである私は、当然この事件のことを知っています。どころかその後なにかで読んだのかどうか、彼女が同居していた腹違いの兄から性的虐待を受けていたことまで覚えていました。

伝記映画の宿命として、エピソードはかならず取捨選択されます。この作品はあのテンポとコメディタッチに舵をとるため、かなり絞り込んだからこそ、これほどの話題作ヒット作になりました。

様々な立場の人間が、どんな風に楽しもうと苦しんだとしてもいいという幅を大きく意識したことの成功。同じ日同じ劇場で観た映画なのに、それぞれ感じることはまるきり違う。

アメリカの闇だの、クズオンパレード最高!とはしゃいでもいい、生まれる環境が悪いとねぇと見下すのもあり、自分の子は愛情深く育てなければと自戒するもよし、多様な意見が出ることこそ製作側にとっては本望でしょう。

まるで私と家族、そしてトーニャと周りの人間の記憶が違うのとまったく一緒です。

そんな映画の演出の鮮やかさに感心しながら、私個人としてはとても手放しには笑えませんでした。

なぜなら、私も当時、トーニャとナンシー・ケリガンを消費した1人だからです。

トーニャは我々を見据えてこう言いました。

「わたしは再び虐げられた。今度は世間にね。アンタたちにね。アンタがわたしを苦しめてる」

ここが私には一番効いた。ぶっちゃけ「これはアメリカだけの暗部じゃねーんだよ、オメーんとこもおんなじだろーが、ファック野郎」というメッセージを受け取ったつもりです。

常にヒーローと悪役を求めるマスコミと大衆。
拡大する経済格差や他に対する人権意識のなさは現在の日本でも恐ろしいほど身近な問題です。

おまけに我が国では、審判に嫌われるどころじゃない、芸術点などと生易しいものではなく女性という一点だけで入試の点数を故意に下げられてるんでっせ!

彼女が本当はどんな人物なのか事件の真相はどこにあるのか、そんなの解き明かされなくてもいい。2018年に生きる我々にとってのトーニャ・ハーディングはある種のリアルなのだから。

それでもなお、ラストでパンチを食らってダウンする彼女と人生最高の瞬間だったトリプルアクセルを重ね、立ち上がらせたことは非常な爽快感をもたらしました。しかも重要な要素として、主人公は女性です。

これほどの映画はなかなかありません。傑作。

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