アイ.トーニャ 史上最大のスキャンダル(I, Tonya:2017年、米)

亡くなった父に関するあるエピソードについて、以前家族と語り合う機会がありました。そのとき一番驚いたのは、私や他の家族の記憶がおのおの違っていたこと。

熟れた桃を強く握ると、その人の指の形に跡を残すのと同じ。私のと彼らの指の形は違うのです。そして誰も触らなかった桃には二度と戻らない。

『アイ, トーニャ』の最も優れた点は、無意識意図的に関わらず、記憶は人によって違うのだと念頭に置いたこと。

食い違う話もそのままにインタビュー形式のスタイルを挟んで、ドラマはリズミカルに当時のヒットソングを散りばめスタイリッシュに「羅生門」をキメる。

この映画の存在を知ったときは、20年以上前の事件をなぜ今さら?と正直思ったのだけれど、観れば「なぜ今だったのか」充分納得できました。ショーンの実家の壁に貼られたレーガンのポスターをトランプに換えれば見事に合点がゆく。まさに「今もここにある」状況と、ある意味普遍的な人間の剥き身の姿。

製作者は「ケリガン襲撃事件」の真相を明らかにする気はありません。

今作の凄さは、誰がどんな楽しみ方でもできるよう多角的に構成されていることに尽きます。

濃いキャラクターの登場人物、キャストの見事な演技、安全地帯から眺める貧困やクズの連鎖と人生の崩壊。しかもすべて実話に基づくという驚き。オシャレなBGMが常に流れる演出と小気味よい編集、そして、どうやって撮ったのかと思わせるスケート場面の大胆なカメラワーク。事件はおろか、トーニャ・ハーディングを知らなくても一気に観客を惹きつけるパワーと魅力に満ちていることに舌を巻きました。

そのうえで、対象となるトーニャとの距離感が絶妙。

母や夫からの暴力に晒され(あれほど自然で流れるように妻を殴る夫には驚きました。本当に一切の無駄を排した動きだった)、唯一のよりどころの「スケート」からも拒絶されるトーニャを見て同情しそうになる、と、すぐさま彼女が第四の壁を越え、もしくはインタビュー画面から観客に話しかける。

トーニャを魅力的に描きながらも、過剰に感情移入させないよう配慮された脚本には恐れ入ります。

昔からのフィギュアスケートファンである私は、当然この事件のことを知っています。どころかその後なにかで読んだのかどうか、彼女が同居していた腹違いの兄から性的虐待を受けていたことまで覚えていました。

伝記映画の宿命として、エピソードはかならず取捨選択されます。この作品はあのテンポとコメディタッチに舵をとるため、かなり絞り込んだからこそ、これほどの話題作ヒット作になりました。

様々な立場の人間が、どんな風に楽しもうと苦しんだとしてもいいという幅を大きく意識したことの成功。同じ日同じ劇場で観た映画なのに、それぞれ感じることはまるきり違う。

アメリカの闇だの、クズオンパレード最高!とはしゃいでもいい、生まれる環境が悪いとねぇと見下すのもあり、自分の子は愛情深く育てなければと自戒するもよし、多様な意見が出ることこそ製作側にとっては本望でしょう。

まるで私と家族、そしてトーニャと周りの人間の記憶が違うのとまったく一緒です。

そんな映画の演出の鮮やかさに感心しながら、私個人としてはとても手放しには笑えませんでした。

なぜなら、私も当時、トーニャとナンシー・ケリガンを消費した1人だからです。

トーニャは我々を見据えてこう言いました。

「わたしは再び虐げられた。今度は世間にね。アンタたちにね。アンタがわたしを苦しめてる」

ここが私には一番効いた。ぶっちゃけ「これはアメリカだけの暗部じゃねーんだよ、オメーんとこもおんなじだろーが、ファック野郎」というメッセージを受け取ったつもりです。

常にヒーローと悪役を求めるマスコミと大衆。
拡大する経済格差や他に対する人権意識のなさは現在の日本でも恐ろしいほど身近な問題です。

おまけに我が国では、審判に嫌われるどころじゃない、芸術点などと生易しいものではなく女性という一点だけで入試の点数を故意に下げられてるんでっせ!

彼女が本当はどんな人物なのか事件の真相はどこにあるのか、そんなの解き明かされなくてもいい。2018年に生きる我々にとってのトーニャ・ハーディングはある種のリアルなのだから。

それでもなお、ラストでパンチを食らってダウンする彼女と人生最高の瞬間だったトリプルアクセルを重ね、立ち上がらせたことは非常な爽快感をもたらしました。しかも重要な要素として、主人公は女性です。

これほどの映画はなかなかありません。傑作。

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冰封侠:時空行者(アイスマン2:香港・中国、2018年)@HK ー ドニー・イェン 甄子丹

ネタバレなし。
断言します。これはドニードニーランドのアトラクション映画だ。
超豪華で、しかもアトラクション映画として異例の87分もある!

この映画をひとことで表現するならば、

「アイスマン2、ヤバイ。」

なにがヤバイって、ドニーさんが知らない(承服しない)間に、一切のプロモーションもせず製作側が無謀にも公開しちゃったというからヤバイ。

そのうえ大陸での公開後、突如彼等が不入りの責任を主演のドニーさんに擦りつける声明を出したんで、かなりヤバイ。

声明はその夜のうちに削除されましたが、一方的に誹謗してきた製作側に対して、ドニーさんは即座に反論し法的措置をとると発表。

その件については記事のリンクを貼っておきます。

Donnie Yen makes legal strike against makers of terrible Iceman film
《冰封俠》公司3點批甄子丹扮大牌 「宇宙最強」霸氣20點反擊

簡単に言わせていただければ
『特殊身分』の時に「アホクサ」と中傷を相手にせず黙って仕事をしてたらとんでもない目に遭ったので、こうして素早く反応して動くことはいいと思う。

基本中華圏のスターはみんな個人事業主。日本のように事務所の力関係とか広告代理店が牛耳るなどあり得ないので、非常にトラブルが多いのが特徴。

ぶっちゃけ素人衆が手を出すにはドニー・イェンは劇薬ってことです。

さて、
そのようないわく付きなら観る気にならん、とか、ドニーさんが認めてないものを観るってどうなの?と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、かつて李小龍の死後、どう転んでも駄作なんじゃと知りつつも『死亡の塔』のために劇場に足を運んだ人がどれほどいたとお思いでしょうか。ファンとはそういうものです。

「これは公開して一週間以内が勝負」という勘が働き、連続鑑賞ギリギリのタイミングで私は観ることが出来ました。

が、なによりヤバかったのはその内容。

まず

① 脚本がヤバイ

整合性やリアリティ、伏線回収など口に出すのもおこがましい(笑)。歴史おかしくね?とかSFとしてタイムパラドックスはどうなってんの?なーんてちらりとでも頭に浮かんだらその時点で負け。

主演をスケープゴートにしたプロデューサーのように、脚本の破綻を主演であるドニーさんの全責任と主張するならば、ハッキリ申し上げてそんな案を採用したほうが悪い。大人なんだから。

② これで完結するはずが、最後まで観てもワケのわからないヤバさ

「そんなこんなでオイラはタイムトラベラー」ってことでいいの?(これでも複数回鑑賞)
ひょっとしたら前作を知らないほうが混乱せずによろしいのかも、と思わせるほどにはヤバイ(笑)。

③ 絶対コレ、尺足りてないよね、と感じさせるのがヤバイ

劇中何度もインサートされる前作のダイジェストとナレーション処理が、ランタイム87分の苦心を物語る。撮影した素材をめいっぱい繋いだら、あ~ら不思議、

いつの間にかDY夢女子映画になったでござる。

ヤバイ。

④ 図らずもドニーアイドル映画として完成してしまったことがヤバイ

いまどきアイドル主演でも、ここまであからさまな映画は絶対に撮れない。普通プライドが許しません。

ドニー映画は常に、そこスレスレの部分がありますが、今回は過去作をはるかに凌駕。ドニーさんを狙ったショットのひとつひとつは大変に美しく、莫大な資本を投じたPVとして最高級。

そう、これはドニードニーランドのアトラクション映画。

正直ドニーさんは演技をしていないので(賀英どこいった?)、豪華ゲスト共演の「アトラクション映画」として極めてしまったのが本当にヤバイです。

⑤ 倉田保昭がヤバイ

倉田ファンも必見。倉田さんの近作(残念ながら『空手道』は未見)で比較すると、実質主役だった『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』の方が映画やキャラクターとしてずっとマトモなため見劣りするかもですが、重鎮っぽく登場しながらそのまま重鎮で終わる勿体無い使い方ではありません。

出演シーンも多くアクションもしっかりあります。ヤバイ映画なので色々ワケがわからん事にはなっておりますけど、後半、この倉田さんとの闘いで私はチャラにします。

⑥ 前作あれほど小学生向きだったのに、続編になるといきなり残酷シーンが多くてヤバイ

冒頭夢を語る錦衣衛修行中の少年達が大人になり、何故そんなことに???
そして村ひとつ全滅しちゃいますからね。
「ウンコ、おしっこ、おならブー」の小1マインドからいきなりR15(個人の感想)への振れ幅のデカさがヤバイ。

⑦ 音楽もヤバイ

サウンドトラックを担当したのは江暉というお人。別名・江輝。ドニー作品の常連でないので非常に新鮮。彼のスコアがすこぶる良く、ある意味何度もこの作品を救ってくれました。

名前に見覚えがないので大陸の人かと思っていたら、実は香港人。しかも最近までTVBや香港電視網絡の俳優だったというじゃありませんか。そこから作曲家に転身。今後が期待できると思うとヤバウレシイ。

⑧ ドニーさんはこの続編を未完だと考えていたはず、と思わせるのがヤバイ

本当は何があったのか、資金が尽きたのか(ギャラも未払いやんけ!と反論で怒ってはりましたな)プロデューサーとは前編のときからトラブルが発生していたのか。

少なくとも、彼らが仄めかすように王宝強(ワン・バオチャン)の出番をドニーさんが削るような意地悪をするならば、その後主演の1人として推薦し実現した『カンフー・ジャングル』は存在しません。

アチラはまるで鬱憤を晴らすかのような動作設計だったよ?

宝強に関しては本来あそこからもうひとつ展開があったんだろうなぁ。人気者ですからね、契約スケジュールが切れたらお終いだし、そういう交渉は主演俳優はやりませんから。

結論

初見から、字幕を読むというかストーリーを追うことすら早々に放棄させるヤバさに、結果、一切ダレることなく観ることが出来ました。

お美しいドニーさん。老若男女から分け隔てなくモテモテなドニーさん。しかもドニーさんだけでなくサイモン・ヤムもめっちゃ悪男前でかっこいい。

お、そういえば雪ちゃんこと林雪も一瞬出るし、宦官役で陳観泰(チェン・カンタイ)も化粧して登場。


そして安定の母親思いのドニーさん。

ヒュッと矢のように飛んで、階下に落ちる女子を抱きとめ羽のごとく着地。子供達との港式ジャンケン勝負ではハイタッチしたり、村人と輪になって踊るヤバイドニーさんを是非堪能していただきとうございます。

脱水機みたいな時空の金球もふくめ、ひとつひとつの場面もおもしろい。

後半の「時空の歪み」ともいうべきシーン、そこがとても綺麗でね。最近あまりお目にかからなくなった久しぶりのシークエンスもあり、めちゃヤバかったです。ラストバトルは映像もあわせて楽しんでください。

なにしろ、この私が連続鑑賞にもかかわらず、一瞬たりとも寝なかった。それって本当にヤバイんですって。

多くの人の心にある、ドニードニーランドで結構な人気になっても驚かないポテンシャルを秘めたアイドルぶりを誰かと語り合いたい。

つきましては、早くどこか買ってください!
なんだったらアイスマン2というタイトルにこだわらなくても全然困らないし(笑)。気が楽っちゃ楽よ。新規参入可!!

さて、今作がどれほど夢女子向けか、最もわかりやすいのがこちらの映像。
劇中でも流れておりました、汪苏泷の歌う《时空行者》MV
《时空行者》汪苏泷演唱主题曲

予告
Iceman: The Time Traveler 冰封侠:时空行者 – Official Trailer
《冰封俠時空行者》(Iceman The Time Traveler) 次回電影預告

昔のインタビューを使った無理やりメイキングもあった
冰封侠:时空行者 制作特辑 Iceman 2: The Time Traveler Making

第一作目のレビュー
冰封俠 重生之門 ICEMAN 3D(2014年、香港・中国)@HK
€冰封俠 重生之門 ICEMAN 3D(2014年、香港・中国)その2

考えたらこの作品、2013年に撮影してたんだよね。もう5年も前か。

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谷垣健治さん、台湾の第55回金馬獎で「最佳動作設計」を受賞!!

いやぁ、めでたい!!!!第55回っすよ、めっちゃ歴史ありますやん。そこで日本人初ですよ!本当におめでとうございます!

もうね、写真なんか思いっきりデッカく貼り付けまあああす!!

しかも、今回初ノミネートだったのに、実は『捉妖記2(モンスター・ハント2)』と姜文(チアン・ウェン)監督の『邪不壓正』との2本で同時にノミネート。
『捉妖記2』は単独ですが、受賞した『邪不壓正』は何鈞(ハー・ジュン)氏、谷垣さん、そして甄家班のメンバー・嚴華(イム・ワー)さん3人での共同受賞となりました。何気にここにイム・ワーさんがいるのもうれしい。

谷垣健治が台湾の金馬奨で最優秀アクション監督賞を受賞
金馬獎/《邪不壓正》奪動作設計獎 谷垣健治急掏小抄「雙聲道」致詞

いまさら私ごときが言うことではありませんけど、日本人として初めてこの賞を手にしたことがどれほど凄いことか。

何が凄いって、ノミネートしたメンバーを見て欲しい。

谷軒昭-《影》(コク・ヒンチウは、元袁家班でドニーさんと同期の大ベテラン)
谷垣健治-《捉妖記2》
袁信義-《葉問外傳:張天志》(ユエン・シュンイーは袁和平さんちの三男。超ベテラン)
何鈞、谷垣健治、嚴華-《邪不壓正》
羅禮賢、羅義民-《風中有朵雨做的雲》(ご存知、カーアクション監督のブルース・ロウと息子のノーマン・ロウ)

そうそうたる人たちじゃありませんか。運とかタイミングもあるかもだけど、谷軒昭は何回もノミネートされてるのに台湾のこの賞はまだ一度ももらってなかったりするんだよ?
これって、ひょっとしたら日本人がセリエA年間最優秀選手賞を獲ったぐらい凄いんじゃなかろうか。

持ち前の誠実さで、今までコツコツと努力されてきたことがまさに認められたんだと思うと、より一層胸にきますね。

当日は馬鹿みたいな量の写真や記事を送りつけてしまいましたが、よく考えるととうにご本人ご覧になっていたのでは?と冷静になると思いました(汗)。いてもたってもいられなかったのでございます。すみません。

今後ますます世界に活躍の場を広げられることと存じます。どうかご自愛くださり、目の覚めるような「谷垣アクション」を私たちに見せてください!楽しみにしています!

本当におめでとうございました!!!

早く観たいよ『邪不壓正』、姜文だし、どっか買ってくださーい!米アカデミー賞・外国語映画賞、中国代表作だよーん。

《邪不壓正》香港版正式預告-9月6日上映
この香港予告死ぬほど好きなんだけど。曲が「朝日のあたる家」でっせ、おくさん!
エディポンの李小龍ばりの手くいっくいっが気になる!

最後に、アクション撮影中チアン先生は、ワイヤーワークでスタントマンに混じってワイヤーを引っ張っていたそうです。

「ええっ、あの姜文がワイヤーを!?」と驚いていたら、

谷垣さんいわく「いや、すぐに飽きてましたけど(笑)」だって。

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大師兄(原題・香港、中国・2018年)@HK - 想像通り、全世界がドニー先生を愛してるという映画(ネタバレなし)

ドニー先生の授業を香港で受けてきましたよ!
熱血ドニー先生参上!でも金髪ヤンキーをシバいたりはしないよ。先生が懲らしめるのは悪い大人だけ。その拳を振るうのは生徒を守るときだけ!

最近の傾向として、かつて大陸でヒトヤマ当てた香港映画人の香港回帰の動きが目に見えるようになりました。港中合作でなくとも、もうずいぶん前から大陸は単独でメガヒットを生産するようになり、おそらく昔とは立場がすっかり逆転してしまった事が背景にあるのではと思います。
そこで、香港のかつてのヒットメーカー達は生き残りをかけ、さまざまな模索をしているのでしょう。

過去大陸と色々あったドニーさんもひょっとしたらその一人で、前作『追龍(原題)』に続き、今作でもドメスティックに香港しかも学校というミニマムな舞台を選びました。

プロモーションの席で何度も、「長年(年数はちょっとフカしてるとは思う 笑)撮りたかった教育問題をテーマにした意欲作である」と語っていたこともあって、とても楽しみにしておりました。

さて、
その『大師兄』ですが、

ドニーさんを先生にする。

こんな簡単なことをなぜ今まで誰も思いつかなかったんだよ!!と声を大にして言いたい。

初出勤のシーン。
教室デビューは学園ムービーにおいて重要な最初の見せ場。

ドアを開け「おはよう」と声をかけても誰一人振り向きもしない、お約束ですわね。
そこでドニー先生がとった行動とは?

Everybody,Welcome my class !!

これがもう満点も満点、このシークエンスがね~軽く3400億点は突破する勢いでいいんですよ~。予想通りですが、全世界から愛されるドニー先生でございます。まんまと私も「ドニー先生の生徒にしてください!」と心の中で叫んでしまいました。

香港では、6年間の初等教育に初級中学(3年間)プラス高級中学(3年間)が続きます。義務教育はこの高級中学まで。ドニー先生が担当したクラスが「6-B」だったのは、この中学6年B組、つまり日本でいうところの高校3年生のクラスBというワケ。今回の役名は陳俠。台詞で生徒たちからは「陳Sir」と呼ばれております(中文字幕では「陳老師」英文では「Mr.Chen」)。

香港の高校生活のことなど何ひとつ知らなかったので、毎日昼食代に100ドル(日本円だと現在およそ1400円)もらうとか、どうやら学校には学食がなく生徒は近所の食堂にお昼を食べに出ることとか、そのあたりも新鮮。

一方で、生徒たちが抱える問題は国や人種を超え共感しうるものでした。

貧困に苦しみあと一歩で道を踏み外しそうな男子生徒。ネグレストでアルコール依存症の父親と同居する双子、発達障害を持つ弟と優等生の兄。家父長制度のもと女として産まれた理不尽さに反発する少女。そして香港で生まれ育ったのにパキスタン・ハイチからの移民二世というマイノリティとして生きるつらさ。

この中心となる5人の生徒たちが、どの子もイキイキとしてとてもよかった。オーディションを勝ち抜いた彼らはほとんどが映画初出演。そのフレッシュさが映画を後押ししていたと思います。

そして大人のキャストには、校長が林嘉華(ドミニク・ラム)、同僚の女性教師役に陳喬恩(ジョー・チェン)。

まぁ、ドニーさんのことだからロマンスには発展しませんが、ワンカット「わ・か・る~~~~!!」と叫びたくなる彼女の超絶可愛いシーンがあるのでお楽しみに。
加えて双子の父、駱應鈞(フェリックス・ローク)が非常に良かった。あの見せ場はズルイ。反則(涙)。

Knowlege is Power !!

「教科書など重要ではないのだ、諸君。学校で学ぶべき本当に必要なものとはこれだ!」
とばかりに知的好奇心を刺激する、それでいてスマートかつ落ち着いた陳Sirの語り口。

が、結局は力で色々解決しちゃうドニー先生。そうこなくっちゃ。

アクション監督は、谷垣健治さん。久々のMMA路線、大好物です。

大量に並ぶ安定度のすこぶる悪いロッカーと木製のハンガーラックが、いかにもアクションのためにある!という匂いがして、それだけで「フフフ」と笑みがこぼれてしまう。
お相手は、MMAファイターのジェス・リアウディン。決着も渋い。

そして悪役として忘れちゃならないのが、甄家班の喻亢(ユー・カン)。
今作を観て、ユー・カンはええ具合に怪優になりつつあると実感しました。

劇中、とあるシーンで○○したらとんでもないことになるんですが、キャラのハイテンションもあいまって香港の劇場では必ず笑いが起きていました。
谷垣さんに伺ったところ、あれはスタントマンでなく本人で、しかもまったくのアクシデントだったそうです。想像するに、おそらくメッチャ痛かったはずのユー・カン本人以外は全員「おいしい!」と思ったに違いない。

ラストバトルは、そのユー・カンとの教室ファイト。
ロッカールームはスタジオでしたが、教室のシーンはすべてロケセットだったそうで、狭い制約のある教室であれだけの動きを撮影したとか、信じられない!

当然、見知った椅子と机が並ぶなか闘うわけですが、ヘコむほど派手にぶつかった経験のないロッカーよりも、手触りや硬さの実感を持つ教室の机の方がなぜか痛さを想像してしまうんだな。

すると谷垣さんが、スタントマンが書いたと思われる道具スタッフへの「教室ファイトの机椅子ダミーの発注書」なるものを見せてくれました。

・ 壊しダミー × 15       
  人物が当たって壊す用

・ 軽いダミー × 6        
  振り回す用、強度も少しある軽いダミー

・ 投げダミー × 6
  投げて当てられるもの
  
・ 立ち回りダミー × 2(机のみ) 
  持った状態で攻撃に使う用。当たる部分に養生

・ 天板割れダミー × 3
  ぶつけて天板が割れる仕様。基本は立ち回り用ダミーの仕様で天板だけ割れる素材

と、各々手書きのイラストが入り細かくパーツ素材の指示。加えてアクションのアイディア出しでスタントマンが動いた映像の静止画が何枚もイメージとして添えられていました。

(実物。掲載許可をいただきました。何枚もあってもっと細かい指示を書いたイラストもあった)↓

そういえば、ドニーさんがこの大師兄そして谷垣さんについて語ったインタビューがあります。

谷垣さんの準備や仕事に対する倫理観がいかに多くのものをもたらすか。またそこに自分が加わることで新しい演出が生まれること。
「我々は互いの能力を補い合うことができる」とコメントしていました。

ドニーさんが自分には足りないと感じ、だからこそ信頼する段取りがどういうものか、谷垣チームの発注書がその一端を物語っているのです。

映画におけるアクションを面白くリアルにするのは、決して俳優の技量や振り付け、その場のノリだけに頼るのではない。こういった用意周到な準備が、閃きに満ちた動きを支えているのですね。

8.24【大師兄】正式預告
8.24【大師兄】終極預告

そして、前作の『追龍』での選曲の評判がよかったのか、今度も既成曲が2曲使われています。これがまたベタだけどいいんすよ(涙)

《大師兄》James Blunt – Tears and Rain MV
ルーカス・グラハム 『セブン・イヤーズ -僕はまだ7歳だった-』 / Lukas Graham – 7 Years
2曲とも大好き。特に歌詞がとてもいい。映画をご覧になる前に歌詞をじっくり読んでいただけたら、一層ジーンとくると思います。

劇伴は、戴偉。最近だと狂舞派の主題曲とか無雙こと『プロジェクト・グーテンベルク』など。

そして、これは劇中では使われませんでしたが、生徒たちが歌うMV。これも大好き。みんなめっちゃ可愛いです。なぜか全員に美味しいものを食べさせたくなる(笑)
《大師兄》學生歌MV

ところで、先日、谷垣健治さんが台湾の映画賞である金馬獎で最佳動作設計(最優秀アクション監督賞)を受賞されました!日本人としてもちろん初めての快挙です。
次で書きましたので、よかったらご覧ください。
谷垣健治さん、台湾の第55回金馬獎で「最佳動作設計」を受賞!!

 

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ジェット・リーとジャック・マー製作、謎の映画『功守道』その続報

前回の記事の続きです。今日、アリババのショッピングサイト「天猫」の11月11日独身の日プロモーション発表会が行われ、そこにシークレットゲストととしてりんちぇが登場。謎の映画『功守道』について語りました。そこで新たにわかったことを。

実はこれ、さっき以前の記事に追記したんですが(未だにブログのやり方がよくわかってない)、ひょっとしたら単独でアップした方がいいのかなと思い、新たに投稿しました。すでに前回の追記を読まれていたら内容はほぼ同じです。何年たっても不慣れな事であいすみません。

さて、その記者発表でわかったことですが

・11月10日の独身の日前夜祭パーティ(注:おそらく生中継されるし毎年高視聴率)でおよそ7分(8分とした報道もあった)のダイジェスト版を放送。翌日11月11日に20分ほどのフルバージョンを公開。前にオフィシャルサイトでYOUKU(优酷)で、とあったので多分そこでになるのでしょう。
追記:後のインフォメーションによると、11月12日の午前0時。YOUKUにて。

・功守道とは、太極を基にしたジャック・マーとりんちぇが推進している彼らの創作競技種目で、映画の内容もこの功守道について。

・映画を製作したのは多くの人に太極文化を知ってもらう最良の手段だと考えたため。その完成発表の場に前夜祭を選んだのは「私が実演と講演をしてもせいぜい数万人だけど、映画なら数億人が観てくれるから」

・作中りんちぇは、高僧の役。この映画を自身の師父である呉彬師と全ての先人に捧げると話しています。ほかの俳優の役どころについては明かされませんでした。

・11月15日にこの「功守道」競技を世界に向けお披露目する。そしてりんちぇはその創始者となります。

・りんちぇは、この功守道を専門リーグに発展させ、大衆スポーツとして普及させたいと考えていて、最終的には五輪競技の正式種目にしたいと望んでいるようです。

最後にりんちぇが微博に記したコメントをば。

“推出功守道,就是向中国武术人致敬,向我的老师吴彬致敬,实现中国武术进入奥运一直是我的梦想,我会一直为此而努力。”

武術の五輪競技正式種目は、中国大陸の武術界にとっては悲願なんですなぁ。

参考記事
马云主演《功守道》再曝光:双11晚会将播放精华版
《功守道》首发亮相双11猫晚:李连杰向马云争取了三年
Jet Li Officially Introduced as the Founder of Gong Shou Dao (GSD)
↑ここでいう10年かかったっていうのは、映画ではなく「功守道」のことですね。

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アリババCEO、ジャック・マー製作主演の「功守道」が凄すぎる件

前々から、りんちぇ、ドニーさん、ウー・ジンくんが共演するの?と言われていた作品についての続報です。


左から
ジェット・リー、ナターシャ・リュー・ボルディッツォ、鄒市明(中国の有名ボクサー)、朝青龍、サモ・ハン、ドニーさん、ジャック・マー、ウー・ジン、ユエン・ウーピン、トニー・ジャー、チン・シウトン、ジャッキー・ヒョン

ドニーさんが先日の微博版AMAで「あとでりんちぇから発表があるよ」と答えておりましたが、りんちぇの発表の前にアリババのCEOジャック・マーからこんなポスターがアップされました。

ドニーさんの結婚記念日をジャック・マーも含めたたくさんの方にお祝いしてもらった動画がありましたが、この作品のために集まった人達なんだということは間違いなさそうです。

そう言えば朝青竜とも一緒にお写真撮ってましたねぇ。

さてこの作品ですが、どうやら主演はジャック・マー、その人のようです。もともと彼は太極拳を学んでいて、アリババ社では、社員の健康のために職場へ太極拳を導入するほどの熱の入れよう。2011年にはりんちぇとともに「太極禅国際文化発展有限公司」を設立しました。ふたりは太極拳を世界に発信する活動しており、りんちぇにとっては「壹基金(One Foundation)」と並んで大切にしているライフワーク。

ジェット・リー、世界中に太極拳を!発信拠点を設立=不眠やストレスに効果―浙江省

これがいわゆるフィクションとしての映画なのか、またノンフィクションとして広く中国武術を紹介するものなのかは分りませんが、この件に関するドニーさんの動向を思うと恐らく撮影は結婚記念日だったあの一日だけのようですしニュース記事だと全員ノーギャラ出演という事で、多分後者に近い短いものではないかと想像しておりました。

あるサイトによると、ジャック・マーは以前「時間をかけて歌を歌ったり俳優になったりという子供のころの夢を実現する」と語っていたということで、今回はその夢をひとつ叶えたという風に紹介してありました。と、するとやはり物語仕立てで、主演俳優ジャック・マーということなのでしょうか。

お披露目は、アリババ社が火をつけ、すっかり定着した独身の日(11月11日)に関連した時期と書いた記事もありました。

独身の日とは
「独身の日」を世界最大のショッピングイベントに育てたアリババの功績

と、ここまで書いた所で、りんちぇのサイトがもう少し詳しい事を発表。
Jet Li Produces a New Short Film, Gong Shou Dao (GSD) Starring Jack Ma and A-List Kung Fu Stars

りんちぇはエグゼクティブプロデューサー兼任。「我々は中国の優れた伝統文化を奨励し、太極、功夫、マーシャルアーツの先人たちに敬意を表します」とあります。この短編は11月のどこかでYouku(优酷)において公開されるそうで、そのプロモーションが11月11日独身の日アリババショッピングイベントと同時に行われるようです。

劇場公開する映画とは少し違ったようですけど、うわーーーー楽しみ。

にしても凄いメンバーだなぁ。さすがアリババとりんちぇ。やることが違うわ!むっちゃサプラーイズ!

※10月31日時点の追記です

今日、アリババのショッピングサイト「天猫」の11月11日独身の日プロモーション発表会が行われ、そこにシークレットゲストでりんちぇが登場。謎の映画『功守道』について語りました。

そこでわかったことは

・11月10日の独身の日前夜祭パーティ(注:おそらく生中継され毎年高視聴率)でおよそ7分(8分とした報道もあった)のダイジェスト版を放送。フルバージョンは20分ほどで11月11日にあらためて公開。
追記:後のインフォメーションによると、11月12日の午前0時、中国動画配信サイトYouku(优酷)にて。

・功守道とは、太極を基にしたジャック・マーとりんちぇが推進している彼らの創作競技種目で、映画の内容もこの功守道について。

・映画を製作したのは多くの人に太極文化を知ってもらう最良の手段だと考えたため。その発表の場に前夜祭を選んだのは「私が実演と講演をしてもせいぜい数万人だけど、映画なら数億人が観てくれるから」

・11月15日にこの「功守道」競技を世界に向けお披露目する。りんちぇは創始者になります。

・りんちぇは、この功守道を専門リーグに発展させ、大衆スポーツとして普及させたい。そして最終的には五輪競技の正式種目にしたいと望んでいるようです。

最後にりんちぇが微博に記したコメントをば。

“推出功守道,就是向中国武术人致敬,向我的老师吴彬致敬,实现中国武术进入奥运一直是我的梦想,我会一直为此而努力。”

武術の五輪競技正式種目は、中国大陸の武術界にとっては悲願なんですなぁ。

参考記事
马云主演《功守道》再曝光:双11晚会将播放精华版
《功守道》首发亮相双11猫晚:李连杰向马云争取了三年
Jet Li Officially Introduced as the Founder of Gong Shou Dao (GSD)

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戦狼 ウルフ・オブ・ウォー(战狼Ⅱ、中国・2017年)@HK

今年の夏。「世界歴代興収トップ100にランクイン 非ハリウッド映画で初」というニュースが世界を駆け巡りました。その映画こそウー・ジン(呉京)主演・監督の『戦狼2』

香港で観ました。日本でも大ヒットはニュースになってましたよね。その中でこの映画を中国版ランボーとか愛国映画とか紹介してあったけど、そのあたりの言葉はさほど意識しなくていいんじゃないかと思います。

私が観た劇場はサウンドシステムで、爆発音だの人が殴る音だのに反応して連動する座席だったんですが、一言でいうと上映中ずっと揺れてました(笑)。同じ劇場でたくさんのアクション映画を見てきたけど、ここまでずっと揺れてる映画は初めて。前作として『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊 vs PLA特殊部隊』(2015)という作品があり、一応続いてるという前提ですけど知らなくてもまったく問題はありません。

おもしろかった。めっちゃ、ほんと。

この作品のヒットに関してはこんなニュースが出たりして、作られた大ヒットという意見もあるんですね。
中国映画『戦狼2』、大ヒットは政府の「操作」のおかげ? 政治的な内容にも賛否
いや、当局の操作や、仮に軍の動員や興収水増しがあったとしても、実際にお客が足を運ばなければここまでの驚異的数字(累計56億7300万元・約962億円)には、ぜっっっったいなりません。間違いなく中国の観客は劇場でこれを楽しんで観たんです。だっておもしろいから。

正直言うと、あまりの突き抜けた馬鹿さ加減に私はずっと笑いが止まりませんでした。日本の映画館なら我慢したかもしれないけど、ここは香港。後ろの女子2人(多分大陸の子)もキャッキャいって笑ってたんで、私も気にせず大笑い。で、画面に突っ込みながら観ましたよ。塚口サンサンとかキネカ大森は今からマサラ上映や絶叫爆裂上映の予定を入れておいてください。絶対したほうがいい。

人民解放軍の元特殊部隊の男(ウー・ジン)が色々あって引退、アフリカのある街でバーかレストランを営業し現地の人と仲良くやってるところへ強大な軍事力を持ったテロリストがやってきて、内戦勃発、政府軍と大統領を瞬滅。そこから脱出しつつ途中で出会った疫病研究の女医を連れて辿りついたのは中国企業が経営する工場。はたして彼等は無事中国大使館だか領事館に辿りつけるのか?

みたいな話。

ストーリーじゃない、人間関係でもない。台詞なんて飾りです。愛国も笑いのネタでしかない。アクション、ただアクション。それもこちらの想像を軽く超えたアホな対決のオンパレードです。戦車でチェイス。戦車ですらカンフー対決。ジョン・ウイックはガンフーですが、これはタンクフー。そして戦車に煽られながら走って逃げるウー・ジン。ここで私は大笑い。

以下、語彙力がなくなったので箇条書きでガンガン進めます。

・ウー・ジンファンは、上映開始に絶対に遅れちゃダメ、遅れたら一生後悔する
・いきなり登場するや謎の動き。やだそれウエイブですか?
・そして海に入るとこからウー・ジンかっこよすぎ。ここで彼に恋をしない人はいない
・タイトル!
・涙を溜めて振り返ると涙が飛ぶ。少年漫画でしかなかった表現がCGで実写に
・サッカーするウー・ジン
・子供達と戯れるウー・ジン
・ゴールを決め水着姿の女子たちにポーズを決めるウー・ジン
・爆発
・ランチャーをわずか金網で防ぐウー・ジン
・キルカウントは相当多い
・エキストラ大変
・爆発
・様々な武器を駆使するウー・ジン
・しかも超人的スキルと運の良さ
・爆発
・ライオン
・女に中指を立てられるウー・ジン
・アフリカと我々は友人
・不死身だウー・ジン
・爆発
・ドリフコントみたいに崩れる壁
・と、迫力ある見事なアクションとの落差の味わい
・男たちの友情、でも画面はひたすらウー・ジン
・爆発
・土豪の息子も成長
・中国軍が彼等を助けるかどうか逡巡。そんなことはいいからさっさとウー・ジンを映せ
・爆発
・戦車から何故かしかも微妙な位置で顔を出したまま、走行するウー・ジン
・しかもそれがめちゃヘタなCGで、生首にしか見えないウー・ジン
・爆発
・爆発
・倒壊するビルを抜け、戦車に煽られながら走るウー・ジン
・爆発
・爆発
・爆発
・突然のアメイジンググレイス
・銃を撃つのではなく銃を投げつけるウー・ジン
・結局最後は拳で勝負
・トニー・ジャーばりに前転からの2キックをご披露するウー・ジン
・中国国旗を翻すも、その旗の立て方(笑)
・パート3もやるよ!のエンディング
・これはランボーじゃない、今後はミッションインポッシブルシリーズを狙ってるのね!のウー・ジン


↑いい顔つきだ、ウー・ジン

確かに人によっては愛国映画として興奮した観客もいるでしょうけど、ほとんどは真面目にウー・ジンがやればやるほど笑えたんだと思います。アクションも無茶ブリオンパレードですが、彼の映画に賭ける真摯さにホント心から楽しめました。アクション監督は『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』のサム・ハーグレーヴと、そのスタッフを招聘。中華圏側のアクション監督としてジャック・ウォン(黃偉亮)とのダブル体制。いや、グッジョブ!!!

が、これを米アカデミー賞の外国語映画賞中国代表に選んだ中国広電総局には相当無理があるだろと突っ込んでおきたい。

もし、スクリーンが小さく音も悪いところだけど近くの映画館と、少々遠いけど大きめで音もいい映画館での上映の二択あるなら迷わず遠くても大きなスクリーンで観ることを推奨します。これこそ本当はTOHOシネマズとかでやるべきなんだよ。4DXとかで上映してごらんなさいよ、酔う人続出だから。

東京では今後公開があっても小さいところでしかないかもしれないので、ウー・ジンファンは最初で最後のチャンスになるかもしれない「2017東京・中国映画週間」での上映を見逃してはいけません。

10月21日 (土) 開場 19:45 上映スタート 19:55 上映時間 123分
会場 TOHOシネマズ シャンテ スクリーン1

10月26日 (木) 開場 13:30 上映スタート 15:30 上映時間 123分
会場 TOHOシネマズ 日劇 スクリーン1

にて『戦狼2 ウルフ・オブ・ウォー/戦狼Ⅱ』というタイトルで上映されることが決定しております。是非とも大きなスクリーンでウー・ジンの雄姿を堪能していただきたいと思います。一緒にこのおもしろさを分かち合いましょう。そして齢40を過ぎて、輝かしい特大メガヒットを飛ばし間違いなく中国のスターになった彼の成功をともに喜ぼうではありませんか。

《战狼2》Wolf Warriors 2 予告
《戰狼2》アクション預告片 吳京與《美隊3》反派徒手格鬥

と、思ったらシネマートで公開するのか。
のむコレ詳細いつもお世話になってます、シネマートさん。
で、日本語字幕のついた予告もありました。
『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』10.28~開催★のむコレで上映決定!

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追龍(原題、2017年・香港中国)@HK⑤レビュー – ドニーさん 甄子丹

それではざっくりと感想レビューを。これで最後になる・・・はず。ネタバレ

上映時間は2時間08分とドニー映画としてはやや長めなのですが、これもっと長くてもよかったなと観た後思いました。もう少し時間をかけて人物を掘り下げてくれてもよかったなと。が、それは反面ダレずに最後まで突っ走った感覚を持てたということでもあります。

なにしろ、跛豪と五億探長の2本(探長は前後編だから正確には3本?)を1本にまとめた格好です。どうしても駆け足になりますわな。その分テンポが速くて見やすかった気もするし難しいところですね。

香港ではこのモデルとなった2人の実在の人物のことを知ってるという前提があったのかもしれません。かといえ大陸ではまったく知られていない人物のはず。いくら有名作のリメイクとはいえ、このような超ドメスティックな香港黒幇映画で勝負したのはずいぶん思い切ったなとも思います。

当局の検閲があるため、作ろうとしても結果画竜点睛を欠くことになりかねないジャンルのひとつ黒幇片ですが、イギリスを完全な悪者にすることで回避できたのは王晶の手腕だとレビューに書いた評論家もいました。

アクションは今までのドニー映画とは違い、ジャーマンスープレックスや三段蹴り、チェーンパンチも登場しません。「この役は、喧嘩屋だけどマーシャルアーツの達人じゃないし」というのがドニーさんの言い分です。そもそも足をやられて片足が不自由な役だし。

主演が彼でなければ普通にアクション映画として持て囃されるほどにはちゃんとアクション映画です。特に不満を感じなかったのは、もっと少ないのではと覚悟してたのと、何度も言いますが、舞台設定や音楽の力が大きかったと思います。

特に九龍城は非常に楽しかった。關智耀共同監督によると山のような資料を収集し当時そこで生活した人から話を聞き、道具に至るまで細心の注意を払ったといいます(香港映画人の言う事だから話は絶対盛ってそうだけど、笑)。

以前見た記録映像や唯一持ってる本『九龍城探訪 魔窟で暮らす人々』にくらべると汚しが足りなくて100倍ほど綺麗だし、よく見ると少々ちゃちい部分もあるかもですが、それでも自分は充分気に入りました。カメラワークもあいまって画面がおもしろくて飽きなかった。

途中、追われて逃げるアンディが階段をジャンプして降りると足元の水なのか油なのかで滑って転ぶという動作があったけど、あれなんかすごく九龍城あるあるって感じがして匂いまでしてきそうでしたわ。このシーンはかなりの緊迫感。テンパったアンディ、凄い色気。かっこよすぎっしょ。

やはりアクションは場所の制約とかあると面白いです、上から落ちて配線や謎のパイプに引っ掛かるとか。今回ドニーさんは設計段階で時間をかけてカメラ位置を捜したそうです。

ところで、最初の大乱闘でドニーさんの靴が脱げ途中で喻亢が投げて寄こしたのをまた履いて戦うという実に細かい動きがありました。ここなんかすっごいドニーさんでしたよね。ご本人が喋ったわけじゃありませんけど、仮に尋ねたら「主人公が功夫の達人じゃないことを表現するのに、わざと入れた演出。本当の武術家なら最中に靴が脱げるようなミスはしないだろ?」とドヤ顔するんやろなぁと想像して笑っちゃいました。

さて、その乱闘シーンのあった香港の外景は中国仏山市にある西樵山国芸影視城で撮影しています。私の記憶が正しければ『イップ・マン 最終章』のために建てたオープンセットでその後多くのドラマや映画に使われているところ。

イップ・マンといえば継承を撮影したオープンセットは、かの有名な上海・松江区にある勝強影視基地。ここはもともと巨額の資金と年月をかけて『孫文の義士団』のために作られた街並みなので、クオリティは当然上海のほうが勝るのですが、仏山にしたのはスケジュールなのか、金額の問題か、香港から車で通う事も可能という立地が決め手だったのか、はたまたドニーさんの映画で4度目になるのを嫌ったか(ほかには『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』もそう)。

九龍城はどこのセットに組んだのでしょう、クランクイン直後に香港のショウ・ブラザーズのスタジオを利用していると読んだ気がするんですが、ごめんなさい。確認してません。

が、ドニーさんが今回苦労した点で自宅に帰っても役が抜けずに大変だったとボヤいてたので、案外香港というのは間違ってないのかも。俳優は香港だらけだしね。ホテルのいい部屋に何カ月も泊めるより自宅から通ってもらった方が安くつくもん。

いつものドニー映画としてはレビューがかなり冷静な気もしますが、いや、映画がおもしろくなかったわけじゃありませんよ。むしろ連続鑑賞によくある睡魔にも襲われなかったし、なんといってもアンディとのコンビがすごく新鮮でした。

お、そういえば今回ドニーさんは演技にこだわったようで、テレビシリーズの『精武門』を思い出す表情もいっぱい見れました。渾身の演技だったからいろいろ取り憑いてたんだろうなぁ(笑)。

最後に。ひょっとしたら削除シーンを足した形のソフトを発売するかもという話があるようで。それ是非見たいので実現して欲しいです。

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ドニーさんの新作情報など。2017年秋 – ドニー・イェン 甄子丹

追龍の総評するつもりがどんどん横道に。ドニーさんが微博でAMA(Ask Me Anything!)的なことを実施。そこからわかった今後の作品のことなんかをメモ。

redditという英語圏のSNSでお馴染みのAMA。昨年ドニーさんもここでファンからの質問に直接答えていました。

有名人だけでなく様々な職業、境遇や体験をした人々が、広くユーザーからの質問に答えるAMA、その多くを日本語訳にまとめていらっしゃる方がいます。ドニーさんの回も抜粋して翻訳しておられるのでご紹介させてください。
【宇宙最強】ドニー・イェンだけど、なんか質問ある?【カンフースター】

今回行われたのは、まさにそのAMAの中華版。そこで今後の新作のことなども答えていたので中から気になったことを残しておきたいと思います。

まず、葉問4は来年の4月にクランクインの予定。まぁこればかりはズレこむことも多いので、そんな感じぐらいに思っときますね。

そしてみんな気になるハリウッド作品に関して。

ドニーさんは、来年は自分の会社で2本、またハリウッド作品を2本予定しているそうです。が、ご本人「一番大事なのは新しい挑戦だよ!」ですって。

そのハリウッド映画の主演作としてタイトルがあがっている『スリーピングドッグス 香港秘密警察』に関する質問も当然ありました。
人気ゲーム「スリーピングドッグス 香港秘密警察」実写化に出演、ドニー・イェンが深い縁を語る―香港
「いつクランクインですか?めっちゃ期待してます!」というコメントに「今脚本を書いてるところ」というレス。

またドニーさんの現代MMA路線のファンも多いようで、次いつ、導火線スタイルのアクションが見られるんでしょう?という質問(ナイスクエスチョン!)には

「大師兄」

と一言ではっきり答えていたので、撮影中の『大師兄』のアクションスタイルは総合格闘技系になる模様。ドニ八先生のちょっぴりビターなうふあは青春ストーリーかと思ったら、なんやめっちゃアクション映画やないですか!全ては拳で解決っすね!楽しみです!

あと、
Q: 今後やってみたいのは?
A: 音楽映画

Q: 古装片(時代劇)の予定は?
A: しばらくはしない

来年は葉問4以外、全部現代劇だそうです。

Q: もう一度アンディ・ラウと共演しますか?
A: 期待してて、企画中

また今回の追龍については、「これまでは、みんなアクションだけを注目してきたよね。でも僕は俳優として努力してきたんだよ!今は追龍で多くの人に認めてもらえすごく嬉しいんだ、今後もさらに精進するよ!」(ちょっと意訳ぎみ)とご満悦でした。

そして、最もみんなが知りたかった、噂のジェット・リー、ウー・ジンとの共演の話ですが。

「あとでジェットから発表があるよ」という答え。

映画?映画ですか?映画なんですか?ドニーさん、一体どんなプロジェクトですか?早く発表して~~~~りんちぇ~~~~おねが~~~~い

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追龍(原題、2017年・香港中国)@HK④音楽編おまけ – ドニーさん 甄子丹 ネタバレとか関係なし

追龍総評に行く前に、やっと見つけたジェフリー・チュウのこと。ほんとすみません、自分用メモみたいな話ですわ。ネタバレとかまったく関係なし。

追龍のティーザー予告に使われ、今作のオープニング・クレジットソングにもなった陳光栄作曲のオリジナルソング、 Chasing The Dragon 。その作詩と歌を担当した Jeffrey Chu (ジェフリー・チュウ)が誰だか分らずにずーっとモヤモヤしてたら、彼の中国名が朱雋言だとやっと分りました。彼は Billy Alexander という人と一緒にこの映画のエンディングソングである The Ghetto ラップバージョン(ディスコバージョン?)も歌っています。

いや、本当はね、エンドクレジットで確認すればよかったんだけど、見るべき部分が多過ぎて英語名までしか確認できなかったのよう。

中国名さえ分ったらこっちのもんやと調べてみたら、なんと私が以前観た金城武くん主演映画『喜歡你』で印象に残った挿入曲「住在地球曬夕陽」を歌ってるお人でした。なんちゅー灯台もと暗し(涙)。たしかにこれも陳光栄作曲。

しかも素敵な歌声に、そのあとyoutubeに飛んで彼のチャンネルとかちゃんと見とったっちゅーねん。再びそのチャンネルに行きついた時の私の驚きぷりったら。

でもねでもね、言い訳させてもらうとね、 Chasing The Dragon のほうは、曲調も違うしさ、ボーカルに極端なイコライザー処理がしてあるじゃん?だからさ、「住在地球曬夕陽」と同じ人とはちらとも思いませんでした、マル

あーでもやっとわかってなんか嬉しいっす。まったくもって自己満足でしかないんですけどね、妙にね、あるんですよね、達成感(笑)。

彼の事調べても、『喜歡你』の電影原聲帶(オリジナルサウンドトラック)の事しか出てこず(作中ほかにも歌ったナンバーがある)、Wikipediaも百度にも記事がないのでキャリアとか詳しい個人資料がまったくヒットしない。

多分、サントラ紹介以外で朱雋言の事を記したのは世界でこれが初かもしれません。ふふふ、世界で何人いるか知りませんが、彼を調べようと思ったら、これがヒットするのかも。(なにその妙な上から目線)

さてこの『喜歡‧你』ですが、そういえば間もなく開催される東京国際映画祭で『こんなはずじゃなかった!/喜歡‧你』という邦題で上映されるようです。お腹すく人続出だな。

では、貼っちゃうよ~
住在地球曬夕陽

これもよろしいです
千紙鶴 – Khalil Fong (cover) Jeffrey Chu 朱雋言

そして捜したらあった。追龍オープニング曲

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