ワンス・アポン・ア・タイム 英雄少林拳 武館激突(1981年・香港)

監督
劉家良(ラウ・カーリョン)

出演
劉家輝(ラウ・カーフェイ/リー・チャーフィ)
惠英紅(ベティ・ウェイ/クララ・ウェイ)
王龍威(ワン・ロンウェイ)
小侯(シャオ・ホウ)
谷峰(クー・フェン)

武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)
小侯(シャオ・ホウ)
京桂(チン・チュー)

主人公が黄飛鴻で、しかもワンチャイ後にソフト化されたせいでしょうか。
なぜか邦題についてしまう「ワンス・アポン・ア・タイム」
ううむ、とてもじゃないけど覚えられません。その点原題の「武館」はあっさりしててよろしい(検索かけると、めんどくさい事になるけど)。

オープニングから劉家良師父が、実演を交え細かく獅子舞のルールを教えてくれます。
(ちなみに、相手に向かって瞬きとか足を上げるとか、相手の獅子のお尻の匂いをかいじゃダメなんだって)

世界には数え切れないほどの映画が存在すると思いますが、中国獅子舞の注意事項をこれほどまでに細かく教えてくれる作品は、映画史上、唯一コレだけでしょう。

解説が終わったところで、本編はその獅子舞シーンから。
で、これを一目見てつい、心の中で叫んでしまいました。

「師父が獅子舞で、バズビー・バークリーしてるううう!」

バズリー・バークリーとは1930年代、トーキーになった直後のハリウッド映画界に現れ、以降、天才演出家兼振付家として一世を風靡した革命児。
彼がその後のミュージカル映画をはじめとする映像手法に与えた影響は、今もなおそのスタイルの模倣でしかないと言われるほど強く、測り知れないほどです。

たくさんのコーラスガールを使った群舞を天井カメラから狙った、万華鏡のような映像。
写真を見れば、ああ、これか、とお分かり頂けるかも。

んで、武館に話は戻ります。
ここで、監督は男どもの人力でもって三層に重ねられた獅子舞のダイナミズムを上からのカメラでとらえます。
リズムに合わせて、全員が片手を離したり、上を見上げたり。

おお、バズビー・バークリー功夫じゃん!

と、思わずうなるその構図(いや、表現したかった方向性は真逆なんだけどね)。

作品を見る度に師父の新たなる才能にハッとさせられますが、ここでもまたのっけからやられちゃいました。

ストーリーはいつものようにシンプルです。
敵対する武館同士がモメて、あれやこれやの大騒動。
そこに北からやってきた一風変わった達人が相手の道場に食客として居つく。

この王龍威演じる達人が、なかなかよろしい役で。
普段は悪役としてその個性をいかんなく発揮している彼ですが、この映画では単純に悪い奴じゃない。卑怯なことはしたくないと、ちゃんと信念を持ち合わせてる。

だからこそ、ラストの劉家輝との闘いが清々しいわけですね、監督。
このラストバトルは、もう言葉にはできません。
リズムといい、カメラワークといい(ここでも真上からのショットがすごく効果的)そして北拳と南拳の技術の違いといい、なんというミラクルなバトル。
いや、これはもう、見てもらうしかない。

狭い路地を充分に活用したこの2人の闘いは、この先どんな映画を観ようとも、恐らく「イーボシの選ぶベストバウトTOP20」(あれ、なんか英語ヘン?ま、いっか!)に間違いなく入ります。

それにしても、この映画の王龍威はいいですねぇ。
それほどアクの強い顔でないので、一見そんな強い人に見えない時があるのだけど、いや、そのスキルの高さには脱帽です。

80年代後半以降の彼が出ている現代ものの映画を見たことがありますが(当然のことながら悪役)時代も過ぎてしまうと純粋な功夫映画というよりは、銃を使ったアクション映画に趨勢は変化していて、今、思い返せば勿体ない使い方をしていたんだなぁと、つくづく感じます。
仕方ない事なのでしょうが。

そういえば、ユエン・ウーピン監督、ドニー・イェンも出演した「タイガー刑事」にも登場したっけか王龍威さん。
ショウブラをほとんど知らなかった初見時には、こんな素晴らしいスキルをお持ちの方とは存じませんでした。すみませんでした!

とにかく、この映画はなんといってもアクションが命。
最初の獅子舞と最後のラストファイトだけでも充分おつりがくる、功夫ファン必見の作品です。

 

50年後の功夫映画にも影響を与えた(笑)そのバズリー・バークリーのめくるめくミュージカルシークエンスを↓
By a waterfall(1933年/邦題:フットライトパレード/演出振り付けバズビー・バークリー)
Spin a Little web of Dreams(1934年/FASHIONS OF/流行の王様/バズビー・バークリー)

Martial Club Trailer 1
Martial Club Trailer2

 

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