ミシェル姐さん祭り②-ファントム・セブン/香港機動警察(94年・香港)

監督・武術監督
程小東(チン・シウトン)

出演
楊紫瓊(ミシェル・ヨー)
李寧(リー・ニン)
鄭則士(ケント・チェン)
熊欣欣(ホン・ヤンヤン)
許志安(アンディ・ホイ)

武術指導
熊欣欣(ホン・ヤンヤン)

この顔触れで、一番「誰や?」と思われるのは李寧でしょうね。
それもそのはず。実は彼、1984年ロス五輪の男子体操の個人種目の金メダリスト。

ロス五輪、男子体操!おおお、覚えてるよ~。
あの森末慎二さんが、鉄棒で、団体規定、団体自由、種目別すべてで10点満点を出し(当然鉄棒種目別は金)、個人総合では具志堅幸司さんが金メダルを、そして団体でも日本が銅メダルに輝いた、あのロス五輪すね!

李寧はつり輪、あん馬、床の種目別の金メダリストで個人総合での銅メダリスト。当時中国では「体操王子」と呼ばれ国民的ヒーローだったお人。(彼はその次のソウル五輪にも出場)

今現在は中国で有名なスポーツメーカーの創始者という実業家として名を馳せており、2008年北京五輪で聖火の最終ランナーとして宙を浮いた男としても有名です。

しかしまさか映画でミシェル姐さんの相手役をやっていたことまでは知りませんでしたわ~。
映画見始めて「マジっすか!」と思い、一旦ポーズボタン押して思わずキャスト調べに行ったくらいです。

んま、なんというお懐かしい!
(この北京五輪の宙づり、さぞ大変だったろうと思っていたのですが、こうして程小東の映画に出てたなら慣れてたのかも?なんてね)

この作品での彼を見ながら、当時の中国体操選手としては自分、童非選手の方がうんと好きだったことまで蘇ってきましたよ。

と、ともに
当時の胡耀邦総書記が日本の青年3000人を中国に招待してくれた84年の国慶節の建国35周年式典。
そのひとりとして招かれた際に、なんと童非さんご本人にお目にかかる機会がありファンであることを伝えたら彼から直接、直筆の「書」を戴いたことまで、芋づる式にしっかり思い出しました。
落款がY字バランスの図柄になっていてとても可愛かったです。

しかも彼の写真を捜しに中国サイトに行ったら、なんとその童非が87年に「望春風」という中国映画に主演していたことまで、さっき発見してしまい、今、スゲー驚愕しているところです。

その頃の五輪メダリストはある意味、今よりもっとすごいステータスだったんでしょうねぇ。
それはソ連時代の五輪メダリストも同じなので当時の共産圏の共通した特徴なのかもしれません。だから本当はそれほど驚くことじゃないのかも、映画の主役。

とまぁ、また前振りが長くなってしまいました。毎度のこととはいえ申し訳ありません。

と、言う具合にこの映画、まずは李寧を知ってるかどうかがまず大きなポイントになるのかも。
なので、私の感想は多少贔屓めな部分があるのかもしれません。

観る前は、90年代だしチン・シウトンだし、てっきりストーリー破綻しまくったものかと相当覚悟しておりました。そのお陰でしょうか、案外まともでむしろ驚いてしまったくらいです。

と、いってもそれは単に昔の香港映画を観ているせいでそう感じるのかも。
これごときで破綻と言ってしまってはほかのぶっちぎった作品なんか見られないもんね!
アクションは笑っちゃうほど派手だし、信じられないくらいご都合主義&無茶ブリのオンパレードだけど、むしろその熱がとてもらしくていい。自分としてはパワーのあった頃の香港映画としてすごく楽しめました。

物語は「ファントム7(原題では金剛7、アメリカではワンダー7)」という中国軍の特殊部隊チームが主役。(なぜか香港じゃない。おいおい、タイトル!)
まぁ、いわゆる望月三起也先生の不朽の名作漫画「ワイルド7」に完全インスパイア(笑)されたものと思ってください。しかも李寧の役名が「飛葉」ちゃんならぬ「葉飛」だし。ちょ、程小東。

さてミシェル姐さんですが、当然その主役のファントム7のメンバーかと思いきや、驚きの悪役。

えええええ、悪役?と最初は驚いてしまいますが、でも相変わらず美しいし、悪役でもこれがまたなかなか大人な女で粋だし、ま、李寧とお似合いかどうかは置いといて(笑)、結果、心底悪人でもなかったし、キャラ的には悪くなかったのではないでしょうか?
(ラストの制服を見たら、李寧に前半もう少しイケてる衣装を着せてあげて欲しかったよ、チン・シウトン。そうすればもう少し姐さんと似合った雰囲気がだせたのかもしれなくてよ!)。

さて、肝心のアクションですが、年代を考えてもお分かりのように、この頃の特徴として、功夫というよりはバイクアクションとガンアクション中心になるのは、いたしかたないというところ。
この時期の銃乱射ものの映画をイヤってほど見ているせいでしょうか、想像したほどストレスは感じない。

むしろ、ちゃんと姐さんの白打シーンもあるし、(やっぱ元体操選手、李寧もそこそこ動けてた)そこはもちろんワイヤーの神様チン・シウトン、空飛びまくりもお約束、お約束。

そしてなんといっても、さすがは最高の女武打星ミシェル・ヨー。空を舞っても銃を持たせても様になるし、文句なしにカッコいい。
カッコいい人はCGなんかなくてもカッコいいのであります!

同時に注目すべきは、アクションに関して女子供にまったくもって容赦ないその姿勢ですね(そのうえこれは坊さんにも容赦なかった)。さすが返還前。

最初はバイクアクションや、銃撃戦などで始まりながら、アクションは後半に入るに従い徐々にスケールアップ。いいよ~いいよ~、こうでなくっちゃ。
ラスト近くのゴンドラでのシーンは腰のあたりがむずむずしそうなほどスリリング。ワイヤーつけてるにしても、頭おかしいです、チン・シウトンさん。

そしてラストは「そんなんありっすか!」と笑ってしまうほどの破天荒でイリュージョン的な展開へと突入。とにかくどこから切っても90年代らしいこのアクション映画を、私は心からすごくすごく楽しみました。

ミシェル姐さんの絶対的な主役、を望むとちょっとガッカリかもしれませんが、それも最初から期待してなかったぶん、結果、私は満足です。
これから見る方は、ゴンドラとか最後のバトルとかヘリシーンとか、なにもかもVFXなしの生身、プラス、ひょっとしたら大部分が許可なしのゲリラ撮影だったかも(あくまでも、かも)ということを念頭に置いて是非見てください。そしたら、あのクレイジーさが身にしみる・・・やもしれません。

あえて難を言えば、せっかくのくまきんきん、もう少し見せ場が合ってもよかったのでは?
それだけですかね!

Wonder Seven trailer

おまけとして、
自分の中の五輪で一番印象的なファンファーレはおそらくこれでしょう。
ロス五輪のオリジナルファンファーレ&テーマ曲。作曲はご存知アメリカが誇るジョン・ウィリアムス。この曲はその年のグラミー賞も受賞しました。
Olympic Fanfare and Theme – John Williams

おまけその2
本家「ワイルド7」の実写版、この2011年年末に公開だそうで。
監督は「海猿」の羽住英一郎氏、音楽を川井憲次さんが担当。
ワイルド7公式サイト
メンバーの衣装が黒づくめなのが、ちと勿体ない。
原作と同じ白パンツが見たかったなぁ~。と当時キングで原作を読んでた自分はちょっと思ったりして。

この漫画、70年代にTVドラマとして一度実写化されています。
飛葉ちゃん役を演じた小野進也さんが子供心にカッコよかった。
ワイルド7テーマ曲
「この世のドブさ~ら~い~」という歌詞が当時耳に残ったと思ったら、作詞阿久悠さんでした。
作曲は森田公一さん。実に森田サウンドです。

 

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ミシェル姐さん祭り①スタント・ウーマン~夢の欠片(96年・香港)

監督
許鞍華(アン・ホイ)

出演
楊紫瓊(ミシェル・ヨー)
洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
黄家諾(ジミー・ウォン)
孟海(ホイ・マン)
張家輝(ニック・チョン)

武術指導
程小東(チン・シウトン)

映画「桃姐」(英名:A Simple Life)で今年2011年の台湾電影金馬奨にて最優秀監督賞を受賞し、過去にも数々の映画祭で作品賞、監督賞に輝いた香港の女性監督アン・ホイ。

彼女が、あの女武打星ミシェル・ヨーを主演に撮った作品、といえばそれだけで結構期待は高まります。

タイトルの通り、映画のスタントウーマンとしてその世界に飛び込んだミシェル姐さんが、サモハンをボスとするチームの武打師として働きはじめるところから物語は始まります。

当然、当時の香港映画のバックヤードがふんだんに描かれて、そこが無条件におもしろい。
その凄まじさは時々耳にしたり読んだりしたことはあるけれど、心底大変なんだろうなというのが映像を通して伝わってきて、それだけで興味が湧いてきます。
加えて、現場の過酷さだけでなく、裏社会との付き合いや関係性なども盛り込まれ、まさに返還前の香港の混乱した映画界の空気が、あちこちから滲み出ている。

そういえば現実に、香港映画界を黒社会から守ろうと成龍やアンディ・ラウが先頭に立って撲滅運動デモをしたのは確か1992年。
この辺りの黒社会とのエピソードを絡めてくるところなどは、アン・ホイの一筋縄ではいかないところかもと思ったりしてしまうほど。

一方でそんな環境にもめげず、サモハンのスタントチームのメンバーの結束はすごく固い。
一見ちゃらんぽらんにも見える彼らがいかに互いを信頼しているか人情味に溢れているかというエピソードにもこと欠かず、アクション映画でよく見る○○班という呼び名が単純に仕事仲間ということではない、まさに「命を預けたり預けられたりする特別なチームなんだ」という雰囲気が理解できる描き方にはかなり好感が持てます。

特に登場するキャラとして、そのチームを束ねるサモハンが、とにかくいい。
香港映画のスタントチームのボスってみんなこんな感じじゃなかろうかと想像させるほどの親分肌と無謀なまでの無計画性と、裏社会とも渡り合う肝の据わり方。
とても魅力的で、この役は彼にしか演じられなかったのではと思わせるほどのリアリティに満ちていました。

そんななか、スタントウーマンとして活躍するミシェルは女性。
女だからと仕事に妥協はないけれど、やはり恋もし、自分の行く末を不安にも思っている。
ある日彼女はひとりのバーの経営者と恋仲になります。

彼に乞われスタントの仕事を捨てて、彼が開いたカラオケバーの支配人として大陸に渡る彼女。離れ離れの生活にも耐え新しい生活を必死で生きるヒロイン。

しかし、そこはアン・ホイ。
まさかそこで彼とラブラブ、事業も順調にいって結婚メデタシメデタシとなるとは思ってなかったけどさ。
それにしたって、地元のヤクザにさんざ営業妨害され、しかもその裏で糸を引いていたのが他の女と一緒になろうとしたその恋人だった、てのは可哀そすぎる。

ヤクザにビール瓶で頭を殴られ、なのにその痛みよりも彼が別の女といちゃこらしてるのを見たショックの方が強烈なんて。
彼女が男にだまされて、夢破れる悲しみは女性として共感するところはたくさんある、けれど、彼女が血を流しながら茫然とその場を去るなんて涙なくしては見られないよ。
監督、そこまでミッシェル姐さんに辛くあたらなくても!と叫びたくなってしまいました。

結局、彼女の戻ったところはサモハンチーム。
しかし、ここからなぜか話は怪しい方向へ。それまでは、よく出来た青春物語の風情だったのが急激にアクション映画の定石、復讐の物語へと舵が切り替わる。

これはただの想像でしかありませんが、ひょっとするとこの映画、ミシェルが主役なのにあんまりにも内容がドラマに片寄っていることに「どこかから」横やりが入ったのかもしれない、そんなことを思わせてしまうほど唐突に色合いが変わってしまいます。

気がつけば、急ピッチでまるで「グロリア」のごとく残されたサモハンの一人息子を抱えたヒロインが逃亡、復讐に走るというアクションの王道へと。

正直、ミシェル姐さんのファンとか香港アクション映画のファンじゃなければ、このチグハグさは、しんどいかもしれない、と思います。

でも自分がこの映画を書き残そうと思ったのは、やはり前半のスタントマンとして映画界で生きる人達がイキイキとしていて心に残ったから。その中心が男でなく女性だったと言うところにも魅かれたのかもしれません。

セクハラパワハラもある、けれど、それを超えたところにも何かがある。そう思わせてくれる部分はある意味(善悪の判断はおいといて)性別を超え共感する人は多いかも。

また、主役のミシェルのひとつひとつの表情も新境地といっていいほど素晴らしく、この翌年に「栄家の三姉妹」で見せたアクションなしの女優としての演技力、その片鱗を、この映画でアン・ホイは見事に引き出しています。(そして、その宋家の三姉妹を撮ったのは、同じように数々の映画賞に輝く女流監督、メイベル・チャン)

そういう意味では間違いなくミシェル・ヨーというひとりの女優の分岐点になった作品である、と申し上げていいのでないでしょうか。

最後に、ミシェルを騙す優男役には映画「COOL」でも元同僚の主人公を騙して彼を冷血な殺し屋にした、黄家諾(ジミー・ウォン)。この頃は優男系の悪役として活躍していたのでしょうか。

そして姐さんの同門に80~90年代のゴールデンハーベストで時々その顔を見かけたユン・ピョウに激似のお兄ちゃん。

この機会にと名前を調べたら孟海(ホイ・マン)という俳優でした。長髪を後ろでひとつにまとめて、実に私のイメージする彼そのものの姿でございました。

スタント・ウーマン予告

 

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飲む前にへパリーゼ②

先日、フリーマンの筒井修社長が京橋にある中国湖南料理「雪園」というレストランで(美味しかった)続・香港映画の夕べを開催してくれました。
メンバーは前回も参加してくださった映画監督の中田圭さん(Nさんとは彼のこと)と評論家の宇田川幸洋氏。うお~、すごい。筒井さん感謝。

筒井さんは以前、松竹富士にいらしたことがあって、同じ時期デビューしたばかりの自分も松竹芸文室に所属していたために、実はそのころからの顔見知り。
またこういう形で接点があるとは縁って不思議。

香港や中国映画の話をしていて面白い、というか大変なのは、タイトルや名前を何度も言わないとすぐにピンとこなかったりするところ。
おまけに自分、まったく違う読み方で覚えている有名作品もあることが発覚。
いやはやお恥ずかしい。

そのタイトルですが、みなさん英語、広東語、中国語の日本語読み、そして日本語タイトルと結構バラバラで喋っていたりして、自分のようなニワカだと何度も「それ、別の呼び方だとなんですか?」と聞き直したりしなくちゃならなかったり。
俳優名も原語ですらっと言われると「????」のことがあって漢字を教えてもらってやっと誰か理解できたり。今更ながら、文字で覚えてる人とか作品の何と多いことか。みなさん、ご親切にありがとうございます。

それにしても、昔の映画のお話が楽しかった。
もう、私なんか口あけてポカンですよ。何百回「へぇ~」と言ったかわかりません(笑)。

キン・フー監督の作品も今、日本で見られるソフトはとても少なくて、それすらプレミアがついてしまっているので、なかなか機会がないのですが、それでも何本か観たなかで題字やクレジットは監督自身が書いているということを確認できたりして嬉しかった。

そうだ、以前上海ドラゴン英雄拳の時に浮かんだこと、「当時の劉家良がどれほどアクションシーンにおいて権限があったのか?」ということを質問してみたのですが、そこはみなさんにもハッキリとは分らないことのようです。
「チャン・チェだしなぁ。カメラは日本人カメラマンが手持ちで撮ったり、色々工夫してたから、今とは事情は違うんじゃないかなぁ」というご返事でした。

うーむ、やっぱりどっかで資料とか捜してみないといけない感じ?
まずは中国CCTVで放映された「中國武菫黴€電影人物誌–洪家拳劉家良」という番組動画を本腰入れて見るしかないか。
あれ、簡体語の字幕付いてるけど、画質が悪くて字の識別が難しいとこがあるんだよなぁ。
(30分以上あるインタビューをまたチマチマ手打ち翻訳するのかと思うと、ちょっとたじろぎます)

とにかく夢のような楽しいひとときでした。みなさま、本当にありがとうございました!

フリーマン筒井修氏ブログ(すんばらしい情報量)
映画監督中田圭氏ブログ
宇田川幸洋氏、山田宏一氏共著「キン・フー武侠電影作法」

 

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GPF 2011男女シングル

今年のグランプリファイナル男子シングルは見ごたえがありました!

優勝はパトリック・チャン選手。
SPでは恐ろしい事に4-3で壁に激突。テレビを見ていて思わず「ぎゃ!」と声をあげてしまいましたよ。ひぃ~。
その後、普通に滑ってはいたのですが、直後は案外痛みを感じないもの(らしい)。
FSに影響がないといいなと心配していたのですが、やはりなんらかの影響があったのかもしれません。フリーではジャンプがいまひとつで観てる方もドキドキですわ。
でもショートでの得点がききました。優勝おめでとう。
どうか怪我などありませんように。願ってます。

2位は高橋大輔選手。
いや、素晴らしいフリーでしたね。前日のショートのミスで出遅れたものの、ちゃんとまとめてきました。えらい!
後半の1.1倍つく場面での3A-3Tが効いたわ~。GOEプラスもしっかりついて、このコンビネーションは15.43という高得点。全選手のなかで一番高いコンビジャンプの点数を戴きました。
それに加えて今年の高橋くんはスピンが格段にいい。
プロトコルみたらスピンでレベル4とってるじゃん。ひゃ~すごい。
ちゃんと苦手を克服してくるあたり、さすが世界のトップレベルの選手は違うなぁ。

3位はハビエル・フェルナンデス選手。
4Tと4Sという二種類のクワドルプルを危なげなく決めて、見てて気持ちよかった!
4Sって単独でも基礎点だけで10.50あるのね。高得点です。
まだ20歳だよね、彼、いわば伸び盛りの年齢。うう、本当に今後が楽しみです。

そしてこのフリーで一番興奮したのが羽生結弦選手。
なんというか、非常にパッションを感じましたよ!
「ステップで全力を尽くしたら、最後のサルコーで力尽きました」みたいなことを言っていて、思わず笑ってしまったがな(笑)。なんというかわいい。
今後の課題も見つけたことでしょうから、将来に活かしてくれることを願っておりますよ。FSのみの順位なら第3位です!
全日本が楽しみだ~。

ほんと、気がつけば男子はみんなクワドを飛んできて、見ごたえのあるハイレベルな闘いでしたね。これは世界選手権も期待しちゃいます。

女子シングルは、カロリーナ・コストナー選手が初めてのグランプリファイナル制覇。
おめでとう、カロリーナ。
うんと昔から観てるファンとしては、ミスがあってもこうして最後まで集中を切らさずにきちんと演技をまとめてくる彼女に感無量。
スケートを続けてくれてありがとう。よかったね。

鈴木明子さんは銀メダル。これまたおめでとうございます!
練習では調子がいいと聞いていたので、期待していたのですが、やっぱりフィギュアスケートって難しい。
それにしても今シーズンになってから3T-3Tや3F-3Tを入れてくるその姿勢には頭が下がります。すごいわ!あっこちゃん。
残念ながら、SPでの3F-3TはGOEでマイナスでしたが、次回の全日本では是非決めてください!

3位はアレーナ・レオノワ選手。
大人っぽくなるの早いなぁ、と思ってたらロシアは下の世代にすんごい選手が一杯いたのでありました。その効果もあるのでしょうか、今シーズンの彼女は急激に大人の選手になりましたね。
おめでとう。ロシア国内大会は激戦だろうけど、経験を生かして巻き返せ~。

そして女子の試合で一番驚いたのが実は、ロシアのミーシンコーチ。
生徒のトゥクタミシェワ選手がSPで思わぬミスをしてしまい、氷からあがってきたところを、なんと、やさしく出迎えているではありませんか!
ええええええええと私は目を疑ってしまいました。

いや、本当はとても優しい方なのかもしれませんが、今までなんとなく「ミスした生徒にブリザードのように厳しい人」というイメージがあっただけに、この態度にはかなり驚いた。
ひょっとして厳しいのは男子にだけ?いや、天下のミーシン、女子と分け隔てあるとは思えない。
うむむむ、これはプルシェンコ選手以来の惚れこんだ逸材の証、ということでしょうか。
今回は、グランプリファイナルということもあって、ちょっと緊張があったのかな、トゥクタミシェワちゃん。疲労あるだろうし、ピーキングは難しいね。

最後にアリッサ・シズニー選手の怪我が早く治りますように・・・。
選手のみなさん、本当にお疲れさまでした。

 

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岩沼とんちゃん

とうほく食文化応援団 第7回は岩沼とんちゃん。

大阪下町育ちの自分なのに大きくなるまで、なぜかいわゆる韓国焼肉を食べる機会がありませんでした。
初めて食べたのは忘れもしない、東京で住むようになった学生の頃、急病になった友人がバイトするスナックに急遽ヘルプにと誘われ別の友人と一緒に、1晩だけお店に立った日。そこのオーナーがまかないにと、特別に焼き肉をご馳走してくれたのでした。
(今振り返るとものすごくバブルな匂いのするエピソードだなぁ)

だから当然ホルモン焼きというものも、そのまたずっと後、うんと大人になってから食べました。
正直、大人になってから食べてよかったとその時に思ったことはよく覚えています。あれ、子供の自分じゃ食べきれなかったかも。

しかし、そんなホルモン焼きを、子供の頃から食べつけているという地域は結構あるし、そういうところでは、すんごくおいしいホルモン焼き屋さんがたくさんあったりします。

日本三大稲荷と称される竹駒神社のある宮城県岩沼市もそんな地域のひとつ。
ここではホルモンのことは「とんちゃん」というかわいらしい名前で子供から年配の方にまで親しまれています。
とんちゃんと言うからには当然、ここでのホルモンとは豚の内臓のこと。

「元気ないわぬま発信委員会」代表の國井隆平さんに連れられて訪ねたのは、数あるその岩沼とんちゃんのお店のひとつ「なごみ」さん。

ホルモンと言うと七輪で網焼きというイメージがありますが、ここ岩沼の特徴はジンギスカン鍋で焼く。
まずは、熱くなった鍋に一皿まるごと豪快にとんちゃんを放りこむ。
「じゅじゅ~~~~」という景気のいい音はそれだけで食欲をそそる。
ううううう、た ま ら ん !

こちらでは生のとんちゃんを焼いてから自家製のタレにつけて食す方式。
お店のご主人が毎日2時間かけてご自分で内臓をばらして、綺麗に水洗いするのだそうです。
「都会などでは、最初から洗った内臓を使う場合が多いようですが、うちはずっとお父さんが自分で洗ってます。時間はかかるけど、その方が新鮮な物をお出しできるし、うんとおいしいし、なにしろ厚みが違うでしょ」と、お母さん。

ほんとだ、なんかいつも食べてるのと少し違うかも。
「業者が洗うと機械で一気にやっちゃうから、どうしても薄くなっちゃうみたいですよ」

國井さんは、近頃少なくなってきたとんちゃん屋を心配した仲間とともに、このとんちゃんをなんとか町の名物として広くたくさんの人達に知ってもらい、また町おこしに繋げたいと発信委員会を発足したのだそう。

「とんちゃんマップを作ったり、イベントを催したり、様々な活動をしています」。

活動を始めて3年、他の地域からもお客様は来るようになったのでしょうか。
「ありがたいことに最近は、わざわざ遠くからこのとんちゃんを食べに来て下さる方も随分増えました」とのこと。
おお、浸透してきてるのですね、よかったね!國井さん。

しかし、奥さんが小声で言うには「遠くの方はマイカーで来る方が多くてお酒を飲んでくださらないんですよね・・・」
そう、このとんちゃん、なんといっても値段のお安さも魅力のひとつ。
もちろん飲酒運転なんてもってのほかですが、近隣の方ならよかったらお帰りは運転代行を頼んであげてください、とこっそり私からもお願い。

そこで、最初の話に戻ります。
なぜ、子供の自分がこのホルモンを食べたらキツかっただろうな、と思ったか。
ズバリ、それは子供だとビールが飲めないから!
とんちゃんとビール。
もう、このゴールデンコンビは揺るぎようがないでしょう!

元気ないわぬま発信委員会サイト

 

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フランス・ギャルと弘田三枝子

先日、ナンシー・シナトラのことを書いたので、おまけにとThese Boots Are Made for Walkin’の動画を捜したら、すんごい沢山の映像があるのに驚きました。
自分は昔からすでに何枚もアルバムを持っているので、今の今まで彼女の動画を捜したことがなかった。
いやぁ、世の中にはちゃんとそういう映像を残してる人がいるんだなぁ。
ありがたいことでございます。

思えば自分の子供の頃なんか、こんなにホイホイ簡単に昔の映像なんか観れる時代がくるなどと想像もした事なかったわ。
音楽はもちろんレコードだし、パーソナルなオーディオも当然なく(ラジカセすらなかった!)、居間とか応接間に家族全員で聴くための、やたらとデカイオーディオセットがあるくらい。

そして家族の誰かが買ってきたレコードを何度も飽きるまで聴く、そんなシンプルなミュージックライフを当時のほとんどの子供たちは送っていたのではないでしょうか。

私がよく聴いたのは、映画のサントラ集。
フランシス・レイとかヘンリー・マンシーニとかニーノ・ロータやバート・バカラック、ジョン・バリーなんかの名曲を何枚かに収めたオムニバスアルバムは特にお気に入り。
タイトルとたった1枚の白黒のスチール写真、そして数行にまとめられたあらすじとその曲から、どんな映画なのだろうと想像するのがすごく好きな子供でした。

今も映画を観るとすぐに音楽に反応してしまう癖は多分、この頃に培われたものかもしれません。

そして、そのサントラ集と同じくらいにヘビロテで聴いたのが、60年代のフレンチポップスの超アイドルだったフランス・ギャルと、あのフランク・シナトラを父に持ち、これまた60年代のアメリカのアイドル歌手だったナンシー・シナトラ。

フランス・ギャルは日本語で歌った「夢みるシャンソン人形」(65年)というナンバー(作曲はあのセルジュ・ゲインズブール)が日本で大ヒット。
フランスはもちろん世界中で、フレンチアイドルとして一世を風靡しました。
「わーたーしーはーゆーめーみーる、シャンソンにんぎぃよ~」という、たどたどしい日本語のフレーズと、低音があきらかに怪しい感じが印象的で大好きな曲です

自分も覚えていないほど小さかった時は、この曲を掛けるとひたすら踊り狂ったらしい。我が家にあった彼女の唯一のアルバムは擦り切れそうなほど聴き倒しました。

涙のシャンソン日記Attends ou Va T’En (1965) France Gall
天使のためいきNous ne sommes pas des anges(1965)France Gall

そういえば、90年代やたらと彼女のこの頃の歌がCMに使われていた時期がありました。それを見て、ああ同じ年代の人が作ってるのかなぁとぼんやり思っていましたっけ。
一度聴いたら忘れない、そんな魅力が彼女の歌にはあります。

同じ時期には、今でも名曲としてみんなが知ってる「あなたのとりこ」で有名なシルビィ・バルタンもフレンチアイドルとして君臨しておりました。(ワンサカ娘!)ジェーン・バーキンといいフランス美人はみんなスキっ歯かもと思っていたのは自分だけじゃないはず。
そういえばミッシェル・ポルナレフもこのころのデビューだったような。

昔はフランスだのイタリアだの、米英以外のアーティストも日本で人気があったんだよね。
ま、子供には「どこの国の人か」なんてまったく関係なかったけど。

さて、フランス・ギャルに話を戻すと、大人になってから彼女のCDを色々買い漁った時に気がついたのですが、実はその後も長い間ちゃんとシンガーとして母国で活躍していたんですね。不覚にもまったく知りませんでしたわ。

自分の聴いていたアルバムが発売された頃は、なにかというと海外のヒット曲を日本語でカバーすることが多く、この夢見るシャンソン人形もたくさんの日本の歌手がカバーしています。

その数あるカバーバージョンで私が一番好きなのが弘田三枝子さん

彼女のヒットナンバーには、作詞なかにし礼さん、作曲川口真さんで「人形の家」という69年の名曲があります。弘田三枝子さんは多分私が一番最初に好きになった日本の女性ボーカリストでしょうね。

彼女がこの年、この曲で日本レコード大賞の歌唱賞を獲ったことがすごくうれしかったことを、うっすらと覚えています。

そんな弘田三枝子さんの歌声を初めて聴いたのは、なんといってもジャングル大帝レオのうた。
そう、1965年から52話にわたり放送された、日本で初めてのカラーアニメ作品と言われている手塚プロダクション制作のアニメ「ジャングル大帝」のエンディングテーマです。
この物語のスケール感の大きさと彼女のパワフルな歌声が本当に似合っていて、子供の心にもズバッと直球158キロ。今聴いても本当に素晴らしい!

そうなるとセットで観たくなるのがコチラ
この曲には歌詞つきバージョンもあります
(作曲はいずれも冨田勲氏)

このナンバーは兄が持っていた「TVマンガ主題曲大全集」みたいなのに収録されていたはず。
兄の持ってたそのアルバムには、ジャングル大帝関連の歌があと2曲ほど入っていた記憶があるのですが、捜すことはできませんでした。残念。
自分の記憶が正しければ、ハイエナの兄弟が歌う「ディックとボウ」というナンバーと、レオのガールフレンド、ライヤのテーマ曲だったような。
あああもう一度聴いてみたいな~特にライヤのテーマ。

それにしても、いつものこととはいえ、フランス・ギャルから気がつけばジャングル大帝になってしまうこの転がりようは果たしていいのでしょうか?

本当はフランス・ギャルとナンシー・シナトラの事を書くつもりだったんだけどなぁ、ま、ナンシーについてはまた今度。

 

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上海ドラゴン英雄拳(1972年・香港)

監督
張徹(チャン・チェ)
鮑學禮(パオ・シュエリー)

出演
陳観泰(チェン・クアンタイ)
姜大衛(デビット・チャン)
井莉(チン・リー)
谷峰(クー・フェン)

武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)
劉家榮(ラウ・カーウィン)
唐佳(トン・ガイ)
陳全(チャン・チュエン)

世界を変えた男、ブルース・リーの大出世作、「ドラゴン危機一発」。
それがゴールデンハーベストによって公開されたのが1971年。そして香港の歴代興行記録を塗り替える大ヒット。
その直後に作られたショウブラ作品がこの「上海ドラゴン英雄拳」。
それだけで、ショウブラがこの映画に賭けた意気込みが想像できそうです。
(事実、このブルース・リーの出現がかつて帝国とまで言われたショウブラザースの栄光に陰を落とす要因になりました)

などと知ったようなことを書いておりますが。
食い散らかすように色んな作品をアトランダムに観ていると、時系列が曖昧になったりするのだけれど、時折、詳しい先達の方々のお話を聞いたり、サイトを眺めたりしては「はぁ~、なるほどなぁ」と符合することに行きあたったりすることが多々あります。
そういう意味では先達の皆様には、非常に感謝の気持ちでいっぱいです。
この世にマニアな人がいて本当によかった!

さて、この映画の主役はこの作品が初主演となるチェン・クアンタイ。
脇をデビッド・チャン、チン・リー、クー・フェンが固めるというその布陣だけで、この新人をスターにしようとするショウブラザースの本気度を感じます。

原題は「馬永貞」実在した主人公の名前。
山東省から上海にやってきた男が、腕一つで暗黒街をのし上がってゆくという立身出世ものがたりです。

この男、貧乏で職もないのに野心だけは人一倍ある。
クアンタイさん演じる主人公の、上海に来て初めて目標となる人物が、若きマフィアの親分さん、デビッド・チャン。

出番は少しですが、このデビッド・チャンがとにかくイカしてる(死語の世界)。
颯爽と乗馬服に身を包みながら、(なぜか馬でなく)馬車に乗るそのスタイル。
手には象牙で作られた白くて長い煙管。
ファン必見のカッコいいお姿です。

そんな都会的でおしゃれな親分に心酔するのが、山東出身の武骨でいかにも田舎者のクアンタイさんという対比がおもしろい。

若き親分は、この滅法腕の立つ、そしてまっすぐな性格の馬という男を気に入り自分の配下にならないかと誘います。
いつもひもじい思いをしているクアンタイさん「ラッキー」とその誘いに乗るのかと思いきや、「彼の部下になったら彼と同じところにはたどり着けない」と断ってしまうじゃあないの。

ううむ、野心があるということは、そういうことなんだなぁ。
と、ひどく感心してしまうと同時に、自分ならさっさと子分になるな、と頂上(てっぺん)を取る人とそうでない人の根本的な違いを思い知らされる気分に。

この映画はとにかくラストのアクションが、あまりにも凄まじいため、その印象が強くなりがちですが、自分としてはこの成りあがる男のドラマ部分も面白かった。

いかにも山東人という粗野な男が、どうやって人の心を掴んでゆくのか、その過程がとても興味深い。(しかも肝心な惚れた女は「今のあなたはただのチンピラよ」とかなんとか言って去ってゆくのが、またよろしいですね。なんか妙に説得力があります)
そしてその男を遠くから助力するヤングな親分と、そのふたりに敵対する旧勢力ヤクザ組長の男気のカケラもない老獪さ。

んで、チャン・チェ監督ですので、最終的には復讐のバトルへと物語は雪崩れ込んでゆくわけです。
17分にも及ぶ、茶楼での斧刺さったまんま壮絶血まみれの1対100くらいの闘いは、初主演作にしてチェン・クアンタイという武打星の全てを出しつくしたと言ってもいいほどの、熾烈さにあふれていました。
まったくもって素晴らしい!
今際の果て、わははははは、と笑いながらその時を迎える彼の胸には、一体何が去来していたのでしょうか。

この映画は、時代を超え、大いなるリスペクトを生んだ作品としても知られています。これに限らず、チャン・チェ監督作品がのちの映画に与えた影響は数知れず。

しかし、立ち止まって考えると、少なくともアクションシーンに関しては70年代半ばまでお抱え武術指導とまでいわれた劉家良が、そのほとんどを担当していました。

監督にもよるのかもしれませんが、現代の香港映画での武術監督は、コレオグラフィーはもちろん、シーン前後の演出、役者の演技、カメラ位置、編集に至るまで、世界の映画界では類を見ないほどの権限を握っています。

当時のチャン・チェ作品群において、劉家良がそれらのシーンについてどれほどの決定権があったかはわからないので、めったなことは言えませんが、少なくとも、その後の世界的な影響を与えた魅力の一端を担っていた事実は間違いないことでしょう。

勿論前提として、それはチャン・チェワールドあってこその話ではありますが。

でも急に興味が湧いたので、そのうちにこの辺りの当時の事情を、つたない中国語で捜してみたい、そんなことをふと思ってしまいました。

上海ドラゴン英雄拳トレイラー1
上海ドラゴン英雄拳トレイラー2

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Jスポ フィギュアスケートナビ

昨シーズンに引き続き、今シーズンもJスポーツの「フィギュアスケートナビ」のナレーションを担当させて頂きました。

私の回は、次代を担う「ネクストジェネレーション」と題して、これから注目してほしい、選手やカップルをご紹介。

もちろん、フィギュア専門誌「ワールド・フィギュアスケート」の鈴木和加子編集長のインタビューもあります。

先日、そのナレ撮りにJスポに行って来たのですが、世界選手権、世界Jr選手権、四大陸、欧州、全米とともに、今シーズンはカナダ国内選手権も全種目放送が決定したようで。
すごいっすJスポ。

終わってランチしながらプロデューサーのMさんと今シーズンについて色々熱く語ってしまいました。長時間お付き合いくださってありがとうございました。

男子はハビエル・フェルナンデス、ペアはなんといっても高橋・トラン組、そしてダンスはイリニフ・カツァラポフ組、そして女子はロシアのトゥクタミシェワやソトニコワがどこまで食い込めるか楽しみです。

解説の先生や、実況の皆さま方は、フル回転で大変なことと思いますが、実況中継期待しています!

Jスポスタッフのみなさんも、どうかお体にお気をつけて、このシーズンを乗り切ってくださいませ。放送楽しみにしております。

フィギュアスケートナビ放送予定
Jスポ・フィギュアスケート放送予定

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南三陸町 福興市

あの日一瞬にして、建物の6割が破壊され、900人近くの方が亡くなったり行方不明になっている宮城県南三陸町に行きました。

とうほく食文化応援団のロケのため訪れたのは、10月30日日曜日。
この地で行われている福興市を取材するためです。
震災により、町の大多数が壊滅した町で生きる人達が手を取り合い、そしてそれを手助けするたくさんの協力によって月に1度、開かれている催事です。

東北では「ふっこう」のことを復興ではなく「福が興る」と書いて「福興」と表現しているのをよく見かけます。
このイベントも再び幸せを取り戻すための市になるようにと願いを込めて「福興市」と名付けられました。

10月の末だというのに暖かいその日、会場に着いてまず驚いたのは、その人の多さ。
駐車場は満車、次々に観光バスがやって来ては大勢の観光客を下ろして去ってゆきます。ナンバープレートを見ると、近県はもちろん、遠くは群馬や姫路ナンバーも。

「旅行社が応援ツアーを組んで来てくれているんです」と話してくれたのは福興市実行委員長の山内正文さん。
この市、第一回目が開かれたのは震災のあった翌月の4月29日のこと。
「その時は、やりたくても地元には売る品物がなく、今までお付き合いのあった‘全国ぼうさい朝市ネットワーク’の全国の商店街のみなさんから特産品のご協力をいただいて、まずは20店舗から始めることができました」

それから数えること7回目、出店する店舗も品物も訪れるお客様も増え、嬉しいことに南三陸の漁港には秋鮭も戻ってきました。

秋鮭はここ南三陸町の水揚げのうちの6割を占める名物です。
以前は銀鮭というブランド名としても有名でした。

この日も、仮説の魚市場には鮭を積んだ漁船が戻ってきます。
漁船からまず下ろされるのは、漁をした際に網に一緒にかかった瓦礫や様々な漂流物の数々。
なかには家庭用品や、どなたかが使っていたのでしょう、男性用のビジネスバックなどもありました。
「こういったものを引き上げるのも私達の仕事のひとつです」と漁業協同組合の高橋義明さん。

以前、自分は同じここ南三陸でこの鮭のいくらを使った「きらきら丼」を取材したことがあります。
それぞれの店舗が提供する「おらが町の新名物」を紹介してくださったなかには、あの日帰らぬ人となった方もいらっしゃいます。

市の会場ではその時お世話になった方にまた再びお目に掛れることも出来て、顔を見合わせ思わず手を握り合ってしまいました。

自分がその時にロケをした場所も再び訪れてみましたが、全てものが流され、何もなくなった沿岸。その遠くには今なお3階建てのビルの高さほどに積み上げられた瓦礫の山がそびえているのが見えます。

同じ場所と思えぬほどのこの変わり果てた姿と、ここに住む人たちの決してまだ癒えぬ心の傷を想像すると、ただただ茫然と立ち尽くすしかありません。

苦しみや悲しみを乗り越え、再び幸せを取り戻すための市になるようにと願いを込めて名付けられた「福興市」。
会場では景気のいい声や楽しそうな笑い声が満ち、ステージでは入れ替わり立ち替わり様々なショーが披露されています。

そんななか「語り部ガイド」と書かれた看板を手に練り歩いている数人の姿も見かけました。
聞くと、この経験を後世にずっと語り継いでゆきたいという思いから、この市が行われる度に、それぞれの震災体験を地元の人達が語り部となって、話して聞かせる機会を設けているそうです。

賑やかななかにも、そういった思いや使命感が一方である。それがこの福興市。

せっかくですから、帰ってきた鮭を戴かなくては。そこで漁業組合の婦人部の皆さんがふるまう「鮭汁」を注文。
ここの鮭は脂が乗っていて最高にいい出汁が取れます。そこに地元の野菜を入れた絶品の漁師料理。
大きな鍋にいくつも作っているのに、あっと言う間に飛ぶように売れてゆく。

元気のいいお母さん達が「あれま、イーボシさん」と声をかけてくださいます。
別れ際には「これからもがんばってくださいね!」と言われてしまいました。
いや、お母さん、それ、こっちの言葉だから。

気がつけば、私たちの方が元気をもらってしまった、そんな気分です。
暖かい鮭汁とお心遣いを、ごちそうさまでした、美味しかったです、本当にありがとうございました。

今回水揚げされた鮭は4年前に放流したもの。
今年放流する予定だった稚魚は、津波によって生けすごとすべて流されてしまいました。
なので、みなさんにとっては、4年後、鮭が無事に戻ってくるかどうかまでは、それに関しては安心する日は来ないのかもしれません。
どうかこの町に、大いなる福が興りますように、そして鮭が無事に戻りますように、私は祈らずにはいられませんでした。


宮城県南三陸町 福興市公式サイト

南三陸福興市応援ツアー

これ以外にも、近畿日本ツーリストや、ほかの旅行代理店などでもツアーを組んでいるようです。
例えば、市を訪れるだけでなくボランティアも同時に行うなど、企画も各社様々。
ご興味があったら、一度検索してみてください。
なお、2011年12月の福興市は行われないそうです。

 

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飲む前にヘパリーゼ

師走ですなぁ。
色々飲み会とか続く時期ですが、みなさま肝臓の調子はいかがですか?

酒飲む前に「ヘパリーゼ」はマジお勧めですよ。
これがあるとないとでは翌日がまったく違うから(と自分は思う)。

そんな師走に突入してすぐの先日、年末香港映画の夕べということでTWINの吉鶴さんがメンバーを集めてくれました。
メンバーは吉鶴さんと私とNさんと、台湾人のJくん。
このNさん、昔香港にも住んでいた事があり、相当の香港映画通。てか、香港電影系のデータ本のライターだとか、あのキングレコードのショウブラDVDの特典インタビューのインタビュアーも務めたというツワモノ。

最近観た映画とか、うんと昔の作品とか、いろんなところに話が飛んで楽しかった~。
私があまりに熱く劉家良の監督第一作「神打」を語っていたら、Nさんから当時の事情(チャン・チェ監督と袂を分かったあとの劉家良師父のモチベの下り具合)なんかもうかがえて勉強になりました。

新作では、チョウ・ユンファ主演の「孔子の教え」の話題に。

「これで孔子を分ろうと思っちゃいけないんです、これを見て論語を勉強しようと思ってもらえれば」と配給元吉鶴さん。
いや、すごく地味な映画かと予想していたら合戦シーンも結構あって派手な場面が多く、まったく飽きずに観ることができて正直驚きました。
そのうえ、孔子役のチョウ・ユンファが非常によかった。
ここ10年ほどはアメリカでのバイプレイヤーの印象が強い彼ですが、この役は想像以上に似合っていました。いうならば新境地開拓というところ。やはり彼は主役が似合います。
今後も本格的に香港中国で腰を据えて映画撮ろうよ!ユンファ!
「孔子の教え」日本公式サイト

さて、話は戻って。
功夫映画の話を、特化してファンでもないという映画好きと話していて戸惑うことのひとつに「○○は、以前公開された○○にストーリーが似てない?」という言葉。いや、似てるなんて言うのはまだカワイイほうで、ヘタすると「あれパクリじゃん!」と言い切る人がいたりもする。

ええと、それは世間で言うインスパイアというものでして(笑)。
まぁ、1作でも新鮮なキャラが登場してヒットを生むと一斉に「同じもの作ったもん勝ち!パクリがなんぼのもんじゃーい」みたいなノリで追随しまくるのは確かに香港映画の特徴ですけど・・・。
それはいわば出発点が「そこ」というのが基本姿勢なので、その、あの。

その特徴を肌で感じることができれば、彼らに対して「パクリじゃねーの」と真顔で問うことがどれほどバカバカしいことかご理解いただけるとは思うのですが、それを説明するのも大変なので「ま、香港だからね」くらいでお茶を濁すことになるわけです。そのモヤモヤ感ったら。

正直、香港映画からこのインスパイアがなくなったら功夫映画なんか存在しなくなっちゃいます。

1:大事な人が殺され、復讐する。
2:大事な人が殺され、修行して復讐する。
3:自分の功夫の技術や生き方に傲慢さを抱いている主人公が痛い目に遭い「いい人」になって復讐する。
4:自分の功夫の技術や生き方に傲慢さを抱いている主人公が痛い目に遭い「いい人」になって復讐するのは意味のないことと知り、違う道を説く。

ストーリーはほぼ、この4パターンくらいしかないでしょう。
しかも3と4なんか数としては、まったくもって少ない方で、9割は1と2で構成されています。

あとはその仇役が、時の権力者か、ヤクザの親分か、敵対する道場主か大侠か、日本軍か、そして時折欧米列強国の象徴である外国人と異種格闘技戦を入れてくるか、まぁそれくらいの変化しかありません。

ほら、パクリだとか言うのがアホらしくなりませんか?

こんな感想を、その飲み会でしたら、みんな一斉に「そうだよな~~~」と声をあげました。
あとはアクションの差でしかないけど、そのアクションすら「インスパイア」しまくりだから!とNさん。
「みんなの好きなこの映画も、あの映画のアクションも元ネタはみんな劉家良だったりするんだよね~」

そのあたりのネタばらしはショウブラ特典映像のインタビューで、劉家輝が話していたりしましたね。

私が甄子丹ファンであるということは皆さんご存知なので、なんとなくそういう話にもなりました。
「そういえば主演2作目のMismatched Couplesは結構恥ずかしい記憶らしいですよ」という話題が。それ、香港版持ってます。びっくりするほどブレイクダンスな青春映画っすよね。

でも、自分、過去を振り返る大陸のインタビュー動画で、そのダンス映像を見せて「今見てどう?」と恥ずかしがるカワイイ反応を引き出そうとした司会者に対し、たじろぎもせず「今見るとヘアスタイルが当時だよね~」としれっと答えてたのを見ましたよ。
それ見て、「この人スゲぇ」と感心したからよく覚えてる。絶対恥ずかしくないわけないのに咄嗟にあの反応ができるとは。負けず嫌いにもほどがあります(笑)。

来年8本撮ると予定していた計画ですが、すでにもう数本が流れてしまったようで。なかには日本でニュースになっていた作品もオシャカになったかも、みたいです(未確認情報)。
この12月は一体何を撮影するんでしょうか。香港映画だから誰にもわからない。
正座して待つしかなさそうです。

 

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