甄子丹 ドニー・イェン「甄功夫」

香港に注文していたドニー・イェンの「甄功夫」が届きました。

最初、写真集かと思っていたら、なんとなくその後の報道で武術本と知り、おお、そうなのか!そりゃ2倍嬉しい!と思って届いた本を開いてみたら、やっぱり武術写真集でしたわ(笑)。

写真はモノクロ。
心配したマッチョな裸身もごく少なく、非常に落ち着いた仕上がり。
最近見慣れたモデル風味のファッション系の写真とも違い、武術家甄子丹、ドニー・イェンを表現したかったという意図がよく伝わってとっても好感が持てます。

興味深かったのはジムでのストレッチフォト。
おもしろいもんで、自分、こういう特殊技能を持った人のストレッチシーンってすごく興味がある。
まぁ、ほとんど参考にならないこういう人たちの練習風景で唯一自分にフィードバックできそうな部分だからかもしれません。
たとえば、アスリートの練習前のストレッチとか見るのが昔から大好きでして。
毎年シーズン前のタイガースのプロ野球キャンプ番組、なんてのを眺めていても、なぜかストレッチになるとじっと見入ってしまう(笑)。
だから、これはかなり私得写真。

もちろん、武器を持った写真もあり。
槍やら剣やら、六点半棍や長刀、双刀を華麗に扱っております。
武術も南派洪家拳や、北派蟷螂拳(に自分は思えました)など、あ、当然詠春拳もあります。
こういう写真を見ると、この撮影時にVTRは回してなかったのかなぁ、とつい、欲張ってしまいますね。ドニーさんの表演をぜひ見てみたいなぁ、と。

そういえば、デビュー作の「笑太極」では太極拳の表演がオープニング。さすが有名武術家の母親仕込み。何度見てもほんとうに見惚れてしまいます。
最近は、お茶かなんかのCMで太極拳を披露しているのもありました。19歳の時とはまた違った味わいがあって、あの動きも美しかった。わずか十数秒なんてもったいない。
今度は写真集に続いて動いてるところをひとつ、お願いしたいところです。

文章は、武術全般というよりは、今まで映画で取り入れてきた武器とか武術とかの紹介、という感じ。分量的にはそれほど多くありません。
自分としてはドニーの語る武術に並々ならぬ感心があったので、ちょっぴり残念。
と、いって中国語で武術を語られても、ニュアンス程度すら汲みとるのにどれくらいの時間がかかるのか、想像もできませんが(笑)。

そう思うと、自分自身のアクションについてあれだけの話を率直に綴った「ドニー・イェン アクションブック」って貴重な本だったんですな。

この本が日本でのみの発売って、今考えたら奇跡的なことだったのかも。

 

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ディアナ・ビィシニョーワの「ジゼル」

とうとうディアナ・ビィシニョーワ「ジゼル」を観ました。

Aちゃん、さんきゅ、さんきゅ!
東京バレエ団の公演に、彼女とボリショイに移籍が決まったばかりという若手のセミョーン・チュージンが客演。
んも~大興奮。
考えたら、ここんとこずっとガラばっか行って、通しで、しかも古典とかって久しぶりだと気がつく。ジゼル全2幕なんてどれくらいぶりでしょう。
久しぶりに観たジゼル、よかったなぁ。これまた直前にゲットしたチケットが2階席だったのだけど、考えればコール・ド・バレエも見どころのこの舞台、むしろ2階席でよかったとも言える。
東京バレエ団は背格好もぴったり揃ってるし、なんといっても一糸乱れぬその踊りには感激しました。これぞ、コール・ド。さすが東京バレエ団。いや~、素敵、素敵、満足。

さて、ビィシニョーワですが、ああ、なんて言葉で表現すればいいのか、生で観る彼女のジゼルは想像以上でした。

特筆すべきは、彼女の身体の内から溢れだすその感情。
それまで自分のイメージするジゼルとは、最初から儚げで壊れやすい、生きてる時から少しこの世の者じゃない、そんな印象を持っていました。

が、1幕の彼女のそれは、ほんまに心臓が弱いんかい、と突っ込みたくなるような生命力にあふれていて「生きてる、私は生きてるのよ~~~そして恋をしているのよ~~~」と叫びながら踊っているような、恋する乙女の喜びに輝いている。

その後、愛するアルブレヒトと身分が違ううえ、婚約者までいると知るや、その喜びが一瞬にして狂気にがらりと反転。
彼女の凄さは、この狂気に説得力があること。
いや、驚きました。様式美としての狂気でなく、またケレンミあふれた狂気でもなく、こんな真に迫ったジゼルの狂乱は初めて観た。その姿からはジゼルの奈落の底にいるような激しい悲嘆が伝わってきて、思わず涙ぐんでしまいました。
正直、ジゼルのこの場面で泣くことがあろうとは思ってもいなかったので心底びっくりです。なんという表現力の凄まじさ。

これだけでも凄いのに、2幕のウィリ(精霊)になったら、ええええ、これが同じ人物かと思わせるほど、本当にこの世の者じゃない。そこだけ重力が完全になくなってる。

そして精霊になった彼女が最後まで守ったアルベルヒトとの別れ。目を伏せ、厳かに舞台を去るジゼルの深い愛情に、静かに感動したのでありました。
ああ、ええもん見たわぁ~。

観劇後、一緒に行ったAちゃんに興奮して喋りまくってて気がついたのですが、同じバレエファンでも見方ってそれぞれ違うのね。

彼女は、自称「肉体美フェチ」。たとえば、素晴らしいダンサーになればなるほど「そのヌードが見てみたい」と心のどこかで思うらしい。
彼女がオペラグラスを決して忘れず持ってくるのは、「その動いている筋肉のひとつひとつを見逃さないため」なんだそうな。そしてエトワールは「顔とスタイルがよくないとダメ」という持論も持ってる。

対して私は、その空間の支配率というか、遠くから見た時にそこから放たれる存在感にひたすら圧倒されたいタイプ。そのうえに、こちらの心を揺さぶるような幅広い表現力があれば、もう無敵。
顔のことなんか(ま、どの一流バレエ団もエトワールになると皆美しい人ばかりですが)気にしたこともなかった。当然素晴らしい技術には、必然的に驚異的な肉体美は備わっているものと考えているから、ヌードを観たいなんて発想は思い付かない。
同じ舞台を観ていても、感じる部分は違うんだなぁと、ちょっと面白かったわ。

しかし、今回久しぶりに古典を通しで観て思ったのだけど、全幕見るって大事ですね。
しかも古典なら古典で、ダンサーそれぞれの個性がとてもよく分ってみごたえがある。
当り前のことですが、あらためて、そう感じさせてくれました。

まさに眼福の極みとはこのこと。素晴らしいひとときでございました。

ディアナ・ビィシニョーワの「ジゼル」

 

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映画 秘義・十八武芸拳法(82年・香港)


このポスターにピンときたあなたに私は握手したい気持ちでいっぱいです(笑)。
実はこれ、あの成龍とジェット・リーが共演した「ドラゴン・キングダム」で主人公の少年の部屋の一番いいところに貼ってあった、OPクレジットで真っ先に登場するポスター。あの顔はまさに劉家良師父であります。

秘義・十八武芸拳法(82年・香港)

監督
劉家良(ラウ・カーリョン)

武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)
京柱(チン・チュウ)
小侯(シャオ・ホウ)

出演
劉家良(ラウ・カーリョン)
劉家榮(ラウ・カーウィン)
劉家輝(ラウ・カーフェイ/リュー・チャーフィー)
傅聲(アレクサンダー・フーシェン)
惠英紅(ベティ・ウェイ/クララ・ウェイ)
小侯(シャオ・ホウ)

ええと、ここに書いてないだけで、相も変わらず結構な数のクンフー映画(おもにショウブラ作品)を観まくっている私。
どのくらいかというと、多分、張徹(チャン・チェ)監督と楚原(チュー・ユアン)監督と劉家良(ラウ・カーリョン)監督と胡金銓(キン・フー)監督のそれぞれの特徴と作風の違いが分るようになった程度には。

あ、あと、ジミーさん(王羽)がクンフー好きにどういう立ち位置のスターかということを理解したくらいにも(笑)。
ジミーさんに関しては、私、結構な思い違いをしていたようでして(笑)。
彼の本質は「片腕必殺剣」や「大刺客」ではなく、「続・片腕必殺剣」以降が真骨頂だったのですねぇ。もうね、ここんとこ結構な王羽祭りでしたわ。ふぅ。

昔のクンフー映画を観ていると、その監督ごとに使う武術監督やスターが固定されていて(ユエン・ウーピンら袁家班やラウ・カーリョンの劉家班みたいに兄弟で固めているケースもある)出演者の名前を見ただけで誰が監督したのかすぐ分る。
そしてなんとなく、その作風も。

今回のこの「秘義・十八武芸拳法」は、そういう意味では実に劉家良らしい1本。
動く劉家良を観て以来、そのスキルの高さにすっかりヤラれてしまったので、彼に関してはすでにエコ贔屓の域に達しております。あの軽い感じの話運びも見やすくていい。

劉家班擁するスター達も傅聲(アレクサンダー・フーシェン)とかめちゃキュートだし、劉家輝はキレッキレだし、小侯は身軽だし、なんといっても惠英紅が可愛い。
今作では、その惠英紅の麗しい男装姿という自分にとっての大好物まであって嬉しい限り。

が、なんといってもこの作品は、原題「十八般武藝」が示す通り、劉家良師父が弟劉家榮とラストに繰り広げる、18種もの武器を次々に取り替えて魅せるバトルシーンがみどころ。
もうね、なんというアメージングな闘いでしょうか。
こういうのを観たかったぜ!それを叶えてくれたような兄弟バトルです。

しかも、ひとつひとつの武器が登場する度に、しっかりその名前がテロップで入るので、三節棍とか九節鞭(くせつべん)、雙拐(トンファー)くらいしか知らない自分のような人間には、資料的な意味でも大変ありがたい映画だ~。
武器なしの拳術のことを「白打」というのね、初めて知ったわ。
さっそく買って保存版にしようと思ったらアマゾンの中古ですら8000円越えという値段に断念。くそ~。

それにしても、師父の映画はあんまり人を殺さんなぁと感心します。いや、殺してはいるんだけど(笑)、他の監督と比べるとそれがあまり目立たないというか。

今作でも劉家良扮する主人公のレイ・クンは刺客を誰ひとり殺さずに自分の理念を説得しようとする。
師父の敵役ラスボスに弟設定が多いのは、映画とはいえ、自らむやみに殺したくないからか?とさえ想像するくらい。(兄弟なら殺さない言い訳はたつもんね)

これはあくまでも想像ですが、彼は本来の武術というのは決して人を傷つけるためのツールではないと、エンタメの世界に在籍しながら、心のどこかで頑なに抵抗しているのではないかとすら思うことがある。
実はなんとなく、そういう姿勢が本物の「武術家」を感じさせて好きな要素でもあるんですよね。

その出発点が、クンフー映画に初めてコメディを取り入れたという師父の作風に現れているのかもしれません。
本当に、永久保存版にするに足りうる素晴らしい記録です。

最後に、冒頭に書いた「秘義・十八武芸拳法」のポスターが記憶違いであったかどうかを「ドラゴン・キングダム」のOPクレジットで確認しようとしたら、原稿の締め切りもそっちのけで、結局そのまま最後まで全部観てしまいましたとさ(笑)。

十八般武藝予告編1
十八般武藝予告編2

ドラゴンキングダムオープニングクレジット

 

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ドン引きのゲン担ぎ

今年、球場観戦勝率が激しく悪くて、なんとなく足が遠のいてしまっている自分。

今日はメッセンジャー投手だから楽勝でしょ、と余裕こいて観戦してたら最短ノックアウトとか・・・勘弁してください(涙)。

自分のようなアホなタイガースファンはすぐゲンをかつぐので困ったものです。
別に自分が観に行ったからって負けるわけじゃない、そんなことは百も承知なのです。
また、そんなことを口に出して言うこと自体、非合理で迷信的で盲目的なこともよく分ってる。

なのに、なぜか「自分が観に行っては負けるのではないか」と
まるで勝敗の行方が自分にかかっているような錯覚を持っているから笑えちゃう。

昔、元タイガースの投手だった方に、
「ファンってほんまアホでこんなゲンかつぎするんすよ」
と2,3のファンの事例を話したことがあります。

「勝つまで好きなチョコレートを断つ」とか
「洗濯してる時に点が入ったので、そのまま試合を終わるまで洗濯をし続け、最後はするものがなくなったために、きれいなシーツまで洗うことになった」とか、
自分にしてみれば、よくいるタイプのタイガースファン。

しかし、それを聞いていた元投手は心底驚いた様子で、
まぁ、正直ドン引きしていたようにも見えました(笑)。

その気持ちは、とってもよく分ります。

と、理解しつつも、つい、自分もしてしまうんですよねぇ。

自宅で観戦時には音声を消して音楽を聞きながら画面だけタイガース戦、ということもよくあります。

そんな試合で、得点した攻撃中にたまたま聴いていた曲がものすごく景気の悪いジャンルの暗い曲だったがために、「これはイケる!(何がイケるかはまったくもって根拠なし)」とタイガース選手の打席の度に、最後は浅川マキやら70年代のプログレバンドまで総動員して試合終了を迎えた試合もあります(笑)。

またそれで(?)勝った日には妙な達成感があったりするから困りもの。

そんな自分には、今日のような9回裏に6点入れられてあわや同点かと言う試合は心底慌てます。
だって、そこまで追い上げられてはもうかつぐゲンなんか残っちゃいない。
最後はいたたまれずにテレビのスイッチを切ったり入れたり。ああ、アホです。

多分、この試合も自宅でなく球場で観ていた方がイライラしなかったでしょう。
不思議なもので球場にいたほうが冷静に見ることができる。

後半戦は「球場勝率」なんか気にせずもう少し足を運ぼう。

 

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仙台七夕花火祭り

8月5日に仙台七夕花火祭りの生放送の司会のお仕事をしてきました。

今年の花火祭りには色々な思いが込められています。
始まりは、第一部の「鎮魂」。
静かに一発一発を噛締めるようなリズムで幕を開けました。
震災後、日本のあちこちで花火大会を自粛する動きがありましたが、ここ仙台では無事に開催。
それも、たくさんの人達の決意と尽力があったからこそでしょうね。

素晴らしい花火祭りでした。
この祭りの花火を一手に引き受けたのは、仙台の芳賀火工。
あのシドニー五輪の閉会式でもアジア代表として花火を打ち上げたという花火師。
花火の解説をしてくれた小西亨一郎さんによると「スターマインの帝王」なんだそうです。スターマインの帝王、響きがいいですね!
ゲストは、その解説の小西さんと、俳優の佐藤隆太さん、司会は東京プリンの牧野隆志さんと仙台放送広瀬修一アナウンサー。

牧野さんはもう3年、仙台で毎週番組をしていらっしゃるとかで、その言葉のひとつひとつに、この街への思い入れや愛情を深く感じました。

自分もたくさんの場所で花火を観たり、TV番組にも出させていただいたことがあります。けれど今年のこの花火祭りが今までで一番印象に残るものになりました。
毎年行われていることが、また普通にこうしてある、それがどれほど大切なことか。
来年、再来年、またこの花火が美しく打ち上げられますように。

さて、花火と言うと毎年、なんだかんだいって欠かさずに観ているのが夏休み期間中の神宮球場のヤクルト戦5回終了後の花火。
こちらの規模は仙台とは比べ物にもなりませんが、それでも毎年の恒例です。
先週の土曜に行ってきました、神宮球場。
残念ながら試合はぼろ負け(涙)。

でも花火は綺麗でしたよ、花火はね。

さすが首位のヤクルト。
いつにもましてヤクファンが多く駆け付け、ブイブイ傘を振り回してる。
残念ながら、その夜のタイガースはいいとこなし。
今年、非常に球場勝率が悪いのが気になります。とほほ、どうしたもんだか。

 

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配音演員

中国の映画は大きく分けて3種類。
中国内地の制作作品と、香港映画、そして中国と香港や台湾との合作映画。
大作になればなるほど、監督と主演クラスの男優を香港から選び、そして大陸のアイドル系男優を脇に置いて、同じく内地の美人女優で花を添え(むこうでは何故かそういう女優を花瓶という言い方をするのね、分るような分んないような)上海や北京のでかいスタジオで撮影、というパターンが、とても目立つ。

合作作品は内地と香港(一部広東省のように広東語を話す地域もある)そして台湾で公開されることが多いので、よく普通話と広東語の音声2バージョンが作られます。
そこで必要になってくるのが吹き替え。

両方を上手に話す俳優もたくさんいますが、なかにはドニー・イェン主演の最新作「武侠」のようにドニーさん広東語、金城君怪しい四川語、タンウエイさん普通話と、現場ではてんでバラバラの言葉で3人が一緒に芝居をしているということも特別不思議な話じゃないのかも(笑)。おもしろいなぁ、一回見てみたい、そんな現場。

いずれにしても役者としては慣れた言葉で演技をするほうがずっといい、ということなんでしょうね。そういうケースになると、本人にせよ他人にせよ、どうせあとで吹き替えるんだし。

さて、そこでドニーさんの吹き替えの話になります。
前回、「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」日本公開が残念ながら広東語バージョンでない、そしてその普通話吹き替えはイップマンシリーズの声優さんじゃなかった、と書きました。
(イップマンシリーズ日本版のDVDやBDは広東語の本人の声と大塚芳忠さんの日本語吹き替えのみで、日本版には普通話バージョンはなし)

やはりできるだけ本人の声で観たいですもん。基本、私、香港映画は広東語音声のある香港版を取り寄せます。当然この映画もソフトを持ってるのですが、普通話にセットアップしたことがない。
そこで何の気なしに夕べ、この映画を自宅でもう一度今度は普通話バージョンで観てみました(笑)。
すると、あれ、このマンダリンって葉問師父と同じ声じゃなかろうか、と、やっと気がついたのです。なんで試写室では違う人に聞こえたんだろう。広東語じゃないショックでそう聞こえたのか?自分。

吹き替えの事を中国語で「配音」声優のことは「配音演員」と書きます。
普通話音声にほとんど設定しないという私ですが、なぜかイップマンシリーズだけは時々観る。
この葉問師父の吹き替えをしている声優がなかなかいいんですわ。
初めてこの配音を聞いた時、実は途中まで、てっきりドニーさん本人の声だと思ってしまったほど雰囲気が(あくまで雰囲気)似てるし、なんといっても元の俳優のニュアンスを汲みとるのが結構うまい。

考えたら、中国に返還される前後までの香港映画自体、同録どころかまったく別人のアフレコが主流だった。
そして白人が登場しようがベトナム、タイ、フィリピンでロケしようが、登場する人間は全員広東語を喋るのがお約束(笑)。
しかもドニーさんなんて、映画のたびに違う声だったし。
急に興味が湧いたので手持ちのソフトを確認してみたこところ、ドニーファンがスクリーンで彼の本当の声を聞いたのは1998年公開の「COOL」が初めてのようで。(それ以前では、TVドラマの場合のみ本人の声)

「この声似てるな」とにかく、そう思ったら最後、普通話の葉問師父と陳真が同じ声なのかどうか、めっちゃ気になって気になって(笑)。
早速、「イップマン序章」と「イップマン」の香港DVDのエンドクレジット確認。なのに、そこには肝心な配音の名前がどこにもない。勿論、「レジェンド・オブ・フィスト」のほうも演員名はなし。

これはひょっとして、配音演員蔑ろ?
そこで最近の作品のクレジットも一通り観てみたけど、唯一クレジットがあったのは凌雲というドニーさんの配音員名が出た「関雲長」のみ。

「最強囍事」にもクレジットはなかったけど、この自分でもわかるくらい葉問とは完全に別の人。「処刑剣14BLADES」のアフレコは似てるようなないような、ちょっと微妙。てか、この映画、予告どころか本編にもドニーさんほとんど長い台詞ないじゃん(笑)。

しかも驚くことに、これらの映画のエンドロール、本来は重要なはずの配音演員など、なかったみたいに忘れられてるものばっかりです。
で、そうかと思えばドライバーとか現場茶水スタッフの名前はしっかりクレジットにあったりするんだぜ!本末転倒と思うのは自分だけか?絶対におかしいでしょ、それ(笑)。

んで、そんなことをチマチマしてるうちにハタと気がついた。目の前の箱は一体何のためにあるのだと(笑)。
さっそく検索してみました。「甄子丹 配音演員」で。
そしたら、あっさり出てきちゃった。イップマンシリーズの配音演員は陳浩(チェン・ハオ)という俳優さん
そして「レジェンド・オブ・フィスト」もやはり同じ彼が吹き替えていました。この苦労した数時間をどうしてくれようか。とほほ。
しかもニュースによっては「甄子丹御用配音」とか思いっきり書かれてるし。ひ、ひょっとして常識!?
もちろん、甄子丹以外の有名どころも吹き替えてて、話題のゲームなどでも活躍してるお人。記事には陳浩老師なんて書かれる売れっ子人気声優なのでありました。

声とその演技から、ドニーさんより少し若いくらいの年齢なのかと想像していたら、この写真を見て2度驚き。めっさ若いやん!

もうこうなったら意地だ。ほかのドニー作品も調べてやる~。

「セブンソード」甄子丹(後にも先にも1本きり。つか、印象的なシーンはほとんどドニーさんの怪しい韓国語だしな。これって広東語版あるの?)※追記HEROとシャンハイナイトでも少し普通話喋ってました、失礼。
「かちこみ!ドラゴンタイガーゲート」杜燕歌(日本版にはこの普通話配音なし。本人の広東語のみ)
「エンプレス 運命の戦い」章劼(日本版DVDはこれと日本語吹き替えになる)
「画皮」章劼(香港版にもなぜか広東語配音なし。さっきのサイトに陳浩とあるけど、多分間違いじゃないかと。章劼のページを読んだら、彼もまた画皮の甄子丹を担当したとある。聞き比べた結果、エンプレスと同じ人じゃないかと思いました)
「処刑剣14BLADES」徐敏(日本公開したものは、残念ながらこの吹き替えバージョン。よってソフトが日本発売されても広東語バージョンはつかない可能性大)
「最強囍事」桂楠(広東語の方は当然ドニー本人。しかし日本公開ならびにソフト発売は難しそうです)
「関雲長」凌雲(香港版のみ広東語ありそちらも本人。姜文の広東語配音、実はラウ・チンが担当したそうですが姜文のあの迫力にはちと及ばず)
セブンソード以降、あとはみんな陳浩。

だから激しく何なんだって情報(笑)。

ドラゴンタイガーゲート、つーか龍虎門なんか、はるか大昔に買ったDVDなのに今日初めて普通話で観たわぁ~(笑)。こうやって一挙に聞いてみると、やっぱり老師の声がドニーさんに一番合ってると思う、自分は。

さて、注目のドニー・イェン最新作の「武侠」ですが、予告で聞こえてくるあの声も当然ながら陳浩老師。(←最初の数行にその記述あり。記事の中身は配音演員は結構冷遇されてるって可哀そうなネタ)いやぁエエ声ですわ、当然本人の喋る広東語も楽しみですが、それだと金城君の四川語が聞けないので、この普通話版も同じくらいに楽しみです。早くソフト発売にならんかなぁ~。

と、お休みの今日は予期せぬドニー映画普通話配音祭りになってしまいました。
さんざん好きなシーンを陳浩老師の声でマッハ連続上映したからでしょうか、一気に親近感が湧き、にわかに彼のファンになりそうです(笑)。

いっそのこと「関雲長」もこの人に配音してほしかったなぁ。
でも関羽だしなぁ、古装物の演技ができる人がいいと判断されちゃったかな。
6本も吹き替えしてるから相当呼吸は掴んでる気がする。こういうのって大切ですよね。「武侠」では一層ぐっとくる普通話の劉金喜と唐龍が観られますように。

最後にまたまた余談ですが、この件で、ものごっつい久しぶりに「セブンソード」を観たら、レオン・ライから美味しいとこを横取りするまさに直前のシーン。
由龍剣を持った孫紅雷と鎖をつけたまま素手で闘うドニーさんを見ていて、「お、カニばさみくるー?・・・・こねー!」「おい、ここは飛びつき腕十字やろ!はやくはやく」とことごとく、そのタイミングを逃した(SPL以降、古い作品を見るとそう思うことが時々ある)ロン毛の楚昭南に少しイラっときたのはここだけの秘密(笑)。

アクション監督は特別出演もした劉家良師父。武術指導に熊欣欣と董瑋アシスタントが、ものすごい豪華すぎる。さすが大師傅です。

それにしても、私のこの執念と集中力をもう少し仕事とか普段の生活とかに活かせないものでしょうか。ま、楽しんだからいいのか。
また誰にも披露することのない、たとえ披露したところで感心も共感もされない(笑)ウンチクだけがこうして増えてゆくわけでございますね。

葉問2 甄子丹生声広東語予告
葉問2 陳浩配音普通話予告

おまけ
なんと甄子丹のCMも老師が配音していたりする
一緒に出演しているのは、谷垣さんとともに甄子丹動作導演作のほとんどに参加している シンガポール人の厳華(イム・ワー)さん。

追記:
「孫文の義士団」クレジットにも、どの役かまではなかったけど、名前が載ってました。
甄子丹の声はやはり葉問と同じ陳浩。賭博場のシーンなんかまったく違和感なし!
(日本で発売されたソフトは、この陳浩版普通話と、東地宏樹さんの日本語吹き替えのみ)

時間が経ってからの追記その2:
実はその陳浩さんの珍しく動いてる姿を偶然に見つけました。しかも、かなり魅力的な内容で。
タイトルは「声優陳浩-葉問(甄子丹)とスポンジボブの会話」

この人、なんとアニメのスポンジボブの声も担当してたんですわ。
そこでこのネタ(笑)
€配音员陈浩-叶问(甄子丹)和海绵宝宝对话

これは自分的には相当アガる映像。1人2役!しかもルイス・ファンがスポンジボブ。
もし私が彼の友人なら飲み会の度に「葉問やってくれ、ほら、あのあそこの台詞!」って無茶ブリするだろうな。彼もひょっとしたら、そういう失礼な奴にやらされているかもしれません。
耳元で聞いてみたいぞ。

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Le retour du Grand Maître

 

 

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映画 譲子弾飛(2010年・香港)

譲子弾飛(2010年・香港)

監督
姜文(チアン・ウェン)

出演
姜文(チアン・ウェン)
葛優(グォ・ヨウ)
周潤發(チョウ・ユンファ)
劉嘉玲(カリーナ・ラウ)
陳坤(チェン・クン)

音楽
久石譲

昨年の年末に公開されるや、大ヒットとなったチアン・ウェンの新作。
いや、とにかく、おもしろかった。
台詞がいいとか中国の革命後100年を凝縮したとか評論されていたりするのだけれど、そんなことよく分らなくてもおもしろいものは、おもしろいという見本のような映画。
簡単に説明すると、元革命家の匪賊(姜文)と詐欺師(葛優)と権力者(周潤發)の3人の男たちの戦いをユーモアと皮肉たっぷりに描いたエンターティメント映画。
その戦いから透けて見える正義と理想と矛盾と欺瞞と人間臭さ。

スタイリッシュな映像なのにエネルギーに満ちあふれていて、観ている方をグイグイ引っ張る力がある。

それにしても、中国には個性的な俳優がたくさんいるなぁと、つくづく思う。
詐欺師を演じた葛優(グォ・ヨウ)は初見でしたが非常によかった。
(※あとで調べたら、結構彼の出演作観てました。私のボンクラ度もさることながら、さすが名役者、全然風情が違う、ということにさせてください。すんません)
チョウ・ユンファも主役の一人として出演。ユンファは最近食指の動かない作品が多かったので、こういう映画に出てくれて、とても嬉しい。

この2人にチアン・ウェンを加えた3人が酒を酌み交わしながら円卓を囲む場面は、言葉のさっぱりわからない自分にも、腹をさぐりあう緊張感とほかの人間を出しぬこうとする狡猾さにあふれていて見入ってしまう。
それにしても、姜文相手に一歩も引けを取らない葛優とユンファって・・・お金を払った甲斐がある、そう思わせてくれる男たちです。

アクションあり派手な演出あり心理的な駆け引きあり、それだけでも見ていて興奮するうえに、対立構図、キャラクターの分りやすさから透けて見えるシニカルさとアイロニカルは、たとえ言葉がよくわからなくても言葉を超えて伝わってくる。
その部分が伝わると、こう、興奮した気持ちにピシャっと冷水をかけられたような気分になるのだけど、それが不快じゃなく、むしろサウナの水風呂みたいなもので、爽快に感じてしまうから不思議だ。

これで言葉が分ったら、そして肌で現代中国社会を感じていたら、これよりも何倍ももっと面白いわけですよね。すごい。中国で大ヒットしたのも頷ける。

それにしても、チアン・ウェン、彼は本当に素晴らしい。
映画作りはもちろん、この作品で検閲を通ったって意味でも。

そういえば「鬼が来た!」のときも検閲許可を得ないでカンヌに出して、そのうえに修正要請にも応えなかったために長い間、監督させてもらえなかった。そういう部分にも尊敬を集める要因があるんでしょうね。

続編も作られるとかいう噂ですが、もし作られるなら今度はどんな俳優を使うんだろう、姜文とは本当に次作が楽しみな映画人です。

さて、観終わった後に色々情報を調べていたら、おもしろい記事を見つけました。
これによると冒頭とラストに出てくる白馬が引く列車、馬列車(マーリエチュー)は馬列主義(マーリエチューイ)、つまりマルクス・レーニン主義という比喩だったのですねぇ。
ラスト、その馬列車を見送る姜文が寂しそうに見えたのは、そういうことだったのだと理解した次第。ほんと、日本語字幕でもう一度観てみたいものです。

譲子弾飛予告
譲子弾飛最終予告編
さらば復讐の狼たちよ(2010年・香港中国)←のちに日本語字幕で観たレビュー

劇中、一番衣装のお色直しをしたのは姜文、その人。

いやはや、今作でもセクシーだったわ、マジで。

 

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叔父夫婦に会う

いやはや昨日今日と久しぶりに暑くて、ちょっと身体がついて行かない。
昨日は母と一緒に、兵庫県塚口に住む叔父夫婦のところにお邪魔しました。
叔父は二年前に大病し、一時は生死をさまよった時期もあったほどです。けれど、今年はすでに仕事にも復帰し昨年よりもずっと元気そう。よかった。
そこで従弟やその家族、また母の妹である叔母やその孫にあたる従妹の長女などにも会えてかなりお得な訪問になりました。お母さん、誘ってくれてありがとう。

さて、そんななか初めて会った昨年11月に誕生したばかりの従弟の次女は、8カ月で生まれてしまった超未熟児。まだ肺も目もちきんと出来上がってない状態のなか、ドクターたちの懸命な治療によって持ち直したと言うラッキーガール。直後はみんな、本当に大変なことだったと話には聞いていました。
けど、昨日見たらすっかり元気に大きくなっていて心から安心。今や同じ歳の赤ちゃんより大きいそうです。いい意味でふてぶてしそうな子で(笑)苦労してこの世に生まれて来たのだから「将来大物になるかも」と母と二人で同じ感想をもってしまいました。

かと思うと、若くして亡くなってしまう命も。
出演した情報ライブミヤネ屋でサッカー日本代表でもあった松田直樹さんが入院先の病院で亡くなるというニュースが飛び込んできました。
たくさんの方々の無念のコメントを聞いていても、誰しもがその早すぎる死にショックを受け、悼んでいるのが分る。
ピッチを駆けまわったDFに、謹んで哀悼の意を表します。

この彼の死は、34歳で心筋梗塞、しかもトップアスリートが、ということで日本中におおきな衝撃を与えた模様です。
番組中、専門家が来て色々説明してくれたのですが、若年でそういうことも少なくはないのだとか。
そんな話を聞きながらコメンテーター席で「検診が大事っていうけど、心臓の検診ってどういうのかね」という話題になりました。
「よくある検診の心電図くらいじゃダメなんだよね?」「MRIとかCTとかって脳とか内臓、血管とかの検査は知ってるけど心臓の血管もわかるのかな」「カテーテルを入れるとか?」←これは私。心臓と言うと条件反射的にカテーテルしか思い浮かばない(汗)。
結局、春川さん、やくみつるさん、私と、いい大人が3人もいて誰も心臓のくわしい検診の仕方がわからないことが判明。

そこで帰宅して、メールチェックのついでに心臓検診の事を少し見てみました。
まず、胸部X線撮影と心電図検査、血圧脈測定、ここまではよくある健康診断。詳しく調べるためには、そのうえに運動しながら心電図をとり、超音波をあてて心エコーで心臓や弁の動きを測定、そのうえで冠動脈造影CT検査をするのだという。

いざこうして文章にすると「さもありなん」ですが、その時はみんなして思い付かなかった。
最近では造影剤を使わずに冠動脈石灰化を診る冠動脈単純CT検査などというのもあるそうです。

ちなみに自分の覗いた病院のサイトでは冠動脈CTコースは日帰りで8万円。母が私の誕生日のプレゼントにいつも「人間ドッグをプレゼントする」と言うのですが、なんとなくその気持ちが分った一日でした。

 

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フラメンコ@日比谷野音

先週末、友人のAちゃんが誘ってくれたフラメンコを観に日比谷野音に行ってきました。
実はつい最近、アメリカンバレエシアターの公演を仕事で断念したばかり。んもー絶対に行くんだから!という気合充分。

観に行ったのは小松原庸子(ようこ)スペイン舞踊団第41回公演「真夏の夜のフラメンコ」
小松原庸子さんというと、日本のフラメンコ界の礎を築いた第一人者。
常磐津勝蔵の娘として(兄は俳優菅原謙次さん)幼いころから日本舞踊や三味線に親しみ、クラシックバレエも習ったのちに女優として俳優座に。
そんな小松原さんが伝説のバイラオーラ(女性の踊り手)ピラール・ロペス日本公演に衝撃を受けたのは1959年。その後スペインに渡り、修行を重ねて帰国後、小松原庸子スペイン舞踊研究所そして舞踊団を結成し、以来多くの舞踊手を育ててきました。

今回は東日本大震災復興支援チャリティーフェスティバルと銘打って、クリスティーナ・オヨス、マロノ・マリン、アントニオ・カナレスなどなどフラメンコ界の重鎮ともいえるような豪華な顔ぶれがゲスト。皆、日本のためにとボランティアで来日してくれたのだそう。
(残念ながらアントニオ・マルケスは怪我のため来られず)

それほどフラメンコに明るくなくても、クリスティーナ・オヨスの名を聞いたことのある人は多いでしょう。
あのアントニオ・ガデスという超カリスマバイラオール(男性の踊り手)の長年の相手役であり、カルロス・サウラ監督の映画「血の婚礼」や「カルメン」などにもガデスとともに出演(幸い私は両方とも当時映画館で見ることができました)、バルセロナ五輪の閉会式で堂々と踊りを披露したスペインの宝のおひとりです。

映画「カルメン」より
バルセロナ五輪閉会式でのクリスティーナ・オヨス

お天気大丈夫かなぁ、と心配したものの友人も私も超晴れ女。
未明の雨も上がり「ま、降らんでしょう」と根拠のない自信を持つふたりです。
野音の湿った石のベンチも持参した阪神タイガースと楽天イーグルスのロゴ入り折りたたみクッションで解決。「用意がいい、えらい!」と誉められてえっへん。
こちとら野球観戦で雨の準備は慣れておりますよ。

真夏だというのに、このところ涼しい日が続いていて、野外音楽堂を吹き抜ける風も心地よい。ほんの数日前に申し込んだチケットは割引価格でなんと2000円。当然一番後ろの席でしたが、これくらいのキャパなら別に問題ないし、なによりこのメンバーをそんなお得な価格で見られるなんてビックリするくらいラッキー。

さて、そんななか観たフラメンコは本当に素晴らしかった。
舞踊団のメンバーはもちろんのこと、アントニオ・カナレスのシギリージャでは嘆きの歌声にのせたそのサパテアード(靴音)から怒りや悲しみが強く伝わってきて、こちらもつい、3月11日からの様々なことを思い出し胸がつまってしまいました。

アントニオ・カナレスのシギリージャ

一転、小松原さんが日本人として初めての生徒だったという御大、ロマノ・マリンのアグレリアスには生きる喜びがあふれている。
正確な年齢は存じませんが、一見したところ結構なお歳に思えました。
それ故でしょうか、若い舞踊手と楽しそうに踊る姿には人生に対しての深い愛情と、同時に彼らに対する暖かい眼差しがにじみ出ている気がして心から楽しかった。

1989年のマロノ・マリン

そして終盤では今回のチャリティショーのために彼女自身が振りつけたブラセオ・ボル・ハポンをクリスティーナ・オヨスが披露する。
ハポンはスペイン語で日本、ブラセオとはフラメンコ用語で腕の動きを意味します。

1946年生まれの彼女は、もちろん激しい踊りではありませんでしたが、そのタイトルの通り腕と上半身の動作を中心に、瞬時にして空間すべてを支配してしまいます。
私たちと同じ手の大きさなはずなのに、遠くからでもその手がまるで巨大な何かのように見えてくるから不思議。なんという存在感でしょうか。

1974年のクリスティーナ・オヨスとアントニオ・ガデス

実に楽しくて、気分がよくて、公演中何度も何度もたくさんのスタオベを繰り返してしまいました。

終演後、友人と有楽町で食事をしたのですが、その席で話題になったのは、これだけのゲストを集めることが出来る小松原庸子さんというのは凄いお人なんだな、ということ。
途中、彼女がマイクを持って「このような人達が日本のためにわざわざ来日してくださった、日本を思う気持ちに心から感謝します」と涙交じりに語りました。
調べてみると、ロマノさんのレッスンを受けたことのある日本の舞踊手はとても多いのですね。もちろんオヨスさんも何度も公演で来日しているし、日本でワークショップを開いたりもしている。
一方カナレスさんはこのステージの後、宮城を旅行するとスペインのサイトで読みました。公演で訪れたあの場所にもう一度行きたいのだとか。

日本と縁の深い人達であると同時に、それはやはり小松原さんの実績、そしてお人柄が結実したものだったんでしょうねぇ、というのが私たちふたりのなかでの感想になりました。

さて、帰宅してすぐさま、色々フラメンコの事について調べてしまった凝り性の私(笑)。
ロマノさんのアレグリアスがとても好きになったので、色々な人のアレグリアスを捜してしまいました。せっかくなのでここに少し残しておきます。

ホアキン・グリロ
エバ・ジェルバブエナ
ダニエル・ナバーロ
メルセデス・ルイス
ファルキート
マリオ・マジャ&カルメン・モーラ

 

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伊良部秀輝投手の悲報

今朝起きて、ニュースを見たら「伊良部秀輝さん自宅で自殺か」という情報が飛び込んできました。

なんというか、言葉がありません。
親御さんが現地に到着してないことで本人確認がまだのため、正式発表ではないので、じっと静観していましたが、午後になってロッテ在籍時代のバレンタイン監督が談話を「ESPN」に発表したことから分る通り、残念ながらほぼ確実なことのようです。

伊良部投手というとタイガースファンにとっては18年ぶりの2003年優勝の立役者のひとりであります。
彼は移籍後甲子園での初お立ち台で、「甲子園の歓声ははるか彼方まで聞こえると知っています。甲子園の応援は世界一です」と言って一気にファンのハートをがっちりとつかみました。
だって、そうじゃないですか。ロッテでの実力はもちろん、日本最速男としてヤンキースに入団し、そこでチャンピオンリングまで手にした投手です。
そんな男から「甲子園は世界一」と誉められて喜ばないタイガースファンはいるでしょうか。
彼はおべんちゃらでそういう男ではありません。その証拠に、その後何度アナウンサーが同じ言葉を引き出そうとしても、結局最初の一度きりしか、その話をしませんでした。

この、「伊良部いい人説」には前振りがあって、キャンプもまだ始まらない頃、同時期にタイガースに移籍した下柳投手の入団が決まった直後です。新幹線で彼と初めて出会った際のこんなエピソードがあります。
歳は当然下さんのほうが上ですが、その場で「先輩、どうぞよろしくお願いします」と自分から挨拶に来てくれた伊良部さんに「安心した」と語った話が新聞に載りました。
それを読んで同業者からそこまで警戒されてたって、日本で過去どんな選手やってん、と思ったと同時に、その時の下さんの印象と同じく、当時のタイガースファンは「アイツ、ほんまはエエ奴なんやん!」と伊良部投手に瞬時に愛着を持ったものです。

とっつきにくい印象のある彼ですが、タイガース現役中はずっと後輩投手に「フォームのミリ単位の正確さ、配球の大切さ、打者との駆け引き、自分が死球を出すことの重要さ」を説き、当時の後輩に大変慕われていたと聞いています。
配球を「ロケーション」などという言葉で表現したのも、この日本プロ野球界で過去も現在も伊良部投手だけだったのではないでしょうか。

私はタイガースファンです。
たくさんの選手を見てきました。そんな数多くの選手でも、優勝に貢献してくれた選手には格別の思い入れが、やはりあります。
晩年の彼がどんな悩みや苦しみを抱えていたか、残念ながら知る由はありません。けれど、引退後の彼の行動を見ていて、野球が好きだ、野球にずっと関わりたいと願っていたことだけは理解できました。
そして、一方でそんな引退後の彼の別の行動が野球を愛する人として相応しかったのかどうか、それを一方的に判断する人に正直なりたくないし、またできる立場でもありません。

ただ、言えることはただひとつ。
2003年の優勝をありがとう、伊良部秀輝投手。

あなたのプレートからちょいとつま先を上げるフォームはすごく格好良かった。そして球によってプレートをずらして使い分けたり、一球一球のロケーションを考えミリ単位までその一球を言葉で説明できる、あなたの聡明さがとっても好きでした。

42歳という若さを思うと無念です。
自分とさほど変わらない年齢を思うと様々な思いも去来しますが、想像の範囲でしかない以上は書くことはできませんし、なにがあったとしても2003年の13勝8敗の成績が色あせることもありません。

ヤンキースでは伊良部投手の死去を受けて「深い悲しみを覚えている。ピンストライプのユニホームを着た選手は全員、永遠にヤンキーファミリーの一員」との声明文を発表した、とニュースで読みました。
阪神球団が彼をどう扱うかは知りませんが、私の気持ちはヤンキースと同じです。一度でもタイガースの縦縞を着た選手、まして優勝に貢献した選手は永遠にタイガースの一員です。

私は、この先もずっとあなたのことを忘れません。

 

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