さらば復讐の狼たちよ(2010年・香港中国)

昨年観た映画「譲子弾飛」が「さらば復讐の狼たちよ」という邦題で2012年、7月6日よりロードショウ公開されることになりました。

数少ない経験のくせに日本では観られないだろうと思いこみ、さっさと香港版を買ったのですが、どうやらここへきて中華系の映画が結構公開されるようになってきたようで、嬉しいことに最近、その勘がことごとく外れております。

そこで、試写に行ってきましたよ。
それにしても、日本語字幕ってありがたい・・・。今までさっぱり分らんかった台詞が画面をリラックスして観てるだけで分るって感激。

さて、あらためてこの映画、イントロダクションが最高にかっこいい。
山間を疾走する馬列車の客車では名優葛優(グォ・ヨウ)と影后劉嘉玲(カリーナ・ラウ)と、ここでは役者として登場の映画監督馮小剛(フォン・シャオガン)が幸せそうに歌っちゃってます。
時代は辛亥革命後の1920年。火鍋を囲みつつ赤ワインを飲む3人。台詞では史記の話も。

その列車を馬に乗った7人の匪賊が襲う。こいつらのビジュアルがすんごくイカしてまっせ。
うっひょう!マカロニウェスタン!とスピードとCGを上手く使った荒々しさ。それだけでこの活劇のスケールの大きさを予感させ観客をその世界にグイグイ引っ張ってゆく。
またこの時の姜文(チアン・ウェン)の小憎たらしいくらいにしびれる登場の仕方。

まぁ実際、この作品では姜文がいちいち本当に素晴らしくセクシーでカッコいいわけですよ。
いや、もちろん葛優の演技はマーべラスだし、なんて言っても周潤發(チョウ・ユンファ)の怪演+2役が光り輝いてます。彼が演じれば悪の権化のような権力者も魅力に溢れるからさすが。せっかくのユンファを上手に生かしきれなかったブラッカイマーさんには、これを観て反省していただきたいくらいです。

が、やはり中国一いっちゃった映画人の姜文。満を持しての監督ですもん、気がつけばすべてはオレ様のために。
考えればこの世で監督と主演両方こなす映画人は数あれど、あの葛優、周潤發、劉嘉玲や結構な人数の若手スターを配してなお、ここまでのオレ様映画を面の皮厚く撮りきり、その上にこれほど面白く見せる人はそう多くあるまい。それだけでイリュージョン感満載。

なお、唯一残念だったことがあるとすれば、せっかくのカリーナ様。非常にいいキャラでそのあとの展開をすごく期待してしまっただけに、もったいなかったか。
自分の嫁(周韵/ジョウ・ユィン、孫文の義士団でニコラス・ツェーが惚れたお嬢さんね)以外はあまりまともに女性を描かないところが、オレ様な姜文の弱点といえば弱点なのかもしれません。

お、そういえば今年の夏公開の「画皮 あやかしの恋」にも出演している陳坤(チェン・クン)が二枚目な役ではなく、すごく性格の悪い卑怯で嫌味な男を演じていてすごくハマってました。彼、絶対こういう役の方が魅惑的。

中国内地では中国革命から現代までを揶揄した映画と評判を呼び、台詞に対する解釈やショットのひとつひとつの深読みに観客がネットで大論議を巻き起こしてリピーターが続出、驚くほどのメガヒットになりました。当然、日本語字幕がついていてもそこまでの深読みは自分にはできません。けれど、そんなことができなくても面白いのがこの映画の凄いところ。
「考えるな、感じろ」とはかのブルース・リー先生の言った言葉ですが、この映画はまさに考えなくてもあれよあれよという間に私を姜文のオレ様ワールドに引きずり込むパワーに満ちていました。

オヤジ好きは必見、若手の個性派イケメンも各種取り揃え、そしてもちろん漢というものにシンパシーを感じる人なら心のなかで何かが疼くこと間違いなし、そのうえ腐好きの方の琴線に触れそうな雰囲気が。アクションあり、ユーモアあり、有名映画のパロディあり、かなり強引なところもあるけれど、それもまた魅力だと思えれば問題なし。これだけ全方向にむけて喜ばれそうな映画も、ほんと珍しいかも。

現在、姜文はこの続編の撮影準備に入っているとか。今度はハリウッドと合作か?という噂も出ています。次はどんな役者を使うのか?めちゃめちゃ楽しみです。

あ、最後になりましたが久石譲さんのスコアがまた素晴らしくよろしいです。特にメインテーマは久石節でありながらニーノ・ロータを彷彿とさせ頭からしばらく離れないこと必至。

さらば復讐の狼たちよ公式サイト
「譲子弾飛」として観た時のレビュー
中国版「譲子弾飛」予告
中国版「譲子弾飛」最終予告編
US版「Let The Bullets Fly」 Official Trailer(これが一番好き)

 

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さらば復讐の狼たちよ(2010年・香港中国) への3件のフィードバック

  1. June のコメント:

    ママさんのご紹介 文章で読んでるだけでも「面白ろそう 観てみたい」って
    何やらワクワクしてきますね(笑)
    >漢というものにシンパシーを感じる人なら心のなかで何かが疼くこと間違いなし、>そのうえ腐好きの方の琴線に触れそうな雰囲気が
    ん~ ええわ~  
    更にコレ↓
    >今までさっぱり分らんかった台詞が画面をリラックスして観てるだけで分るって感激
    中文字幕やら英文字幕やらに切り替えながら 何度も同じシーンを見直しても分からなかった
    所がスッキリするのは本当に感激してしまいますよね 公開されたら是非楽しみたいと思います

    スッキリといえば 大分さかのぼったお話で申し訳ないのですが 1月の小刀会組曲
    のコメントを今頃読ませて頂いて すご~くスッキリ! あの曲やはり気になって
    おりました(1年に一度検索するというような 努力はできないのですけど)
    ありがとうございます

  2. 岐阜の『ともっち』 のコメント:

    いいなぁ~試写会。ウマやらしい・・?あれ・・(笑)?
    こういうの読むと絶対観たくなるのに・・やはり岐阜は田舎。
    こうなったら名古屋まで行くしか・・ないのかな?
    えっと、僕がいつもチェックしている映画の感想ブログの一つで、『捜査官X』を紹介している所がありましたのでこちらにURL貼り付けておきますね。
    http://ameblo.jp/kamiyamaz/entry-11235648510.html
    基本ネタバレですけど、平気です、僕は(笑)。

    • ケイコママ のコメント:

      Juneさま
      スッキリできたならよかったです。
      さらば復讐の狼たちよ、是非ごらんください、姜文マジかっこいいす。

      岐阜の『ともっち』 さま
      ブログご紹介ありがとうございます、その方文章がお上手ですねぇ。
      さらば・・・見る機会があるといいですね。

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