ハードコア(Hardcore Henry、2016年・露米)

初日に行った。観た。もうね、死ぬほどおもしろい。正直、これを読むより、参考にした公式サイトとGIZMODOジャパンの記事を読めば充分な気がしますが、一応記録として。

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この映画がシネコンでちゃんと終日かかったことに感激。
そもそもは全世界で再生回数1.2億を記録したという、ロシアのパンクバンドBiting Elbows(バイティング・エルボーズ)の”Bad Motherfucker”のミュージックビデオから端を発したプロジェクト。ビデオを監督したのが今作の監督でもある、バンドを率いるイリヤ・ナイシュラー。

加えて映画プロジェクト初期からクラウドファンディングサイトでキャンペーンを張り、短いクリップを製作して一部で絶大なる支持と資金を集めた話題作。そのおかげでシネコンだったのかな。なんにせよ、遠出しないで済んだのは助かりました。

イメージとしては武蔵野館とかで日にナイト1回って感じの作品なのに、すでに知名度が高いとはいえ、これを劇場でフルにかけると決断した館主の心意気を大いに誉め称えたいと思います。配給クロックワークスさん、よくがんばりました。公式サイトもよかった!ありがとうございます。お客さん入ってるかなぁとその後タイムスケジュールを眺める度に気になりましたよ。この映画は絶対にスクリーンで観た方がいい。

とりあえず全編一人称視点ということしか知らずに行きました。オープニングからカッコイイ音楽と、なかなか痛い映像満載で期待が膨らみます。ストーリーはあってないだろう、と覚悟しておりましたが、結構面白い展開で始終ニヤニヤしっぱなし。特にシャールト・コプリーの使い方がよかった。途中まで「彼等」が彼であるということに気が付かないボンヤリさとその芸達者さに驚愕。

普段ゲームをやらない自分には、いい意味でも悪い意味でも新鮮な映像で、何度も「うわ」とか「ぐえ」とか声が出てしまったのことよ。長尺一人称のカーチェイス、めっちゃめちゃ楽しかったなぁ。カーアクションが落ち着いた後の戦車の登場と馬には久々声出して笑った。そういや枝雀さんがよう言うとりましたなぁ、緊張と緩和。使用したカメラはGoProのみ。GoProは今作を全面的に支援したとか。ええコマーシャルですな。

とにかく、監督がやりたかったことがぎっしり詰まってる。ある種これぞ映画のあるべきひとつの姿。溢れんばかりのパッションが放射する熱に身を晒す、それが滅法気持ち良くて楽しかった!

それも、まずは「こいつにこれ(MVで見せた1人称)で映画を撮らせたい!」と思い連絡を取ったティムール・ベクマンベトフがエライ。そのプロデューサーの一切ブレない姿勢は、「ビッグバジェットではないものの十分な予算があり、プロデューサーに理解してもらえたのは本当に幸運でした、これが30日間の撮影では絶対に作れなかった」という監督の言葉に集約されるのではないでしょうか。実際撮影は112日間で、1年半のポストプロダクション、半年のひとりでの編集と、完成までに3年間かかったそうです。

また監督は「私たちがロシアにいたということも幸運だった」とも。同時に資金をクラウドファンディングで調達できたということが最も大きかったのかもしれません。

こういった形のアクション映画を観ると、ふと思うのが日本の事情。

「日本のアクションはなぁ、俳優をふくめ人材が今はもういないし」という愚痴を時々耳にする事があって、そのたびにいやいやそれは違うと激しく思うのです。

「最近のアクション」は「カット割りが多くて」「ワイヤーやCGがあるとイヤ」そういう志向の観客はオールドスクールのアクション映画を観ればよいでしょうからこの際ちょっと置いとくとして、日本にはアクション監督やコーディネーターなど人材はちゃんといます(スタントマンは足りないそうですが)。

俳優も日ごろから体を鍛え何かしらの格闘技を習得している人も少なくありません。いや、別に格闘技をしていなくても、ダンスでもいい。ダンサーはアクションがうまい、これは過去の映画で沢山の俳優が証明しております。正直、アクション製作の人材とアクションに適した編集者を揃えられれば、格闘技やダンスすら経験がなくても、やったるで精神(と体力)と演技力のある俳優女優ならば素晴らしいアクションにすることはできるのでは、と考えます。

では、足りないのは何か。

プロデューサー、スタジオ、監督のアクションへの理解。それに尽きるでのではないでしょうか。

アクションシーンには人手と時間とお金がかかり、しかも危険が伴う。オファーの際には「すっごいアクションを作りましょう!」と固い握手を交わしながらも、いつの間にか「・・・そこまで必要ですか?」と同じ口で現場に言い放ち、どんどんアクションの時間予算内容を削ってゆく制作者たちの話はよく耳にします。で、いざ公開となると「見どころは俳優○○が挑んだハードなアクション!」などとキャッチが並んだりする。そう謳うならせめてスタントコーディネーターの名前くらいちゃんと公式サイトに載せてくださーい。

バジェットの規模ではなく、アクションを作るというブレない覚悟、これがトップになければ面白いアクションシーンには、なかなかならないのです。人材や俳優の優劣なんてそのうんと後のお話。

今作『ハードコア』は、ロシアのパンクバンドのメンバーであり、また人気MVクリエイターでもあるイリヤ・ナイシュラー監督の底知れぬ才能と執念にあてられるとともに、それをちゃんと形にしてあげられたプロデューサーのティムール・ベクマンベトフが偉い。

とにかくすんごく面白かったし楽しかった。ラストファイトは笑いっぱなしでしたよ。しかし、この映像はある意味早い者勝ちでそうそう何度も使える手じゃないよなぁと思っていたら、当然ながらイリヤ監督は1人称の作品はもう作る気はないと言います。映画と、カナダのThe WeekndFalse Alarmという曲のMVでやり切ったというお考えのよう。ですよね!

今後も、新たな技術やメディアの交わりにより新しい表現方法は増えるはず。それをワクワクしながら待ちたい。そんな期待に胸がいっぱいになった1本でした。最高。

公式サイト
革命的一人称視点映画『ハードコア』のイリヤ・ナイシュラー監督にインタビュー:「映画史上誰も実現していないことがいくつかある作品だと思う」/ GIZMODOジャパン
始まりはこのMV:Biting Elbows – ‘Bad Motherfucker’ Official Music Videoから
The Weeknd – False Alarm(2016年)

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