狂獣 欲望の海域(狂獸:2017年、香港)

「お願いします(棒)」
「もっと心をこめて」
「・・・お願いします」
笑っちゃった。コントかよ。

なにかと色々格好いいとこ困ったとこが同居しておりましてね。一気に懐かしい気持ちになりました。フフフ、最終的には90年代の香港アクションムービーの味わい。

上映始まってすぐ日本語?と思ったら誰よりも早く登場した倉田保昭。渋い。
ほんと倉田さんは今、香港や中国大陸への出演がとても多い。長く中華圏で活躍されたキャリアが活き、再びこうして多くのオファーがくるということは一ファンとして大変うれしいことです。過去すでにノミネートはされておりますが、数年内には金像奨の助演男優賞を獲れそうなほどの雰囲気がすでに漂ってますよね。

さてさて、今一押しの武打星、張晉(マックス・チャン)の主演映画ですもの。
観ているこちらの期待もマックス(ああ、今まで何人のファンが同じことを書いたかしら)。

とにかく、さぁ、どんなアクションを見せてくれるんだ、めいっぱい痺れさせて欲しい!と祈るような気持ちでスクリーンを見つめる。

閉所でのアクションは少々照明が暗いものの、キメのポーズで赤や青のライトが差し色になってめっちゃクール。おおお、男前!とうっとりとしていると、警棒や懐中電灯を使い敵を薙ぎ倒してゆくのが素敵。アクション監督は李忠志(ニッキー・リー)。

今作を観ながら、あらためて感じました。
マックス・チャンは現在、華のある動きの出来る武打星の筆頭だ、と。
格闘シーンはもちろんですが、すれ違う車にギリギリ滑り込むとか。
身体能力の基準値が元からケタ違い!とばかりにガツンと見せつける動きが光る。さすがスタントマン出身。

これは明らかに、ドニーさんやウー・ジンくんとも違う個性です。もちろんマックスにはしっかりした武術の基礎があってのことなんですが、プラス、こういうアドバンテージがあるってすごく大切ではないでしょうか。

そして、この映画で相棒の刑事役を演じたのが『SPL 狼たちの処刑台』で一躍その名を日本に知らしめた吴樾(ウー・ユエ)。よろしいですねぇ。彼に関して正直に申し上げると、キャラクター的には処刑台のほうが断然好き。けれど動きとしては個人的にこちらのほうが好みだったかも。

これまでは大陸テレビドラマへの出演が多く、日本での知名度はなかったかもしれません。
が、なんといってもキャリアが長い。あの「陳真」を演じたことのある本格派武打星です。しかも演技が上手いときたら無敵。

ここ数年港中合作作品でよく見るなぁと思ったら、どうやら2014年に香港の事務所と契約を交わしたようで、今後ますます映画に出る機会は増えるはず。ファンの方は期待してください。

そして、この映画のサプライズはまだありました。

何も知らず、太保(タイポー)が出てきたのには腰抜かすかと思うほど驚いた。
彼は、成龍がゴールデンハーベストでガンガンヒット作を量産してた頃の成家班の中心メンバー。
「生きとったんか、ワレェ!」とスクリーンに向かって叫ぶところだったぜ。

この太保とその息子、そしてめっちゃ鬼畜なオーラ出しまくりの余文楽(ショーン・ユー)がよくってねぇ。ショーンはいつの間にあんなにムキムキになっておったのだ。
ビジュアルを初めて見たときから、これはイケるやんと感じておりましたが、動くとその200倍はよかった。

無表情で無慈悲に人を殺めるシークエンスなど、「コイツがラスボスなのね!」と、まさにマックス・チャンとウー・ユエにとって不足なし。

やがて相棒のウー・ユエが拉致され、人質を交換すべく駐車場で始まったアクションは、動きもさることながら「時間がない!」という緊張感が張り詰めていて見応えがありました。
本当、このあたりはマジ面白くて、これはひょっとしてすごい傑作を見ることになるのかもとワクワクしっ放しだったのですよね。

が、貴重な太保が死んでしまってから、なぜかガラリと変わってしまった映画のノリ。
破綻したキャラクターやストーリー程度で呆れていては香港映画などハナから観れないんで、そこは別に気にしない。

けれど、肝心のアクションがラストにむかうにつれ「あれれ?」となってしまったのが悔やまれました。

せっかくの最悪最凶鬼畜ショーン。
ラストファイトで死ぬほど格好良く、それこそスタントダブルを使いまくってでも派手なバトルシーンに仕上げてくれれば、台風船上水中も見なかったことにして盛り上がれたのではと、心から残念。

そう考えるとね、昔からよくある暴力刑事のテイストと後半失速するのまでふくめて、90年代の香港映画を思い起こさせ、懐かしい気持ちになってしまったのでした。

に、してもマックスは誰かに拒否られて悲しそうな顔をさせたら天下一品ですな。

すでに香港で公開されてる新作、イップ・マンのスピンオフ『葉問外傳:張天志』でもそんな表情がたくさん見られる予感がして楽しみ。

私は予告を数回再生したきりで我慢しておりますが、これ絶対に鉄板で面白いやつ。

袁和平(ユエン・ウーピン)先生は、間違いなく葉問シリーズからアクションの方向性を変えてくると思うんですよね。

功夫アクションに関しては何の問題もなく誤魔化しも必要ないマックス・チャンの一番の利点は、加えてワイヤーを使った動きが非常に上手いこと。それこそ、スタントマンとしての経験がものをいい、見事に彼の個性につながってる。

ウーピン先生との相性の良さはすでに『イップ・マン 継承』で確認済み。今、一番楽しみにしている作品だし、必ずヒットすると思う。

そういえば、ウー・ユエも来年公開予定の『葉問4』に出演するんですよね。
『SPL 狼たちの処刑台』でその個性を見極めたウィルソン・イップ監督だけに、ウー・ユエの参加にめちゃ期待しております。

さて、スピンオフのほかにはもう1本、フルーツ・チャン監督作『九龍不敗』も控えているマックス・チャン。こちらのアクション監督は董瑋(トン・ワイ)なので、まだまだ快進撃は続くはず!

狂獣 欲望の海域 : 作品情報 – 映画.com

狂獣 欲望の海域予告

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