導火線 小ネタ-ドニー・イェン 甄子丹

こんな小ネタをわざわざエントリーするのも何ですが、どこに追記すればいいのか分らないまま(実は以前書いたレビューにちょこちょこ追記してたりする)、ずいぶん時間が経ってしまったので、思い切ってこそっと残しておきます。

以前「葉問2/イップマン 葉問」のレビューを書いた時に、ウィルソン・イップ監督のインタビューをこう書きました。

>「自分はどこか天の邪鬼のところがあって、すんなりと予定調和とかは好きじゃない。<導火線>の時も(文字では確かに導火線となってたけど、これ多分監督がSPLと言い間違えたんだと思う)馬刑事を最後殺そうとしたら猛反対にあってしまった(でもアンタ結局殺したやんか!)。葉問2でも全員がスタンディングオベーションするのは嫌だったんだ。だから、どうしても1人席を立つ英国人を登場させたかった」
なんだかイップ監督らしいですね。

ところが・・・あれから「導火線」のアメリカ版DVD特典についてるドニー・イェンのコメンタリー(これはアメリカのDRAGON DYNASTYレーベル発売のものにしかついてない)を聞いていたら、ドニーさん本人が「この映画にはふたつのエンディングがあったのさ」と喋っていました。
「ウィルソンは二通りのエンディングを撮ったんだよ。ひとつはルイスの背後からレイ(ロイ)が近づいてきて僕を撃つ。でスローモーション。死んじゃうわけ」なのだとか。

あらら、「葉問2/イップマン葉問」レビューでてっきり監督がSPLと導火線を言い間違えたのかと思っていた自分が間違いだったんですね。すみません、イップ監督。
結局はプロデユーサーが「SPLでもそうだったのにまたやるの?」みたいな事になってもう一方のラストに落ち着いたようですが。まさか自分も同じことをしようと考えていたとは予測できませんでした(笑)。

正直そりゃ、みんな猛反対しますよね!また中国内地で公開できなくなるかもしれないじゃないですか~。だからこその2バージョンだったのかもしれませんが。
(中国共産党は、正義がワリをくって悪が逃げ伸びる、というのもすごく嫌うので検閲に引っ掛かりやすいらしいです。ま、あの野獣刑事が素直な正義かどうかは置いといて・・・いや、だからこその香港返還前が舞台なんだし)

なお、SPLに関しては香港では公開されたものの内地で公開されず。理由は恐らく上記のとおり。とはいえ中国のことなので、レジェンド・オブ・フィスト怒りの鉄拳香港版(業界風に言うとスペシャルエディション)と同じように最終的には内地で流通しまくっておりますが。
SPLが公開されなかったことについては、今年2012年にニューヨークで行われたアジア映画祭のインタビューでもドニーさんが話していました。

しかし葉問が実在の人物じゃなきゃ、序章のラスト多分殺したね、監督。いや、天の邪鬼としてはむしろ殺さなかったでしょうか?

・・・考えるのやめときます。

↓導火線エレベーターシーンの撮影風景。狭いとこにまぁたくさん男どもが(笑)

葉問2 (邦題)イップマン 葉問レビュー
導火線レビュー

おまけ
かつてCCTVで放送された「甄子丹、真子丹」
これに英字字幕を付けてCCTV-9 Documentary English がアップしてくれています。低画質の簡体字字幕でしか観たことがないのでこの英字字幕は助かりました。非常に内容の濃いドキュメンタリーかと思います、おすすめ。
07/09/2012 Movie legends-The art of action, Donnie Yen

と、書いてたら思い出しました。
中国のごく一部の甄子丹ファンが「インドの馬軍じゃん!」と喜んでいたインド、ヒンドゥー映画の「FORCE」の予告置いときます。
Force – Official Theatrical Trailer (2011)
インド映画だけに、馬軍(仮名)といえども御期待通り歌って踊ってます(笑)。
観たいわぁぁぁ。が、一番驚いたのはバイクは乗るもんじゃなく投げつけるものだったという懐の深さ、というか筋力の強さ。

 

カテゴリー: 甄子丹 | タグ: , , , , | 5件のコメント

蔵出し その5

やがて哀しき復讐者(2011年)

制作ジョニー・トー(杜琪峰)、監督ロー・ウィンチョン(羅永昌)、出演アンソニー・ウォン(黄秋生ツ黴€)、リッチー・レン( 任賢齊)。

アンソニー・ウォンが冷徹な不動産会社の社長。娘を誘拐され殺された彼が犯人に復讐を誓う。その部下であり、汚れ仕事を請け負う前科者にリッチー・レン。
試写に行ってきました。ストーリー的には割と力技な作品かもしれません。
会社どころか家族に対しても威圧的な父親が子を失って、自分でも忘れかけていた愛情の大きさにうろたえ悲しみに打ちひしがれる。アンソニー・ウォンの演技は相変わらずよかったです。対するリッチー・レンは脚本でもうひと押し人物像が深まれば、さらに素晴らしかったでしょうね。
秋生さんの部下を演じたTK役のチャーリー・ツァオ(曹査理)、物凄く久しぶりに観た気がします。印象に残ってるのはポリス・ストーリーでの悪役でしょうか。あまり変わっていなかったのに驚き。

それにしても父親の愛情ってのはなぁ。
すでに父を亡くしている自分としてはぐっとくるシーンがありました。
サスペンスですが、謎ときを過度に期待しないほうが楽しめるかもしれません。
やがて哀しき復讐者、その名は父親。その視点で是非。
<3つの刺激・感 ニュー香港ノワール・フェス>と題して、「強奪のトライアングル」「コンシェンス/裏切りの炎」とともに新宿武蔵野館にて2012年8月11日(土)より一挙公開。

続いては謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、張家輝(ニック・チョン)共演の二種。
ひとつは「ビーストストーカー/証人」(2008年)もうひとつは「財神客棧」(原題・日本未公開2011年)同じ俳優2人が主演なのにまったくもって作風、役が違う。おもしろいなぁ。
前者は林超賢(ダンテ・ラム)監督、そしてもう片方は王晶(ウォン・ジン)。それだけでどんな感じかは想像がつきますね。


「ビーストストーカー/証人」は随分前に劇場で観たのだけどレビューを書きそびれていました。
冒頭のカークラッシュがすごい。のっけからめっちゃくっちゃ興奮しました。飛車指導はブルース・ロウ。時間軸をバラバラと切り離しそれを最後に集約させる手法が見事。

ニック・チョンはこの作品で香港金像奨の主演男優賞を獲得、納得。
それもこれも人間をきちんと描こうしている姿勢があってこそ。その丁寧さ、またその描き方の一工夫はちょっと感激もの。
それにしても悲しい話でした。出てくる人、みんな悲しすぎる。しかも誘拐犯のニック・チョンがビジュアルも含め一番切なかった・・・こんな悲しいものがたりは久しぶりなくらいだ。
考えたらこの作品は2008年なんですよね。これから数年たって「密告者」なわけですよ。ニコラス・ツェーの演技の変化も色々感慨深い。

いつものように廖啓智(リウ・カイチー)がいい味出してました、大好き。

一方の「財神客棧」は、ニコラスにとって「孫文の義士団」その「密告者」「新少林寺」に続く2011年の作品。

あまりよい評判を聞いていなかったのだけど、ニック・チョンが香港名物つけ出っ歯をしているというのを知って、つい魔が差してしまいました(笑)。
考えたらニコラスとニック・チョンって影帝ふたりじゃないか!それをこんな風に使うとは・・・さすが王晶。一体何年制作の映画なんだろうと思わせるところがこの監督だ~としか言いようがない。
「なんという無駄遣い」と呆れるか「それを軽々やってのける俳優が素敵」ととるか、そこが分かれ目でしょうか。懐深いわ。

最近少しづつ王晶の映画を見る機会があって、慣れてきたのか結構楽しみました。相変わらずのパロディとか、バカバカしいギャグとか、スイッチが入ってしまえばコッチのモン的な切り替えが、やっとできるようになったのかもしれません(遅っ!)ニック・チョン激しくかわいい。
動作指導は元奎(ユン・ケイ)。そのせいかどうかラスボスは元徳(ユン・タク)。
以前、元徳さんのインタビューを読んだことがあって「こんなに重要な役とは思わなかった。少しのつもりで参加したら結構時間かかっちゃったよ!衣装も動きにくくてさ~」てなことを言っておられましたが、この映画のことだったのかな?記憶が曖昧。だとしたら七小福、元家班の先輩のためですから、仕方なかったっすね!それにしても、この人のコスプレ率高すぎ。

カンフー・サイボーグ(2009年)

監督ジェフ・ラウ(劉鎮偉)
ラッキーなことに知人から戴きました。予告を見て公開されたら行こうと思ってたのに行きそびれてしまっていた1本。キャストだけ知ってる程度だったんですが存外に面白くて。

ああ、ジェフ・ラウ、ジェフ・ラウ、ジェフ・ラウッ・・・!
途中から何度も声出して笑いました。この映画を言葉で説明するのは無理。
ただ「香港のトランスフォーマー」というイメージからは遥か斜め上をいくものであったとだけ書いておきます。なんったってロナルド・チェン(鄭中基)が、(こちらもまた)つけ出っ歯でっせ。昔っからどんだけ好きなんだ、つけ出っ葉が香港人(笑)

フー・ジュン(胡軍)はストーカーまがいの冴えないおっさんがびっくりするほど似合い、アレックス・フォン(方力申)のつるんとした顔が本当にロボットに見え、スン・リー(孫儷)は目が点になるくらい可愛くて、そしてウー・ジンツ黴€(呉京)がめちゃくちゃカッコイイ。正直タイトルロールはウー・ジンくんすよね、ね?ね?

そのうえラストは心からあっけにとられ、あやうく泣きそうになってしまいました。なんなんですか、ええ加減なこの好き勝手さは!ロー・ガーイン(羅家英)のオンリー・ユーで腹抱えて笑える人なら悪いことは言わない、明日にでも観てください。そうじゃない人は、まぁ、その。
武術指導はユン・タク(元徳)。売れっ子ですねぇ。
最後に・・・ 予告が、こんなに役に立たない作品もなかったよ!


と、最後と言いつつ・・・追記としてだらだら小ネタ。
そのウー・ジンくんが昨年ドラマで特殊部隊の隊員を演じた「我是特遘黒コ之国之利刃」
これがむこうで今年の8月に「利刃出鞘」ってタイトルで同じ監督によって映画になって公開されるらしいです。(これがどうやら2015年にヒットを飛ばした『戰狼』なんだと思います)
中国のドラマ事情にまったく疎いのですが、映画からドラマというのはよく聞きますけど日本と違ってドラマから映画というのは結構珍しいのでは・・・。人気ドラマだったんでしょうね。
もちろん主役はウー・ジン!ドラマはまったく観てないのでどんな役かわかりませんが久々の主役でしょうか?いい役だといいなぁ。当たり役こい!ヒットして欲しいです。

そしてもうお一人、ぜひ主役級になって欲しい俳優さんの鄒兆龍(コリン・チョウ)。
彼もこの7月12日に公開される「四大名捕」という陳嘉上(ゴードン・チャン)と秦小珍(ジャネット・チュン)共同監督の武侠映画に出演。
ここでコリンさん、めでたくやっと、やっと、やーっと悪役を卒業して正義の味方の一員。
長かったわ~。ほかの3人を食うくらいの役だといいな、気になって調べたら動作監督は谷軒昭(コク・ヒンチウ)かぁ。有名小説の武侠ものなので、ワイヤー使いまくりらしいですが・・・コリンのブレイクもこい!
(なお、これには「レジェンド・オブ・フィスト」で力石大佐を演じた木幡竜さんも出演しています)

ところでゴードン・チャンというと先に公開された「画皮2」がメガヒットしとるそうじゃありませんか。
なのに同じ監督作を同じ時期に公開するってどういうことなんでしょうね?俳優はたまにあるけど、一応監督作ですよ?昔ならいざ知らず、今でもむこうじゃよくあることなのかな。

訂正:やってしまいました。画皮2の監督をてっきりゴードン・チャンかと思いこんでいたら、実は大陸のCM出身の監督烏爾善でありました、ごめんなさい。彼は安藤政信さんも出演している「刀見笑」の監督もしています。
それにしても、木幡さん安藤さんといい、葉問の渋谷天馬さんや「3D肉蒲団」の葉山豪さんといい、日本人のみなさんの名前を本当によく見ます。蒼井そらさんはむこうで超人気アイドルだし!
そういえば、葉問で三浦将校だった池内博之さんも今年「甜心巧克力」で林志玲の恋人役を演じたのだとか。たくさんの日本人俳優女優さんの活躍ぶり凄いことですね!

カテゴリー: film, 功夫映画 | 3件のコメント

画皮 あやかしの恋-ドニー・イェン 甄子丹

試写に行ってきました。あらためてスクリーンで観たら女優、周迅(ジョウ・シュン)の素晴らしさに、とにかく圧倒されてしまいました。
彼女を初めて知ったのは「ウィンター・ソング」だったと思いますが、あの映画の演技に鳥肌が立ったことは忘れられません。凄味がある。女のズルさ不条理さを見せつけられてもなお吸引力を発揮する女優は本当に素敵です。この役もただの綺麗なもののけじゃありません。貞淑な妻よりも清濁併せ持っていてむしろ人間臭い、そこが最大の魅力。
対する趙薇(ヴィッキー・チャオ)も美しい。目がでっか!そのデカイ瞳に涙を一杯に溜めたクローズアップは彼女の最大のチャームポイント。
この画皮はふたりの女優を堪能する作品ですわ、としみじみ。綺麗だなー。
それに加えて孫儷(スン・リー)もキュートだしね。彼女の作品をそれほど観てるわけじゃないけど、こういう役の方が合ってる気がする。かわいい。

ま、これだけの女優がキャラ立ちつつーの熱演してるんですから男たちは正直引き立て役。
さすがの超絶美形俳優、陳坤(チェン・クン)も形無し・・・というか、君がもっとしっかりしてたらそんなややこしいことにならんかったんやぁぁぁと、つい言いたくもなる(笑)。
でも世の中でモテる人というのは往々にしてそういう男である、というのも現実だったりして。

それにしても古装ファンタジーの世界というのはロマンティックですねぇ。
妖魔だとか、真実の愛などというのを少々強引に描かれてもすんなり受け入れられるのも古装ならではですね。大好きです。
そういえば、この続編「画皮2」が、この夏にむこうで公開予定なのだそう。主演は同じくジョウ・シュン、ヴィッキー、チェン・クンの3人(ドニーさんとスン・リーはなし)。ストーリーは続いているのでしょうか、それとも違う設定なのか?ちゃんと調べてないけど、予告を見るとおもしろそうです。(追記:この続編の監督をゴードン・チャンと書いてしまいましたが間違いでした。監督はCM出身の烏爾善、訂正いたします失礼しました)

難しい話ではないので理解しているつもりでおりましたが、それでも分ってないことがありました。
ドニーさんが街に帰って来たのはヴィッキーに手紙で呼ばれたからだったのね。泥酔しないとその街の門を叩けなかった男心の切なさよ。とほほ。

そういえば、自分の持ってる香港DVDは118分のディレクターズカット限定版。今回公開されるのは103分の通常バージョン。だからでしょうね、あら、そこないのね・・・ああん、あのシークエンス好きだったのにバッサリやられとる、と所々で気がついてしまいました。まぁ、ストーリーに影響するほど大きな違いはないので作品に関して問題はありません。
単純にドニーファン的には、自分の報われない恋心の重さに茫然としたような表情の後、歌いながら去ってゆく背中になかなかの哀愁がございました。が、今回はその表情の部分がカットされていたことで味わいが薄まったのが残念だったでしょうか。ま、細かいところですが。

そして今回試写でよーくわかった、もう一人の妖魔、戚玉武(チー・ユーウー、彼は処刑剣の玄武もやっております)演じる小易が不憫で不憫で・・・。君は悪くない、悪くないよぉぉぉと声をかけてあげたくなったことを付け加えておきましょう。

とにかくジョウ・シュンという女優の演技の素晴らしさ、その存在の特別さに酔いしれる、それだけで充分おつりのくる美しい映画です。と同時にそれぞれの俳優のクローズアップがとにかく多いので、どのファンの方も楽しめるかと。
8月上旬よりロードショー公開。

最後に、どうでもいい小ネタ。
龐勇(パン・ヨン)というドニーさんの役名が格好よくていいなと思っていたら、まったく同じ名前がクレジットの制作主任に。偶然の一致かその名を拝借したのかは知りませんが、今回の試写で初めて気がつきました。
ネーミングに苦労したゴードンが「ちと借りるわ!」とテキトーにパクったことにしときましょう、その方がおもしろいから(笑)。

あ、以前、この作品に広東語バージョンが存在しないかのように書きましたが、ちゃんと存在してました。すみません。が、この日本公開バージョンは普通語です。
ドニーさんの吹き替えはやはり陳浩じゃなく章劼でした。日本版「エンプレス/運命の戦い」と同じ人。やっと確信もちました、自分。

画皮 あやかしの恋日本公式サイト
画皮(原題)香港DVDにて鑑賞 / 画皮 あやかしの恋(邦題)-ドニー・イェン 甄子丹
配音演員
おまけ
ビッキーとチェン・クンの「画心」デュエット
ええと、ヴィッキーはともかく、チェン・クンさんも一応歌手・・・なんですよね(笑)
日本でのデジタル上映版では、倉木麻衣さんがこのオリジナル曲を日本語歌詞でカバーしております。

 

カテゴリー: film, 功夫映画, 甄子丹 | タグ: , , , , , , , , , , , , , , | 4件のコメント

さらば復讐の狼たちよ(2010年・香港中国)

昨年観た映画「譲子弾飛」が「さらば復讐の狼たちよ」という邦題で2012年、7月6日よりロードショウ公開されることになりました。

数少ない経験のくせに日本では観られないだろうと思いこみ、さっさと香港版を買ったのですが、どうやらここへきて中華系の映画が結構公開されるようになってきたようで、嬉しいことに最近、その勘がことごとく外れております。

そこで、試写に行ってきましたよ。
それにしても、日本語字幕ってありがたい・・・。今までさっぱり分らんかった台詞が画面をリラックスして観てるだけで分るって感激。

さて、あらためてこの映画、イントロダクションが最高にかっこいい。
山間を疾走する馬列車の客車では名優葛優(グォ・ヨウ)と影后劉嘉玲(カリーナ・ラウ)と、ここでは役者として登場の映画監督馮小剛(フォン・シャオガン)が幸せそうに歌っちゃってます。
時代は辛亥革命後の1920年。火鍋を囲みつつ赤ワインを飲む3人。台詞では史記の話も。

その列車を馬に乗った7人の匪賊が襲う。こいつらのビジュアルがすんごくイカしてまっせ。
うっひょう!マカロニウェスタン!とスピードとCGを上手く使った荒々しさ。それだけでこの活劇のスケールの大きさを予感させ観客をその世界にグイグイ引っ張ってゆく。
またこの時の姜文(チアン・ウェン)の小憎たらしいくらいにしびれる登場の仕方。

まぁ実際、この作品では姜文がいちいち本当に素晴らしくセクシーでカッコいいわけですよ。
いや、もちろん葛優の演技はマーべラスだし、なんて言っても周潤發(チョウ・ユンファ)の怪演+2役が光り輝いてます。彼が演じれば悪の権化のような権力者も魅力に溢れるからさすが。せっかくのユンファを上手に生かしきれなかったブラッカイマーさんには、これを観て反省していただきたいくらいです。

が、やはり中国一いっちゃった映画人の姜文。満を持しての監督ですもん、気がつけばすべてはオレ様のために。
考えればこの世で監督と主演両方こなす映画人は数あれど、あの葛優、周潤發、劉嘉玲や結構な人数の若手スターを配してなお、ここまでのオレ様映画を面の皮厚く撮りきり、その上にこれほど面白く見せる人はそう多くあるまい。それだけでイリュージョン感満載。

なお、唯一残念だったことがあるとすれば、せっかくのカリーナ様。非常にいいキャラでそのあとの展開をすごく期待してしまっただけに、もったいなかったか。
自分の嫁(周韵/ジョウ・ユィン、孫文の義士団でニコラス・ツェーが惚れたお嬢さんね)以外はあまりまともに女性を描かないところが、オレ様な姜文の弱点といえば弱点なのかもしれません。

お、そういえば今年の夏公開の「画皮 あやかしの恋」にも出演している陳坤(チェン・クン)が二枚目な役ではなく、すごく性格の悪い卑怯で嫌味な男を演じていてすごくハマってました。彼、絶対こういう役の方が魅惑的。

中国内地では中国革命から現代までを揶揄した映画と評判を呼び、台詞に対する解釈やショットのひとつひとつの深読みに観客がネットで大論議を巻き起こしてリピーターが続出、驚くほどのメガヒットになりました。当然、日本語字幕がついていてもそこまでの深読みは自分にはできません。けれど、そんなことができなくても面白いのがこの映画の凄いところ。
「考えるな、感じろ」とはかのブルース・リー先生の言った言葉ですが、この映画はまさに考えなくてもあれよあれよという間に私を姜文のオレ様ワールドに引きずり込むパワーに満ちていました。

オヤジ好きは必見、若手の個性派イケメンも各種取り揃え、そしてもちろん漢というものにシンパシーを感じる人なら心のなかで何かが疼くこと間違いなし、そのうえ腐好きの方の琴線に触れそうな雰囲気が。アクションあり、ユーモアあり、有名映画のパロディあり、かなり強引なところもあるけれど、それもまた魅力だと思えれば問題なし。これだけ全方向にむけて喜ばれそうな映画も、ほんと珍しいかも。

現在、姜文はこの続編の撮影準備に入っているとか。今度はハリウッドと合作か?という噂も出ています。次はどんな役者を使うのか?めちゃめちゃ楽しみです。

あ、最後になりましたが久石譲さんのスコアがまた素晴らしくよろしいです。特にメインテーマは久石節でありながらニーノ・ロータを彷彿とさせ頭からしばらく離れないこと必至。

さらば復讐の狼たちよ公式サイト
「譲子弾飛」として観た時のレビュー
中国版「譲子弾飛」予告
中国版「譲子弾飛」最終予告編
US版「Let The Bullets Fly」 Official Trailer(これが一番好き)

 

カテゴリー: film | タグ: , , , , , | 3件のコメント

蔵出し その4

裏切りのサーカス(2011年・仏、英、独)


監督はスェーデン出身のトーマス・アルフレッドソンだけど、衣装、空気感、美術、役者とすんごくイギリス映画でした。原作を読んだ自分の想像とスマイリーは少し違ったけど、原作自体、はるか昔に読んだので大きな違和感なし。

とにかく大層加齢臭の漂う絵ズラに心の中で大喝采。好きだ、イギリスのオヤジども(映画やドラマ小説限定)。

これを派手なスパイものや謎ときとして期待して見るとまったく違うでしょうね。実は職場がそうだというだけで(←すごい極論)、ある意味とても人間を描いてる。重要なファクターは冷戦時代という事になるわけですが、この作品の最大の魅力は普遍的な人間の心理や姿だと申し上げてよいでしょう。その舞台である当時の情報部は、人間の猜疑心を顕在化し自身の弱点すら文字通り命取りにするという環境としては非常に最適です。
スパイがわんさと登場するといっても派手なシーンはなし、そもそも誰もビジネスバック以上の重いものすら持たないし。あるのはひたすら心理戦。しかもそこには愛憎やプライドや哀しみが入り乱れております。よくぞ、ここまで絞り切りました。

それにしてもゲイリー・オールドマンとジョン・ハートの老けたのには驚いた。けどあれは多分老け演技だったんですよね?あのシド・ヴィシャスが二十数年後にこうなるぜ、と教えたら当時の自分なら怒ったかもしれません。

しかしオールドマンの演技はすごかった。どのショットも完全無欠。当然、他の役者衆も(子役すら!)ハイレベルでめちゃくちゃ見応えがありました、さすがUK。

あの演技力に支えられているからこそ、常に緊迫感あふれる無駄のないカットの連続になったのでしょうねぇ。こういう世界観は禿げしく、いや激しく好きです。よくぞ今映画化したものです。

全員スパスパ吸う煙草とか、登場する車だとかレーニンなのかブレジネフかの格好をしたサンタがやってきてソ連国家を歌うクリスマスパーティの風景。そしてラストにかかるフリオ・イグレシアスの曲が強く印象に残りました。センスいい。イントロからハモンドオルガンですもんねぇ。すごく・・・70年代です。
そして、なんといっても冷戦中の空気感がヒシヒシ伝わって来て(ジョン・ル・カレの原作なんだからそこがミソなんだけれど)痺れましたわ。結論、UKオヤジさいこう。最後に、ギラムのあの変更した設定は必要なのでせうか?

メン・イン・ブラック3(2012年・米国)

2を見た覚えはあるけど記憶がまったくない。観に行く決め手はやはりジョシュ・ブローリンがKの若いころを演じるという一点。
そういう意味では満足。大変よござんした。今までのシリーズのなかでは少しエイリアンにインパクトが欠けていた気もしますが、そのぶんジョシュが頑張った印象。似てました。
途中Jが若きKに「あんた若いころから老けてんだな」と言いますが、あの頃の若者はほとんど老けてましたよJさん。
洋の東西を問わず当時のドラマや映画を観ると驚くもんなぁ、その年齢設定に。デビッド・ジャンセンのTVシリーズ「逃亡者」とか観てごらんなさいよ、キンブル医師があちこちの街で出逢うアメリカの人はハタチ過ぎたらそこそこみんな立派な大人でしたよ。
今のように見た目年齢がグッと下がったのは、ちょうどこの時期フラワーチルドレンとかヒッピー文化とかが流行ってからじゃないですかね、なんてぼんやり考えたりして。まぁこの映画では時代背景をあまり活かすつもりはなかったらしいのでいいのか。

とはいえ69年という年にも最後なんとか意味を持たせて、JとKの友情と申しましょうか今風に言うと少々のブロマンス風味もあり、あまり過度な期待はしてなかったぶん、小ネタが全開で楽しかったす。
一番ウケたのは、ニューラライザーがやたらとデカかったこと。ですよねぇ、と笑ったら実は携帯用のバッテリー式のもありました。

レディ・ガガとかヤオ・ミンかな?(古すぎるのか)中国のバスケ選手もモニターの登場。ミック・ジャガーだけでなく、ストーンズ全員エイリアン認定でお願いします。
そういえば、あのアンディ・ウォーホルが実は・・・というくだりも笑いました。そうですか、あのキャンベル缶にはそんな理由が(笑)。

さて、このシリーズはなんと10年ぶりということで、観た後かならず胸をよぎることをまた考えてしまいました。
うーむ、エイリアンがいるなら今は誰だろう?
答えはひとつ。「寝てないんだよ」が現場での口癖で48歳にして三段蹴りを見事にかます、はい、あの方でございます。

ドライヴ(2011年・米国)

監督はデンマーク生まれのニコラス・ウィンディング・レフン。
あんまり決めつけちゃいけないだろうけど、アメリカ映画でもヨーロッパ監督の映画は割と安心して観られる気がします。この作品もシンプルといえばめちゃくちゃシンプルな話なのにキャラクターを絶対に押しつけてこないところがいいですね。
その距離感がたまらんのです、こっちの受け取り次第って距離感が。暴力的だけどファンタジーです。このふたつをうまくミックスしてくれれば、めっちゃ好物です。嬉しい。

主人公のライアン・ゴズリングとキャリー・マリガンが非常に良かったし、脇を固めるアルバート・ブルックスやロン・パールマン、ブライアン・クランストンなど味わい深い。オヤジがいい映画はまずおもしろい、ここでも法則があてはまりました。いやっほう。

どのくらいこの映画が好きかと聞かれれば、劇場を出た後、真昼間の大阪駅付近を歩く自分のジャケットの背中にはスコーピオンが刺繍され、ない爪楊枝を口にくわえたその脳内ではずっと「A Real Hero」が流れていたと告白するくらいには大好きです。自分的には相当なもんです、それ。

ロボット(2010年・印)

予告をひと目見た時から行こうと心に決めていた作品。
サイトを覗いてみるとユエン・ウーピンがアクション指導しとるという話。和平さん相変わらずワールドワイドやねぇ。

考えればこれもラジニカーントという御年62歳の大スターが主演。なんという最近のオヤジ率!

いやはや、ぶっとんでましたわ。お金かけてのこのバカさ加減、最高です。
もうのっけからね、あくまでも軍事用にロボットを作ったという、もうひとりの主人公天才科学者(ラジニカーントの2役!)の設定から笑えます、なんだ、その時代に逆行した志向は(笑)。

前半、インド大作なのにもっと踊れ~歌い狂え~と思っていたら、実は自分の観たのは日本用の短縮バージョンだったことが判明。しかもあとから177分の完全版が公開されるというじゃありませんか。んな、殺生な(涙)。世界遺産マチュピチュで美しさを放射するアイシュワリヤ様を大画面で観たかったぞ!

和平さんがコレオグラフしたシークエンスは多分、電車のアクションシーンでしょうね。世界中のバカ映画となんという相性の良さ。さすがでございます。

そんな映画なのに感情を持ったチッティが博士に解体されるシーンは悲しすぎるでしょ。しかも失恋したてなのに・・・ぐすん。愛を語って何が悪いんだ、そもそもアンタの軍事目的ってのには最初っから共感できんよ!自分がロボットでも別の博士の所に行ってやさぐれちゃうよ?

しっかしロボットが増殖するってコワイ。ほんと、この映画一体何人の人が死んでいるんだか。ここ最近で観た映画で一番死んでるかも。実感としては「バトルシップ」より多かった。
ラストのアクションは笑うしかない。またなんとなくチープさの漂うVFXが(いや、一流どころが手掛けたそうですが)その荒唐無稽さをこれでもかってほど後押ししてお腹一杯です。なにしろラストのアクションシーンだけで40分くらいはあるでしょう。もう少し短くても・・・と思わないでもないけど、もうね作り手が「必要なの!」と言うなら、もう誰にもなにも言えません。(短縮版ですら139分)だって元々インド映画は長いのが当り前なので。

ところで2009年に制作され世界中でヒットしたインド映画「3 Idiots」(日本の映画祭で唯一上映されたときのタイトルは「三馬鹿に乾杯!」)って日本公開しないんですかね?観たいです。このロボットで弾みをつけて是非公開して欲しい。こちらは完全でも164分と少し短め(笑)。公開こい!
追記:この作品は2013年、「きっと、うまくいく」という邦題で日本今回大ヒット。

Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち(2010年・独、仏、英)

いよいよ公開終了かというタイミングで滑り込みました。有楽町でのレイトショー。
映画とピナ・バウシュの関わりは何度かあり、なかでもペドロ・アルモドバル監督の映画「トーク・トゥ・ハー」で彼女が踊った「カフェ・ミュラー」は有名なシーンのひとつになりました。
ビム・ヴェンダースが3Dで撮ったこの映画のオープニングを飾るのはストラヴィンスキーの「春の祭典」。
映画、まして3Dということもあって少々不安もあったのですがあの生命力と原始的な衝撃はスクリーンを通しても充分伝わってきます。シートを引いて土を盛るところからすでにパフォーマンスの一部であるということをここでもちゃんと表現されていて、一気に安心してしまいましたが、思えばピナ・バウシュと長年の友人である彼に対してそんな心配は無用だったですね。

映画なので、舞台を離れヴェンダース監督は舞踊団のあるヴッパタールの街や自然のなかでのパフォーマンスを重ねていきます。道路の緑地帯、モノレールの中や工場の建ち並ぶ前や、川の中や森を背景に。自分にはこれがすごく面白かったし、新鮮でした。なかでも風の吹きすさぶ高台のオブジェを縫うようにして行進する長い列は、ピナという卓越した存在とそのスピリットが連綿と続いてゆくのを感じさせて圧倒されました。
悲しいことにこの先彼女のパフォーマンスを観ることは叶いません。けれど、この映画がある限り彼女のなお息づいている遺したものの煌めきに、こうして触れることができるのです。なんと素晴らしいことでしょうか。

マッスルモンク(2003年・香港)

昨年、アンディ主演の「新少林寺」を観た時に、そういえば未見であったと思い出した作品。
世にも不思議な映画でした。噂にたがわぬ凄さです。なんでしょう、映画5本分くらいのボリュームというか、色合いというか、とっちらかり具合というか。
でも最後までこう、グイグイじゃないんだけど(表現難しい)まるで太極拳で己の力を利用されて向こう側にグシャリと倒され「え、え、何が起こったの?」と驚いているうちに、その世界に引きずり込まれたような、そんな感じ。

しかし監督のジョニー・トーとワイ・カーファイには脱帽です。
あのテーマでこんな設定(その筋肉も含め)をよく思い付きますよね。そしてそれを演じたアンディも立派。

すごく可愛くて応援したくなるセシリアの恋心が、まさかあんな形で締めくくられるとは思いもよりませんでした、ひぃぃ~。香港映画マジっすか、としか例えようがない。

冒頭アンディの登場シーンはおいといて(笑)その直後はすごい緊迫感で、あのびっくり人間大集合なインド人やら、そいつを追う張兆輝(チョン・シウファイ)の痺れるようなキレっぷりと(この映画の彼大好きです)、カレン・トンの薄幸そうな顔つきといい、さすがジョニー・トーさん期待値マックス!!・・・だったのですが、その事件が解決するや誰ひとりとして再登場もしやしない。ちょ、ちょっと!

そして後半にむかっての展開にはひたすら唖然。
いや、それでもいいんですよ、別に嫌いとか、アホらしいとか、そういうわけじゃなく、心から唖然としたんです。
そしてもっと唖然とするのは、この映画が香港でヒットしたことに加え、最優秀作品賞、最優秀脚本賞、最優秀主演男優賞をあげちゃったという香港映画界。これにはいつものことながら驚きを隠せません。

本当になんと言えばいいのかちょっと言葉が思い付かないのだけど、少なくてもジョニー・トー、いや、香港DNAにしか(中国大陸の人にも無理だし、アメリカ、日本人ではあり得ない)作れない映画だったということだけは確かなことでしょうね。懐が深すぎる。

 

 

カテゴリー: film | 5件のコメント

文楽 八陣守護城

先日、友人Tさんと国立劇場に文楽を観に行きました。実は劇場で文楽を観たのは初めてです。

出し物は「八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)」と「契情倭荘子(けいせいやまとぞうし)の蝶の道行」。
八陣守護城は、初演が江戸時代の文化4年。本来の主人公はあの豊臣秀吉へ忠義を尽くした武将、加藤清正です。
しかし当時は時の政権江戸幕府に関する批判や豊臣秀吉はじめとする豊臣家に関することを上演するのはご法度。けれどお上の目をかいくぐる方法はいくらでもあったようで。誰が見てもこれは!と分る人物でも名前をちょいと変え時代設定を少しいじったくらいでシレっと舞台にあげてしまう、というのがその頃の知恵。

この物語も、「加藤清正」の名を「加藤正清」と改変し(ひっくり返しただけやん!)時代を鎌倉に変更、主君豊臣家を小田家に、徳川家康の名を北条時政、豊臣秀頼に当たる若君を春若丸として描いております。

京の二条城で家康と対面した秀頼の、付き添い役として懐に短刀を忍ばせるという決死の覚悟で臨んだ清正。彼が無事に役目を終えた後、帰国の船の中で発病し帰国後に亡くなったことから広まった「京で家康に毒を盛られた」という俗説。これを基にこの浄瑠璃は作られていました。

当然、主人公加藤正清がみすみす毒を飲まされるはずなどなく、ここでは北条時政の重臣森三左衛門が毒入りと知りながら一緒に杯を飲みほすわけです。計略を警戒しながら、命を投げ出す覚悟の忠義にはさすがの武将も謀られたということでしょうか。

そこから中盤の見せ場は、御座船で帰国の途に就いた主人公が毒を飲まされたと気がつきつつ、様子を見に来た北条時政の使いの者に気取られぬようにと見せる豪快な振る舞いと、それをダイナミックに演出するかのように廻る船。
文楽でこの廻る道具と言うのは非常に珍しいのだそうです。そして客席に向かった舳先に立ち、大笑いを見せる加藤正清がこの物語のハイライトのひとつになります。

本当に、楽しかった!スケールの大きな物語と、見惚れてしまうような美しくも儚い人間模様。
宮仕えのトホホを醸し出しつつ、女子の選ぶ「イイ男」には今も昔も寸分の狂いがない。にしても若いカップルはやっぱダメじゃんとイラっとしながら、案の定狡猾な悪人に2人はシメシメな餌であり、そして最終的には漢の花道とはこういうもんだ!という豪華絢爛絵巻。
江戸のエンタメ、そして劇作家の発想の豊かさには激しい畏敬の念が浮かびます。本当に素晴らしいセンスと想像力を日本人てのは昔から持っていたんですよねぇ。

一緒に行ったTさんが豊竹咲太夫さんのお知り合いということで、ズーズーしくも終演後のご挨拶にくっついて行く機会にも恵まれました。
太夫、開口一番私にむかって「あなたは私の後輩ですよ!」。そう、咲太夫さんは追手門学院の大先輩でいらしたのです。驚きです。せんぱい!!!!

ご挨拶が終わったあとはお弟子さんが舞台裏を色々案内してくださいました。
とにかくこういう舞台裏というのに目のない自分。観ながら思っていた疑問をここぞとばかりに質問しまくる。

「見台はそれぞれの太夫さん、個人のものでしょうか?」
答えはイエス。盆(太夫と三味線が座る場所が回り舞台のようにくるりと回転する仕掛け)の裏にある棚には全ての太夫の見台にカバーがかけられ並んでいました。
「これも今はもう職人さんがいらっしゃらないので大切にみなさん、使われています」
美しい蒔絵が施されたのからシンプルな物まで様々な個性が光ります。今度は太夫の傍の席で一度あの見台をじっくり見てみたい。

「この盆という仕掛けはいつからのものでしょう?」
これに関しては、お弟子さんもよくご存知なかったようです。長い物語では一人の太夫、一人の三味線ということはまずありません。それぞれの段によって交代するのが常。
なのでその交代をスムーズにするために盆がくるっと廻って違和感なく交代できるというシステムです。すんばらしい知恵。
裏側を見せて頂いたら、ちゃんと手動で回すようになっていました(当り前か)。

とにかく文楽は想像以上に人手がいります。小幕を引くのに人がいるし、障子や襖も人が開け閉めするし。歌舞伎や演劇なら本当に引ける障子や襖を使いますが、人形浄瑠璃の場合は人形では開けることが出来ないので当然別の人間がその開閉を担います。裏側を見ると上にちょっと引っかけられる出っ張りがあって、そこを外して左右に動かすとしずしずとまた閉めてそこを固定するという仕組みになっておりました。

ここまできたら百年目。当然人形も見学させていただきました。
うんと昔、それこそ近松門左衛門がいたころの人形はまだ一人で遣い、今のような複雑な動きは出来なかったそうです。が、徐々に様々な動きを工夫し享保19年に三人遣いが始まると人形もそれに合わせて大きくなっていきました。今のような形が確立したのはおよそ約2百4~50年前だと言われています。

文楽のことをほとんど知らなかった自分は、一つの役でも人形が何体かあって段によって大きさが異なるものを使いわけているのでは?とぼんやり想像していました。が、驚くことに実はあれすべて同じ人形。
人形は作り置きをせず、公演ごとに役柄に応じ人形師がかしらを整え、床山(とこやま)さんが髪を結い、衣裳方の用意したものを人形遣いが着付けて仕上げるんだそうな。
これには驚きを隠せません。だって「清正本城の段」で見た鎧姿の加藤正清は明らかにその前よりずっとずっと大きく見えましたよ?
つまり真相は、同じ人形であるにも関わらず、話の展開やその動き、太夫の語り、そして三味線だけで一層大きく観客の自分が「感じた」というわけ。
この事実だけで文楽というものの凄さがご理解頂けるでしょうか?は~すごい。

人形といえば、舞台を見ているだけではほとんど気がつかないことに、人形師の下駄があります。
文楽の場合ほとんどが、かしらと右手を操る主遣い(おもづかい)、左手の担当の左遣い(ひだりづかい)、そして両足を担当する足遣い(あしづかい)の3人ひと組で人形を操ります。なので当然持ち場の高さは3人で異なってくるわけですね。そこで必要になってくるのがその高低を出すために穿く舞台下駄。
この下駄も拝見しましたが、主遣いの下駄は相当高い。15㎝近くはあるでしょうか。自分なら人形どころかあっと言う間に足を挫くでしょう、レディーガガもビックリ、そんな高さです。その底部分に音がしないようにですね、クッションとしてわらじと同じ藁で編んだもので覆ってある。

そうか~、一々理にかなっているさまざまな事実に自分は尻尾全開にした犬のようにその場で踊りださんばかりでした(笑)。
いやぁ、興味深々だった舞台裏!ご案内くださいまして本当にありがとうございました。今度から一層楽しく舞台を拝見することができます!

それにしても文楽、おもしろい、最高です。
だー、これからはなんとかして、ひとつでも多くの文楽を観たい!そう強く強く決意した次第でございます。

 

カテゴリー: 未分類 | 2件のコメント

バトルシップ(米、2012年)

ええと、子供の頃の我が家は父親の仕事の関係か、やたらと色んな雑誌が転がっておりまして。
たとえば、資料用でしょうね、その道の業界誌と呼ばれる御用達週刊誌だとか、掲載誌なのか、おねーさんの怪しい写真の載った雑誌とか、月刊Gunとか航空ファンとか航空情報とか、まぁ、とにかくいろんなもの。一応は子供の目の触れるところに置かないような配慮はあったのでしょうが、そんなものはこっそり父の書斎に入ればバンバン見られるわけで。弟と一緒によく父の書斎に忍び込んではありとあらゆる怪しい雑誌を眺めておりました。
ま、私の場合は美しい女性のヌードとかには、それほど興味を持てなかったので、たとえばダーティハリーがあの代名詞とも言えるS&Wのリボルバーの44マグナムからオートマチックに換えたことだとかを銃の専門誌で知ったものでございます。

おまけにうちの6歳違いの兄がやたらと軍事関係に詳しい男でして。一緒に戦争映画を見ながら色々解説してくれたりもしました。

そのおかげで小さいころから、軍服、ヘルメット、戦闘機、手榴弾、銃などを見れば、ぼんやりとですが、ちらりシーンを見ただけで第一次世界大戦か第二次世界大戦か、どこの国の兵士か海軍か陸軍かくらいは識別できたと思います。普段の生活や自分の仕事には何一つ役に立ったことはありませんけど、戦争映画を見る時とモンティパイソンのTVシリーズを見る時「だけ」は結構役に立ちました。

そんな私も海軍、しかも戦艦まではそれほど詳しくはない。知っていることとすれば、海上自衛隊の自衛艦旗が旧海軍で使用されていた、中心が左に寄った十六条旭日旗と同じであるということくらいでしょうか。

そんな自分にすら、この映画の監督ピーター・バーグが戦艦大好きっっ!ってことはヒシヒシと伝わってきましたよ(笑)。航空母艦や駆逐艦ではなく、タイトル「バトルシップ」があらわすように恐らくこの人相当戦艦オタクですよね?
ひょっとしたら、あのミズーリで(そのためには敵が宇宙人だろうがなんだろうが多分何でもよかったんじゃないかと)戦う、それを映像化したい一心でこの映画を製作したのかもしれません。そんな熱いものをすごく感じました。
たしかに、いよいよミズーリ出港!という瞬間は異様に燃えましたよ。そしてその手助けをするのが退役兵のジーサマ達というのも心の中で「いやっほう!」と喝采を叫ぶくらい激しくよかったです。
くわえて込入った人間ドラマなどほとんどないストレートなシンプルさが、功夫映画が好きな自分には非常にシンパシーを感じさせたのかもしれません。

思えば、戦艦の時代も第二次世界大戦後で終わり、その後は空母や駆逐艦が主流になってゆきました。兵器の変遷や空からの攻撃に弱い、海上戦がほとんどなくなった、など理由は色々あるでしょうが、戦艦は維持管理費などとにかくコストが桁外れにかかるというのも大きな理由の一つでしょう。

だからこその対異星人に対抗する現代のミズーリ復活であり、そのあたりのコーフン度は自分が「捜査官X」でジミー・ウォングやベティ・ウェイが再びアクションするのを見て狂喜乱舞する気持ちとなんら変わりはないと申しあげてよろしいでしょう。わかるわぁ~。

惜しむらくはこの映画を自分の兄や弟と一緒に見られなかったこと。
しかもこの日は友人と午後からの観劇に行った後、さんざ飲み食いした帰りで「今からレイトショー行こうと思うんだけど、どう?」と訊いたらタイトルも聞かずあっさり断られまして(笑)。ま、よくあることです。仕方ないから一人で行きました。
これ、あの彼らと観たら相当盛り上がっただろうなぁ。んで、すんごい濃い解説が聞けたかも・・・。普段兄弟と離れていることを寂しく感じたりするとことなどほとんどありませんが、この時ばかりは彼らが恋しかったと付け加えておきます。

あ、かといって別に自分は戦争が好きとか極右志向とか軍事オタクとかそういうわけではありませんからね、念のため。

とにかくこの映画、テレビやソフトでなくスクリーンで観た方が絶対に面白いと思います。単純に楽しい。浅野忠信さん、とっても格好いい役でした。素敵です!

 

カテゴリー: film | 2件のコメント

エンドレス捜査官Xブーム

まだ終わらない、個人的「捜査官X」ブーム。
何をどうしたってくらいに、捜査官Xを映画館で観る自分。
かなりおかしいことになっております(笑)。だってまぁ、非常に愛してるから、この映画。今観ておかないと、もう二度と完璧な形では観られないと思うと妙に焦ってしまうわけです。

先日も大阪の仕事仲間と一緒に大阪ステーションシネマに行きました。(絶賛ゴリ押し期間中)仕事終了から約束まで時間があったので、第一ビルだとかあのあたりの地下街でチケットショップを巡り前売り券を捜したのですが、何件覗いてもどこも売り切れ。でもお相手のなかのおひとりがすでに予約してくれていたので、結果オーライ。ありがとうございました。

さすがに睡眠時間2時間は効いた。その直前にブルグ7で、やっとこさニコラス・ウィンディング・レフン監督の「ドライブ」をガッツリ観たこともあって、2本目のこちらでは叙百九の素晴らしい声のナレーションに所々気絶してしまったりして。

ひょっとしたら眠れない夜に彼のナレーション聞いたらすぐに眠れるかも・・・なんだかそんな夜のために、たくさんの映画の中から金城武くんの中国語ナレーションだけ抜き出し「砂男」というカテゴリーでi-podに入れたい衝動に駆られております。「ウィンターソング」とかいいでしょうねぇ。台詞の内容は中国語がよく分らないので恨み事でも問題なし(笑)。

さて自分、すでに香港版「武侠」のブルーレイを持っている。なのでこの映画、正直言うと何度観たかわかりません。でも観るそばから新しい発見があってその度に驚いてしまいます。

たとえば、七十二地煞が送った刺客、義母でもあるベティ・ウェイ姐さんを前に劉金喜がいよいよ覚醒するシーン。
それを見た次男曉天が思わずにっこりするカットが印象的ですが、実は彼だけでなく後ろにぼやけて映る他の子供達もみんな笑っているのですね。
あの危機的状況にあっても、子供達は俺らの村のリアルヒーロー出現!と嬉しく思うのだな、と感心です。当然、大人の方はみんなテンパっておりましたが。その対比が非常におもしろい。芸が細かいぞ、ピーターチャン(ドニーさんがそこまで考えつくとは思えなかったので、ピーターのアイディアだと勝手に解釈)。

そして、なんとなく見逃していた新事実も発覚。
劉金喜が仮死状態から目覚めて腕を切った後、それを見た渡辺謙さん似の兄者が吠えた台詞。

英語字幕では「You choose a woman and child,over your own home?」
日本語字幕では「その十年のために、今まで育ってきた家を捨てるのか?」のようだったと記憶しておりますが、中文だと「就為這十年 你€放棄了一個二十年的家?」なのですよ。

なんと、あの回想に登場した西夏族辮髪の唐龍はハタチ設定だったことが判明(笑)。ドニーさんの年齢サバ読みには慣れっこになっておりますので少々のことでは驚いたりはしませんが、さすがにこれに気がついた時には笑いました。
と、いうことはその後の劉金喜は30歳なわけですね・・・もう、なんとでもしてください。今後17,8歳シーンがきても驚かない覚悟はできました。

ところで一緒に観に行った人達ですが、終了後に客電がつくやいなや、笑顔で一言「渋い!」素晴らしい反応です。上映前のお喋りだとお子さんのいるご家庭は一緒に観る映画のジャンルも選ばないといけないので、大人向けの作品を鑑賞するのも結構苦労がいるらしい。そういう意味でも満足していただけたようです。よかった、嬉しいです。
映画館に行く際はほとんど1人のことが多いので、こうしてたまに誰かと一緒なのはとても新鮮。帰りは例によって「あの屋根の追いかけっこはワイヤーなしなんだよ!」などと熱く語ってしまいました(笑)。

そういえば、金城ファンのブログで、この捜査官Xの雲南ロケ地をグーグルアースで調べあげては報告していらっしゃる方々がいます。
その執念深さ(←誉めてます)と思い入れの強さ、そして金城武さんに対する愛情は本当に微笑ましく、いつも楽しく感心しながら拝見しております。本来は直接伝えなくてはいけないのでしょうが、この場を借りてお礼を申し上げます。オタク気質の人ってホント、好きよ。

武侠 香港BDにて鑑賞-ドニー・イェン 甄子丹(超ネタバレ)
捜査官X(原題・武侠) ― 甄子丹 ドニー・イェン
捜査官X 日本語字幕版を試写室で- 甄子丹 ドニー・イェン
捜査官X 迷走江湖

 

 

カテゴリー: film, 功夫映画, 甄子丹 | タグ: , , , , | 7件のコメント

LADY GAGA ~THE BORN THIS WAY BALL

と、いうわけで。
レディーガガのライブに行ってきました。
さいたまアリーナ、プレミアム・アリーナ・スタンディングです。

ああ、かわいいかわいいかわいいわ、ガガ様。
お衣装も白いウェディングドレス風のやら、もちろんボンテージに自由の女神ちっくな冠や、おお生肉ドレスだ!と彷彿とさせるのから、CDジャッケトのイメージでしょうか、彼女自身がバイクと一体化したり(文字だけ読んでも想像つかないだろうな、どう説明すりゃいいんだ)またそのガガバイクに麗しきおねーさんが跨っちゃってクネクネしちゃうんだからたまりません。

とにかく踊って走って古城をイメージしたセットを上へ下への大移動。楽しかった!

に、しても、この人はすごくイイ人なんだなぁと思う。それが非常に伝わってきましてね。一生懸命観客に話しかけてくれるし、オーディエンスのデニムベストをひょいと受け取って、それを羽織るとそのまましばらく歌っておりました。格好良かった。
そういえば長いこと、ここまで大きな箱でのコンサートって観なかったな、とふと思った。最後にこのクラスのキャパで観たのは東京ドームのU2以来かな?一体何年前ですか(笑)だって、ほら、デカイとこだと音響が・・・ゴホンゴホン
そんなことは置いといて、これほどまでに大きな会場でありながらも、温かみを感じさせてくれたガガは、やはり素晴らしいと声を大にして言いたい。恐らく今まで観た外国人アーティストのなかでピカ一かもしれません。

さて、このコンサートに誘ってくれたのは友人のMちゃん。
一緒に行くはずだった人が急に行けなくなって、声を掛けてくれたのでした。ラッキー!
彼女、お仕事であちこち飛び回っているのだけれど、先日ロンドンから帰国したばかりで「ケイちゃんの好きそうなカンフー映画のブルーレイが安かったから、どんなだか分らないけど一応買って来たよ!」と渡してくれたのが「DONNIE YEN IP MAN2」。うおー、なんというドストライクな。
「でも、私はカンフー映画は観に行かないからねっ」といつも先手を打って決してステマさせてくれない人(笑)、だけど、こういうとこは最高にラブリー。
それもこれも含めて、当然全力でハグです。ありがとう、愛してるよ!

 

カテゴリー: music | 2件のコメント

恵比寿横町

夕べ、ひさびさに十代のころからの友人たちとご飯に行きました。
なんかめっちゃ楽しかったわ。何の話したかあんまり覚えてないけど(笑)。
恵比寿でハシゴしました。最終的には恵比寿横町にGO。
この横町、改装前は個人商店が並んでいたりして、昔ここで時々魚とか買ったりしていましたっけ。あの魚屋さん、どこに移転したのかなぁ。結構重宝してたのに。
で、その中の一軒でワインを飲んだのだけど、ワインが出たとたんコッパとか生ハムとか食べてしまったわけですね。うう、ワイン飲むと別腹か。

カウンターに友人たちと陣取ったんですが、隣に座った京都人のKと大阪人の自分とでべらべら喋ってたら(当然そういう時は関西弁)、カウンターの向こうのご主人にやたらと受けてしまって、するとなんとなく嬉しくなってまたアホな掛け合いに拍車がかかるという、電車などで時折見かける関西人調子乗りスパイラルにはまってしまったのでした。ヤバイ。

職種もまったく違うので彼女彼らの話を聞いていると、すごく新鮮で楽しい。
とくに接客業の友人の話はおもしろい。いや~世の中にはいろんな人がいるわ。

 

カテゴリー: BARバクダン | 7件のコメント