蔵出し その5

やがて哀しき復讐者(2011年)

制作ジョニー・トー(杜琪峰)、監督ロー・ウィンチョン(羅永昌)、出演アンソニー・ウォン(黄秋生ツ黴€)、リッチー・レン( 任賢齊)。

アンソニー・ウォンが冷徹な不動産会社の社長。娘を誘拐され殺された彼が犯人に復讐を誓う。その部下であり、汚れ仕事を請け負う前科者にリッチー・レン。
試写に行ってきました。ストーリー的には割と力技な作品かもしれません。
会社どころか家族に対しても威圧的な父親が子を失って、自分でも忘れかけていた愛情の大きさにうろたえ悲しみに打ちひしがれる。アンソニー・ウォンの演技は相変わらずよかったです。対するリッチー・レンは脚本でもうひと押し人物像が深まれば、さらに素晴らしかったでしょうね。
秋生さんの部下を演じたTK役のチャーリー・ツァオ(曹査理)、物凄く久しぶりに観た気がします。印象に残ってるのはポリス・ストーリーでの悪役でしょうか。あまり変わっていなかったのに驚き。

それにしても父親の愛情ってのはなぁ。
すでに父を亡くしている自分としてはぐっとくるシーンがありました。
サスペンスですが、謎ときを過度に期待しないほうが楽しめるかもしれません。
やがて哀しき復讐者、その名は父親。その視点で是非。
<3つの刺激・感 ニュー香港ノワール・フェス>と題して、「強奪のトライアングル」「コンシェンス/裏切りの炎」とともに新宿武蔵野館にて2012年8月11日(土)より一挙公開。

続いては謝霆鋒(ニコラス・ツェー)、張家輝(ニック・チョン)共演の二種。
ひとつは「ビーストストーカー/証人」(2008年)もうひとつは「財神客棧」(原題・日本未公開2011年)同じ俳優2人が主演なのにまったくもって作風、役が違う。おもしろいなぁ。
前者は林超賢(ダンテ・ラム)監督、そしてもう片方は王晶(ウォン・ジン)。それだけでどんな感じかは想像がつきますね。


「ビーストストーカー/証人」は随分前に劇場で観たのだけどレビューを書きそびれていました。
冒頭のカークラッシュがすごい。のっけからめっちゃくっちゃ興奮しました。飛車指導はブルース・ロウ。時間軸をバラバラと切り離しそれを最後に集約させる手法が見事。

ニック・チョンはこの作品で香港金像奨の主演男優賞を獲得、納得。
それもこれも人間をきちんと描こうしている姿勢があってこそ。その丁寧さ、またその描き方の一工夫はちょっと感激もの。
それにしても悲しい話でした。出てくる人、みんな悲しすぎる。しかも誘拐犯のニック・チョンがビジュアルも含め一番切なかった・・・こんな悲しいものがたりは久しぶりなくらいだ。
考えたらこの作品は2008年なんですよね。これから数年たって「密告者」なわけですよ。ニコラス・ツェーの演技の変化も色々感慨深い。

いつものように廖啓智(リウ・カイチー)がいい味出してました、大好き。

一方の「財神客棧」は、ニコラスにとって「孫文の義士団」その「密告者」「新少林寺」に続く2011年の作品。

あまりよい評判を聞いていなかったのだけど、ニック・チョンが香港名物つけ出っ歯をしているというのを知って、つい魔が差してしまいました(笑)。
考えたらニコラスとニック・チョンって影帝ふたりじゃないか!それをこんな風に使うとは・・・さすが王晶。一体何年制作の映画なんだろうと思わせるところがこの監督だ~としか言いようがない。
「なんという無駄遣い」と呆れるか「それを軽々やってのける俳優が素敵」ととるか、そこが分かれ目でしょうか。懐深いわ。

最近少しづつ王晶の映画を見る機会があって、慣れてきたのか結構楽しみました。相変わらずのパロディとか、バカバカしいギャグとか、スイッチが入ってしまえばコッチのモン的な切り替えが、やっとできるようになったのかもしれません(遅っ!)ニック・チョン激しくかわいい。
動作指導は元奎(ユン・ケイ)。そのせいかどうかラスボスは元徳(ユン・タク)。
以前、元徳さんのインタビューを読んだことがあって「こんなに重要な役とは思わなかった。少しのつもりで参加したら結構時間かかっちゃったよ!衣装も動きにくくてさ~」てなことを言っておられましたが、この映画のことだったのかな?記憶が曖昧。だとしたら七小福、元家班の先輩のためですから、仕方なかったっすね!それにしても、この人のコスプレ率高すぎ。

カンフー・サイボーグ(2009年)

監督ジェフ・ラウ(劉鎮偉)
ラッキーなことに知人から戴きました。予告を見て公開されたら行こうと思ってたのに行きそびれてしまっていた1本。キャストだけ知ってる程度だったんですが存外に面白くて。

ああ、ジェフ・ラウ、ジェフ・ラウ、ジェフ・ラウッ・・・!
途中から何度も声出して笑いました。この映画を言葉で説明するのは無理。
ただ「香港のトランスフォーマー」というイメージからは遥か斜め上をいくものであったとだけ書いておきます。なんったってロナルド・チェン(鄭中基)が、(こちらもまた)つけ出っ歯でっせ。昔っからどんだけ好きなんだ、つけ出っ葉が香港人(笑)

フー・ジュン(胡軍)はストーカーまがいの冴えないおっさんがびっくりするほど似合い、アレックス・フォン(方力申)のつるんとした顔が本当にロボットに見え、スン・リー(孫儷)は目が点になるくらい可愛くて、そしてウー・ジンツ黴€(呉京)がめちゃくちゃカッコイイ。正直タイトルロールはウー・ジンくんすよね、ね?ね?

そのうえラストは心からあっけにとられ、あやうく泣きそうになってしまいました。なんなんですか、ええ加減なこの好き勝手さは!ロー・ガーイン(羅家英)のオンリー・ユーで腹抱えて笑える人なら悪いことは言わない、明日にでも観てください。そうじゃない人は、まぁ、その。
武術指導はユン・タク(元徳)。売れっ子ですねぇ。
最後に・・・ 予告が、こんなに役に立たない作品もなかったよ!


と、最後と言いつつ・・・追記としてだらだら小ネタ。
そのウー・ジンくんが昨年ドラマで特殊部隊の隊員を演じた「我是特遘黒コ之国之利刃」
これがむこうで今年の8月に「利刃出鞘」ってタイトルで同じ監督によって映画になって公開されるらしいです。(これがどうやら2015年にヒットを飛ばした『戰狼』なんだと思います)
中国のドラマ事情にまったく疎いのですが、映画からドラマというのはよく聞きますけど日本と違ってドラマから映画というのは結構珍しいのでは・・・。人気ドラマだったんでしょうね。
もちろん主役はウー・ジン!ドラマはまったく観てないのでどんな役かわかりませんが久々の主役でしょうか?いい役だといいなぁ。当たり役こい!ヒットして欲しいです。

そしてもうお一人、ぜひ主役級になって欲しい俳優さんの鄒兆龍(コリン・チョウ)。
彼もこの7月12日に公開される「四大名捕」という陳嘉上(ゴードン・チャン)と秦小珍(ジャネット・チュン)共同監督の武侠映画に出演。
ここでコリンさん、めでたくやっと、やっと、やーっと悪役を卒業して正義の味方の一員。
長かったわ~。ほかの3人を食うくらいの役だといいな、気になって調べたら動作監督は谷軒昭(コク・ヒンチウ)かぁ。有名小説の武侠ものなので、ワイヤー使いまくりらしいですが・・・コリンのブレイクもこい!
(なお、これには「レジェンド・オブ・フィスト」で力石大佐を演じた木幡竜さんも出演しています)

ところでゴードン・チャンというと先に公開された「画皮2」がメガヒットしとるそうじゃありませんか。
なのに同じ監督作を同じ時期に公開するってどういうことなんでしょうね?俳優はたまにあるけど、一応監督作ですよ?昔ならいざ知らず、今でもむこうじゃよくあることなのかな。

訂正:やってしまいました。画皮2の監督をてっきりゴードン・チャンかと思いこんでいたら、実は大陸のCM出身の監督烏爾善でありました、ごめんなさい。彼は安藤政信さんも出演している「刀見笑」の監督もしています。
それにしても、木幡さん安藤さんといい、葉問の渋谷天馬さんや「3D肉蒲団」の葉山豪さんといい、日本人のみなさんの名前を本当によく見ます。蒼井そらさんはむこうで超人気アイドルだし!
そういえば、葉問で三浦将校だった池内博之さんも今年「甜心巧克力」で林志玲の恋人役を演じたのだとか。たくさんの日本人俳優女優さんの活躍ぶり凄いことですね!

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蔵出し その5 への3件のフィードバック

  1. きんこん のコメント:

    こんにちは!

    曹査理さん、まだ活躍されてるんですね縲怐B

    もう20年位前ですが、香港の街をぶらぶらしててテレビドラマ撮影中の曹さんに遭遇、お話させて貰ったことを思い出しました!

    コリンチョウさん、ブレイクして欲しいですよね!僕は「ターゲットブルー」の悪役が大好きです。

    ユンケイ先生にも頑張って欲しい(笑)mixiでユンケイ先生のコミュ管理人をやってますので(笑)

  2. 岐阜の『ともっち』 のコメント:

    『捜査官X』、2度目の鑑賞は・・すいません、仕事とかで叶いませんでした、トホホ。
    その代りというわけではないですが、『レジェンド・オブ・フィスト』をレンタルにて観ました。
    いやぁー、『魔都上海』のシチュエーションがたまらなく好きです、大好きです!!
    僕はmixiで『オールドな上海・香港が好きだ!』のコミュニティー管理人してます(本当!)。
    ↑誰かに便乗(笑)??
    あのカトーマスクがギャグに見えてしまうのは僕だけでしょうか?
    白い詰襟を着たドニーさん、めちゃカッコよかった!
    あの服似合う人なかなかいてへん!!

    つけ出っ歯、僕の中では『食神』のカレン・モクがダントツですけど・・最後のオチも含めてね(笑)!

    • ケイコママ のコメント:

      きんこんさま
      曹査理さんにお目に掛ったのですね、うらやましい。
      香港の芸能人のみなさんは気さくな方が多いですね。
      日本の芸能人が香港にプロモに行って一番とまどうのはその距離感だとかどこかで聞きました。

      コリンさんは大好きです。昔まだサモハンのところにいた頃にジェット・リーの奥さんになったニナ・リーと共演している映画で(倪星と名乗っていてその頃は悪役じゃなかった)心をわしづかみにされてしまいました。そこでの林正英がニナのお兄さん役でまた非常に渋くてカッコ良くてね。あーたは健さんか!と思ってしまいましたよ。

      ユンケイさんもこの夏に動作監督した作品がいくつか公開だそうで。さすが安定してますね!

      岐阜の『ともっち』 さま
      つけ出っ歯、カレン・モクは衝撃的でしたね(笑)昔はしょっちゅう観た気がしますが最近は少なくなったのかと思いきや、単純に自分が観てないだけだったのかと・・・それにしても香港以外でこんなにつけ出っ歯が好きな国の映画ってあるんでしょうか?

      カレン・モクといえば最近またまたジェフ・ラウの「東成西就2011」を観てしまいました。
      映画は例によって好き放題ですが、ある方のブログを読んで彼が梁山伯与祝英台をこよなく愛していると知り、なるほどと思った次第です。
      自分は結構楽しみましたが、そのなかのカレン・モクとイーソン・チャンの曲がよくってねぇ。狂ったように今ヘビーローテーションしてるんで是非ご紹介させてください。
      《東成西就2011》陳奕迅+莫文蔚 – 外面的世界MV
      途中、バズ・ラーマンのロミジュリの完コピがまた笑えます。今もなお、しれっとこーゆーことしてるのね、香港。

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