余市蒸留所に行った話

結構お酒が好きで、仕事だなんだと蒸留所に行ったりする機会もあったりします。

が、プライベートで実際に行くこともあったりして(笑)。

以前、札幌ドームにタイガースの試合を観に行った時のこと。
試合が終わり、すすきので食事をして「さて、もう一杯」そんな流れになって、ふと見上げると「ニッカバー」の看板。

「おお、ウイスキーでも飲むべ!」とそのお店に。

当然、友人と私はカウンターに陣取り、バーテンダーの動きを眺めます。
さすが専門店、水割りひとつでもとても繊細に作る。

あれこれ質問したり、感想を言ったりしているうちに「そういえば北海道にニッカの工場がありますよね」という話題になりました。

そう、ニッカの初めての蒸留所であり、ブランド名のひとつにもなっている余市はたしか北海道。聞けば札幌からでも電車とバスを乗り継げば行けるらしい。

早速翌日、行ってきました。

ニッカ創始者の竹鶴政孝氏が、寒冷地で湿気もあり良質な水とピート層と大麦の産地で、たるに必要な木や石炭もある、この北海道余市で蒸留所を作ったのは1936年。

驚いたのは、本場スコットランドでも、もうほとんど行われていない石炭直火焚き蒸留法が、ここではまだ行われているということ。

えええええええええ、ガイドさんにそう聞いた時は思わず声が出てしまいました。蒸留時には当然ながら一晩中職人が交代しながら、石炭をくべるわけです。

よく考えたらすごくないですか、この時代に。

当然日本でその方法をとっているのは、唯一ここ余市工場のみ。

国の登録有形文化財に認定された建物の中には、創始者の竹鶴政孝氏とスコットランド人の妻、リタさんが長年暮した「竹鶴邸」もあり見学が可能です。

駆け足でしたが、酒好きには楽しい見学になりました。
本当は写真の一つも撮って、ここに載せるべきでしょうが、夢中になると写真とか何とか、そういうの全部忘れちゃうんだよね!

それにしても、やはり特筆すべきは、いまだに石炭直火焚き蒸留法で作っていると言う点。

なんだか、そう思うと飲む時もちょっと背筋を伸ばしたくなる、そんなウヰスキーです、余市。

ニッカウヰスキー余市蒸留所

追記:
実は乗るバスを間違えてしまったため、ちょうど見学の時間がうまく合わなくなり、せっかくプラべでこっそりと思ったにも関わらず、結局親会社であるアサヒビールさんの方のお手を煩わせてしまいました。
そのうえに飛行機の時間の関係上、急いで見学したために、あとからこの余市工場様よりわざわざお土産を送って頂くと言う非常に格好悪いことをしてしまったのです。ひぃ~すみません。

本当に色々ありがとごうざいました、そして、大変遅くなりましたが、お気遣い感謝申し上げます。

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映画 鬼が来た!(2000年・中国)

監督脚本主演 姜文(チアン・ウェン)。

甄子丹(ドニー・イェン)主演の関雲長で姜文の演技の素晴らしさに感心して、是非観なくてはと思った彼の監督主演作<鬼が来た!>。さっそく借りてきました。

内容もほとんどわからず、ただカンヌでグランプリを取ったということしか知らなかったので、オープニングからまず白黒作品であるということにびっくり。観る前にぼんやり予想していたものとはまったく違うストーリーと作風。

そのうえ最終的に最も驚いたのは、チアン・ウェンという人が私の想像したのを遥かに凌駕する、いっちゃった映画人だったということでした。いやはや、すげー映画だった。

舞台は日本占領下の中国の小さな農村ですが、日本人対中国人という一方的な善悪を超えた、とにかく人間を描くのだとそれだけを念頭に置いたような話です。
人というものはその時の状況によって友にも鬼にも一瞬にして変わる、そんな普遍的な現実を狂気的にさらし、観ている方はそれをただ受け止めるしかない、そんな作品。

映画の内容よりも、どちらかというと香川照之さんのこの作品について書かれた本の方を先に噂で聞いていた私。
ハンパなく過酷な現場だったようで、その殺伐とした雰囲気はこの作品にも透けて見える気がしました。
でも結果、そういう理不尽な体験もこの作品を作り上げるうえでの重要な要素のひとつだったのかも、と映画を観終わった人間に想像させてしまうところが、この映画のまた凄いところ。

それにしても中国側の、あの村人のキャスティングはなんというか良すぎます。
とくに爺さんたちがすげぇ。有名俳優ばかりが登場する大作佳作ばかり観ていては、こういう出てくるだけでリアリティを感じる役者というのにはなかなかお目にかかれませんが、いや、久々に観ました、この感じ。
おまけに村の男たちも本当に自分の事しか考えてない勝手な奴ばっかりで(笑)。

とにかく脚本もそれぞれのエピソードも細かく繋がっていて良く出来ている。
なのに「ほら、凄いでしょ」というありがちな格調高く構えた主張はまったくなく、ユーモアにしてもドタバタにしても、シニカルに思えてくるところがこの作品の最大の魅力なのかもしれません。

前半の滑稽な人間模様をさんざん見せた後、香川照之扮する花屋小三郎が日本軍に帰還し、とくに、噂の少尉、澤田謙也氏が登場してからは、見ている方の心拍数はぐんぐん上昇。なおかつこちらの予測を大きく上回る展開に動揺を隠せない。

中国映画で日本軍が登場するとなると、それだけで実は結構覚悟が必要だったりするのだけれど、この作品に関しては日本人役にはエキストラにいたるまで全て日本人を起用し、オーディションをして決めたという日本人俳優の妙にも(実は数人、同じ桐朋学園演劇専攻で一緒だった役者もいて、それもかなり心拍数をあげました)非常に感心。
こういったことも含め、物語や描写、衣装など、日本の軍隊や(海軍と陸軍の違いまで含め)兵士を御都合で適当に描く気はないという制作側の強い意志を感じさせ、ある意味観ている自分も肝が据わりました。日本軍が登場してそんな気にさせてくれた中国映画は初めてです。

当然、胸が痛む場面がないわけはないのだけれど、一方的な善悪を描くつもりはないという姿勢は最後まで伝わり、そのおかげで、文字に起こしたあらすじだけでは絶対に読みとれないだろう人種や文化を超えた人間の悲しい性が見事に浮かびあがってきたのではないでしょうか。

こういう作品はともすれば、ラストに向かってもうすこし分り易く説明したくもなるもの。
そこをあえて説明過多にせず、主人公が最後に喋る機会を与えられてもなお、野獣のような唸り声しか出さないあたり、監督脚本のチアン・ウェンの大いなる人間への洞察力が伝わって深い感銘を受けました。確かに怪作にして傑作です。

最後に物凄く余談ですが、日本降伏後、国民党のカオ長官役で出て来た役者の顔に非常に見覚えがあって、誰だろうとずっと気になっておりました。
すると翌日キッチンでネギのみじん切りをしている時に唐突に思い出したのです。あれはドニーさんの<洗黒銭>で共演していたあの男前じゃないか!
名前を呉大維、デヴィッド・ウーという。彼の10年後の変わらなさにも心から驚いた次第でございました。

鬼が来た!日本版予告編

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本田武史さんに会えず

今年もやってまいりました。プリンスアイスワールドの季節。
GWに新横浜に観に行ってきましたよ~。

開演前に楽屋に御挨拶にうかがった八木沼純子さんは相変わらずお美しい。
小柄なはずの純子さんなのにリンクの上ではとても大きく見える、さすがです。

ものすごくアホなことに、純子さんへの挨拶のあと本田武史さんにもご挨拶をと楽屋にお邪魔していいかと、お電話をしたら「あ~、それはひょっとしてご存知ないですね~」と一言。
なんと数日前のショー中の転倒で肋軟骨を剥離骨折してしまい出演中止。今はもう関西に戻ってらっしゃるのだとか。
会場に行く前に直、楽屋に来てしまったものだから「本田武史さん出演中止」の張り紙をアホな私は見ていなかったのです。

すみません、すみません、私ときたらなんと間の悪い(涙)。

先日、私のNHKラジオ番組「渋谷スポーツカフェ」にゲストで来ていただいたのをこれ幸いに、色々マニアックな質問をたくさんさせていただいて、この日の演技を観るのをとても楽しみにしていましたが、なんとお怪我とは。

本田さんの一日も早い回復を、心からお祈りいたします。どうかどうかお大事に。

さて、ショーですが毎回このプリンスを観る度に、そのアットホームな雰囲気に和みます。
今回から南里康晴選手もこのプリンスメンバーになったのだとか。そうか~プロの道を歩むわけですね、とにかくスケートを続けてくださることを嬉しく思います。
見ていると昨年(なんだか色々あってもう何年も前のような気がします)長野の全日本でのカルメンでスタオベした気持ちが蘇ってきて、じんとしてしまいました。

映画音楽やら子供たちと一緒やら、今年もプリンスメンバーは頑張ってる。
印象に残ったのは、メリーゴーランドと津軽三味線。とくに津軽三味線(前半は分りませんが、途中からは間違いなく吉田兄弟かと思います)はとてもよかった。
シンクロもあったし、きっと凄く練習したのではと想像しました。これから彼らは各地を回るわけですが、時間を追うごとにこなれて、きっともっと良くなるのでしょうねぇ。

ゲストスケーターも華やか。
村主章江さんはスローパートから一転、ヒップホップ調のメロディに乗せて踊りまくり。キャリアが長い中、いつまでも新しい事に挑戦する姿勢にあらためて感激。

そして町田樹選手の新しいEXもこの目でしっかり拝見。
クィーンの名曲で最初はなんだかヨン様風の(と書くと神埼さんを思い出しますね!)マフラーと眼鏡で登場。しかしそのふたつのアイティムを取ると、とたんにエアギターをかき鳴らすイケメンに変身!そういうコンセプト(笑)。とっても楽しいプログラムです。

トリひとつ前は高橋大輔選手。
世界選手権でのアクシデントには心臓がつぶれるかと思うくらい心配しました。
今回、別の靴を履いていたのだとは思いますが、想像した以上に元気そうに見えて、なんとトリプルアクセルも決めていたのに心から安心しました。

バンクーバー五輪の織田君のときもそうでしたが、なにもあの場でそんなことにならなくても、というアクシデントをスケートの試合ではたまに見ることがあります。本当にやるせない。

その試合にすべてを賭けて苦しい練習をしてきたはずの選手たちです。なにもそこで、とスケートの神さまってなんと残酷なんだと。

「あれって、やっぱり靴のメカニックの責任なの?」と一緒に観に行ったライトなスケートファンである友人が帰りにそう聞いてきたので、当然のことながら、靴の苦労やら試合が一カ月ずれた弊害やら、当然あのクラスの選手になると普段からどんだけ靴には気を遣うかとか、ほかにも試合中ブレードが真っ二つに割れた選手の話やら、靴紐ひとつでタッチが変わると嫌がる選手もいるのだとか、とにかくあれは誰ひとりとして予測できないことがあの場で起こってしまったのだと、色々誤解を解くべく熱く熱く話をしてしまいました(笑)。
私がとってもフィギュアスケートのファンだから余計にそう思うのでしょうけど、こんなに有名で視聴率もいい人気コンテンツなのに、実はその繊細な部分とか裏側の苦労とかあまり知られてないことに、時々面喰らいます。そういう部分も含めてフィギュアスケートなんだけどなぁ。

その後のニュースでは高橋選手、現役続行の意思を固めたとか。
私は彼の演技が本当に大好きです。できるだけ長く現役の彼の演技が見たいと願っていたのでその宣言は大歓迎。

ともあれ、先日の世界選手権で今シーズンも終了。
現役選手の皆さんは本当にお疲れさまでございました。また来シーズンの演技を楽しみにしております。

 

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関雲長 中国普通話簡体字字幕版DVD―ドニー・イェン 甄子丹

ある方の御好意で中国で公開されたばかりのドニーさんの『関雲長』のプレス向けDVD を観ることが出来ました。感謝感謝、本当にほんとーにありがとうございました!

とはいえ、苦手な中国普通話簡体字字幕バージョンですから、残念なことに台詞の意味がほとんどよくわかりません。
昨日手に入って、夜に2回、今朝1回、アホです(笑)てなわけで、このドニーさんの新作について色々考えてみました。以下「も」ネタバレ全開です。
なので、楽しみにしている方はご覧にならないほうがよいかと存じまする。

そこでここからは、三国志も劉備も曹操も関羽もまして千里走単騎も詳しくは知らない人間が「関雲長」を苦手な簡体字字幕で(だからそのつもりで読んでください、どうかどうかお願いします)見た感想。

まずは注目のアクションを中心に。ファーストバトルは戦場です。

私が瞠目したのはドニーさんの登場前。
袁紹軍の顔良将軍率いる槍を持った騎馬隊。
彼らの戦法は馬に乗ったまま槍を曹操軍に向かって投擲する。もうね、この投げっぷりは「投擲(とうてき)」という言葉しか思いつかない。
物凄い早さで放たれた槍は敵の盾を突き破り、そのまま兵士の身体を貫く。こんな武器、というか戦い方はじめて見たでー!

あとであまりに興味が沸いたのでちょっと調べたところ、ちょうどよい具合にこの映画の武器考証をした方の記事を見つけました。
恐らく映像で槍という武器をあの形で提供したのは初めてではないかということ。もちろん当時の資料から読みとった戦法のようですが、すみません、つたない中国語の繁体字で読んだのでこれくらいで勘弁してください。

さて、そんな見ている方もビックリなこの槍技に、もちろん兵士たちはもっと唖然。なすすべもなく、ひとりまたひとりと倒れてゆき、とうとう残るはたったひとり。
死を覚悟した兵士が最後の一矢だけでもと震える手で弓を引くのですが、将軍は飛んできたその矢を槍で叩き折るとゆったりと槍を構えます。

と、そこへ曹操軍の騎馬とともにこの映画の主人公関羽登場。

彼は劉備の元へ帰る前に、捕虜として手厚く扱ってくれた曹操のためにひとつでも手柄を立ててからと律儀に考え、かつての同僚である顔良と相対することになります。

ここでの関羽と顔良は馬に乗り単騎同士での決闘スタイル。

血に染まった青龍偃月刀を切っ先から静かに手元へとカメラがパンしてゆくと、やがて兜をつけた按上のドニーさんの後ろ姿が!
背中を向けたままの彼がゆっくりと顔をぬぐう。と、次のショットは返り血をぬぐったあとのその顔から眼のアップ。うおおおおおおお、ドニーさんかっこええええええええ!と映画への期待感は否が応にも盛り上がる。
わくわく、これからどんなことが!どんなアクションが!

ドン、と一発、顔良が槍の柄を足元に叩きつけると真正面から互いに馬を走らせていざ勝負、と思った瞬間。関羽が馬から跳び上がった。そして流れるように無敵の将軍を一閃必殺。
振り切った長刀がそのまま地面に突き刺さり「ド―――ン」と音。続いてめり込んだ刃先からパワーが大地に伝わったかのようなCG。ちょ、それ(笑)!と思う間もなくその場面は終了。
もっと派手に土埃が舞うとか、ほんの何フレーム長くするとか、もうあと少しでいいからカットに余韻が欲しかったです(笑)、ドニーさん。

長い長い関羽の物語のなかで、この映画が描いているのは千里走単騎というエピソード。
同じく曹操の人質となった劉備の側室を連れて、彼が5つの関で武将を倒して劉大哥のもとに帰還するという話に絞って展開。
今作品はドニーさん初の古装武打動作フル設計とあって私の期待も大きく、とてもとても楽しみにしていました。

第1の関はそんな観客の期待に応えて時間も動作もたっぷりと。
のっけからドニーさん兵士に頭突きかましてる(笑)兜をグーで殴ったら、そら痛いやろ、とばかりに鈍い音。音響もよい!

続く狭い路地での青龍偃月刀ブン回しの華麗でパワフルな動作では素早いながら、片刃ならではの手首の返し角度のつけ方、足の出し方、もう一々理にかなってます。
その細かい動きにも惚れ惚れしたけど、馬で追ってくる敵将に対し瓦を長刀で剥がしながら走るアイディアにはもっと痺れました。
追いつかれては困るし、先を行くさらわれた側室は助けなきゃいかんし、ですよね~。そこですよね~、と思わずニヤリ。

あと、刀を踏みつけると刃が取れちゃう発想にも感心。なんだかとっても目からうろこ。お蔭でフィスト・トウ・フィストに持ち込めました!さすがです、ドニーさん。
バトルのお相手もアンディ・オンなら不足なし。配役を最初に聞いた時は「おお、そうだそうだ、彼がいたやんか!」と嬉しかったのを覚えています。
いや、こんな冷静に書いてる場合じゃない、このシーンだけでいいからデカイスクリーンで観たい!それくらい素晴らしいコレオグラフィーとアイディア!

精武風雲』でもそうでしたが、ここのところのドニーさんのアクションは最初っから飛ばしますね~!いやいや、いいもの観ました。超満足。

第2の関は毒矢にやられるという不利な状況。そのうえ室内で1対100くらいの二重のハンデつきまくり。ずらりと並ぶ盾に向かって高速剣術とやけくそフライングキック。
でも動けば動くほど関羽は毒がまわって苦しそう。あかん、それはしんどい、しんどいよ~。観てる方も息が上がりそうだ。

かつてこんな苦しそうに闘うドニーさんを見たことがあるでしょうか。いや、ないよ、最後死ぬことはあってもこんなに苦しい姿は見たことはなかった。
あえて言えばTV『精武門』でムエタイ選手にボコボコにされた一回目の試合の時以来かもしれん。などと考えている間に二階からまとめてみんな落としてやる!とばかりにバラバラと兵士を叩き落とすドニーさん。最後は自分も一緒に落ちて。

この時のスタントのみなさんの落ち方がすごくおもしろかった。
「やられたー」じゃなく「この狂犬みたいなおっさんから逃げたいー」って落ち方してるのよ、みんな(笑)。もし私があの場にいたら絶対に同じ気持ちで落ちたに違いない。

第3の関は緊迫感あふれるなか、ゆっくりと扉が閉まって「うわぁ」とか「ひげぇ」と声だけが聞こえ、隙間からちょろっと人が動くのが見えるとこがミソ。
しばらくしてその扉に「ドシュグワ!」と敵将の使ってた(はずの)武器が穴を開ける。と、その穴に血を流した兵士の顔が現れくずれ落ちるように消えてゆく。
やがて音がやむと今度は扉が静かに開いて、するとすでに全員倒れていた、という「おいおい」と突っ込みたくなる展開。
手法としてはありだと思う。しかもこれすべてワンカット。
そう何度も無双シーンばかりでは関羽はもちろん観客のみなさんも疲れてヘロヘロっすよね。でも敵さんの衣装も紫で美しかったし、ドニーファンとしては見せて欲しかったような気もちょっぴり。

第4の関では、代官(?)とタイマン勝負。素晴らしい剣を持ってはいるが腕はそうでもない相手。
ドニーさんと打ちあい弾き飛ばされる度に彼が足を必死でふんばり、その名刀が「ビィ―――ン」とうち震えるのが、もうね、関羽のパワーを感じてたまらんすよ。
そんな相手をいなすかのようにクルクルと青龍偃月刀と人間を一緒に回しちゃう。
おまけに、ほんの少し『HERO』の長空を思い出す瞬間もあったりして。いやいや、カッコいいすドニーさん。
決着のつけ方がまた洒落てる。
地面に刺さった相手の剣を自分の長刀でより深く埋め込んじゃうのよ。この非力な男には絶対に抜けないって深さまで。
よく考えるなぁ、こんな行動。このときの刀の振動の音がまた素晴らしい。

しかし、ここで一番気になったのは、実は台詞。ああ、王学兵はなんて言ってるんだろう、これ、多分この映画のキモのひとつだよね、きっと。
曹操とのやりとりや側室関係で力尽き、彼の台詞はきちんと確認できず・・・(台詞的には)無念のリタイア。

第5の関は霧中の森での闘い。あらかじめ公式メイキングをネットで観ていた自分は銃撃戦のような弓のアクションを期待していました。恐らく「おお!『導火線』のガンアクションふたたび?」と同じように思った人はいっぱいいたはず。
しかしそこは「同じことはしねぇ」宣言しているドニーさんのこと。
案外あっさり終わってしまい、霧の中のプチパルクールに続いて敵さんから刀を奪い接近戦へ。ちょっとこっちの期待が大きすぎたのかも。

ただ最後の兵士とのやりとりとドニーさんの演技は印象に残りました。
この兵士は戦場で命を助けたあの生き残りの男。
せっかく助けたのに今度はその命を奪わなくてはならない。なんという皮肉な巡り合わせでしょう。
ここも肝かと思ったので力を振り絞ってみたところ「自分の運命はもはや自分では決められない、それはあなたも同じだ(超解釈)」みたいな。

とにかく、アクションのボリュームが5つの場でまったく比重が異なっていたのは、あんまり続くと観客が疲れてしまうからという制作側の意図でしょうね。
しっかり撮ったシーンの俳優達も想像以上に動きがよく、嬉しいことに役柄的にもバトルの相手としては遜色ない。

なのに、なのに、ぶっちゃけて言うと、どうもすっきりしない。(こんだけ書いといてかよ!)いや、ひとつひとつの動きは惚れ惚れするほどいいんですよ、特に最初のアンデイ・オンとの勝負は名シーンです。
なのに・・・。ドニーさんが作ったアクションでこんなことってあるのか!私、どっかおかしくなっちゃったのかい。
偏ったバランスのせいか物足りないような、いや、もうこれでお腹いっぱいなような。不思議、不思議なこの感覚。

後からよくよく考えたところ、このアクションシーンに対するモヤモヤの原因はふたつあることに思い至りました。

まずひとつめ。実はこれが非常に大きかったと思うのですが。
正直に申し上げると、関羽が命を賭けても助けたいと願う女性キャラクターがどうにもこうにも最後まで好きになれなかった。
劉備の側室になろうとする彼女は、関羽の人間らしさ弱さをだすために、彼の長年の想い人として登場する唯一創作された役柄。

しかし致命的なことにこの女性には守りたいと思わせる魅力や儚さが、悲しいくらいに欠けているのです。

言葉が全部クリアに分らないせいもあるんだけど「この女のためになぜそこまで???」と不満を抱いたら最後、相当しんどい(涙)。演じるのはスン・リー。
スン・リーと言えばあのジェット・リーの『SPIRIT』で盲目の少女を演じた女優じゃありませんか!

自分はあの役がものすごーく好きだったのですが、この作品で彼女は何故、あの時の、たおやかで透明な雰囲気を封印してしまったのでしょうか?
せめて喋り方、造作くらいはもう少しなんとかならんかったのか~(溜息)。
前髪パッツンなアイドル風味のヘアスタイルと今時の女の子チックな演技も相まって、なんというか・・・こう・・・言葉が悪くて申し訳ないのだけど、ションベンくさくって、とにかくかなわん。

しかも、この人何故だかわからんが最後には関羽のこと短刀で刺しちゃうんだよ、なぜだぁぁぁぁぁ。

あまりの驚きに、映画の最初から遡り彼女とのやりとりを気合入れて簡体字を調べたり(映画字幕はコピペができん)、意味の繋がらないところは、そのたびに辞書で確認したり色々駆使して読んでみたくらいです(かなり執念深い自分)。

あのシーンはいとまを告げたら、いきなり彼女が「帰ったら劉大哥にお願いして結婚しましょう」ときたもんだ。
それでも拒否したら(当り前ですな、関羽を誰と心得る!)本音は劉大哥のために彼を曹操のもとに行かせたくなかっただけなのか、いきなり刺して本当に訳が分らず混乱するばかり。

しかも刺しといて謝ってるし!動機がわからん、動機があああ。

という具合にドニーさんにとって彼女が、忠義とはまた別に、あんなに苦しんでまで闘いぬいて無事に送り届けなくてはというモチベーションになりうる女性である、というのがどうしても納得し切れず。

そのために、残念ながら最後まで主人公関羽の心情に寄り添うことができなかったのであります。これに関しては同じことを全世界にいる2億5千万人くらいの(笑)女性ドニーファンが感じたことでありましょう。

ああああああ、なんて勿体ないことをしてくれたんだ!!!

思いっきり魅力的でミステリアスな女性が最後豹変して彼を裏切ったほうが、ずっとイケてたし悲劇性も高まったのでは?
SPIRITで観たスン・リーなら演技力や雰囲気がないわけじゃない、魅力的で儚げな役も演じられるはずだと思うんだけどな~。
なぜああいう若い子ちゃん風な役作りになったのか、私には理解が及ばず、残念です、本当に心から残念。

さて、アクションシーンに対するモヤモヤのふたつめの原因を考察する前に、この映画のもうひとりの主人公、曹操を演じたチアン・ウェンの事を書かねばなりますまい。

チアン・ウェンについては、こんな有名な俳優にも関わらず私、初見でございました。
噂には聞いておりましたが、噂に違わぬ名優です、すごいです、登場したらすべてかっさらいます。
なのに芝居が重くない。小気味いい軽妙さがあって、そのうえに驚くほどセクシー。名優にこんな演技されちゃ誰も敵いません。

三国志関係の作品で描かれる曹操はたいてい悪役だそうですが(赤壁でもそうでしたな)、この作品での曹操のキャラクターは監督二人が声をそろえて「CEOのイメージ」と言った通り、非常に近代的で合理的でしかも人を見抜く力を供えたユーモアのセンスがある人物として登場します。

むこうの映画ですから脚本は変更で当り前。
この作品の曹操の台詞については、自身もまた監督でもあるウェン先生の意見が相当盛り込まれたそうで、「ここは聞き逃しちゃ絶対にいかんやろ」という部分でポーズボタンを押し(笑)慣れない簡体字で懸命に意味を想像した自分にも印象的な台詞であることはうっすらと分りました。

この役に素晴らしい色彩を加えたのは間違いなくチアン・ウェン、その人自身でありましょう。

とにかく、このドニーファンの自分ですら曹操と一緒のシーンでは、ついウェンを見てしまうほどの存在感と台詞の響きのよさ。
しかも困ったことに、この映画の中のドニーさん演じる関羽は「英雄」と呼ばれる前の、人を殺すことへの罪悪感をどこかで抱えている謙虚なひとりの普通の男として描かれているのです。
もうね、役者としての技量うんぬんだけじゃない、最初のキャラ設定の段階で勝負は決まっとるやんか!

ここで、素晴らしいアクションシーンなのに、なぜモヤモヤしてしまったのか、のふたつめに参りましょう。

『インファナル・アフェア』で共同脚本を務めたフェリックス・チョンとアラン・マック、この二人の監督は関羽という男を、人々の抱いている戦神のイメージとはまったく違う人物にしたかったようであります。
もともとは普通の男であったというのが出発点ですから、そんな人間がなぜ歴史上で「英雄」と呼ばれるほどに敵を殺すことが出来たのか。彼がそういう英雄になるまでには決して単純な義や天下国家、立身出世欲だけでは説明できない悲劇がその内側には秘められているという発想です。

実際印象的な曹操の台詞で「狼の皮をかぶった羊の心を持った男」と関羽を評して言わしめていたりする。
この発想、悪くないと思います、いやむしろすごく好きかも。が、悪かったのは、その肝心の関羽の役にドニーさんを選んでしまったということ。

そもそも人々の抱いている関羽の外見のイメージから最も遠く離れた男がドニー・イェンではないでしょうか。

本来皆の持つ関羽像というのは長いあごひげをトレードマークにした身長2メートルを超す山のような大男で、他の誰も操れない重く長い刀を武器に闘うオレ様武将です。
ただでさえ、イメージの固定された人物の違う面を表現するなら、その外見だけでもイメージ通りでないと説得力がありません。
だって、外見も違う言動も違うじゃ、それは観客にとって「別人」にしか過ぎないですもん。
(しかも本人は早々に髭すら切っちまうくらいだからなぁ。そりゃ三国志に慣れ親しみ愛してきた人達から議論が巻き起こるはずだと)

ドニーさん中心で考えてみても、彼が演じる繊細で謙虚で普通の男なら葉問で皆見てしまっていますから、今更曹操相手に謙虚になられても・・・ねぇ?と観客は思ってしまうし、見慣れた繊細さではチアン・ウェンのあのキャラクターに太刀打ちできるはずはなかったのでした。

しか―――し!潔癖症の映画ファン、三国志ファンならいざ知らず、実はそんなことはドニーファンの自分にとってはほーんの些細なこと。

問題は、その弱点がアクションシーンの足をも引っ張ってしまった風に「私には」感じられてしまったというあたり。

「本当は意味なく殺したくない・・・」という気持ちを秘めた、なのに派手でリアルなアクションは、今回この条件で(台詞がいつにもまして分らないうえ、三国志を読んだことがないという)見ている自分には、残念ながらいつものようなカタルシスを感じさせてはくれませんでした。

私は本来、血生ぐさいシーンがすごく苦手な人間。だから意味のない暴力的な映画は好きじゃありません。そんな自分がなぜドニーさんのこんなにもファンなのか。
それは彼の映画におけるマーシャルアーツスキルがずば抜けて高いからです。

そのスキルの高さが大前提にあったうえで「敵」をやっつけるからいいんであります。闘いが終わった後に「勝った」とスカッとしたい。いや、別に主人公が悩んでも疑問を持っていても、やむなくでも反省してもいいんです。極端に言えば善悪が曖昧であっても構わない。

ただその悩みや哲学を超越してしまう制御不能なほどの「怒り」がどれほどドラマチックで悲しくて、そして虚しいものかは、まさに葉問1でご本人が示したじゃありませんか。
今作では、迷いゆえにその怒りのパワーが弱く見えてしまったためか、まことに残念ながら心の底からはスカッとさせてはくれず。
おまけに、欠けている肝心なそのモチベを埋めてくれるはずの劉備とのエピソードが端折られてるうえに、同じくモチベになるはずのマドンナにも魅力を感じないでは(と、結局はそこに戻ってしまったか!)徐々にアクションシーンもトーンダウンしている風に感じられてモヤモヤしてしまったのでした。

あの壮大なるオレ様映画、まさに大金をかけたドニー・イェンプロモーションフィルムである『精武風雲』にもキャッキャ喜んでいた自分が、こんな経験は初めてなので、正直とまどっております。
期待が大きすぎたのか、それとも、歌舞伎の忠臣蔵を私がどの段から見てもすんなり話に入れるみたいに、三国志をよく知っていればこんなモヤモヤも一切なかったのでしょうか、ちょっとした保留事項になりました。

しかし、こんな自分の重箱の隅をつつくようなイチャモンなど当然ながらここだけの話で、公開された映画はめでたく香港でも内地でもヒットしたようで。無事に観客のみなさんには受け入れられ愛されているようでなによりでございます。(ま、若干の「あれが関羽?」騒動もあるようではございますが)
なんと言っても、アクションは凄いし、チアン・ウェンはセクシーだし(彼は声がいい!)イケメンもたくさん登場するし、それにドニーさん髭がある古装でもめちゃ男前。

加えて最後の関羽の台詞には、さすがの私も「なんという悲劇」と、この後人を殺すことに意味など考えないであろう主人公を思いぐっときちゃったくらいだもんね。
だからこそ全部終わった後の英雄としての彼の見得を切る姿は非常に効果的で余韻として印象に残る。要するに結果オーライ!

ところで、ここまで書いていて気がついてしまいましたが、ドニーさん主演の作品に対してアクションだけでなく様々な角度からの感想や考察がこうして出てくること自体がすごいことかもしれません。

今までなら「アクションすげ~さすが~」でオールOK!と済んでいたものが、いつの間にやらスクリプトや他の俳優の演技にまで言及し、「主人公の心情に寄り添う」などという言葉が口をついて出てくるとは!もう一度言います。主人公の心情に寄り添う、ですよ(笑)。まったく驚いちゃうわ!

そう思うと、ドニーさんは以前とはもうまったく違うステージに立っているんですなぁ。

↓中国の公式が閉じたみたいなので、たまたま見つけたこちらを。
マレーシア関雲長オフィシャルサイト/一部中文の英語(予告は恐らくマレーシア語?)
関雲長UK DVD&BDサイト
関雲長中国予告
関雲長 英国予告
↑ドニーファン的には、「三国志がなんぼのもんじゃい」というこの予告が一番気に入りました。
関雲長 仏予告
(姜文が仏語を!)
↑と思ったけど、この人フランス人の嫁もらったりして、実は仏語が喋れる男。一度聞いてみたいわ~彼の仏語。

正直、アジアでのドニーさん人気は凄まじく、多分日本でだけ(なぜか)知名度がない。
新作はアジアで必ず公開されますが、それも日本一国「のみ」を除いたアジア。とほほ。
しかもアジアのみならず、APECのカナダやオーストラリア、ニュージーランドでも公開されるというのに・・・

欧米でも作品によっては、ちゃんと公開されるし、すくなくとも最近の作品のソフトは必ず発売されている。(龍虎門のドニーさんがフランス語で喋ってるのを見た時は、思わず笑ってしまいました)
どこにでも華僑はいるというのが大きな理由のひとつですが、世界マーケット的には中華明星のなかで、成龍、ジェット・リーにやっと近づいてきました。

まさにアクションは言語を超える、というよい見本。
だからこそ、投資家は彼の主演作にどんどんお金を出すし、こんなにも早いペースで主演作が撮影されるというわけです。

本当に「日本以外」なんだよねぇ。

 

 

 

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本田武史さんに会う 2

さて、本田武史さんがラジオのゲストに来て下さった続き。

実は本番前、スタジオのデスクについて、さぁそろそろ始まる!というタイミングに「それってウィキペディアですよね」と私の手元にある資料を指差す本田さん。

はい、と答えると「そのなかに間違いがひとつあるんですよねぇ」とおっしゃる。

「どこですか」と尋ねると「僕のプログラムに<仮面の男>というのがあるんですけど、そのウィキだと振り付け師がリー・アン・ミラーとなってるんです。けど本当は違うんですよねぇ」

えええええ、私もずっとそうだと信じていました!

フギュアスケートのファンでない人にはどうでもいい話かもしれませんが(笑)、ファンにとっては「誰がそのプログラムを振り付けたか」というのはとても重要なこと。
「それ、本番で是非訂正してくださいよ、ファンのためにも」とお願いして番組中に本当の振り付け師のお名前を発表していただきました。

98-99シーズン、日本人初のクワドルプルを決めたFS「仮面の男」はヴィクトール・ペトレンコと彼の奥さんである二ーナ、そしてペトレンコのコーチであったガリーナ・ズミエフスカヤ3人の共作ですってよ、奥さん!

いやぁ、これだけでも本田さんをゲストに呼んだ甲斐があった(笑)。

これでかなり肩の荷が下りたのか、軌道修正は番組店長のひぐちくんに任せ(笑)、フルスロットルでマニアックな質問全開モード。

結構若い時からの彼の演技をVTRで撮り溜めしてますからね。
実は昔の衣装を今でも着まわししているのを私は気がついていました。
そこで衣装のお話をば。
「結構、物持ちいいですよね?衣装とか」
すると本田さん、「全日本優勝するまでは母が縫ってくれてました」というご返事。「実は昔の衣装は何回も縫いなおして使っているんです」と教えてくれました。
そうだったのか~。

続いてはあの名プログラム「アランフェス協奏曲」の曲は誰が選んだのか?という質問。
答えはコレオグラファーのローリー・ニコル。
選手によって曲選びは様々らしいのですが、彼の場合はいつも結局は振り付けの先生が持ってきた曲に落ち着いたそうです。
アランフェスの時は聴いた瞬間に「これだ!」と即決。

あの曲に関しては、審判や観客にアピールするというよりは、ずっと曲の風景を思い浮かべて滑っていたのだとか。
イメージは孤独で寂しい兵士。
五輪の時の演技があまりにも素晴らしく、そのことを伝えたら「あの時は本当に曲に気持ちが入り込んで、観客も同じようにその世界観にいるのが分り嬉しかった」ということを話してくださいました。

私は今でも時々、このソルトレイク五輪の<アランフェス>を観返すことがありますが、その度にラスト近くの素晴らしいイーグルと最後の最後、感極まったような本田さんの表情に胸が熱くなります。本当に名演技。

思えば、その時の本田さんはまだ21歳。
翌シーズンではクワドを1つのプログラムに3回入れて成功させるなど、本当に先が楽しみで、(ちなみに自分はそのシーズンのSPのレイエンダが大のお気に入り)次のトリノ五輪では絶対に彼がメダルを取るのだと信じていたほどです。
まさかその後怪我のためにトリノ五輪の前に、25歳という早さで引退なさるとは想像もしていませんでした。
25歳といえば、プロ野球なら若手も若手、まだまだレギュラーにもなれずにいても普通の年齢です。

「 小さいころから滑ってますからね、みんなどこかしら怪我と隣り合わせです」とご本人はさらっとおっしゃる。
けれど、優雅なイメージとは裏腹に、フィギュアスケートというのはなんと過酷なスポーツでしょうか。

今は関西大学で、長光歌子コーチのアシスタントとしてたくさんの生徒さんを教えていらっしゃる本田武史さん。
生徒さんは入れ替わり立ち替わりでも、自分はひとり。長い時は朝5時から夜の9時までずっと リンクにいるという日もあるのだとか。
当然、身体が冷えるので4,5枚は重ね着して持ってきた暖かいコーヒーでしのぎ、あとは「まだ動けるので」なるべく動いて見せるそう。

今の日本男子の活躍はほんとうに目覚ましいですね、という振りには、「先輩がいたから僕も頑張れました、それがあったからこそ次につながり今の日本があります」という言葉で締めてくださいました。

この先、本田先生が育てた選手たちが大きな舞台で活躍することを心からお祈りしております。
そうそう、3歳になるお嬢さんはどんなに泣いていてもTVでフィギュアスケートが始まるとピタっと泣きやんで、じっと画面に見いるのだとか。
お誕生日のプレゼントにとうとうスケート靴をプレゼントしたそうで、ファンとしてはつい、将来の「本田選手」に胸弾ませてしまいます。
色々なお話を、本当にありがとうございました。

本田武史さんに会う1

 

 

 

 

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十月圍城 / (邦題)孫文の義士団 香港DVD鑑賞、のちに劇場にて日本語字幕―ドニー・イェン 甄子丹

2010年、第29回香港電影金像奨で最多15部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、助演男優賞、撮影賞、美術賞、アクション賞、音楽賞を獲得した話題の映画『十月圍城』。

とにかく出演するスターも豪華なら、セット美術がすんばらしい!1905年の香港を見事に再現したオープンセットは各国の有名監督が見学に来ただけあるわ。

担当したケネス・マクは今多分一番売れっ子の美術監督だと思う。顔を見ると結構若いあんちゃんに見えるけど才能と執念があるんだろうなぁ、過去にはジェット・リーのスピリットの美術なども担当。そういえば、あのスピリットの広場や茶楼ってそのまま残ってて色んな映画に流用されてるよね?ドニーファンとしてはおなじみ葉問1,2も彼が手がけています。

実はこの映画、ひとえにテディ・チャン監督の執念で出来上がったもの。

2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)騒動があったため一度白紙になり、その後2004年にクランクインまであとひと月、という段階で最大の出資者が自殺して頓挫してしまったという、いわく因縁のある作品。この流れについては、HK movie&Entertainment Newsという個人の方のブログに詳しく書いてあり、そのブログに書かれた紆余曲折制作秘話を読んだだけで私は涙がこみあげてきました。興味のある方はよかったらぜひご一読を。

またこれは別のところで知ったエピソードですが、2004年、出資者の自殺にともなう最悪の結果、企画がポシャって、完成したセットをいよいよ壊すとなったその日、美術監督がその真ん中で男泣きしたとか。それが今考えるとこのケネス・マクだったんでしょうね。
こうして完成した十月圍城を観ると泣いた理由がよく分ります。彼だけじゃなく、以前この映画に関わった人達は、その時どんなに無念だったことか。

そしてその無念さを乗り越えたテディ・チャンの執念をもって出来上ったのがこの作品です。そんな作品が面白くないわけがない、と香港映画ファンのひとりとして最初から激しくエコ贔屓モード。

あれだけたくさんのスター俳優を擁して、よくぞここまでまとめました。素晴らしい。それぞれにドラマと見せ場があり、それが破綻せずに後半の孫文到着後のあの疾走するかのような後半の流れに繋がる手法はお見事です。
登場人物のドラマについては、特に教師であったレオン・カーフェイと、清朝側の元教え子フー・ジュンとのやり取りが印象に強く残りました。それぞれの人間に立場や考えがある。そう示されるだけで物語はぐっと厚みを増します。

それにしてもリー・ユータンを演じたワン・シュエチーはうまい!中国本土の俳優さんは演技のうまい人が多いですが、さすがでございます。
暗殺団にいよいよ追い詰められた彼らが角を曲がると目的地である孫文の家の前の階段に鉄扇を持ったレオン・ライ若様が立っていた!そのシチュエーションだけでも鳥肌モノですが、このレオンのそばを通り過ぎる際のシュエチーの目の演技が絶品。もうね、役者ってこういうことなんだわ!

一方香港人も負けてないよ、とレオン・カーフェイ。まったく体力的にも武術面でも頼りにならない革命の士を見事に演じておりましたし、おっと忘れちゃなんねぇ、ニコラス・ツェーくんも非常に泣かせる演技で晴れて今作品で香港の映画賞の助演男優賞を獲得。納得です。

そんなオールスターキャストのなか、ドニーさんですが、なんのなんの、演技で見劣りなんかしちゃいません。もうね、ここ数年のドニーさんの演技力の向上にはファンの一人としては何というか、本当に心から嬉しい限りでございますが、今回は今まで観たことのない博徒という設定。
しかもあまりの最低な生活ぶりに妻にも逃げられてしまうダメ男。
ドニーさんありきでこの役を作ったのか、役が先でオファーしたのか分りませんが、よくぞこの役をドニーさんにあててくださった!ありがとう。

今までドニーさんの演技に泣かされたのは、あの伝説のTVドラマ『精武門』での妹が死ぬシーンと葉問。まさかまたこんなに早くドニーさんに泣かされる日がこようとは(笑)。

とにかく全体のストーリーも相まってこれでもかと泣かせてくれます。特に人力車に乗った娘を見つめて触れたいのに触れない、そんな演技をされた日にゃ、あーた。
そういえば、その時「走吧」と声を掛けるファン・ビンビンも最高に美しかった。
そして壮絶な最期の一瞬前、ボコボコに殴られ腫らした顔で彼がかいま見る家族の幻。もうね、観てる方は号泣っすよ、号泣。

この自転車のシーンはプロデュサーのピーター・チャンが、昔撮った「ラヴソング」の主題歌(テレサ・テンですね!)をセットでドニーさんが歌っていたのを聞いて、レオン・ライとマギー・チャンが自転車に乗っていたのを思い出し「あれ、いけんじゃね?」と急遽撮影をしたものらしいです。
いや、あの自転車のカットが挿入されているかいないかでは仕上がりが全然違うでしょうねぇ。これぞ素晴らしい映画における偶然の産物。

さて、いよいよアクションシーンについて。
今回のバトルの相手は本物の格闘家、カン・リー。私はドニーファンなので当然ドニーさんのアクションシーンに対しては並々ならぬ関心がございます。
よってどんな女優と共演するかというより100倍、誰とバトルするかということが重要で、新作のニュースを見るたびに「今度の相手は誰だ!」と速攻、脊髄反射してしまう身。
この作品はそういう観点から見ても大満足。

しかも今回は初めて本格的にパルクール(フリーランニング)を取り入れたという意味でも非常に新鮮でした。パルクールといえば「ヤマカシ!」を初めて見た時のワクワク感はまだ私のなかに残っています。
そういえばドニーさんの『導火線』(07年)でも一瞬ですが壁を三角飛びするシーンがありましたっけ。「おお、瞬間ヤマカシ!」とニヤリとしたことを思い出します。

回廊をひらりひらりと軽やかに駆け抜けるドニーさんと、雑踏をまさに人を蹴散らしながら(笑、しかもそれが早い!)野獣の如く追うカン・リー。こういう場面は闘う男たちのキャラの対比が強ければ強いほど盛り上がるってもんで。さすが、わかってらっしゃる!

さんざん走ったあとは、お約束の肉弾戦。
私はアクション映画、というよりはドニー映画が好きなので、格闘技のことはよくわかりません。なので実はカン・リーのことは知りませんでした。でも、あの蹴りのフォームを見てればスゲー奴だというのは分ります。映画のことを調べていて分ったのですが、彼、本当の試合ではたった1分で相手の腕をへし折ったこともあるとか。ひぃ~。

成龍と違い、どちらかというと過去映画の中で相手にボコボコにされることの少なかったドニーさん。今回は珍しくやられまくってます。これはいい感じでした。
当然まずは役ありきだからそういう展開になったのでしょうが、強い奴と闘うということは自分も顔を腫らし血まみれになるということ。あと1発殴られたらすわ気絶、という瞬間に「どわぁぁぁぁぁぁっっ」と叫びつつ足を挟んで相手を倒すから、そのバトルに説得力が生まれる。

なにしろすでにもう何人ものボディガードが殺られております。先を読めば、このドニーさんも死亡フラグは充分過ぎるほど立っている。あとはどういうかたちでその瞬間を迎えるのか。殺るか殺られるか、常にそんな緊張感にみなぎっておりました。
ただでさえ、このふたりは、それまでは雇用する側、される側という関係です。当然カン・リーにしてみりゃ「飼い犬に手を噛まれた」感覚ですわな。
「ざけんなオラ!!てめぇ!!」というキレまくった迫力が彼にはありました。この殺気はやはり本物の格闘家の持つ力でしょうか。いや、素晴らしい。

カン・リーが今までどんな作品に出演しているか、残念ながら見たことはありませんが、恐らくこの映画が一番彼のいいところを引き出してるのではないかと、充分想像できる出来でした。

あと、オープンセットでのアクションシーンということで、当り前ですが大勢のエキストラが遠巻きにする中でふたりのバトルは行われます。
例えば、試合形式のバトルシーンでは、むろん観客が見ているという設定になりますが、こういう風に雑踏で(あそこまでの人数の)衆人環視の中で行われるバトルシーンというのは、それほど記憶にはありません。とにかくこの作品はセットのすごさもさることながら膨大な数のエキストラを動員していることも特徴のひとつ。そういった意味でも、その設定が非常にうまく活かされた素晴らしいアクションでした。

最後に、ワンチャイで辮髪の魅力に取り憑かれて早20年、ひさびさに(ドニーさん含め)男達のマジ辮髪祭りが堪能できて大変幸せでございましたわ。

と同時に、孫文のあの時願った民主主義は未だ中国には訪れていないのだと、観た後、皮肉な現実に思いを馳せてしまい、少し複雑な気分にも。

中国政府が検閲OKを出したこの作品、作った香港人たちが意識していたか、していないかは分りませんが、裏側にこうしてもうひとつの意味合いを持つことになった偶然の妙を、外から見ていてしみじみ感じた次第です。

 

 

劇場にて日本語字幕版を見た追記

 

孫文の義士団を観に新宿シネマスクエア東急に行く。なかなかいい席につけたと思ったら、後ろの爺様が予告から豪快に寝てしまいスーピースーピーやりだしたために、前半早々にやむなく席移動。

もう何度もDVDで観てるし、いいかと思ったけどさすがに前から2列目は字幕を追うと画面が見づらい。私の怪しい英語で字幕を今まで観て来たから、やはり日本語字幕はとてもありがたい。で、結局字幕を読んでしまい、すると画面がおろそかになる。ので、結局2回観てしまいました(笑)。

何度観てもいいものはいい。自宅で鑑賞した時は、義士団のメンバーが死ぬたびに悲しい旋律が流れるのが少々あざとく感じてしまったのだけど、それが劇場で観るとまったく気にならなかったのが不思議。やはり映画は映画館で観るべきものなのだなぁ。

日本公開にあわせて我らが谷垣健治さんが裏話をしているインタビュー記事がネットにあがっているので、それを読むと映画をまた一段と楽しめます。

トン・ワイのアクション監督で一回撮ったのに気に入らないからと「アクション監督分のギャラなんかいらねーしクレジットも出さなくていーから俺にやらせろ、5日で撮り直す!」と宣言して谷垣さんに電話する(しかも嘘までついて)ドニーさん(笑)

メイキング見てたら、あんたが肉屋の店内でアクション撮ろうって最初に言いだしてるやんか(笑)。

まぁ最終的にはあの素晴らしいオープンセットを活かしたアクションになったんだから結果OK。あの回廊をパルクールで駆け抜けるリズムの良さや、リアリティのあるコレオグラフィーに痺れましたわ。やっぱ撮り直して正解だったのではないでしょうか。

お蔭でレオン・ライ若様の鉄扇ひらひら舞うような美しいアクションシーンとも個性の差が出て、結果見ていてまったく飽きさせませんでしたよね!お疲れ様でございました、谷垣さん(笑)。

孫文の義士団公式サイト

sina新浪 十月圍城特集サイト

十月圍城 オフィシャルサイト/簡体中文、繁体中文、英語

 

 

 

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本田武史さんに会う 1

この仕事をしていると色々な方にお目にかかる機会があります。

昔からそうなのですが「めっちゃ好きな人」に逢うとこれが途端にヘタレになる悪癖が自分にはありまして。
なんて言うんでしょうか、多分「相手によく思われたい」などという邪念が働いてしまうのでしょうね(笑)、インタビューしてもどこかキレが悪くなる気がする。

私がパーソナリティをつとめるNHK第一ラジオ渋谷スポーツカフェ(毎週火曜日20時05分から)の先日の収録でも、久々そんな緊張してしまうゲストにお目にかかりました。

そのゲストとは、プロフィギュアスケーターの本田武史さん。

2002年のソルトレイクオリンピックで4位、世界選手権2度の銅メダル、全日本選手権6度優勝と輝かしい記録をお持ちの素晴らしいスケーターです。
最近人気のフィギュアスケートの試合で男子シングルの解説をよくなさっているのでご存知の方も多いでしょう。

とにかく、彼が16歳の時からその演技を見続けています。
しかも私のDVDプレイヤーのHDDにはVTRからダビングした本田武史カテゴリーがあり、いつだって彼の演技がすぐ観られるような仕様になっている(笑)。
自分でもその悪癖の自覚がありますから、もうね、朝から結構緊張してしまいました。はは。
本番ではキレの悪さを克服せねばと、力が入る入る。そのせいかオープニングからカミカミですわ、とほほ。

フィギュアスケートのことをよく知らない人でも楽しめる番組にしたい、でも本音はマニアックなことも質問したい、とかなり頭の中はフル回転。
知らずにスケートを見ている人にとっては、ジャンプで転ぶトップ選手を不思議に思うだろうなという観点から、スケート靴のブレードがいかに薄くてそんな靴で3回転半やら4回転するのがいかに難しいかという話からスタート。
本田さんと私とで一生懸命例えた結果、ブレードはストローくらいの(しかも曲がらない真っ直ぐなヤツ)細さと表現。おお、いい感じじゃん。

そんな大変なジャンプなわけですが、本田さんは03年の 四大陸選手権のフリースケーティングで4回転トゥループ―3回転トゥループのコンビネーションと単独の4回転トゥループ、そして4回転サルコウという、1つのプログラムに2種類3回のクワドルプル(4回転)を決めたことのある選手なのです。
これは過去世界でも、中国の張民、フランスのB.ジュベール、アメリカのT.ゲーブルそして日本の本田武史さんの4人しか試合で成功させた人はいないという超難易度の高い技術。それだけで彼がいかに凄い選手だったかわかるというもの。

なかで4回転ジャンプって跳んだらどんな感じかという質問を、番組の相方である髭男爵のひぐちくんがしてくれたのですが(ひぐちくんGJ!)「03~04シーズンの調子が良い時はジャンプ中、景色がスローモーションに見えた」というご返事。

それって、事故など恐怖体験をしたりするとよく聞くスローモーション現象と同じ?
要するにその瞬間、脳内でなんか物質が出てるってことですよね、すげぇぇぇぇぇ。

ということで、この話はまだ続きます。

本田武史さんに会う2

 

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映画 ラスト・ソルジャー(2010年・香港中国)


監督
丁 晟(ディン・シェン)

出演
成龍(ジャッキー・チェン)
王力宏(ワン・ホーリン)
ユ・スンジュン
于榮光 (ユー・ロングァン)

動作監督
成龍(ジャッキー・チェン)

いやぁ、観ながら何度も泣きましたわ。いい映画だった!
昨年2010年に公開された時は新聞小説の締め切りに追われ、とてもじゃないけど映画に行く気持ちの余裕なんかなかったので日本ソフト発売を待っての鑑賞。ああ劇場に行けばよかった、とやっぱり後悔。

この作品のことを初めて知ったのは記事でも予告でもなく、成龍の歌うテーマソング「油菜花」のMV。ものすごく牧歌的な歌と歌詞に半ばあきれてどんな映画なんかと調べたことがきっかけ。

本編を観るとこの歌が凄く効果的に歌われていて、アカペラのほうがうんといい曲なんですね。そしてなにより、あらためて彼の歌声は素晴らしいなぁと感心することしきり。

とにかく素晴らしい作品だったので、鑑賞後にうれしくて評判を読みに行ったら、なぜかお気に召さない人の評ばかりに当たってしまい、心の底から驚いてしまいました。
いや、別にそういう人がいてもいいんですけど、自分としては、てっきり大絶賛の嵐とばかり信じてたもんで(笑)。

映画を観る前は、「構想20年とかまたまたフカシちゃって~」と内心思っていたのですが、観た後はあながち嘘じゃないのかもと頷かせるほどの熱を感じました。
反戦をこんなに(決してブラック方向でなく)ユーモアたっぷりに、そしてさわやかに描いてしまえる映画人はそういまい。ロベルト・ロニーニくらいか?

ややもすれば陳腐に片寄りそうなところを、ギリギリ踏みとどまっていられるのは、やはり成龍のアクションセンスとキャラクターのお陰です。
子供を宿したウサギを逃がすかと思えば、将軍の傷口をぐりっと押す、その両方を嘘くさくなく、しかも好感度を失わず演じられる俳優はそう多くない。あらためて彼が世界でもどれほど稀有な存在であることかを実感できて、ほんと心から感激しました。

しかし、出てくる人間みんな汚かったなぁ(笑)。でも、むしろそこが自分には心地よかったんだけど。だって、そのほうが説得力あるもん。
戦国時代だよ、戦争だよ、想像を絶する貧困と疲弊と弱肉強食の世界にいて兵士じゃなくとも生きるか死ぬか紙一重だよ、汚くて当り前、まだ歯がボロボロの奴が出てこなくてよかった、てなもんで。
あの泥まみれ埃まみれの世界だからこそ、後半に主人公が妄想する菜の花畑の黄色が泣けてくるほど素晴らしく美しいのです。

正直、彼が動けるとか動けないとか、わざわざ思わせるような映画なんか無理して作らなくていいよ。類まれな才能を持った唯一の存在であることさえ感じさせてくれるものを、こうして時折撮ってくれれば。

そう言う意味でも、今現在の姿が良く活かされていて、自分にとってはここ15年くらいで一番好きな成龍作品になりました。
彼の映画でこれほどの満足感は本当に久しぶりだったので、とても嬉しいです。

ラスト・ソルジャー公式サイト
大兵小将オフィシャルサイト(簡体中文)

 

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タイガース開幕2011

今年のシーズンは始まる前から、東日本大震災という信じられないことがありました。

こんな気分で開幕を迎えるとは選手はもちろん、日本全国誰一人、想像だにしなかったでしょう。

開幕カードの3戦目、私は甲子園にいました。
ゲートをくぐり、階段を上り焼き鳥の匂いのする通路を足早に進んでチケットに記された番号のエントランスからスタンドに出る。

目の前に広がる客席に縁取られた緑と土のグラウンド。
もうね、それだけで涙が出てきました。

毎年、シーズンが始まって初めて球場を訪れると、懐かしく嬉しい気持ちで胸が一杯になるのですが、今年の感情はそれともまったく違う。

ナイターだ、電気たくさんついてる!
そんなことも頭をよぎります。

大震災で被害にあわれ被災されたり厳しい現地で従事しておられる方々がたくさんいる中、私ごときの気持ちなど当然取るに足らないでしょう。
だからこそ、普段他人には絶対に言えない不安を自分もまた抱えているのだと気づかされると、そんな自分にうろたえてしまうのです。

正直、勝負とかどうでもいい、ああ甲子園で野球やってるよ、ブラちゃんもマートン先生もここにいる、広島の先発バリントンは初年度でいきなりこの状況なのに頑張ってる、金本さんもスタメンだ、鳥谷くん、ナイスプレー!そんな想いで胸が熱くなる。

試合は残念ながら20時すぎに終わる貧打線。
翌日の仕事の都合で東京に日帰りで帰る予定だった私は、なんと最終の1本前の新幹線に乗ることができたほど。

いつもならとほほ、な気分ですが、この日ばかりは不思議な安心感を抱いて帰路に着きました。

それからしばらく経ちますが、劇的なサヨナラ試合を決めたかと思うと新人さんに輝かしい初勝利を献上したりと、チームがどうもうまく噛みあわない。

勝負にこだわらない、と言った同じ口でこう言うのも矛盾しているかも知れませんが(笑)、相も変わらず初物に弱いタイガースを今年も見せていただいてその安定感には嬉しいやら悲しいやら。

関本選手に代走出すなら1塁に出た瞬間に出しましょうよ、なんてことも毎年感じているような、いないような(笑)。

でも一番気になるのは、なんとなくチーム全体に元気がないように見えること。
ファンは元気のない贔屓チームを見ることほど辛いものはないのであります。

勝つか負けるかは時の運と申します。

もちろんプロなんだから「勝ってこそ強まる結束力」というのも重々承知したうえでお願いします。
どうか今年は私たちに、のびのびプレーする姿を是非、たくさん見せてください。

 

 

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愛心無国界

関東東北大震災発生から、少し時間が経ちました。

まだ続く余震の中ですが、被災者のみなさまの心身の疲労が少しでも回復することを願ってやみません。
そしてこの有事に、現地で仕事やボランティアに従事している全ての方に心から敬意を表します。

連日報道される震災関係のニュースですが、世界中から日本に対しての暖かい応援が届いていることも取り上げられています。

ソングス・フォー・ジャパンというタイトルでトップアーティストが急場にリリースしたアルバムが18国のiTuesチャートで1位をセールスしたらしいじゃありませんか。

また、共演は絶対にあり得ないと信じられていたドイツの2大オーケストラ、シュターツカペレ・ベルリンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が合同チャリティー演奏会を開いたというニュースも読みました。

台湾では総統自らがメッセージを寄せたチャリティテレビ番組が放送され、なんと集まった義援金は47億円を超えたそうです。本当にありがとう、台湾のみなさん。

香港でも成龍をはじめとするアジア芸能界のみなさんが参加して4月1日にチャリティーコンサートを開いてくれました。
ネット中継を私も見ました。ありがとう。

総勢100名を越す香港スター達が、そのコンサート用に作ったオリジナルソング「無懼風雨」のMVを、先だって見ることができました。

地震発生から20日くらいの日数で、曲を作り100人もの芸能人を集め、レコーディングをしてMVまで作ってしまう、その早業がいかにも「香港らしく」て頼もしかった。
先頭に立ちご尽力してくださったというジュディ・オングさんと成龍、そして発起人のエリック・ツァン、ジョン・シャムにはあらためてお礼を申し上げます。

このMV、実は普通語広東語、そして日本語バージョンの3パターンが作られました。

私が初めて聴いたのは日本語バージョン
イントロで出演してくれた全員がお辞儀をするのを見て、思わずモニターの前で号泣してしまいました。

歌詞は、俳優渡辺謙さんが今回の震災で立ち上げたサイトKIZUNA311の中で朗読していた宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」をベースにしたものでしょうね。
香港の映画人たちがとても日本について理解してくれていることをあらためて感じて嬉しかったです。

前述の台湾番組用に台湾スター達が歌っているオリジナル曲もありますし、タイでは国民的歌手バード・トンチャイさんが驚くくらい上手な日本語で歌う「Thai For Japan」という曲もあることを発見。

この香港芸能人のMVを見て泣いてしまったことで、日々不安と危機感の中で働き、暮らしている被災地の皆さんのことを想像すると、普段決して口には出来ない自分個人の心細さを、初めて実感したことに、すごくうろたえてしまいました。

と、ともに、あらためて、今、自分には何が出来るかを考えさせてくれる事になりました。

本当に多謝!心からみなさんに感謝いたします。

kizuna311
日本大震災台湾チャリティー応援ソング「Believe(相信愛)」
無懼風雨 – 愛心無國界311燭光譎囗・€ 主題曲(日本語)
無懼風雨 – 愛心無國界311燭光譎囗・€ 主題曲(普通語)
無懼風雨 – 愛心無國界311燭光譎囗・€ 主題曲(広東語)
Thai For Japan バード・トンチャイ

 

 

 

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