気仙沼 お魚いちば

東日本大震災による津波とその後の火災で1000人以上の方が亡くなり、いまなお350人近くの方が行方不明になっている宮城県気仙沼市に行きました。

ここも昨年のロケで訪れた場所のひとつです。
気仙沼といえば、水産業が中心で特にマグロ、カツオ、サンマは全国有数の水揚げ高を誇り、ふかひれでも有名。

そんな気仙沼で大規模な水産加工会社「阿部長商店」を営む社長の阿部泰浩さんにお目にかかりました。

震災当日、阿部さんは出張先の中国、上海にいました。
遥か異国の地のテレビで見る故郷の惨状に、目の前が真っ暗になったそうです。
従業員のなかには津波に飲まれた方もいらしたということで、9つあるうちの8つの工場が津波の被害を受けました。そのうちのひとつ、総工費50億円を投じた大船渡港の工場が操業を始めた矢先の震災でした。

この社長のことは多くのニュースや新聞で何度でも取り上げられてご存知の方も多いことでしょう。
絶望のどん底にいた社長は、被災したあと、会社の前で就職内定予定者の数人が瓦礫やヘドロの掃除を自ら進んでしているのを見ます。
その姿に「何があってもこのような若者を解雇してはいけない」と強く思ったそうです。

「工場を失い、このうえ従業員まで失ってしまうと、この町から大事な人がほんとうにいなくなってしまう。なんとしてもそれだけは避けなくては」と800人の雇用を守り、何もかもなくなったこの気仙沼漁港に、今年7月「気仙沼お魚いちば」と隣接する「港町レストラン鮮」を再開。

そのレストランで戴いたのが、阿部長商店の自信作「あぶりさんま」。
気仙沼のサンマの頭と中骨、尾を取って、甘酢で漬け込んで最後に皮を炙ったもの。

サンマの刺身は今ではそれほど珍しくなくなりましたが、それでも独特の生臭さが苦手という声を聞くことがあります。
ところがこれは、甘酢につけることによって、その臭みを失くした上に、ほどよい酢の酸味とほんのりした甘さが脂ののったサンマの甘みを一段と引き立てている上に、口に入ったあとの炙った香ばしさが何ともたまりません。
しかも食感は限りなくお刺身に近い。ううう、日本人ならめちゃ好きな塩梅!

同時に、この「あぶりさんま」で作った棒寿司も戴きましたが、これまた絶品。
関西生まれの自分は箱寿司とか棒寿司が好物なんですが、いやいやいや、サバにも負けてない、どころかこの香ばしさ、いいじゃありませんか~。

すぐに思い付いたのが、これはお客様が来た時などのちょっとした一品メニューにすごくいいってこと。しかも、真空パックに入っているので、な~んの苦労もなくこの味をすぐ楽しめる。

いやいやいや、自分のような飲んべには願ったりな常備食になりそう(笑)。
取材が終わっていそいそと数パック、さっそく買い求めたのでありました。

それにしても、地盤沈下が完全に修復すらされていない何もないこの港に、これだけの市場を再開することが、どれだけ険しい道のりだったかと思うと阿部社長には頭が下がります。

しかし、再開がすなわちすべての終わりでないことは、こんな自分にも想像はつきます。後で知ったのですが、阿部さんは私とほぼ同じ年齢。

あの時に決意したことが本当に良かった、そう笑える日が阿部さんに来ることを心から、本当に心から願うとともに、何も出来ませんが、食べることでせめてみなさんを応援したいと、強く強く感じました。

気仙沼お魚いちば
南三陸&気仙沼を体感!”来て見て浜ライン”(お魚いちば再開のニュース)

 

 

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レニングラード国立バレエ団「海賊」

先日、東京上野の文化会館にレニングラード国立バレエ団(ミハイロスキー劇場)の「海賊」を観に行ってきました。

キャストは
コンラッド   ファルフ・ルジマトフ
アリ       レオニード・サラファーノフ
メドーラ    ツ黴€イリーナ・ペレン
ギュリナーラ タチアナ・ミリツェワ

昨年、「ジゼル」を久しぶりに全幕観てやはりバレエは通しで観てなんぼ!と気持ちを新たにした自分。年末に、キャンセル分でしょうか、売りだしていたこのチケットをゲット。お得でした。

かつてルジマトフがこのバレエ団の芸術監督に就任していた際に、彼が演出した3幕を2幕に短縮した改訂版の「海賊」。
冗長な部分を現代に合わせて場面をカットしたというルジマトフ版は、スッキリまとまっていていいような、少し短すぎるのではと感じるような、不思議な感覚。

ルジマトフ本人は当たり役と謳われたアリではなく、海賊の首領、コンラッドとして出演。
彼がアリを踊ると、ほかの役が霞んでしまうと言われただけに、このコンラッド役は、存在感が格段に増して非常によかったです。
コンラッドってこんなにカッコよかったんだ!と観客に思わせてしまう、さすがルジマトフ!
だからでしょうか、登場するそれぞれのキャラクターがとても立っていて観ていてすごく新鮮でした。
なおのこと、もう少し観ていたいなぁとも思わせるところがなんとも。
でも、この腹八分目感覚が魅力とも言えるんですけどね。

アリのレオニード・サラファーノフはあの超有名なパ・ド・ドゥを素晴らしい跳躍力で魅せてくれて、大興奮。美しい人だなぁ、と口あんぐり。
金髪、10等身の彼は一新された衣装もライトなゴールド系で、これまた鮮やか。

ハーレムでのコール・ドもさすがミハイロスキー。豪華絢爛、夢のような世界を(いや、実際夢なんだけれど)うっとりさせてくれます。
オーケストラもレニングラード国立歌劇場管弦楽団でめちゃよかった。
こういうのってデカイっすよね。

さて、自分がルジマトフを前回観たのは2010年の川井郁子さんとのコラボ「COLD SLEEP」。
ここでの彼も素敵でしたが、やはりこうしてバレエを踊っているのを観ると、やっぱり「いいなぁ」と心から思います。

そういえば、近年のルジマトフで一番驚いたのは実はロシアのテレビ番組。

02年ソルトレイク五輪銀、02の世界選手権で金メダルに輝いたフギュアケート、アイスダンスのロバチェワ&アベルブフ組。
このイリア・アベルブフが仕掛けた、ロシアの芸能人と一流フィギュアスケーターがカップルになって勝ち抜きフギュアスケート選手権をするというЛедниковый период(Ice Age)という番組がありまして。ロシアで人気を博しました。

2010年にその続編、Лед и пламень(Ice & Fire)というタイトルの今度はスケートとダンス両方のパフォーマンスで競うという企画番組で、なんとルジマトフがダンスパートのジャッジとして出演していたのであります。まさかまさか、そんなところで御尊顔を拝するとは夢にも想像してなかっただけに、これにはかなり驚きました。

最後にそのルジマトフ審査員のお姿を。
踊っているのは2002年ソルトレイク五輪男子シングル金メダリスト、溺愛するアレクセイ・ヤグディンとロシアのセクシータレント(?)マリア・コジェフニコフ 。ヤグディン、すげぇ。
Ягудин Кожевникова “Red right hand”

そしてルジマトフのジャッジコメントがしっかりあるのはこちら。
ダンサーは、アイスダンスのドムニナ&シャバリン組のやはり大好きなマキシム・シャバリンと若手女優エカテリーナ・ヴィリコワ。
ЛЕД и ПЛАМЕНЬ -Вилкова Шабалин – Мастер и Маргарита

 

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画皮(原題)香港DVDにて鑑賞 / 画皮 あやかしの恋(邦題)-ドニー・イェン 甄子丹

珍しくネタバレなしの短文(本人比)です。

むこうではホラー映画として宣伝されていた2008年の映画。監督はゴードン・チャン。
大ヒットしたので、その後TVドラマにもなり、ゴードンは2011年に「画壁」というこれまた古装ファンタジー映画を撮ったほど。

ホラー映画と宣伝はされていたものの、いざ観てみると、ホラーというよりは伝奇ロマンスという感じ。今でも人気を誇る女優、周迅(ジョウ・シュン)と趙薇(ヴィッキー・チャオ)が共演。その美しい女優2人に愛されるニクイ男がドニーさん・・・じゃなくて、これまた当代きっての男前、陳坤(チェン・クン)。
公開当時も相当豪華なキャストだなと思った気がしますが、考えたらこの3人に加え甄子丹(ドニー・イェン)+孫儷(スン・リー)だもんねー、結構なもんですわ。

これだけの女優が出てれば誰が好き、とつい考えてしまいますが、自分の場合、やはり周迅ですかねぇ。彼女の一筋縄ではいかない雰囲気がとっても好みです。
この映画では惜しげもなく結構素肌を晒しておりますが、劇中ではもっと凄いものまで脱いでいるのでお楽しみに。

この映画でのドニーさんは、恋に破れ全てを捨てて軍を離脱した元将軍。
いまはさすらいの寅さん、ならぬ世捨て人みたいな男になっております。
たまたま戻った街で、すでに結婚していたヴィッキーに会ってしまい「夫(チェン・クン)が遠征先から女(ジョウ・シュン)を連れて帰ってから、最近、怪奇現象が起こるのよ~自分としては彼女がなんか怪しいのよね、調べてくんない?」と頼まれる。

かつて惚れた女の頼みは断れない寅さん、いや、ドニーさん。未練たらたらです。
さっそく「妖怪ハンター」のスン・リーと街で起こった怪奇殺人事件を解明しようと乗り出す、というお話。

あちらのポスターなどでは、彼が正面にどどーんと絶対的主役のような扱いで載っておりましたが、主役は三角関係のジョウ・シュンとヴィッキーとチェン・クン、そしてドニーさんを含めて(彼の恋心もかなり切ない)の4人、かな。
残念ながらドニーさんのアクションシーンも少なめで、それもCG使いまくりがよく分る、この冷静な語り口からも分る通り、リアルアクションとは程遠いもの。

でも、自分、この映画のドニーさん好きです。
と、いうのもそれまでドニーさんが演じてきたタフガイで人格が破綻したような(笑)キャラクターと違い、案外普通の人(でも結構強いんだけどね!)で軽い演技がすごーく新鮮だった。
今作もロン毛ですが、それをてっぺんでまとめて今までのロン毛の中では、大変よくお似合いです。

この映画でのプロモーションにて「今まで演技とか考えたこともなかったけど、この映画で開眼した、そういう意味では監督に感謝するよ!はははは」とコメントしたドニーさん。

演技開眼、おせーよ!しかもあの役でかい!

と、突っ込みたくもなりますが、この直後にあの葉問1がくるんですからファンとしてはゴードン・チャンにも感謝しなくちゃなりませんかね(笑)。

そしてこのインタビューでは「今まではクールな役でそう思われがちだったけど、本来はこの役に自分はとても近いんだ」てなことを言っております。

男の子みたいな恰好をした可愛いスン・リーとのやり取りもコメディタッチで、「もっとこんな役も見たいなぁ」と思わせる大変キュートなドニー・イェン。
いや、まさかこの数年後、2012年のお正月コメディ「八星抱喜」(原題)でもっと振り切れた方向に向かうとは思ってもいませんでしたが(あれもロン毛だ!)。

この映画のソフトを買ったのはもう随分前になりますけど、今でも思い出したように時々観ます。それだけ映画として結構おもしろいからかもしれません。
ひとりの男を巡る女性ふたりのどちらの気持ちも分ったり分らなかったり。
別に複雑な話じゃないのですが、美しい人がたくさん出てくるだけで目の保養になりますな。
(チェン・クンは昨年観た「譲子弾飛」がすごくよくて、今むこうで公開されているドラゴン・インの3Dリメイク、ツイ・ハーク監督の「龍門飛甲」がまたまた面白そうなので楽しみな俳優のひとり)

エンディングテーマも素敵で、その作曲をしたのは中国香港映画でも活躍する藤原いくろう氏。
<Painted Heart>はそのシーズンの香港金像奨のオリジナル映画歌曲賞を受賞しました。もちろん自分もその曲もってます。

この「画皮」が「画皮 あやかしの恋」という邦題で今年2012年に日本公開されるというから驚いた。どんだけドニーイヤー続くんすか!

あんまりドニードニーいって、あのアクションではガッカリされると勿体ないから、ここは是非4人の男女の愛の形を前面に出して色んな人(特に女性)に観てもらえるといいなぁ。そっちが本筋なんだから。

いつ公開なのか時期はまだちょっと分りませんが、自分もあのキュートな寅さ(以下略)にスクリーンで会えるのを楽しみにしております。

そういえば、この撮影時に葉問1のためにホテルの部屋に木人樁を持ちこんで毎日詠春拳の練習をしていたということを、葉問の時のインタビューで話しているのを見たよ。「毎晩、稽古でカンカン音させるもんだから、両隣の部屋のビッキー・チャオとジョウ・シュンが寝不足になっちゃって」と本当か嘘かわからんことを言ってました。

Painted Skin Trailer
Painted Skin MV-Painted Heat
どんなキャラか、ちらり垣間見られるインタビュー

↓そして何故かアメリカのDVDはこんなパッケージになっている(笑)

ど、どんな映画っすか!

最後に、以前配音演員で書いた時に、この映画の普通語吹き替えを陳浩じゃないだろうと思ったのですが、先日観たらひょっとしたら彼かもという気がしてきました(笑)。性根を入れて調べてないから分らないけど、どっちにしてもいい加減なことで・・・すみません。
いずれにしても香港版にも広東語バージョンは存在しなかったので、日本で公開されるものは、この普通語配音でしょう。ドニーさん以外はみなさん大陸の俳優さんです。

追記:

私としたことが武術指導を書くのを忘れてました。トン・ワイです、トン・ワイ。

で、小耳に挟んだ話によるとエンディングソングを日本の歌手でカバーする計画があるようです。
日本公開の時に差し替えるのかな~。あれ、すごくいい曲だから上手な歌手がカバーするといいなぁ。映画の宣伝にもなるしね!買いますよ、当然。今からカラオケで歌う気満々(笑)。

 

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マジッククンフー神打拳(1975年・香港)

あけましておめでとうございます。
新春から、えらい風邪っぴきに・・・。皆さまもお気をつけください。

さて年が明けても相変わらずなことで申し訳ありません。
先日蔵出ししたばかりのはずですが、劉家良(ラウ・カーリョン)監督作を短く書こうとしたら出来ない作品ばかりということに気がついてしまいました。

ええと、だんだん彼のことを書くのも長文になりそうな気配です。やばい。
今回は、劉家良師父の記念すべき第一作監督作品「マジッククンフー 神打拳」

監督
劉家良(ラウ・カーリョン)

出演
汪禹(ワン・ユー)
江洋(チアン・ヤン)
林珍奇(リン・チェンチー)
李海生(リー・ホイサン)
狄龍(ティ・ロン)
陳観泰(チェン・クアンタイ)
唐偉成(ウィルソン・トン)

武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)

このサイトでは追い付かず書ききれていませんが、なんだかんだと劉家良師父の監督映画を観ています。
この作品についてまず思ったことは、監督第一作だからと、劉家良をよく知らない時期にこれを観なくて良かったということ。そういう意味ではとても幸運でした。

まずは、最初にこの映画の背景「義和団の乱」をばメモ(長文注意!)。

1890年代後半、清朝末期、相次ぐ西欧列強との戦争とその後の不平等条約により、帝国主義的な外国からの占領と同時に、多くのキリスト教宣教師がそれまで許されなかった中国内地へと入れることになりました。

時期的にも天災や飢饉により疲弊した民が、キリスト教の展開した慈善活動に縋ろうと、または漢民族の一部に対する官憲の弾圧から逃れようとして、多くの中国人が続々とキリスト教に入信。

そうして勢いを増した外国人勢力(中国人キリスト教徒を含む)と、郷紳(きょうしん)や民衆たちとの間では、次第に様々な民事的トラブルが起こり始めます。

やがて、そういった民事に宣教師が介入したり、最終的には教会側に有利な形で納める地方官の理不尽さは、目に余るようになってゆきました。

こうした対立のうえに、文化的な衝突や様々な迷信、風説も加わり、庶民の間に西欧とキリスト教への強烈な敵対感情はふくれあがる一方。

同時に列国による占領と、合理化、近代化の余波で失業も増え、生活は窮乏。急激な変化に取り残された不満は、国内でどんどんつのっていくことになったわけですね。

ちょっと乱暴な説明になったかもしれませんが、そんな歴史的背景の中で1900年に起こったのが「義和団の乱」(日本では「北清事変」とも呼ばれている)。

当初は義和団と称する秘密結社による過激な排外運動であったはずでした。
(ワンチャイ2における白蓮教はこの義和団をイメージしたとみていいと思う)

が、彼らは「清をたすけ西洋列強を滅ぼせ」という意の「扶清滅洋」というスローガンを掲げたことで、朝廷からの弾圧を免れたうえ、鬱屈した一般庶民を取りこむことに成功。
瞬く間に人数は膨れ上がっていきました。

そして利害関係が一致した西太后がとうとう、その義和団の西欧に対する暴力的な行為を支持して欧米列国に宣戦布告したために、戦争へと突入。

結果は連合軍による北京陥落。西太后は北京を脱出。

敗戦国となった清は義和団を「拳匪」「団匪」とあっさり切り捨て、ドイツを中心とした連合軍は、広範囲にわたって彼らに対する懲罰的掃討作戦を開始、激しい残党狩りが行われたのです。

この義和団、もともとは様々な地域の武術組織が統合して出来たもの。

宗教的性格が非常に強く、斉天大聖(孫悟空の神様バージョン)や、諸葛亮、趙雲などの三国志の登場人物たちを神と崇め、シャーマニズムの儀式を行いました。

そして、あろうことか修行の末に神が憑依した兵士は、刀どころか銃弾すら跳ね返す不死の身体になると信じられていたのです。

映画によると原題の「神打」というのが、その不死身の拳法として描かれています。

と、まぁ、こんな長い前振りに付き合ってくださって、どうもありがとうございました。
それではいよいよ映画の話です。

オープニングでは、まさに義和団のメンバーが西太后にその「神打」を披露するシーンから始まります。

登場するのは唐偉成(ウィルソン・トン)と陳観泰(チェン・クアンタイ)、そして狄龍(ティ・ロン)。
おおお、豪華な顔ぶれ!ここでクアンタイさんが刀、ティ・ロンが槍を相手にその神打の奥義を見せつける鮮やかな表演を披露してくれます。
いつもの表演なら赤バックのスタジオ撮影となりそうなところ、ここでは豪華な紫禁城を模したセットです。
さすが、劉家良が満を持して監督した第一作だけあって力の入れようが違う。

この始まりではクレジットを一気に流さずに、リズムを考え印象的なタイミングで出してくる。
音楽も重々しく緊張感が高まり、かっこいいデキです。
すると客串(友情出演)のところで、この3人の名前が!
ということは、ひょっとするとこの人たち、この表演のみの出演かい?

そんなことを考えていたら、とうとう出てきちゃったよ、銃だ。

ここで一人の銃兵が、手に取った弾を素早くぽいっと口に入れる。え?
しかもご丁寧にストップモーションですよ。それを横目で見て見ぬふりの西太后の側近。

なんだ、こりゃ?と思ったけど、これひょっとすると弾を込めてないという意味か!

つまり、拳銃にはさすがの義和団の神業も効かないと、わかっていての嘘のデモンストレーションということ。
(現実に義和団のこの神打、強国の近代兵器には当然のことながら役に立たず、連合軍の戦死者は全期間にわたり800人弱なのに対し、清軍と義和団は大沽砲台・天津攻略戦の攻防だけで4000人もの死者を出したらしい)

空砲だもの、発砲されても当然3人は無傷でスパッと起き上がる。

そうとも知らず思わず立ち上がり、拍手する西太后の護指のついた手のアップ。
そこに、どど~んと「導演 劉家良」の文字。
なんというシリアスな始まり方!

と、場面が変わっていきなり汪禹(ワン・ユー)とその師父が登場。
ワン・ユーわけぇぇぇ!これじゃまんま子供じゃん!と思っていたら、この師弟、実はその「神打」の達人を騙って金を巻き上げる詐欺師だったりする。

そっから一転、どんどん作風はコメディ方面へまっしぐら。
あの冒頭の豪華なセットもどこへやら、いつもの見慣れた町と衣装と、当時名もなき若手俳優が主演です。
祭壇を前に、功夫を見せながら斉天大聖が乗り移るわ、偽物の刃物で神打を演出するわと、驚く人々を前に主人公はやりたい放題。

このイカサマを演出、説明するため「だけ」に、オープニングであの巨星2人に演武をさせ、そして私にここまで長い前振りを書かせたわけですね、師父!

そんなシリアスな前振りとは裏腹に、イカサマがばれ逃げる途中で師匠と離れ離れになった主人公のワン・ユー、流れ着いた町でもまんまと騙した人達から「師父」などと呼ばれてちょっとした名士になっちゃう。

そしていつの間にか相棒を見つけて、詐欺師ながらも子供や貧しい人を助けたり、可哀そうな恋人たちを結婚させてあげたり、悪人をやっつけたりする、実に軽~いお話でものがたりは進んでゆきます。

斉天大聖に乗り移られると猿拳だし、関雲長だと長刀ブン回しだし。
アクションは多彩だ多彩。

ラストバトルでは、極悪人2人相手に大ピンチのところ、やっと師父が再登場。
まるで成龍「酔拳」の袁小田がごとく次に出す技をアドバイスして、形勢逆転。
(いや、本当はこの劉家良のほうが先だから、リスペクトしたのは袁和平なんだけどね)

そこでは蛇、豹、虎、鶴、龍、と大興奮の洪家拳ショーケース!
しかも最後は警察が悪人どもを逮捕して、誰ひとり死なない大団円。やっほー。

いやいやいや、第一作目からやはり武術愛にあふれておりました。さすが劉家良。
おまけに、この映画にはバディ役で男装のかわいい女子も登場し、ラブコメ要素もしっかり入ってる。ちなみにこの作品、香港映画史上初の功夫コメディといわれている、当時の大ヒット作です。

そこで最初に書いた、劉家良をよく知らない時にこの映画を観なくて良かったという感想に戻りましょう。

義和団、劉家良とくれば思い付くのは「秘義・十八武芸拳法」。(酔拳3は未見)
その作品で師父が演じた主人公は、雲南義和団の支部を設立した十八般武芸&神打の達人。

義和団の責任者のひとりでもある彼は「いくら修業を積んでも銃に神打は効果がない」といち早く理解して、若い命をむざむざ散らせるわけにはいかないと、支部を解散させて行方をくらませたために義和団から命を狙われる男です。

この映画では、刀、槍と古来の武器には効果のある神打法力を持つ兵士が、銃によって命を落とすシーンがありました。

そう思い返すと、最初の監督作にこのストーリーを選んだ師父のメッセージが、たくさんの作品を観た今だからこそ理解できるような気がするのです。

1937年生まれの劉家良にとって、1900年に起こったこの義和団の乱はそれほど遠い話ではなかったことでしょう。
武術家一家に生まれた師父に、その戦争の記憶をなんらかの形で聞く機会は訪れたろうし、その話が義和団の末路とともに、中国の武術家にとって苦い教訓になったとしても不思議ではありません。

武術は一生を捧げるに値するが、それに盲信を抱いたり偽りを上書きしたり傲慢になってはならない。

映画人であるとともに武術家でもある、劉家良師父の強い思いが、この第一作目からすでに伝わってきます。

しかも、それほどまでの大事なメッセージを、深刻にも説教くさくにもならず、誰ひとりとして殺さずに、ズル賢い青年の青春コメディスタイルで描ききってしまう師父の信じられない才能。
これを、どうして愛さずにいられましょうか!

Spiritual Boxer トレーラー

(参考文献Wikipedia「義和団の乱」)

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蔵出し功夫映画特集

性格のせいなのか、レビューを書くとやたら長くなってしまうので、観た本数にブログが全然間に合わない。
のでここで以前観て印象に残った功夫映画を、ほんの少しですがメモ代わりに記しておきたいと思います。(順不同)

・カンフートレジャー龍虎少林拳(81年)

監督・動作・出演 劉家榮(ラウ・カーウィン)
出演 劉家輝(リュー・チャーフィー)傅聲(アレクサンダー・フーシェン)張展鵬(チャン・チェンポン)王龍威(ワン・ロンウェイ)

かわいいかわいいかわいいぞ!フーシェン、おまけにこれは実弟の展鵬(チャン・チェンポン)も共演していて、なんというか2倍お得。

成龍のあのキャラはフーシェンに影響を受けている、というのはショウブラファンの皆さんが一致してよく言うこと。
キュートでコミカルな彼を見ていたら「なるほど」と自分もよく思ったりもするのですが、この作品自体は81年の作品。フーシェンの魅力満載。

・大刺客(67年)

監督 チャン・チェ
出演 ジミー・ウォング、チャオ・チャオ、ティエン・ファン

自分はチャン・チェと組んでた頃のジミーさんが好きです。
幼馴染の女の子との別れの日々を親切に描いてくれたので、ある意味観てるこっちも心置きない。いざ、男の花道へ!
お姉さん立派です。弟の名を残すために検分にいってそこで自害するとは。
チャン・チェにしては珍しく女性描写が丁寧でした。
白い衣装が血に染まるのはもはや様式美。
たくさん見た中で一番好きなジミーさんかも。

・続 嵐を呼ぶドラゴン(76年)

監督 チャン・チェ、ウー・マ
出演 アレクサンダー・フーシェン、チー・クァンチュン、タン・イェンツァン、ルン・フェイ、ワン・ロンウェイ、レオン・カーヤン

も~~~チャン・チェは、ほんっっっと血が好きだなぁ。復讐に次ぐ復讐。
グロいシーンになると画面が赤くなるのは他の映画でもそうだった。
あれはチャン・チェの当時のマイブームだったのでしょうか。

主演はフーシェン。ここではちょっと魅力が出てなかったか、彼は笑顔を見せてなんぼですやん。
共演は戚冠軍(チー・クワンチュン)。いつどの映画で見てもこの戚冠軍がね、とっても素敵。
この人は11歳から洪家拳の名門趙威派で学んだ武術家です。
そういえば、年を重ねてからも「超酔拳」などでアクションを披露していました。

今でも検索するとyoutubeとかで、近年の彼の素晴らしい表演とかを見ることが出来ます。年をとっても鍛え抜かれた身体は相変わらず。いい男ぶりは変わりません、嬉しいですね。
男性の肉体美にはそれほど反応しないと思っていた自分が(溺愛する甄子丹でさえ、ちょい苦手)この若い時の戚冠軍「だけ」は非常に気に入っています。特に背中がいい。

見どころはたくさん並んだ杭の上での闘い。功夫映画にありがちな設定ですが、この正式名称を「梅鉢杭」というそうな。
そしてフーシェンが復讐のために会得した鉄の身体は鉄布衫という。思い返せばこの映画で色々覚えました。

武術指導は謝興(シェイ・シン)と陳信一(チャン・サン・ヤッ)。
ド肝を抜くオチは是非その目で確かめてください。

・倩女幽魂/チャイニーズ・ゴースト・ストーリー2011年版(日本未公開)

監督 ウィルソン・イップ
出演 ルイス・クー、ルイス・ファン、リウ・イーフェイ、ユー・シャオチュン

ルイス・クーは芸域が広いなぁとまたまた感心。演技として古装が合うかどうかは置いといて、若い時はちゃんと若く見えた、それだけですごい。
監督インタビューによると、制作前はこの役をドニーさんにという話もあったそうだけど、無理無理(笑)リウ・イーフェイと彼だなんて絶対にロリコンにしか見えない。ルイスで正解です。
(リウちゃんは、あのドラゴンキングダムでゴールデンスパロウを演じていた女優さん)

それにしてもイップ監督、相変わらずハズしてくる癖は健在。
主人公の若い2人(ここではリウとユーね)が初めてキスをして抱き合うところでいきなり板が外れて彼らがその場から消えるとこなんか、「いかにも」で笑かせてくれました。
次回作も楽しみにしてますよ!
VFXたっぷりで少し心配でしたが、アクションもよろしかったです。さすがルイス・ファン。クーさんのほうも頑張ってます。ベティ・ウェイ姐さんも出てました。妖怪の首領役。

あ、いきなりあのテーマがかかったのは嬉しい驚きでしたわ。ちょっとジーンときたりして。エンディングロールもジャッキー・チュンの歌付き。やっほー。

・美麗密令(2010年、日本未公開)

監督 ウォン・ジン/バリー・ウォン
出演 シャーリーン・チョイ、サンドラ・ン、ルイス・ファン、ジム・チム、ウィリアム・チャン

昔の香港コメディがすんごく苦手な自分が(成龍でギリギリライン)、最近はどんなことになってるのかと超久しぶりに観てみたウォン・ジンの作品。
これが功夫カテゴリーに入るかどうかは謎ですが、とりあえず知ってる役者が出てるほうが、ということで動けるツインズのシャーリーン主演でルイス・ファンが共演しているこれを。

まんまサンドラ・ブロックの「デンジャラス・ビューティ」にインスパイア(笑)されたお話。
日本語字幕ではないので細かい台詞は分らないけど、こんな自分でもルイス・ファンの役名が「袁子丹」ユエン・ジーダン(広東語読み)てのは分ったよ。袁和平+甄子丹かい!(ちなみに甄子丹の広東語読みはヤン・ジーダン)このお手軽さがほんと香港映画。

そのうえで、上司とミスコンに潜入したルイスが「丹丹」(タンタン)なんて偽名でオカマのヘアメイクに扮しちゃったりします。
おお「最強喜事」の元ネタはこれか~!
自分の名前をもじられた分、あれは本家がパロディのこれまた意趣返しをしたわけね!とニヤリ。
劇中葉問の名前が出てきたり、詠春拳習ってますから、みたいなセリフもあり、なんだかんだ言って当時「イップマン」が香港で大人気だったのがうかがえます。
(そういえば1対10のアクションも色んな映画でパロディにされてますね)
王晶ということで気軽に観ましたが、ドニー・イェンファンとしてはそんなこんなで結構楽しめてしまいました。

・続 少林虎鶴拳 邪教逆襲(1980年)

監督 ロー・リエ
出演 リュー・チャーフィー、ロー・リエ、ベティ・ウェイ
武術指導 ラウ・カーリョン

もうね、ロー・リエ監督すごいっす。初監督でしたわよね、しかも別に狙ってるわけじゃないんですよね?ね?ね?ご本人は多分フツーに商業功夫映画を撮ったつもりなんすよね?
なのにこのブッ飛び具合はどうでしょう。(ある意味)まさにショウブラを代表する1本といってもいいのでは。
これ以上の言葉はヤボ。とにかく観ろ。

・激突!蟷螂拳(78年)

監督 ラウ・カーリョン
出演 デビッド・チャン、ラウ・カーウィン、セシリア・ウォン、リュー・チャーフィー

本編もさることながら、これはDVDについてたオリジナル予告編がとにかく素晴らしい。
だいたい予告編で監督自らが出てきて一番スゴイ演武を見せて主演を喰うって普通ないっしょ。
若いころの師父、本当に素敵ですカッコいいです。

そんな師父にカメラ目線で「請各位多多指教!」なんて言われちゃったら、絶対に見てしまうやろ~鼻血でるかとおもいました、劉家良師父、素敵すぎる。

本編?本編はえーと、1時間10分過ぎに修行かよ!

そうだ、甄子丹の「関雲長」での狭い路地での関刀の苦戦ぶりを観た時、思わずこの映画でのシーンを思い出してしまったことを付け加えておきます。

・五毒拳(78年)

監督 チャン・チェ
出演 チャン・シェン、ロー・マン、フィリップ・コク、サン・チェン、ウェイ・パイ

「世界で観ておきたいカルト映画」にも堂々選ばれた、ご存知チャン・チェの代表作。あの「キルビル」のタランティーノも大好きなことで知られていますね。
今なお熱く語っている人はたくさんいるし、いろんな映画や分野に影響を与えた作品です。それだけのことはあります。
すごいです。自分の文才のなさでは、この凄さは表現しきれません。

それにしてもタイトルが秀逸ですね、原語では、まんま「五毒」
このセンスだけでもチャン・チェはやはりけた外れの才能を持ってます!

・南少林寺VS北少林寺(78年)

監督 チャン・チェ
出演 チャン・シェン、フィリップ・コク、ロー・マン、サン・チェン、ウェイ・パイ、ワン・ルンウェイ、べティ・ウェイ

清朝の悪い将軍が(当然、王龍威)邪魔な少林寺を抹殺しようと北派と南派を計略でもって同志討ちさせようとする。
その計略にまんまとはまったこの二派が敵対するという話を五毒メンバーで撮った映画。

途中、北派に歯が立たない南派の弟子3人がそれぞれ蟷螂拳、詠春拳、棒術を極めるための壮絶な修行を繰り広げる!というのが、この映画のハイライト。
もんのすごい修行です、装置です、エナジーです。
とはいえ、蟷螂拳、詠春拳ともに非常にデフォルメされた形なので、本格的なものは望まないほうが吉。五毒ファンは必見。

個人的には自ら潰した卵しか食事に食べられない、という発想が非常に気に入りました。
地味ですが、これはとってもキツイ罰ゲーム!

・少林皇帝拳(79年)

監督 ラウ・カーリョン
出演、リュー・チャーフィー、 ロー・リエ、 ワン・ユー、 ベティ・ウェイ、 シャオ・ホウ

お忍びで旅している11番目の皇太子のリュー・チャーフィーに詐欺師のワン・ユーがなぜか弟子入りして、というお話。
世のなかには様々な修行シーンがありますが、この肩に油の入った小皿を載せてという場面、あれ多分本物で、んでもってその油がこぼれたらマジで熱かったんだろうな、と思わせるリアルに役者の人権まったく無視な無茶ブリな感じが好きです。

劉家良の動作設計は華麗でアイディアに溢れ、それでいてとっても高度!!!
それを見ているだけでお金を払う価値あり。特に女子との二人羽織状態のアクションとかは、お見事です。
まさに当時の師父はアクションコレオグラファーとして一歩も二歩もリードしていたお人ということが確認できる一本。
そしてDVDについている特典映像は劉家輝ファン必見の映像。ロックギターをかき鳴らし歌うナイスミドルなお姿が拝見できます。

劉家輝といえば2010年、脳卒中に見舞われて半身不随になってしまったというニュースを読みました。当初はご本人も大変なショックで自暴自棄になられたとか・・・。
たくさんの人に励まされ、今はリハビリに努力していらっしゃるそうですが、一日も早い回復をお祈りいたします。
また元気なお姿をスクリーンで見せてください!!!

・非情のハイキック~黄正利の足技地獄~(79年)

監督ルー・ジンク
出演ウォン・チェンリー、コー・フェイ

かつて数々の映画に悪役として出演した黄正利(ウォン・チェンリー)。
彼が日本の功夫映画ファンにどれほどの人気があるかを示す作品が、まさにこれ。
と、いうのはこれ以上の凄いアクションがあったとしても、多分チェンリーが悪役として出演していなければ「絶対に」日本でソフトになんか、ならなかっただろうなと思わせるほど、とにかくストーリーが陰惨で非情。

どれくらい陰惨かというと、イップマン序章に登場する日本軍の佐藤なんか可愛い可愛い。
しかも中国人同士(あ、発端はイギリス人か)ですからね。敵を描くとなればとことん極悪人で最悪で、主人公側はこれでもかってくらい凄惨な目にあう。まぁ、ある意味、タイトルに偽りなしというところでしょうか。

しかししかし、そこはウォン・チェンリー、出番的にそれほど多くはありませんがアクションシーンで見せる足技はすんばらしい。ラストのコー・フェイとのラストバトルも見ごたえあり。

・スコーピオン・ファイター(92年)

監督 デヴィッド・ライ
出演 チン・カーロウ、ラウ・カーリョン、ウォン・ジン、ユエン・シュンイー、ユン・タク
武術顧問 ラウ・カーリョン、ユン・ケイ
武術指導 ユン・タク

忘れもしない、この映画を観るきっかけはたまたま覗いていたyoutubeのクンフー動画。
「俺の好きなキッカー10選!」みたいなものに出て来たウォン・ジンの蹴り技とその身体能力の高さにビックラこいて即、購入したからであります。
そしたら、なんとチン・カーロウ主演だわ、ラウ・カーリョン師父は出てるわで小躍りしたという次第。

ラウ・カーリョンの一見普通のオッチャンに見えつつも実は・・・とういう設定はありがちですが、やはりワクワクするし、厨房で料理をしながらという修行シーンも楽しかった。
蹴りを出す時に必ず肩が動く、これは師父が昔から修行エレメンツで何度も言ってることですね!上にも書いた「少林皇帝拳」では火のついた油皿でしたが、ここでは玉葱やトマトを肩に乗せての説明。実に師父らしいシーンです。

そして、何もかも失くしてしまったこの師父が主人公チン・カーロウと一緒に相手の屋敷に殴りこみに行く場面では、あの元徳(ユン・タク、この作品では武術指導を担当)の持っている三節棍を奪い戦うさまが見所のひとつ(この元徳の若いころがまたカワイイ顔してるわけさ!)。

しかしなんといってもこの映画、そのウォン・ジンの存在が光ります。
これはもう観てもらうしかない。自在な足と惚れ惚れする柔軟性とキレの良さ。
独特のヘアスタイルとサソリをイメージしたアンビリーバボーな動きは悪役として存在感はピカ一。この人のそのキッカーぶりを観るだけで価値がある映画。

しかも、そのウォン・ジンと師父の勝負まである、ときては、これはなんという私得映像。
肩の動きで相手の次の技を見切る師父は無双でございます、すてきすてき~。
が、一応主人公がいるわけで、そこは卑怯な敵のピストルにより足を負傷した師父から、勝負は弟子のチン・カーロウへとバトンタッチ。
そこで繰り出される彼の新技のまた笑えること。あんなんで迫って来られた日にゃマジこえーよ!

おまけで付いていたチン・カーロウの特別インタビューも含めてすごくお買い得なDVDでした!
満足。

・・・と、まぁ、気がつけば、駆け足で書いたつもりが、またかなりな分量の文章に・・・はらら。
これでもまだちょっとしか紹介しきれてないわ(笑)。

ほかのラウ・カーリョン監督作は書き出すと長くなるのでまた別の機会に。
キン・フー監督とかチュー・ユアン監督の武侠作品とかも、なんだかんだ観てるけど、こちらもいつかじっくり書くかもしれないので今回は割愛。

他の映画もまた、そのうちに、まとめて一気に蔵出しするかもしないかも。

 

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全日本フィギュア選手権 2011 その2

全日本の続き。
女子のSPは若い選手の台頭に心からわくわくしてしまいました。
まずは第1グループ第1滑走の佐藤未生選手。
ファーストコンビネーションから3T-3Tですよ!!!あとでプロトコルを見たらセカンドジャンプはアンダーローテッドでしたが、それにしても素晴らしい。
1996年生まれの、まだ15歳か~。すごい。
このSPの技術点だけを見れば4番目という高得点でした。
第1滑走だったのに、ものすごーく長い間1位にいましたね!

そして、彼女に驚いていたら、鈴木春奈選手や友滝佳子選手などのほかのジュニア世代も堂々とした演技を見せてくれて、いや、感激。
これは世界Jrが楽しみですね。

そんな若い選手が目立ったこのSPで輝きを放ったひとりが、SP1位の村上佳菜子選手。
直前の6分間練習の時からジャンプの調子が良さそうで、その調子を本番にも発揮できたのじゃないでしょうか。
冒頭の3T-3Tなんか完璧。会場が一気に沸きました!
このコンビネーションだけで9.74という高得点。
それにしてもたった1年で滑りがしっかりしてきたなぁと、あらためて感心。
技術的にもそうですが、力強さも加わってこの日は観客に訴えかけるものがすごくありました。
とても素晴らしい演技だったと思います!

翌日のFSも楽しみ!

さて、続いての男子のFSで驚いたのが、宇野昌磨選手。
この人には毎回生で見る度に驚かされますが、今回はマジでド肝を抜かれました。
だって選曲がラヴェルのツィガーヌですよ!
冒頭のバイオリンなんか普通、14歳かそこらの男子が滑れるパートじゃないですよ、それを堂々と滑り切ってしまうとは!しかもしっかりと表現できているぅぅぅぅ。
はぁ~、なんでしょうか、もうスタオベしかないっしょ。

そして今大会フリーは沢山の選手の4回転も拝めてちょっとハッピー。
羽生選手、小塚選手、高橋選手、無良選手、村上選手と一気に4人もが4回転を跳びました。
昔から思うのですが、4回転って成功させたらさせたで結構そのあと、難しいみたいですねぇ。

素人考えだと一番の難所を超えたんだから、あとはスイスイ、とつい思ってしまいますが、本人も舞いあがってしまうのか、心拍数が急激に上昇するのか、その後にミスがでて「ああ、もったいない」というのも、結構見慣れた光景。

ほとんどがクリアーに成功したのに、なんとなくみなさん、そのスパイラルにハマってしまったのでしょうか。その後ミスが出たりしてしまいました。
(高橋選手は、この日歯車がずれてしまったかのようで。前日完璧だっただけに、やはりフギュアスケートって難しいものですな)

そんな流れを断ち切ったのが羽生結弦選手。
前日、慣れない最終滑走にとまどったのか、実力を発揮できなかった彼。しかし、4位で臨んだこのFSではその精神的なタフさがものを言いました。
気迫のこもった素晴らしいエレメンツと演技に脱帽でございます、羽生君すごい。

こっちは当然全力でスタオベっす。ブラボー!!!
いいもの観ました。

試合が終わって携帯を眺めたら、いきなりたくさんの着信メールが。
私が大阪の会場で見ているだろうと想像した友達が一斉に「羽生君すごかったね!」「TVで見て感激した!」「ひょっとして会場で見てた?うらやましい」とメールをくれたのでした。

いつもは業務連絡みたいなメールしか寄こさないこの女達に、興奮のあまりメールを打たせる羽生結弦選手は、やっぱり素晴らしい!

 

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狄仁杰之通天帝国/邦題 王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件

今日は朝から銀座の東映の試写室で「狄仁杰之通天帝国」の字幕確認試写とやらの 御招きにあずかり観てまいりました。(まだ邦題もついてない)
太秦の小林社長、ありがとうございました。

うわ、めっちゃ面白い!!これ! ツイ・ハーク全開ですわ、たのしかった~!
ツイ・ハークが好きな人も、もう終わった…と残念に思った人にも是非観ていただきたいです。

ランニングタイムだけ見るとやや長いかもと思うかもしれないけど、全然飽きなかった。

冒頭からあまりによいので、このあとラストに向けてストーリーが破綻したらどうしようと心配してしまいましたが(笑)ちゃんと着地もしておりました。
というか、最後まで熱いパワーがみなぎっていて、本当に久々、ツイ・ハークじゃん!といい気分。

なんていっても李冰冰が素敵。超好みです。
男装の麗人にして武術の達人ですよ、どうしてこれを好きにならずにおれましょう。

公開されたら大きなスクリーンで絶対にまた観たいです。日本でヒットして欲しいなぁ。
ちゃんとしたレビューはまたその時にでも、ひょっとしたら書くかも。

 

 

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全日本フィギュア選手権 2011 ペアSP男子SP

毎年恒例の全日本。今年は大阪なみはやドーム。スケジュールの関係で残念ながら2日間、ペアと男子SPFS、女子SP、ダンスのSDのみ観戦。

ぺアは、高橋成美、マービン・トラン組。
今年のSP「イマジン」はとても素敵なプログラム。本当に大好きで、あまりに好き過ぎて毎回見る度に、こう、ぐっとくる気持ちを抑えるのが大変なくらい。
是非、四大陸や世界選手権でパーフェクトな演技を見たいものです。
期待してます!ほんと素敵ですから!

さて男子シングルはほとんどの選手が、初めてか年に一度しか生で観ない選手だったりして、毎年、その成長ぶりや覚悟を感じとったりするのが楽しみで興味は尽きません。
(去年は仕事で全日本Jrを観に茨城まで行けましたけど)
昨年もそうでしたが、今年もタンゴ祭り、振り付け宮本賢二氏祭りは続行中のよう(笑)。

そんな中、現役を引退した選手がすでにコーチとして活動していたりすると、ちょっとそっちも気になったり。
たとえば川原星選手の演技中、昨年の全日本で引退した中庭健介さんの姿を石原美和コーチと一緒にリンクサイドで発見。

そこでついつい、懸命に川原選手を見守る中庭さんを見てしまったりするわけです。
まるで自分が滑っているかのような意気込みでひとつひとつのエレメントにリズムを取ったり拍手を送ったり。そういう姿はとても感慨深いものがありますね。
コーチになった今だからこそ、現役時代の自分を振り返ったり、コーチだった人達の気持ちが理解できたりするのかなぁと、なんとなくそんなことを考えてしまいました。

あと技術とかを超えたところで楽しませてくれる選手もいて、たとえばその筆頭なのが佐々木彰生選手。今年も彼は相変わらず個性的なプログラム。
杉ちゃん&鉄平の日本舞曲第五番(いや、それハンガリー舞曲だから!)と指打鍵盤斬捨御免(いや、それタイプライター以下略)というまたマニアックな選曲で、なんだかもうね、回転不足でも両足着氷でもなんでもいい、トリプルがダブルになってもいいから、彼の場合は、とにかく立て!そんな気分にさせられてしまう(笑)。
あなたが立てば、とにかくみんなハッピー!ほんと得なキャラクターやなぁ~。

そしてこれまた演技とは違う部分かもしれませんが、山田耕新選手の曲がこれまたお懐かしいサフリデュオのレーシング。
おお、これはまさにあのアレクセイ・ヤグディンが引退したシーズンのSP曲!見るとコレオグラフィーもちょっとヤグディン入ってるし。
誰が振り付けたのかと確認したら、あのトム・ディクソンと田村岳斗さんの名前が!
ヤマトく~ん、ひょっとしたら狙いました?お陰で会場は随分盛り上がりましたよ!

そして私がスタンディングオベーションをした1人が町田樹選手。
第4グループの6分間練習で実は一番良かったのが彼。「これはイケるかも!」とそこで一気に盛り上がってしまいました。
残念ながら本番は練習ほどキレのあるジャンプではありませんでしたが、ご本人の最近の演技の中ではミスの少ないとてもいい演技だったのに嬉しくてつい立上ってしまったのでした。

が、この日の男子シングルSPで一番素晴らしい実力を見せたのは、やはり高橋大輔選手。
冒頭から4-3を決めて、本当に文句のつけようのないパーフェクトな演技。
演技が終わった瞬間、「すんばらしい!」と思わずスタオベ。
うわ~~~~~、いいもの見せて頂きました!!!!

もう一度全日本チャンピオンに。そんな気持ちが強かっただろうことは、こんな自分にも想像がつきます。そんな気持ちを、しかし空回りせず、攻める姿勢も忘れずに、この大舞台で決めてしまうその底力には敬服いたしましたよ。
さすが五輪銅メダリストにして世選ゴールドメダリスト。なんというか場数の数値とくぐってきた修羅場が違うとまで思わせる違いを感じます。すごいっす、高橋くん!

これは翌日のフリーも楽しみです~!選手の皆さん応援してます。

帰りは新地で女2人でてっちりですわ。翌日のイブもこの2人でスケートっす。
イブがなんぼのもんじゃーーーーーーーい!

 

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栗原市 漢方豚

とうほく食文化応援団、第8回目は栗原漢方豚。

TPP参加問題は、各産業に影響のある事なので、さまざまな分野の視点からそのメリットデメリットが取り沙汰されました。

その中でも、注目された分野に農業や畜産があります。
日本の自給率が壊滅的な打撃を受けると危機感を訴える人達がいる一方で、この機会を前向きにとらえようとしている生産者たちもいらっしゃる。

前向きにとらえようという人達のなかには、このTPPの問題が浮上するずっと以前から試行錯誤を繰り返し、すでに様々な取り組みを始めていたりします。
今回、訪ねたのはそんなうちの一人といっていいでしょう。

株式会社ダイチの佐藤勝郎さんは肥育に14種類の漢方素材を飼料配合した漢方牛の販路を開拓してきました。
飲食産業やホテル等への直納,通販等の直接販路を確保することで新しいモデルを作り、また栗原の牛肉に付加価値をつけることに努力してこられたのです。

以前、仙台市内でそのダイチの直営店で漢方牛のハンバーグを食べたことがあります。ものすごくリーズナブルな値段とその美味しさにまずビックリ。
また連れて行ってくれた人のお話では、例えばこういったレストランにも畜産生産者の子女などを積極的に雇用して、ひろくサポートする体制が出来ているのだとか。

近年そのノウハウを豚に活かした「漢方豚」も生育することになり、今回はその漢方豚を戴きに、お膝元、栗原市のレストラン「満てん」に伺いました。ウイークディのお昼だというのに駐車場には車が一杯。いかに地元で人気のお店かうかがい知ることができます。

出していただいたメニューは「漢方豚のハンバーガー」と「漢方豚丼」という2種類の新メニュー。

バーガーに挟まれた豚カツは、柔らかく想像以上に脂っぽくないあっさりした食べ応え。生のワサビの葉がほんのりとした辛みを添えて、なんというか大人の味わいです。こりゃ、ビールが欲しくなる!

このメニューにはワサビの葉の代わりに茹でてほんのりマリネした温野菜を一緒に挟んだものもあり、お好みでどちらかが選べます。

一方、漢方豚丼はこの漢方豚から取ったスープで炊きこんだご飯に柔らかく煮込んだ大ぶりの豚と半熟玉子が載った見目もうるわしい丼もの。それに漢方豚の豚骨スープがお味噌汁代わりについてきます。

普通、豚骨スープと言うと少し臭みがあるのが特徴で、それがいいんだと言う人もいたりするのですが、不思議なことにこの漢方草を与えた豚の骨から取ったスープにはまったくその臭みがありません。これにはかなり驚きました。

「おもしろいことに、この漢方草をまぜた飼料を与えた牛や豚を育てる牛舎や豚舎には、牧場独特の臭いがまったくないんですよ」と佐藤さん。

ではその漢方を与えることで何が変わってきますか?
「それはまず、出荷する時点でその豚の健康がまず違ってきます。健康は内臓、つまりホルモンを見れば一目瞭然です。内臓は食べる前によく洗って臭みをまず取らなくてはなりませんが、それがこの漢方豚では最初から本当に美しくて臭みが少ない。健康なひとつの証拠です。また漢方由来のビタミンEやα-リノレン酸などをたくさん含んでいて栄養も満点です」

たしかにお肉にも、ほとんど臭みを感じない。
「ここの肉なら食べられる、そう言ってくださるお客さまもいらっしゃいます」

こうして栗原のお肉をブランド化することで今後の厳しい業界を生き抜く体力をつける目的は大きいですよね?
「単に珍しいとか話題になるとか、そういったことではなく、栗原の名物としてこの地域に根付いて地域の生産者と手を携えて安全な食をお届けしながら、雇用もまた作って行けたらと願っています」

中国などでは、桁違いの富裕層がそれこそ日本のお米や野菜、肉にいたるまで喜んで口にして、それしか食べないと言う人もいるほどだそうです。
日本の食文化の発展のために、今後は是非、国内だけでなく世界に打って出るくらいの、ひとつのモデルになることを期待しています!

ご馳走ダイニング 満てん
開村牧場 漢方和牛

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銀杏の食べ過ぎ注意

先日、よく利用するチケットサイトからきたメールを見ていたら年末の歌舞伎と年明けのバレエがお得な割引で出ていたので購入。

そういや今年は何本かダンスを観ましたが、アメリカンバレエシアターとシルビィ・ギエムを両方とも仕事で行けなかったことを思い出しました。
何カ月も前の時期、発売と同時にチケットを取るとそういう具合に涙を飲むことも往々にしてあるので、直前のこういう形の販売は嬉しい。

そのチケットの発券に遠くのコンビニまで散歩がてら足をのばしたら、途中にあるイチョウ並木からたくさんの銀杏が落ちている。
そういえば、食べようとして昔銀杏を大量に拾ってきたことがあったなと思い出しました。

料理自慢に教えてもらった通り、水につけてベランダに相当長い期間放置しておいたのだけど、さっぱり変化がなくて・・・あれからどうしたのかと思いだそうとしても、思い出せない。
自分の事だから、結局どうしていいか分らずに捨ててしまったのかもしれないな。

それから何年も経ってネットをやり始めてから、銀杏の果肉の取り方を調べたら、水につけたまま果肉が軟らかくなるのを待つのではなく、すぐにゴム手袋をはめた手で果肉を取る作業をすればよかったということが判明。
だからといって、あれから銀杏を拾うこともしていませんが。

そういえば、行きつけのヘアサロンの女性スタイリストが、銀杏が大好物だと話してくれたことがあります。
その話を聞いたのは彼女がまだアシスタントとして、ヘアカラーとかトリートメントを担当してくれていたころ。
数年後、立派なスタイリストになったのち、たまたま混んでいたのでしょうか、珍しくアシスタントとして手伝いに私のところにやってきました。

「いや、イーボシさん、私この前、酷い目にあっちゃいましたよ」
開口一番、そう言います。
「私、銀杏が大好物なんですけど、ある日大きな袋の銀杏を全部炒って食べたら中毒になっちゃいまして・・・即病院です」

聞けば銀杏には大量に摂取すると中毒を引き起こす危険があるんだとか。
「気をつけてくださいね~ほんと」
それから、さすがの彼女も銀杏恐怖症になったとかで「あんなに好きだったのに本当に残念です」と無念そうでした。

そんな自分も、意地汚くおいしい生牡蠣を食べ過ぎてお腹をこわし、それ以来生の貝がダメになった経験があります。

そう思うと好きすぎて結果、食べられなくなる、そんなものもあったりするんですよぅ。
食べ過ぎ注意。

 

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