映画 大酔侠(66年・香港)

監督
キン・フー

主演
チェン・ペイペイ
ユエ・ホア
テェン・ホンリエ
ハン・イエンチー
イェン・ビァオ

動作指導
ハン・インチェ
サモハン・キンポー


チェン・ペイペイといえばショウブラザース作品で武侠影后(武侠映画の女王)と呼ばれ60年代後半に一世を風靡したスター。

もちろん私が大酔侠を観たのは、つい最近のこと。
だから彼女を初めて見た00年の「グリーン・ディスティニー」の方が先ということになります。そのあとに年代を遡って「詠春拳」のミシェル・ヨー姐さんのお師匠さん役。
なんとなくかつての有名な女性武打星らしいというのは雰囲気で感じてはおりましたが、実際これほどまでにカリスマ性のある女優であるとは想像しませんでした。

19歳にして彼女の人気を不動にしたこの大酔侠で、まだあどけなさの残るペイペイは男装の女剣士役。

ちょっと話は遠回りになりますが、私に大きな影響を与えたひとつに池田理代子作「ベルサイユのばら」という漫画があります。
どう影響されたかは、別の機会に書くことになるかならないか分りませんが(笑)とにかく、このベルばら以降、私の好きな物TOP30に「男装の麗人」というのが入るようになったのは当然のこと。
そんな私ですから、男装もうるわしい主人公のこの映画を気に入るのは間違いないわけで。
彼女の登場シーンで、まずはハートを鷲掴みにされました。

太鼓橋を背景に男装のペイペイが帽子にそっと手をやり空を見上げる。
尖った顎、意思の強そうな眼、そしてきりっと結ばれた口元。それだけで期待感MAXであります。

辿り着いた旅籠の一階にある食堂。さっと席を取ったのち「虎の骨入りの酒を」と注文。これは一種の挑発で、とたんに広い店内が緊張感に包まれます。

この不穏な空気に堅気の客はすべて逃げてしまい、いつの間にか店には大勢の敵と彼女ひとり。
そんななか盗賊どもが投げつける酒壺や椅子を軽々かわし、宙を舞うジャリ銭を次々と箸で受け止める達人技に「か、かっこいい」と唸ってしまいました。

そして唸りながら、グリーン・ディスティニーという映画はこの大酔侠に捧げた壮大なるオマージュだったのだと知ったのです。
シチュエーションといい、出で立ちと幼さの残るキュートさといい、グリーン・ディスティニーのチャン・ツィイーは見事なまでにまんまチェン・ペイペイ。アン・リー監督は、この金燕子を再現したかったわけですね!

そう思うと、あの映画でツィイーの師父役でありながら、なおかつユンファの敵役として描かれた碧眼狐狸役に、そのペイペイさんを起用したというのは、すごーくすごーく深い意味が込められていたのですねぇ。これを観て初めて解りました。

あのアン・リーをして再現したくなったこのペイペイさんの金燕子ですが、いや、当時この1作で爆発的に人気が出たのもわかるわ~というくらい、文句なしに魅力的。
とにかく彼女が二本の短剣を鮮やかに操り、敵をばったばったと倒してゆく様は爽快です。ワイヤーも特殊効果もなしスピードも今より遅めのシンプルなアクションですが、そのぶん、共演のユエ・ホア(これまた細くて若い!)が繰り出す摩訶不思議な気功みたいな技や、子供たちとの楽しそうな歌もありますし、なんといっても彼のアクションでは血糊がたっぷり(自分は血が一杯はあんまり得意じゃないけど)。

対照的に、ペイペイが持つと敵の血のついた短剣も生々しく見えないから不思議です。
かといってアイドルのするなんちゃってアクションとも一線を画していて、あきらかにコンセプトも動きもちゃんと武打星のそれです。
なのに誰を殺しても何人殺しても、返り血が飛んでもなぜか、その爽やかさと可憐さだけは常に不変だから驚きます。
そういった意味でも絶大なる人気があったのも頷ける。正直、アクション女優でこんな人は過去にも現在にも他には思い付きません。

さてこの魅力が果たして彼女の持って生まれたものなのか、それとも監督キン・フーの手腕によるものか、こうなったら次はいよいよ、このチェン・ペイペイとジミー・ウオング御大共演、「エグイの大好き」あのチャン・チェ監督の「大女侠」、さらにキン・フー監督の「侠女」を観なくてはなるまいね!

大酔侠予告編1
大酔侠予告編2

 

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やってもた!

先日、名古屋で行われたフギュアスケートのNHK杯に遠征してきました。

こういうスポーツイベントの場合、本当にネットって便利、ない時代はみなさんどうしてたんだろと思うくらいです。

チケットを取ることはもちろんですが、日帰りでない泊り遠征となると宿の確保も重要。

私の場合、試合の日程が出たら即、レギュラーの仕事が重なってないかをまず確認して(いくら行きたくても仕事が重なっていてはアウトだもんさ)チケットもまだ販売される前から(笑)まずは全日程の宿を予約。

それも一緒に来る友人がいるのか、チケットが確保できるかわからないので、万が一のことを考えてシングルユースを二部屋。
そのホテルも、友人の予算の兼ね合いを想像して格安の部屋から普通のシティホテルまで二、三か所のホテルを予約しておく。で、後日どの宿に泊まるかは一緒に行く友人と相談して決めます。

それ以外にも名古屋駅から会場までの電車の時刻表や、宿泊の荷物を駅のコインロッカーに預ける場合を想定して駅の構内図やコインロッカーの場所をあらかじめプリントアウトしておくのは当然のこと。

我ながら、自分が行きたい旅行やイベントとなると徹底的に下準備しておきたい性格は相変わらずです、てか、こういうことは行きたい人がやればいい。

でも、それもこれもみんなインターネット様様。
ネットがなかったら、なかなか思う通りにはいかないでしょう。

というわけで、今回の名古屋遠征はすべてスムーズに行って達成感バリバリ!と書きたいところですが、ひとつ、やってしもた。

会場で機嫌よく試合を見ていたら、その間に知らない番号の着歴がたくさん。
そのうちの何件かはメッセージも残っている。画面に並んだ着歴を見た瞬間、私はすべてを悟りました。

やってもた!

そう、先に書いたように、まだチケットも販売される前からホテルの予約をしたのはいいのですが、実は予算を考えていつも使わない宿サイトから予約していたホテルがあったのをすっかり忘れてしまっていたのです!

ひぇぇぇぇ。

当然、予約の取り消しをしていないのでキャンセル料としてばっちり料金を取られてしまいました、とほほ。なにやってんだか。

一緒に行った友人にその話をしたら、彼女は仕事でフランス人を温泉に連れて行った際、変更になったスケジュールにあわてて事前に予約した宿をキャンセルしそこなった経験があったらしい。

「食事つきでひとり五万円を三人分よ、死にたくなったわ」

ま、そういう話を聞くと自分の方がまだマシかって気分になるってもんで(笑)。

次回の遠征予定は年末長野で行われる全日本フギュアスケート選手権。
今度こそ、ぬかりのないようにせんと!

 

 

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通天閣

先日、「大阪通天閣とその周辺のええとこを紹介する!」というロケがあり、通天閣に久しぶりに登ってきました。
そこでスカイウォークというイベントに参加。スカイウォークとは通天閣の展望台から1階下がった階にある通常はメンテナンス作業時に使用する外付けのベランダに出て、ぐるっと一周できるというアトラクションの名称。

地上75メートルにある通称「のど仏」という貼りだしたベランダは床が工事現場にあるようなスノコ状になっていて、下が透けて見える!

一応フックの付いた命綱はつけるのですが、なんとその命綱は手すりに渡した少し緩んだロープに掛けるだけ。
しかも、もともと、そんなことをするために作った手すりじゃないからコーナーごとに自分で一度フックの金具を外して少し先の命綱にまた自分で取り付けるという仕様です。
一応ガイドさんは、付くには付くのですが、ダジャレを言って笑ってばかりであんま役に立ちそうにない(笑)。

昔ニュージーランドでの取材で渓谷に飛び込むバンジージャンプにトライした際、テレビ用にと「いや~ん、こわ~い」と大げさに騒いだ結果、本当に怖くなってきてしまって5分後には足が動かなくなってしまったことがあります。
今回はテレビだろうがなんだろうが必要以上に怖がらない、「絶対に」下を覗かないという気持ちで臨みました。
一緒に登ったのは通天閣の地下にある歌謡劇場で歌っている、通天閣のおやゆび姫(これもすごいキャッチフレーズやね)こと吉野悦世さん。風にお振り袖(この状況に振り袖かよ!)の袖がひらひら舞って必要以上に負荷がかかってそう。

通天閣を一周といっても結構距離はあるもので、天王寺動物園や公園が見えていた辺りは楽勝でした。だって緑はあるし、こう、気分も少しリラックスできそうな感じ?
「もうすぐ終わりだな」となんとなくそんな気配を感じたときでした。

人間というのは不思議です。「絶対に」下を見てはだめだと思えば思うほど、見たくなるもんなんですわ(笑)。
魔がさしたというのでしょうか。ふと、下を向いてしまったのですね。
ああああああああああ、人ン家の真上~~~~。
ちょっと目まいがしそうでした。腰のあたりがムズムズします。はらはらはら~。
そこでコメントも早々に、急いでそこを離れたのでした。
少々怖かったけど、いやいや、久しぶりにいい意味の大阪らしいおおらかさに触れた気がして楽しかったです。この日本にまだこんな「ええ加減な」セキュリティーで体験させてくれるところがあろうとは。
プライベートで今度行くことがあったら、一度思い切り下を覗いてみたい、なぜかそう思いながら通天閣を後にしたのでした。

 

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きつねうどんに対する偏愛

汁物が大好きです。しかたがって麺類が非常に好物。
私は大阪育ちなので、子供の頃は当然ながらうどん派。お蕎麦は年に一回、年越しの時しか食べませんでした。
今のように様々なデリバリーなんてなかった時代、たまに母親が「今日はおうどんでも取ろか」と言うと飛び上がって喜んだものです。
なにしろ、彼女の作るナンチャッテきつねうどんのお揚げさん(関西人は揚げをこう呼ぶ)は、それほど甘くもなくフワフワでもない非常に残念なデキで、大好きな本物のきつねうどんを食べるにはお店に行くか、出前を頼むしかなかったからです。

このきつねうどんへの執着はなかなかのもので、高校生になって男子とデートするときも食事はほどんど、きつねうどん。
ある日、見かねた相手から「頼むから違うメニューを食べてくれ」と頼まれ天ぷらうどんを食べたのが、生まれて初めての別うどん経験だったくらいの見事な偏愛ぶり。
だから大阪育ちのくせに大阪で「きつね蕎麦」が存在しないというのも実は大人になって初めて知りました。なにしろ注文どころかメニューすら見ることもなかったから当り前か。
一般で言うきつね蕎麦のことは大阪では「たぬき」と言います。うどんが蕎麦に化けるからたぬきなんだとか。洒落てますなぁ。
では、「天かすの入ったたぬき」は存在しないかというと、おそらく存在しないというお話です。なぜなら、大阪では「おばちゃん、天かす頂戴」と言えばタダで出してくれるから。つまり大阪ではかけ蕎麦やかけうどんを注文すれば自動的に「たぬき」が食べられるという塩梅らしい。
どうして私が伝聞で書いているかというと、未だに大阪ではきつねうどん以外食べたことがないので(笑)そのあたりの事情を確認したことがないからです。

しかしこれも大阪でのことで、実は同じ関西といえども京都はまた少し違ってきます。
これまた高校生の時ですが、当時のボーイフレンドと京都でデートした時のこと。当然のようにお昼ごはんは有名な老舗のお蕎麦屋さん。
いつもの如く「きつねうどん」を注文した私の前に出てきたのは、甘く炊いたものではない普通のお揚げさんを刻んだものがトッピングされたいわゆる「きざみうどん」。
「これって、きざみじゃないですか?」と訊いた私にお店のおばちゃんいわく「いや~京都ではきつね言うたら、これなんよぉ、甘いんは<甘ぎつね>て言う名前ですぅ」。

あの時のショックは一生忘れないでしょう。
そんな私でも、いつの間にか東京暮らしのほうが長くなり、今ではお蕎麦もいけるようになりました。
京都ではあれ以来、きつねも甘ぎつねも注文したことがないので果たして他所の店でもそうなのか、はっきりしたことは分かりません。
どうせ京都では「鳥なんば」しか食べないから、いっか(笑)。

 

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エンタメ強化月間

時々自分でも驚くほどエンターテイメント強化月間になってしまう時期があります。

芸術の秋とはよく言ったもので、この2カ月ほどの私がまさにそんな感じ。

ブルーノートでビックバンドのライブを楽しんだかと思えば落語の独演会に行き、山下達郎さんのコンサートをNHKホールで観た少しあとには、新国立劇場でファルフ・ルジマトフというロシアの有名バレエダンサーとバイオリニスト川井郁子さんのコラボレーションを堪能。

するといいタイミングに行われた「ロシアンバレエのスターたち」なんてタイトルのボリショイ、マリインスキーのスター達が集まるガラ公演に熱狂して、あらら随分バレエばっかりと思う間もなく、いい塩梅に能の観劇。

しかもその間に阪神タイガースの応援に球場にも足を運びつつ、野球と入れ替わりにシーズンの始まるフィギュアスケート、NHK杯の観戦に名古屋まで遠征。

いやはや、どんだけエンタメしまくってんの。

それもこれも、私がいつまでたっても独身だからこそかなぁと、ふと思ったりして。

以前ほんの少しだけ結婚していた時もありますが(笑)人生のほとんどを一人で暮らしています。

そして私は一人暮らしに向いている。

私の周りの独身の友人たちも見事に結婚する気配がなくなってまいりました(笑)。

そんな女たちが集まってしてる話を聞いてごらんなさいよ、「彼氏が泊りに来ても2日も一緒にいると早く帰らないかなぁって思ってきちゃうんだよね」だの「誰かと一緒に暮らす自分が想像できない」だの言いたい放題。

一人暮らし派独身女の特徴をあえて乱暴に言うと彼氏どころか自分の家族とも長時間過ごすことがあまり得意でない。マイペースすぎます(笑)。

じゃあ、家族と仲良く自宅で暮らしている人ほど協調性があって結婚へのハードルが低いかと思いきや、いやいや、最近は実家暮らしの楽さに、結婚したがらないお嬢さんも多いようで。
家族と一緒にいることに慣れていれば、いつでもお嫁に行けそうなのになぁ。家族の仲がいいのも善し悪しすぎるのね。

 

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映画 流星胡蝶剣 (1976年・香港)

監督 楚原(チュー・ユアン)
出演
宗華(ツン・ホア)
岳華(ユエ・ホア)
谷峰(クー・フェン)
羅烈(ロー・リエ)
井莉(チン・リー)
凌雲(リン・ユン)

ショウブラザース作品。
実はこれ、某通販でミシェル・ヨー、トニー・レオン、ドニー・イェン、ジョイ・ウォンの出演している「新・流星胡蝶剣」と間違えて購入してしまった1本。ほんと慌てモンの見本みたいな私(笑)。
ありそうな話ではあるけれど、いざ、それを自分でやってしまうと結構ヘコんじゃいます。

だからか、ずーっと見ないでそのままになっていたりしたのですが、先日とうとう観る気分になりました。

しかし始まってすぐの濡場にびっくり。いや、マジで。
いきなりうっふ~ん、あっは~んだし。いや、自分は1人暮らしだからいいんですけど、これ普通に大音量で見ていて実家だったりしたら中学生並みに焦るだろうな、と。
「困ったなぁ」
私は主演の宗華(ツン・ホア)を初めて見ます。知った顔も出ないのに、いきなりのこの濡場はちょっとたじろぎますな。

でも、そこを我慢したら段々話がおもしろくなってきた。
出演者も時間とともに岳華(ユエ・ホア)とか出てきてちょっと安心。って、このあと彼は色んな意味でとんでもないことになってきますが。
そういえば若いころの羅烈(ロー・リエ)にもかなり驚いた。こんな顔だったのね。何も知らずに見るとやっぱ色々新鮮でいいなぁ。

一言で言うと、この作品かなり、いや、相当おもしろいです。
お話も二転三転、なかなかサスペンスに満ちていて「本当はどっちだ!」って興味はつきない。
そのうえに義を重んじる人達が次々に泣かせる献身的な行動を見せて、15年間地下道でじっとその時を待つ、とかにわかには信じがたいのだけど、谷峰演じるこのスン・ユイボーを見てるとなんとなく「ま、ありか」と思えてしまうから不思議です。
これって絶対に宗華じゃなく、谷峰が主役ですよね。

武術指導は袁祥仁(ユエン・チョンヤン)。そう、名前から分る通り袁小田(ユエン・シャオティエン)の息子のひとり。袁和平(ユエン・ウーピン)の実弟で甄子丹(ドニー・イェン)デビュー作の<笑太極>で師父を演じていたあのお方でございます。
そういや彼もいまだ色んなところで出演したりアクション監督してるよねぇ。チャーリーズエンジェルや続編フルスロットルで武打指導したりとかさ。
そしてもう一人はお父さん袁小田の弟子(らしいとどこかで読んだ)唐佳(トン・ガイ)。
アクションもよかったなぁ。途中で岳華が縄でぐるぐるにされて宙に浮くとか、
羅烈の帽子からいきなりギロチンが出てくるとか(笑)武器が結構地味ながらいい味だしてます。特にラストバトルの宗華(ツン・ホア)と岳華(ユエ・ホア)のアクションはスピードもあってカッコいい。

原作の武侠小説のほうは1ページも読んでないけど、これきっと原作が面白いんだろうなと想像してしまいました。

これは観た後に、色々情報を捜していて知ったのですが、この映画、公開当時は武侠映画の<ゴッド・ファーザー>と呼ばれていたらしい。
う~ん、分る気がする。

ま、リメイクであるはずの「新・流星胡蝶剣」とはタイトル以外、何の接点もないまったく違う話でしたが、出てる役者もアクションも非常によくって、間違えて注文しちゃったけど結果オーライだ!

それにしても一瞬だけ登場した闘う事をやめてしまった刺客役の凌雲(リン・ユン)のいい男ぶりに、ちょっとドギマギしてしまいましたわ。
調べても日本じゃなかなかお目にかかれない俳優のようで残念です。本職はアクションじゃないらしいし。ま、縁があったらまたどこかで会おう!

流星胡蝶剣予告編1
流星胡蝶剣予告編 2

 

 

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映画 嵐を呼ぶドラゴン(1974年・香港)


監督
張徹(チャン・チェ)

出演
陳観泰(チェン・クアンタイ)
傅聲(アレクサンダー・フー・シェン)

動作指導
劉家良(ラウ・カーリョン)
唐佳(トン・ガイ)

この間、劉家良監督の<少林虎鶴拳>でチェン・クアンタイ扮する洪熙官を観ましたが、クアンタイさん、また同じ役で登場。(と、いってもこちらのほうが制作は早い)

同じ役といっても、クンフー映画やドラマでは、洪熙官が登場する物語はとても多いので、続編でもない限り同じ洪熙官を同じ俳優が演じても、それは違う話になるのがお約束みたい。
そもそも実在の人物でもお話はほとんどフィクションのようだし。今作はチャン・チェ監督。

その洪熙官の弟弟子、方正玉にはアレクサンダー・フー・シェン。これまた映画によく登場する英雄のひとり。
この洪熙官と方正玉、ふたりともお馴染みの黄飛鴻と同じくらい中国では(おもにクンフー映画で)超有名キャラというわけです。

ちょっと余談になりますが、私が初めて洪熙官を観たのは、溺愛する武打星、甄子丹(ドニー・イェン)が主役のTVドラマ<洪熙官>のダイジェスト版DVD。

これをその後、中国のTV局が公開しているネット動画で全話観ることが出来たのですが、そのドラマのなかで方正玉を演じたのは張家輝(ニック・チョン)。

そう、2009年の28回香港電影金像奨で、それぞれドニー・イェン<葉問>とニック・チョン<証人>で主演男優賞を争ったふたりが(結果はニック・チョンが受賞)この時の洪熙官と方正玉。
まさか、のちに彼らが主演男優賞で争うことになろうとは、当時は誰も想像だにしなかっただろう若さあふるる(笑)演技で、とにかく初々しかったわ。

とまぁ、そんな具合に、この洪熙官と方正玉はセットで登場することも結構あるキャラクターのようです。

ものがたりは、いきなり少林寺焼き打ちから。
炎のなかで闘うチェン・クアンタイ洪熙官。黒い衣装に辮髪の三編みを首に巻いてキレのいい動き。
この頃はまだワイヤーもコマ落としもないのでしょう、リアルスピードとその身体能力だけの動きは当然現代よりもずっと遅い。なのに見惚れてしまうのは何故でしょう。

やがて追手から逃れようとする洪熙官の逮捕を、本来味方であるはずなのに、その顔を知らない方正玉が敵に騙されて手伝ってしまいます。

この映画、なんといっても、途中から登場するこの方正玉役のアレクサンダー・フー・シェンが、めちゃくちゃ可愛い。
長袍(丈の長い中華服)を腰紐で結んだ純白の衣装と大きな扇子がとにかくお似合い。

なんじゃ~!この可愛さは~!(だからといって、いきなり画像検索とかしないでください。彼は動いてないとその可愛さは伝わらない特殊体質のようですので)
当然、当時の観客のみなさんはじめ、むろん、この私も萌え萌えです(笑)。

一方、クアンタイさんは相変わらず野性的で男くさく、性格もすかっとした役どころ。
自分のしでかしたことを死にたいくらい悔いる方正玉に寛容なところを見せて、その男らしさが動きや姿だけでないのを我々に知らしめるわけですよ。

この映画、アクションも大変よろしいのですが、正直言って、このふたりの姿形とキャラクターをひたすら愛でたおす、そういう仕上がりになってございます。

前回、今後「ショウブラザースの功夫作品を観てみたいけど、どれから始めていいか分らないの」という若い女性がいたら、迷わず少林虎鶴拳を勧めることにします、と締めました。

今回は、もし「ショウブラザースの功夫作品を観てみたいけど、どれから始めていいか分らないの」という腐女子がいたら(笑)迷わずこの嵐を呼ぶドラゴンを勧めることにいたします。

嵐を呼ぶドラゴン予告1
嵐を呼ぶドラゴン予告2

 

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イタリア スプマンテ VELLAVISTA

映画「シザーハンズ」や「チャーリーとチョコレート工場」などを監督したティム・バートン。
その作品の常連として知られている女優に、公私ともに彼のパートナーとして知られるヘレナ・ボナム・カーターがいます。
いまでこそ個性的な役柄で知られる彼女ですが、初期にはコスチュームプレイ作品で可憐な演技を披露しエドワード朝時代を舞台にした「眺めのいい部屋」というイギリス映画で人気を獲得しました。

20世紀初頭、イタリアのフィレンツェに、付添い人の中年女性とともに到着した裕福な中産階級の娘ルーシー。予約の手違いから彼女らは中庭に面した部屋に通されます。
その部屋を、父親とともに滞在していた労働者階級の青年ジョージに「眺めのいい部屋」と取り換えてもらうところから始まるこの物語。
エドワード朝時代の若きヒロインがフィレンツェという街の自由な空気にとまどいながら、かつて感じたことのない解放感を胸一杯に吸い込むさまが、良く伝わってくる美しい映画でした。

この作品を観てから数年後。
初めてこの目でフィレンツェの町を一望した私は、スクリーンと同じ風景に感激する一方で、何かが足りないと心のどこかで感じてもいました。

付き添いなしでは旅行すらできなかったルーシーと、気軽に日本から遊びに来た現代の私。
陽に赤く照らされるクーポラの丸い屋根とそびえたつジョットの鐘楼を眺めながら、その感激と解放感の違いがそうさせるのかと切なさを抱いたくらいです。
だからといって、それでイタリアの魅力が損なわれたわけではありません。すっかりイタリア熱に冒されてしまった私は、それから数年間、休みの度に様々な土地を訪ねて歩くことになりました。

ある年の冬、ミラノとヴェローナの中間にあるフランチャコルタ地区のエルブスコに足を運んだ時のこと。
イタリア初のミシュラン三ツ星シェフ、グアルティエロ・マルケージ氏の経営するオーベルジュに泊まり、そこで私は地元フランチャコルタの素敵なスプマンテに出逢いました。
シャンパンよりも発砲が少なめで、柔らかく爽やかな口当たり。
文化面、とくに食に関しては非常に保守的なイタリアだからこそ、繊細さが際立つマルケージの料理。
彼の作り出すやさしい味わいに、そのスプマンテはとても良く合って一口で私を幸せな気分にしてくれました。

ラベルと見ると「VELLA VISTA」という銘柄。
ベラヴィスタとは日本語で「素晴らしい景色」。眺めのいい部屋に似た名前ではないの、真っ先に思ったのはそのことです(本当は眺めのいい部屋をイタリア語訳するとCamera con vistaになり、正直vistaしかあってないんですが。笑)。
女性が自由を謳歌できる世の中ではなかった20世紀初頭に生きながら、自由の息吹が芽生え始めた微かな時代の胎動にとまどいながらも魅かれるルーシー。
その内に秘めた情熱と自由への渇望が、なんだかベラヴィスタの控えめでありながら奥に秘めた力強い味わいにぴったり寄り添うように思え、初めてのフィレンツェで足りなかったものが埋まった気分にさせてくれました。

もう長らくイタリアを訪れてはいませんが、時々無性にこのスプマンテを飲みたくなることがあります。ありがたいことに最近では日本でも気軽に手に入るようになりました。
そして飲むたびに、自分にとってイタリアを思い出す一番のアイテムがこれなのだといつもしみじみ感じ、それは今でも変わることはありません。

 

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映画 少林虎鶴拳(1977年・香港)

監督・武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)

出演
陳観泰(チェン・クアンタイ)
羅烈(ロー・リエ)
汪禹(ワン・ユー)
李麗麗(リリー・リー)

黄金期のショウブラ映画を観ているとかならず目にする劉家良(ラウ・カーリョン)という名前。

自分のために、まずは彼の家族関係をメモ。

あの伝説の武術家、黄飛鴻の弟子である林世榮から洪拳を教わったという父を持つ劉 家良は、いわば本物の黄飛鴻の直系ともいえるお人です。
香港に渡ってから50年代のクワン・タッヒン主演「黄飛鴻シリーズ」に父とともに武術指導や脇役として手伝ったことをきっかけに映画界入り。
俳優、武術指導で活躍した劉家榮(ラウ・カーウィン)は実弟であり、また<少林寺三十六坊>で一躍スターになった劉家輝(ラウ・カーファイ)は幼いころから劉家の経営する武術館で学んだ縁から劉家に養子になったという義弟にあたります。

そんなラウ・カーリョンが監督し武術指導をしたのが、この映画。
のっけからタイトルバックで羅烈(ロー・リエ)演じる白眉道士と少林寺の至善禅師との死闘から幕を開けます。すげー。
この白眉道士の技がまたすんごくて、至善禅師はあえなく亡くなるわけですが、こういうオープニングって功夫映画っぽい。観ててわくわくしてしまいますよ!

冒頭に続いたのが、監督の義弟である劉家輝の見せ場。これも非常に痺れます。なんだなんだ、この畳みかけるような最初からの展開は!
さすがは劉家輝、動きの切れやスピードが別次元。武蔵坊弁慶で知られる「弁慶の立ち往生」もびっくりの最期を見事に決めています。

ここだけ観てるとつい忘れてしまいそうですが、主役はチェン・クアンタイ演じる洪熙官。
この洪熙官(ハン・カーロ)というのは清朝時代に実在した武術家で、かの黄飛鴻が師事した福建少林寺・洪家派の始祖とされた人物。なので様々な映画やTVドラマで主役として演じられてきたヒーローでもあります。

私がはじめて洪熙官を観たのは、溺愛する香港武打星、甄子丹(ドニー・イェン)が1994年にTVで演じた<クンフー・マスター 洪熙官>のダイジェスト版DVD。
当然ドニーさんの歌うこのドラマの広東語主題歌「理想」もi-podの「功夫プレイリスト」にしっかり入っております(笑)。

ま、そんな話はさておき。
前半のこの展開に、ものすごくシビアな功夫映画を想像してたら、話は段々和やかな(状況はあんま和やかじゃないはずなんだが)方向に。

潜伏中に出逢ったリリー・リー演じるツンデレ方詠春と祝言はあげちゃうわ、その初夜にいきなり武術対決になってしまうわ、もうこれって何ていうラブコメ(笑)。

でも自分はこの展開すごく気に入りました。
やがて息子が生まれて3人で暮らす生活も見ていて俄然微笑ましい。お父さんは当然復讐を忘れたわけではなく朝から虎形拳の鍛錬に余念がない。
そのうえにお母さんは鶴形拳(てか、詠春とくりゃ、あの型だしさ、本当は詠春拳なんじゃないの?という突っ込みは置いといて)の達人ですからね、日々の暮らしの中にしっかり功夫は溶け込んでいて、洗濯中の母親に息子がいきなり襲いかかってそこから勝負が始まったり、親子3人の夕餉でも唐突に父子が一切れの豚肉をめぐって茶碗が割れ、物干し台が破壊される対決になってしまったり(笑)。
いいなぁ、こういう家に一晩でいいから泊ってみたい。

少し前に観た2005年制作の<ドラゴンプロジェクト(原題)精武家庭>に至るまで脈々と受け継がれる香港アクション映画のこういう力自慢の生活描写(有名なのは成龍の‘拳’シリーズですよね!)は観ていて本当に楽しい限りです。

おまけに嫁さんに怒られて、繕いものをするチェン・クアンタイさんまで拝めました。ヤバいです、萌え死ぬかと思いました。この映画のアットホームなクアンタイさん好きだ(笑)。

と、すごくぬるい展開になったかと思いきや、そこは洪熙官。血のにじむような修業を経てちゃんと白眉道人に復讐しに出かけます。
ここからまた軌道修正して、展開は男の復讐物語へと突入。
しかし志半ばでまたしても宿敵に敗れ今度は命を落とす父、洪熙官。そこで主役の座を突然息子の洪文定にバトンタッチ(笑)。父の仇を討つために、果たして文定は白眉道人を倒すことが出来るのか?

この映画、ものすごく面白かった!
男くさいチェン・クアンタイが出てるからと思い、普通にシリアスなストーリーかと想像していたら、まったくいい意味で期待を裏切ってくれました。
あのアットホームな洪熙官は彼にとっても異色なキャラクターだったのではないでしょうか。

今後「ショウブラザースの功夫作品を観てみたいけど、どれから始めていいか分らないの」という若い女性がいたら(笑)迷わずこの少林虎鶴拳を勧めることにいたします。

少林虎鶴拳予告1
少林虎鶴拳予告2

 

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伊藤若冲の墨絵

友人と老舗の文具店に冷やかしに入ったら、彼女が書道用具を眺めてる。珍しいなと思っていたら、その気配を察したのか「いや、ちょっと書道を始めようかと思って」という返事。
そういえば、別の友人も母親へのプレゼントに筆でも買おうかなと言ってたような。

つい最近もテレビを見ていたら、最新書道グッズとやらの紹介がありました。
書き上がったものを乾かすことなしに巻き込んで仕舞える商品とか、墨ではなく水で何度も利用できる半紙とか。
最近、どうやら書道がブームらしい。

子供の頃は書道の時間がすごく苦手だったのを思い出します。
まあ、字が上手くないというのもありましたが、なんといっても書き始めるまでに墨を磨らなきゃいけないというのが、とてつもなく面倒な気がしました。

陳列棚に並ぶ硯や墨を彼女と一緒に見ていたら、その造形の繊細さや美しさに改めて驚かされます。
もちろん素晴らしい逸品になればなるほど、その値段にも驚かされるわけですが(笑)。

書き始める前にゆっくりと墨を磨る様子を想像すると、そんなに悪いものではないはずだと歳を重ねた今なら思えます。
子供の頃ならなんの必要もなかった、「心を無にする時間」が実はとても大切なのだと理解できるようになったから。

墨といえば、先日千葉市美術館で行われた<伊藤若冲―アナザーワールド展>に行ってきました。

伊藤若冲というと今や若い人たちに一番有名な日本画家ではないでしょうか。
いたるところで展覧会が開かれ、宇多田ヒカルのPVにも使用されたことで一躍ひろく知られることになった<鳥獣花木図屏風>の見事なモザイク画が有名ですが、そういったユニークな技巧のほかに動物植物をじっくり観察してその生態を写し取る「写生」の画家としても名を馳せました。
白い線で繊細に描いた鶴やオウムや鶏の羽の描写と構図の素晴らしさは今でも驚くほど新鮮です。
そんな彩色画の印象が強烈な若冲ですが、実は墨絵も多く手掛けていて、この展覧会はそんな彼の水墨画がたくさん集められていました。

何度も若冲の展覧会には足を運びましたが、今回のように大量の水墨画を目の当たりにしたのは初めてです。
その作品の数と自由な筆運び、そして水墨画のもつ無限の広がりと創造性に圧倒されてしまいました。
<花鳥蔬菜図押絵貼屏風>の梅の枝の力強さと先に行くほど細く曲がりながら上を向く生き生きとした姿。
墨というたったひとつの素材の濃淡や大胆な筆の運びで、これほどまでに生命力を感じることができるとは。本当にその場に立ちすくんでしまったほどです。

俄然、水墨画に興味が湧くとともに、なんだか自分でも描いてみたくなりました。これは友人を誘ってまた、あの老舗の文具店に行くべきでしょうか(笑)。

 

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