きつねうどんに対する偏愛

汁物が大好きです。しかたがって麺類が非常に好物。
私は大阪育ちなので、子供の頃は当然ながらうどん派。お蕎麦は年に一回、年越しの時しか食べませんでした。
今のように様々なデリバリーなんてなかった時代、たまに母親が「今日はおうどんでも取ろか」と言うと飛び上がって喜んだものです。
なにしろ、彼女の作るナンチャッテきつねうどんのお揚げさん(関西人は揚げをこう呼ぶ)は、それほど甘くもなくフワフワでもない非常に残念なデキで、大好きな本物のきつねうどんを食べるにはお店に行くか、出前を頼むしかなかったからです。

このきつねうどんへの執着はなかなかのもので、高校生になって男子とデートするときも食事はほどんど、きつねうどん。
ある日、見かねた相手から「頼むから違うメニューを食べてくれ」と頼まれ天ぷらうどんを食べたのが、生まれて初めての別うどん経験だったくらいの見事な偏愛ぶり。
だから大阪育ちのくせに大阪で「きつね蕎麦」が存在しないというのも実は大人になって初めて知りました。なにしろ注文どころかメニューすら見ることもなかったから当り前か。
一般で言うきつね蕎麦のことは大阪では「たぬき」と言います。うどんが蕎麦に化けるからたぬきなんだとか。洒落てますなぁ。
では、「天かすの入ったたぬき」は存在しないかというと、おそらく存在しないというお話です。なぜなら、大阪では「おばちゃん、天かす頂戴」と言えばタダで出してくれるから。つまり大阪ではかけ蕎麦やかけうどんを注文すれば自動的に「たぬき」が食べられるという塩梅らしい。
どうして私が伝聞で書いているかというと、未だに大阪ではきつねうどん以外食べたことがないので(笑)そのあたりの事情を確認したことがないからです。

しかしこれも大阪でのことで、実は同じ関西といえども京都はまた少し違ってきます。
これまた高校生の時ですが、当時のボーイフレンドと京都でデートした時のこと。当然のようにお昼ごはんは有名な老舗のお蕎麦屋さん。
いつもの如く「きつねうどん」を注文した私の前に出てきたのは、甘く炊いたものではない普通のお揚げさんを刻んだものがトッピングされたいわゆる「きざみうどん」。
「これって、きざみじゃないですか?」と訊いた私にお店のおばちゃんいわく「いや~京都ではきつね言うたら、これなんよぉ、甘いんは<甘ぎつね>て言う名前ですぅ」。

あの時のショックは一生忘れないでしょう。
そんな私でも、いつの間にか東京暮らしのほうが長くなり、今ではお蕎麦もいけるようになりました。
京都ではあれ以来、きつねも甘ぎつねも注文したことがないので果たして他所の店でもそうなのか、はっきりしたことは分かりません。
どうせ京都では「鳥なんば」しか食べないから、いっか(笑)。

 

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