GF*BF(原題・女朋友。男朋友、2012年・台湾)@大阪アジアン映画祭

さて大阪アジアン映画祭で観た映画の続き。
実は今回の映画祭で、何よりも観たかったのはヤン・ヤーチェ(楊雅喆)監督の台湾映画『GF*BF(原題・女朋友。男朋友)』。
これを日本語訳付きで観ることができて本当によかった、この作品だけで大阪に行った甲斐がありました。

主演は、桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、張孝全(ジョセフ・チャン)、鳳小岳(リディアン・ボーン)。
日本公開を願ってあらすじは書かずにおきます。なんというかネタバレで観るのは本当にもったいないから。
主人公が女ひとり男ふたりで1985年の学生時代から大人になるまでの27年間という長い時間を丁寧に鮮やかに描いている、そしてこの組み合わせから安易に想像できるような女ひとりをめぐる男の話ではない、とだけ申しましょう。彼らの人生に大きな影響をもたらしたのは台湾の国民党独裁政権や民主化運動。観ながら自分はほんの表面的にしか台湾のこの時代を知らなかったことに驚いてしまいました。ついこの間のことなのに。
もちろん、そんな背景を知らなければ理解できない映画ではないのでご安心を。

もうね、なんというかのっけから涙腺が怪しかったです。
美しいんだよね、すべてが。そしてその美しさは年代とともに変わってゆくのですよ。で、最後はやはり美しかったと終わる。

自分にも十代の頃からの友人が何人もいて、そのときの気持ちや暖かさや危うさをよく覚えています。もちろん映画のようなことはなかったし、彼らのような激しい社会変革を経験したことはありません。けれど、特有の香りに似た記憶は胸の奥で時折疼いたりするわけです。いい思い出であれ悪夢のようであれ、誰しもが過去から続く自分を、今、生きている。

後半は嗚咽を抑えるのに苦労しました。
決してお涙頂戴で撮ってる作品じゃないのだけど、もうすごく切なくてね。主人公が3人もいて3人共に共感できる映画というのは珍しいのかもしれません。ナレーションなどで説明がないのもよかった。すべてはその時々の3人のふとした瞬間の表情がものがたっています。友人といえども全てを語り合い理解しあえるわけじゃない。それは恋人同士ですら同じなわけで。だけどかけがえのない存在であるのはなぜだろう。
その問に明確な答えなどないけれど、心だけはそれが大事と知っている。

すべての年代を生きる3人の俳優も、あまさず素晴らしい演技でした。(グイ・ルンメイは今作で第49回台湾金馬奨の主演女優賞を獲得)説明不足ととる向きもあるかもしれないけど、足りないところは自分の知ってる友情や癒し癒されるという関係や、また気がつけばそういったものすら変化してゆく様の記憶で補足してゆけばいいのではと思います。
観たあとの清々しい感覚と奇妙な脱力感は、水泳をしたあとに似ています。そう、なんとなく鼻の奥に水が残っているような、だるいんだけどどこか心地の良い疲れというような。そういえば、主人公の2人は水泳部でした。

素晴らしい映画なので日本で公開されることを心から願います。自分にとっては生涯ベスト20に入りました。ひとりでも多くの人に観てもらいたいです。

電影【女朋友。男朋友】正式預告片 – GF*BF Official Trailer HD
電影【女朋友。男朋友】同名主題曲官方MV

自分がこの作品を観たいと思ったのはこちらのブログを読んだから。最後に是非紹介させてください。
香港電影放浪録-「女朋友。男朋友」定義できない、大きな愛

カテゴリー: film | 4件のコメント

毒戦(2013年、中国・香港)@大阪アジアン映画祭

本当は大阪での仕事にくっつけて観るつもりで今作も含めチケットを早々手配していたのに仕事のスケジュールの都合で行けないことが決定し、かなり凹んでしまいました。が、主催の大阪朝日放送、その局の番組でお世話になってるプロデューサーの「この日にも上映がありますよ!」という言葉に背中を押してもらい別の日に個人的に大阪に入り観ることにしたのです。
結果、行って本当によかったです、背中を押してくれた幡谷さんそして後藤さん、ありがとうございました。

まずはジョニー・トー(杜琪峰)監督の最新作『毒戦』(ちょいネタバレ気味)

日にちを早めたお陰で幸運にもオープニングセレモニーでの監督の舞台挨拶の日に重なりました、うは。席が残っててよかった!
のっけから「御存知の通り大陸には検閲というのがあり、これは最初自分が考えていた脚本とは全く違ったものになりました」というコメント。それを聞いてなんとなく身構えてしまった自分は、まだまだジョニー・トーファンを名乗るには未熟すぎましたかね。

と、いうのもうんと前から「あのジョニー・トーが大陸を舞台に初めて警察映画を撮る」というのにぼんやり不安を持っていたからです
噂では大陸の映画やドラマに出てくる中国公安には絶対に銃弾が当たらない、まして悪徳警官なんか存在するわけがない、という制約があるというじゃないですか。

冒頭から香港では決してない、だだっ広いロケ現場の絵は相当新鮮。高速の料金所でのシークエンスやその後の警察署での場面など、かなり生々しく期待値は一気に膨らんでゆきます。
が、その後のスン・ホンレイ(孫紅雷)のスーパーコップぶりに「ああん」ともどかしく感じてしまったのも本音として確か。いや、スン・ホンレイはすごいっすよ、あの難しい演技を驚くほどの力量で見せつけてくれましたもん。2000年に日本公開されたチャン・イーモウの『初恋のきた道』であの可愛いチャン・ツィイーに惚れられるひょろっとした先生が十数年後にこんなになる、って言っても当時の私は信じないでしょうね。それ位すっかりハードボイルドが板についております。に、してもかっこいい、いや、かっこよすぎるぞ!スン・ホンレイ。

彼に限らずここで登場する公安の皆様のものすごい用意周到完璧無敵ぶりに「お前ら全員ミッション・インポッシブルのトム・クルーズかよ!」と突っ込みたくなったのも事実。とはいえサスペンスと緊張感は存分すぎるほどにあります。そこはさすが。しかし公安側は人物の私生活を匂わせる描写がなく職務しか描いていないからでしょうか、より一層その超人ぶりが際立っている。
ほんとうに中国の公安ってあんなパーフェクトな組織なのかしらん?とトーさんの映画だけにちょっぴり違和感が気になったり。
だって小ズルい警官も生活が破綻した警官も誰一人として登場しないんだよ、雪ちゃんみたいに食べてばっかりのだらしないのが入る隙なんてまるでない。出てくるみーんな見事なまでの人間味のないスーパー(ロボ)コップなんだもの、せっかくルイス・クーがズタボロにされているのにどうもイマイチ乗り切れない。
もうこの辺の感想がね、自分はジョニー・トーファンじゃないのかも、と振り返ると思うほど猜疑心いっぱいなわけですよ、とほほ。

が、そのスーパーコップ達が追う麻薬組織の「制作現場の人間たち」との攻防がガンアクションで幕を開け(キャラの豹変も含めここのシークエンスがとにかくしびれた)、またその組織のトップに、ロー・ホイパン(盧海鵬)ラム・シュー(林雪)チョン・シウファイ(張兆輝)ラム・カートン(林家棟)ン・ジャンユー(呉鎮宇)などトー組お馴染みの香港俳優達が登場してからはあれよあれよといつものトー節に高速シフトチェンジ。
クライマックスには超ド派手な銃撃戦が繰り広げられ、途中2人しか弾に当たらなかった公安関係者もバタバタと、しかも男女の区別もなく相当な残虐さで死んでいきます。うっわわわ、ジョニー・トーやった!!!!さすがです!!!
そして気がつけば、まごうことなきジョニー・トーの映画として全ては収束されていったのでした。

そういえば監督は挨拶の最後に「これが今後大陸で警察ものを撮る際の前例になってくれればと思います」ということを話していましたね。
本当にそうなることをいちファンとして願いますし、今回上映されたものが国際版や香港バージョンでもなんでもなく、このまま中国大陸で上映されることを望みたいところ。(大陸では4月11日に公開予定、単純に公開前だからかとは思いますがいろんな資料でタイムランがバラバラになってるんですよね、この映画祭では118min.とありました)
そして最終的には、大陸映画の表現のありかたに対し風穴を開けた作品として記憶されることを切に願います。
なにしろ中国での映画ドラマの一切を管理している『国家広播電影電視総局電影事業管理局』ってとこをまったくもって信用してないもので(笑)、ネゴシエーションや人員の交代次第では何事もなかったように揺れ戻しまた締め付けが厳しくなっても不思議ないとこっすから、あそこ。

そんな話はさておき、とにかくジョニー・トー監督のファンは必見です。映画を支配する緊迫感は1,2を争う濃密さ。そしてズタボロにされるルイス・クーを楽しみにしてるファンも絶対に見逃しちゃいけません、見逃しちゃ一生後悔するかも。

最後に、セレモニーにジョニー・トー監督と一緒に登壇したのはマレーシア台湾合作の『カラ・キング』(ン・マンタがでてるらしいよ!)のNemewee監督と出演のChristopher Dawns、そして日本から故、若松孝二監督に師事した『戦争と一人の女』の井上淳一監督。

「日本の小さな規模の映画は、公開されたことすら知られずに終わってしまうのが現状です。どうかよかったら映画を観てください、いや、たとえ観なくてもいいです、こんなのがあるよと話題にしてくださるだけでも結構です」とご挨拶されました。残念ながら自分はまだ観ていませんが、監督のおっしゃる通り、せめてここに書き残しておきたいと思います。主演は江口のりこ、永瀬正敏、村上淳、柄本明。「日本の戦争映画を観ていて、これは世界に通用するのだろうかとずっと思って来ました。自分は世界で共感できる戦争映画を撮りたかった」という言葉が印象的でした。

戦争と一人の女オフィシャルサイト

毒戦予告(でも未見の方は見ない方が吉、かなりネタバレ)
↓あ、こっちの方がいいですね!最終予告かな?音楽の使い方がかっこいい
Drug War – Louis Koo, Honglei Sun,

カテゴリー: film | 2件のコメント

読売GINZA落語会

まだ全然寒かった頃ですが、ル・テアトル銀座に落語を聞きに行きました。
何度か落語には行ってますが、新作も面白いのですけどやはり聞き慣れた古典落語なんてのがかかると嬉しいもので。
子供の時分お気に入りだったものに子供向け古典落語の本がありました。何度も繰り返し読んで何を思ったか『寿限無』のあの長ったらしい名前を必死で覚えましたっけ。多分今でも言えるんじゃないかな。と、思って今口に出してみたら途中がちょっと怪しかった(笑)。

そういえば、この寿限無を実際の落語家で聞いたことがない。あの名前を暗記する際に難しかったのはリズムでした。とにかく字余りな言葉が次から次へと登場するので自分なりにリズムを付けないと覚えられない。テキトーに我流で節を回しリズムを取っていたのですけど、今試しに口に出したら内容は怪しいながら当時の節とリズムのまま口をついて出てきたのが笑えました。
本物の落語ではあの長い長い名前をどんなリズムで喋るんだろう。一度聞いてみたい。どなたかのCDでも買って聞いてみようかな。どなたのがいいか、もしこれを読んだ落語好きの方がいらしたらぜひ教えて下さい。

さて、前座は『まんじゅう怖い』これもその本に収められていた、超スタンダードな噺。何度聞いてもよくできたお話。当時の自分はこれと『蕎麦の羽織』が滅法好きでしたわ~。

この日のラインナップは
古今亭菊之丞さんの『お見立て』
柳家三三さん『薮入り』
柳家花緑さん『笠碁』
春風亭昇太さん『二番煎じ』
と、実力者揃いの古典オンパレードに非常に満足感がありました。

菊之丞さんは恥ずかしながら初めて拝見しました。なんというかしっとりと言いましょうかじっとりと言いましょうか、静かに語る調子がすごく新鮮。三三さんの薮入では子を思う親の気持ちにぐっときました。そういえば古典の人情モノってあまり聞く機会を持たなかったなぁ、と。一度人情噺で思い切り泣いてみたい、急にそんなことを思ったり。
で、この中で自分が一番見ているのは花録さんになるわけですが、さすがの安定感。マクラもおもしろい。そして同じく結構見ているはずの昇太さん。実は彼の古典を初めて聞いたのですが、随分印象が違っていたのに(いい意味で)驚いてしまいました。

今回は古典ばかりでしたが、出演も演目もすごくいい塩梅で一瞬たりとも飽きずに楽しかった。なんちゃって落語ファンの私はホール公演ばかりで実際の寄席に行ったことがないので一度は行ってみたいものです。なにしろ寄席はひとりで聞きに行くにはちょっと敷居が高い気がしちゃうんですよねぇ。いや、ちょっと待て、なぜ最初からひとりで行くことになってんだ?自分。

 

カテゴリー: 未分類 | 2件のコメント

谷垣健治著 アクション映画バカ一代

谷垣健治さんの『アクション映画 バカ一代』(洋泉社)読みました。
↓ほら、表紙もイカしてるっしょ!

はははは、おもしろい!!アホな自分はもう3回くらい読んで今でもバッグにずっと入れてあるので、ちょっとした移動中などに時折好きなとこだけ何度も読み返したりしています。

前作の『燃えよ!スタントマン』も相当お気に入りですが(昨年サインもらっちゃったもんね)、こちらは最新刊ということもあって近々の作品の裏話もあり、とにかく読み応えがあります。
に、しても谷垣さんって文章の才能がありますねぇ。読みやすく、なおかつ表現が的確。
谷垣さんのお話を聞くにつれ感じるのは、なんて頭のいい人なんだということ。この本もそういう谷垣さんのクレバーさと性格の素直さがあふれています。そのうえちょっとした毒(笑)もまったく嫌味がない、お人柄ですかねうらやましい限り。

特に感激した部分は、あの成龍大哥と『新宿インシデント』で一緒に仕事をしたくだり。最後の最後、打ち上げの席で「香港に来たばかりのころはバカだったけど、いまはよくやってる」という大哥からの言葉を読んで、まるで我事の様にジーンとしてしまいましたよ。

ほかにも制作の裏話や現場での用語説明集、香港で有名な動作監督のリストなど、本当に内容が盛りだくさん(そういえば、燃えよ!スタントマンを読んでトン・ワイっていい人なんだなと思っていたら、今回彼のパートで「絶対にスタントマンには金を払わせない男気の人」とあって、やっぱりいい人☆と個人的にちょっと嬉しかった)。
勉強になります、と、そんなような感想を送ったら「何の勉強?」とあきれてました。い、いや、それは私自身にもよくわからない・・・(汗)しいて言えば本編を観ながらフムフムとひとり悦に入るくらいでしょうか。すると谷垣さん「僕の本はそういう人のお供になって欲しいです」
間違いなくそうなってますよ、谷垣さん!

どころか、仕事に対する彼の姿勢にたくさんの刺激を戴きました。なんという素晴らしいコミュニケーション力、すんごいお人やなぁ。勉強と言えば人生の勉強にも本当はね、この本はかなりなりますよ。

『アクション映画 バカ一代』これはアクション映画好きには当然マスト、そしてすべての映画ファンはもちろん、どころか映画にそれほど興味がない人が読んだとしても1人の日本人青年の大いなる青春記として、また激動の時代を生き抜くひとつの指針としてもすごく参考になると思います。もうねデラお薦め!まだの人は今すぐ書店かネットショップへGOOOOOOO!

プロジェクトD(1979年・香港 トン・ワイ主演)
蔵出しその3(最後は地味にトン・ワイ祭り)

 

カテゴリー: film, 功夫映画, 甄子丹 | タグ: , , , | 4件のコメント

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(2012年・米)

制作、監督:アン・リー
原作:ヤン・マーテル
脚本:デヴィッド・マギー
撮影監督:クラウディオ・ミランダ
音楽:マイケル・ダナ

出演:
スラージ・シャルマ
イルファン・カーン
タブー
ジェラール・ドパルデュー
王柏杰(ワン・ボージエ)

よくこの映画は○○なので子供と観に行けない、子供に観せられない、という言葉を聞きます。子供の事をすごく考えてる親御さんだなぁと心から感心しその愛情の有りようにちょっと驚いてもしまいます。

亡くなったうちの父親は子供と一緒でも自分の観たい映画しか観ませんでした。なんにつけ父の辞書には「子供用」という文字はまったく存在しなかったとしか言いようがありません。

私が初めて観た映画は幼稚園の時、市川昆のドキュメンタリー『東京オリンピック』のリバイバル上映。その次がイギリス映画『脱走山脈』。第二次世界大戦もナチスもなんのことやらサッパリ理解不能どころか、字幕すら読めないという年齢です。
そういえば『ダーティ・ハリー』1、2の2本立も彼と一緒だったことをよく覚えています。さすがにこれはもう小学生でした。今も昔も、小学4年生の女子に映画館でダーティ・ハリーを見せる親御さんって、そう多くはないはないかもしれません(女性の全裸遺体の陰毛部分にボカシというか傷が入っていたのもそこで初めて見た)。でも、そういう家庭で育っていれば不思議でもなんでもなく、そんなものかと子供としては受け止めるわけですね。
そして言葉も意味も理解できなかった映画でも、印象だけは鮮烈に心に残り、その後大人になって見直した時にはすごいタイムカプセルを開けたような気分になるものです。

ライフ・オブ・パイを観ました。

初めて3Dってスゴイと心底思い知りました。これは劇場で観ないとアカン映画やと申し上げます。てっきりベンガル虎とうふあはと漂流するのかとぼんやり想像していたら、予想を覆すシビアな状況とラストの展開が非常に気に入りました。

「生きることは、手放すことだ」
無明は無垢か無知か。生きるということはなんと残酷なことか。

あの頃にこの映画があったら、間違いなく父は年端も行かぬ子供たちを連れて行ったでしょう。そして自分にもし子供がいたらやはり一緒に観ると思います。

あの凄まじい漂流シーンがどう文章になっているのか、原作を読んでみたい。さっきAmazonでポチったところです。

 

 

カテゴリー: film | 4件のコメント

大魔術師“X”のダブル・トリック(香港・2012年)

監督、脚本:爾冬陞(イー・トンシン)
撮影:北信康(『十三人の刺客』『新宿インシデント』のカメラマン)
動作設計:江道海(コン・タイホウ)董瑋(トン・ワイ)

出演:
梁朝偉(トニー・レオン)
周迅(ジョウ・シュン)
劉青雲(ラウチン・ワン)

昨年の旧正月にむこうで封切られた映画。
そういう意味ではお正月にふさわしい豪華で楽しい作品。
監督は爾冬陞(イー・トンシン)。香港の監督はジャンルにとらわれず様々なタイプの映画を撮ることで知られていますが、今作のトンシンさんはお正月らしい楽しくてキュートな作品を提供してくれました。
主演の梁朝偉(トニー・レオン)や周迅(ジョウ・シュン)は言うに及ばず、劉青雲(ラウチン・ワン)がもうね、なんというか造型もふくめ、ぐだぐだに可愛い。ラウチン好きは必見。
この芸達者な3人の主役がいて、しかも三者三様、みーんな素敵なキャラクターでとっても嬉しかった。で、主役だけじゃなく脇役にいたるまで衣装が豪華で美しい。

もうね、この衣装だけでも映画を見る甲斐があるってもんで。お色直しも皆バンバンするし。この時代を舞台にした映画は本当に楽しいなぁ。また着てる人達が美男美女なもんだからほんとうに目の保養になります。

に、してもトニーさんは色気がありますねぇ。ジョウ・シュンとの秘めた関係のやりとりも彼だからこその粋さが滲み出ていて見ごたえがありました。何をさせてもかっこいい、ほんと、ポーっと見惚れましたよ。そのうえ嬉しい彼のコスプレも満載。
インド人の格好をして登場するトニーを見てジェフ・ラウの『大英雄』を思い出した人も多いのでは。実は自分もそのひとり。
ちなみに『大英雄』とは、『楽園の瑕』を撮っていたウォン・カーワァイが例によって撮影を中断してしまい、集まっていた豪華キャスト(レオン・カーフェイ、トニー・レオン、レスリー・チャン、ブリジット・リン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、ジャッキー・チュン)が勿体ないと急遽その空いた時間を利用して制作総指揮を務めていたジェフ・ラウが監督としてやっつけで撮っちゃったというコメディ映画。93年の作品なんだなぁ。20年前か・・・そりゃこっちも老けますわ。

それを思い出してしまうほど久々観た気がするトニー・レオンの軽い映画。なんだかとっても新鮮です。そしてその彼の昔の恋人役のジョウ・シュンも本当に素敵。綺麗ってだけじゃないのよね、なんというか放つオーラが別格。たくさんの監督が彼女を使いたがるのもよく分る。

脇役も林雪(ラム・シュー)や閆妮(イェン・ニー)、方中信(アレックス・フォン)とかこれまた安定してるし。あと豪華なカメオ出演も見ごたえあり。徐克(ツイ・ハーク)、呉彦祖(ダニエル・ウー)、谷德昭(ビンセント・コク)、江道海(コン・タイホウ)、秦沛(チョン・プイ)、澤田謙也などなど、豪華で笑える。お、そういえば、トニーさんの友人というよりは、自分にとっては甄子丹の『精武門』で兄弟子役だった記憶が強い呉廷燁(ン・ティンイップ)さんのお姿も(彼の開脚はそりゃ見事なもんでした)。あ、それと香港武侠映画名物『ギロチン』もカメオ出演(?)してました。わはははは。

動作導演は江道海と董瑋(トン・ワイ)。コン・タイホウの出演は内トラ(スタッフの人をひょいと出演させること)だったのでしょう、どうせならトン・ワイも内トラで出演して欲しかったなぁ。

お話は1920年ごろの軍閥が跋扈する民国時代が舞台。トニーさんがマジシャンでコスプレいっぱいで、恋人のジュウ・シュンを巡ってちと頭の弱い将軍のラウチンと鞘当をする、で、そこに他の軍閥、その軍閥の転覆を図る革命軍やら清朝復活をもくろむ残党、そのうえ日本人組織などが入り乱れて最後はめでたし大団円。
とにかく、頭をカラにして楽しんだもん勝ちな香港映画の、セット衣装が豪華版ということで。
できたら広東語で観たかったけど(特にラウチン)おそらく、むこうの販売元の指定してきたバージョンが普通話だったのかなぁ。
そんなことも思いつつ、感想としては、お正月にこれ観られてよかったわ!

 

カテゴリー: film | 大魔術師“X”のダブル・トリック(香港・2012年) はコメントを受け付けていません

ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝(香港、中国・2011年)

監督、脚本、制作:徐克(ツイ・ハーク)
制作総指揮:于冬(ユ・ドン)
制作:施南生(ナンサン・シー)

出演:
李連杰(ジェット・リー)
周迅(ジョウ・シュン)
陳坤(チェン・クン)
李宇春(クリス・リー/リー・ユーチュン)
范曉萱(メイビス・ファン)
樊少皇(ルイス・ファン)
劉家輝(リュー・チャーフィー/ゴードン・リュー)

六本木に行こう行こうと思いつつ、気が付いたらいつの間にか1日の上映回数がめっきり減ってしまっていました。なので慌てて仕事の合間を縫って大阪のTOHOシネマズで観て参りましたよ。

ええと告白いたしますと・・・私、激しい『先端恐怖症』でして。
鉛筆や指が自分に向かってるのが怖いのは当然のこと、鮨屋のカウンター、本来なら一番いい席のはずの大将の真正面なんてのも、ひらひら大将がふるう柳場包丁に脂汗を流す羽目になり場所を代わってもらったことが少なからずあります。
どころか、あの大好きな甲子園球場ですら前方のファンが前後に振り続けるメガホンに目眩がするため自分では絶対にメガホンを持ちません(だって後ろの人が恐怖症だったら可哀そうじゃん!)。

そんな自分が果たして、中国初の3D、しかも「あの」ツイ・ハーク監督の武侠映画である『ドラゴンゲート』をまともに見ることが出来るのか?
実はすでに2Dでこの映画は観ていました。当然のようにあんなモノやこんなモノが自分に向かってくるのを承知のこの作品、3Dで観たほうが絶対に面白いに決まってるじゃんと知りつつ、実際に足を運ぶのには少々決心が必要でした。

で、結論から申しますと、行ってよかったー!
いくら3Dといえども、リアル柳場包丁のほうが1万倍怖い。と、書くとなんだか安っぽいポストプロダクションを想像するかもしれませんけど、そういうつもりではないので誤解のなきよう。

なにに感激したって、立体的な無影脚や飛び出す剣や手裏剣もよかったんだけど、それよりもうね、大好物の丈の長い衣装の裾のヒラヒラが信じられないほど素晴らしかった!
しかもキャストのほとんどがヒラヒラ系なうえ、リュー・チャーフィーに始まり、チェン・クン、ルイス・ファン等の朝廷側はそりゃもう色鮮やかで超豪華なお衣装の裾ヒーラヒラですよ。なんという眼福。
衣装に関して3Dにあれほどの効果があるとは知りませんでした、さすがツイ・ハーク。

↓ルイス・ファンの造型が最高にCOOLなこんなのとか

↓こういうものとか

↓こーんなのや

↓あーんなの

↓そしてこんな風なのや

↓こーゆーのが立体的にヒラヒラしちゃうんですぜ!たまらん!

以前ダンテ・ラムの『ブラッド・ウェポン』で本当にやりたかったスケールの銃撃や爆破などができた彼を親戚の人みたいに喜んだ覚えがありますが、同じように新しいオモチャを使い思う存分、武侠映画しかもあの『ドラゴン・イン』の後日譚として描くことができた監督には心からの拍手を送りたいと思います。すごいじゃん、ツイ・ハーク!やったじゃん、ツイ・ハーク!
今更誰もそこまでしないのじゃと思うほど、これでもかと飛び出すことを意識した絵作りは、まさに正しい3Dの使い方。非常にまっとうな3D映画です。

そのうえ、彼の描く女性がこれまたすこぶる趣味がいい。演じるのはジョウ・シュンにクリス・リーにみんな大好きグイ・ルンメイ。どのキャラもとっても魅力的な上、ジョウ・シュンとクリスは男装の麗人として登場して、もぅかっこいいんだから。心の中で何度も喝采を叫んでしまいましたよ、Brave!!!(セブンソードに欠けていたのは、ストーリーのまとめ方でも何でもなく、ひょっとすると男装の麗人成分だったのかも)
まさにツイ・ハークが牽引してきたともいえる90年代以降の武侠映画に慣れてない人には面喰うことはあるかもしれませんが、私にとっては裾ヒラヒラさせた美しい衣装の男達と、仁も情もわきまえた女剣客と男装の麗人がいて、全員が内功を駆使して空を舞い、どころかそこにジェット・リーまでいるんだから!一体なんの不足がございましょう。

観る機会のある方なら是非とも3Dでご覧いただきたい映画です。きゃー、今すぐ映画館へ!
その際は一緒にパンフレットもお買いになることをお勧めします。執筆陣はくれい響さんに浦川留さん、宇田川幸洋さんという安定したクオリティ。内容も情報量も申し分なし。

もしこの映画に難癖をひとつつけるとしたら、エンドクレジット、英語表記が横についていたせいか、やたらと文字が細かくて劇場なのに確認が出来ない部分が・・・。スクリーンであれならソフトでできるわきゃない。

武術指導は、元彬(ユン・ブン)、藍海瀚(ラン・ハイハン)、孫建魁(スン・ジエンクイ)。元彬さんは成龍と同じ「七福星」のお一人ですが、浦川さんのコラムによると藍海瀚は台湾の京劇学校、孫建魁は中国武術隊出身でジェット・リーの『少林寺』『少林寺2』でも共演し今作でも宿屋のオヤジで出演しているのが彼だそうです。

2012年度香港電影金像奨で最佳動作設計賞を受賞した時の元彬と藍海瀚
(追記:谷垣さんの本によると、SPLでサモハンの替身を担当したのが、左の藍海瀚さん)

受賞の喜びを功夫ポーズで表す元彬さん

そういえば、オープニングとエンディングに使われた『小刀会組曲』のクレジットがちゃんとありましたね、よかった。
↓以前、やっとあの曲名を捜しあてた時の喜びのエントリー
小刀会組曲 序曲

名曲は何度でもなので、あえて貼る『小刀会組曲 序曲』
Dagger Society Suite 小刀会組曲 – Prelude 序曲

おまけ:あの明和電機のOtamatoneで演奏した序曲を見つけました(笑)そうですよね、もってたら絶対にトライしたい1曲ですよね!
小刀会序曲(开头) – Otamatone

カテゴリー: film, 功夫映画 | 4件のコメント

蔵出し その7

・スカイフォール

近年の007で一番好き。この映画に行く前にアデルの主題曲スカイフォールを聴き倒したので大きなスクリーンでOPを観るのを非常に楽しみにしていたのです。
そしたら運悪く隣の席のオジサンがポップコーンをガサガサボリボリしまくって、とっても残念。
「オープニングの間だけ我慢してください、お願いします」と言おうかどうしようか迷っているうちにOPシーン終了。ああああああああ、集中できなかったよう。ぐすん。

にしても、ダニエル・クレイグはいい男だなぁ。世界中の人が言うように私も彼は超ド級にセクシーだと思います。ボンドのロートル感が許されるのもクレイグさんだからこそでしょうか。

50周年の節目に過去のシリーズに対するリスペクトがテンコ盛りで、すんごく好感を持ちました。そういえば、こんなに年齢のいったボンドガールも最初で最後かも、というジュディ・デンチの設定がよかったですね。その分、いつにも増して他のボンドガールの付け足し感が際立ってしまった風もあり。
あれやっちゃったら今後、どうするんでしょうねぇ、ボンドガール。そういえばミシェル・ヨーの時も同じように思ったけど、何事もなかったようにさらっといつもの仕様に戻ってたから、次回も忘れたように軌道修正するのでしょうか。

さてさて注目のアクションもスピード感あふれ美しい映像で見応えがありました。あの屋根の上をバイクで追いかけっこするシークエンスをアクション監督の谷垣健治さんが「やられたよなぁ~」とおっしゃってたのを思い出したりして。そういえば『捜査官X』では屋根を疾走するのは人でございました。
とりあえずもう1作クレイグさんは007の契約があるそうなので次回も期待します。ほんと彼セクシーだから!んま、要するに彼にお金払ってるようなもん。

・ブラッド・ウェポン

なんというかもうね、ダンテ・ラム監督がヨルダンで本物の銃器や戦車を使い喜び勇んで爆破や銃撃戦を撮りまくったかと思うと、それだけで観客の自分も満面の笑みで嬉しいです。なにしろ始まって5分もたたないうちにロケットランチャーで車吹っ飛ばしてましたからね(笑)。マレーシアでもモール内のカーチェイス(当然のことながらン・ホイトン担当)やヘリコプター3機の低空チェイスなど、派手なシーンいっぱい。
今回監督が堂々クレジットされていたアクションデザインもストーリーも落とし所も、必ず登場して悲惨な目に合うリウ・カイチーも含め、どこから切っても非常に「Theダンテ・ラム」な仕上がり。しかも予算は増え、ゲリラ撮影じゃなく心おきなくリアルに爆破しまくるバージョンアップ仕様でございます。さぞ監督は楽しかったことでしょう。

それにしても、この香港関係に対する見事なまでの身内感ってどこから湧いてくるんだろう。めくるめくようなアクションと爆破と銃撃、そしてことごとく痛めつけられる登場人物に、それだけで「よかったじゃん!ダンテ・ラム!やったじゃん、ダンテ・ラム!」と心から喝采を送ってしまう、まるで親戚のような気分です。そういう意味でも大満足な映画。

ところでロビーに、劇中登場した銃のモデルガンがスチールとともにうやうやしく展示されていたのには笑っちゃいました。自分にはSIGくらいしか馴染みはありませんが、せっかくなのでガン見しておきました(笑)。世の中の銃マニアはこの映画の存在を知っているのでしょうか。ガンマニアとしても有名なダンテ・ラム監督の事だから、多分同好の士にしか分らないニヤリなマウントとかしてたんだと想像するのですが。

そうそう最後に、冒頭のアンディ・オンが非常によろしかったと付け加えておきます。制服たまりませんね。後半もう少し彼とのアクションが際立つとよかったのですけど。その期待はドニー・イェンの『特殊身分』に託すことにします。(てか早く公開しやがれ!)

・最愛

チャン・ツィイーの新作を観るのは、実は結構久しぶりです。
相手役がアーロン・クォックで香港映画祭りと銘打たれて公開された1本ですが、なにもかもこれは紛うこと無き中国大陸映画でございました。
中国映画をそんなに数観ているわけではないので断言はできませんが、恐ろしいまでに自分のことしか考えない利己的な人達が登場すると「ああ、中国映画だなぁ」と感じたりすることがあります。かと思うと、一方で淡々とした日常を美しい映像で完璧なファンタジーとして描いてしまう一面も中国映画にはあり・・・。
そういう観点では、この作品には「自分のことしか考えない」人物が結構登場します。それでいて自分はそういうのが嫌いじゃない。
題材が90年代の中国の農村で実際あった「政府主導の売血によるエイズの蔓延」という話だからでしょうか、いろんな立場の人間の利己的な感情が余計に心に訴えかけてくる。しかもここではHIVに感染した患者たちも「清廉な人達」というわけではありません。なかでも主役2人がくっつく経緯など実にいい加減な成り行きで、それがまた妙に生々しい。人間ってそういうもんだよな、と。

にしても、大陸の俳優は演技がうまい、うますぎる。
校長先生なんか冒頭、長男になり代わり村人に謝るシーンだけであやうく泣きそうになってしまいましたよ。またその長男を演じるプー・ツンシン(濮存昕)も実に嫌な男でね、調べたらアンディ・ラウの『三国志』の諸葛孔明役の人。ぜんっぜん顔からして違うし!

そんな芸達者な役者の中で主演2人は頑張ってます。が、あんなド田舎にあれほどの美男美女がいるのかよ!と突っ込みたくもなる・・・。けど考えれば、その美しさがリアリスティックに振れ過ぎず、『最愛』というファンタジーに仕上がった重要なキモでしょう。

なのにそのファンタジーをお気に召さない人もいるようで。実は私の知り合いの男性にツィイーファンがいて、たまたまこの映画の話になったらなんだか随分ガッカリしておりました。「え~よかったじゃない~彼女」と言うと、近年のスキャンダルやなんかもあって少々気持ちが萎えてしまったとか。
ええ、いい加減『初恋のきた道』とか『グリーンデスティニー』のイメージを期待されるのもご本人はさぞウンザリしてることでしょうよ。あれから何年たったと思ってんだい、喋りながら秘かにそんな意地悪な気持ちにもなってしまったりして(笑)。

とにかく、最後のツィイーとアーロンがアメを食べながら婚姻証明書を読み上げる場面だけでも自分には観る価値が充分ありました。ここは2人の演技力が(特にツィイー)炸裂しております。このキャラ、ストーリーにして美しいスター俳優を配したことがファンタジーに着地できた一番の要因でしょう。
これがリアリティあふれる田舎の農民風のよく知らない大陸俳優だったら・・・多分ここまでヒットしなかったでしょうね、でもそっちもちょっと観たかったような。しかしそうなるとストーリーも変わるし、もっとエイズに比重が片寄ってしまい恐らく検閲通らないかも。

そういえば、劇中機関車の運転士役で姜文を発見。一瞬だけでしたがあの声ですぐにわかった。それと拡声器を手から離さなかった男、誰かと思ったら中国大陸で最高の興収を記録した『人再囧途之泰囧』のワン・バオチアン(王寶強)。彼は今もっとも輝いている大陸スターのひとりですが、現在撮影中のドニーさんの新作3D『冰封侠』に出演。そこでリアル少林寺仕込みのアクションを披露してくれるらしいです、楽しみ!

・レ・ミゼラブル

東宝の舞台は初演時から観ています。すべて、とは言わないまでも時々思い出したように公演があると観に行くし、日本人キャストのCDや記念コンサートのCDなんかも持っています。世の中には自分よかはるかにコアなレミゼフリークはたくさんいることでしょう。そんな舞台を愛している人はもちろん、観たことがない人もふくめ沢山の人が楽しみにしてただろう映画。こういう高揚感は自分としてはとっても嬉しい。
年末の某日、最終回に行ったんですが、バルト9は長蛇の列で自分が最後の1席でした。ヒットしてるんだなぁ。

とにかくもとの楽曲がいいから、それだけでものすごくアドバンテージは高い。すでにミュージカルの舞台に立ってるヒュー・ジャックマンはもとより、不安だったアン・ハサウェイもラッセル・クロウも非常に好演と評判が。しかも歌は後からのレコーディングではなくて同時録音なのだとか。
1800円は、アン・ハサウェイの歌うツ黴€I Dreamed a Dream(夢破れて)のために払いましたよ、ええ。それほど彼女のシーンは素晴らしかった!特に、舞台と違い、髪も売り娼婦として最初の客を取った後に歌われたのが効いた。(舞台ではたしか工場を解雇された後に歌ったはず)あのシチュエーションとしつこいくらいの顔のドアップで「夢はかなわない」なんて歌われた日には号泣です。
彼女に限らず、歌ってる俳優はほとんど超クローズアップで、中には「いい加減にカット割れ!」と思った人もいるでしょうね。自分は舞台で「ああ、叶うならばこの顔を間近で観たい」と思っていたクチなんで、むしろ嬉しかったですが。

と、ここまでは誉め倒しておりますが、若干気になった部分も。ええと、監督、これ映画ですよね?舞台をそのまま撮ったフイルムじゃないですよね?
そう、だいぶ映画手法を(わざと)ないがしろにしていました。自分は舞台に愛着があるので勢いで観ることができましたが、慣れてない人には果たしてどう映るんでしょう。
あと、ラストのDo you hear the people sing?はジャン・バルジャンとファンティーヌも同じ画面に入れて欲しかったな。
面白いもので、あんなに感激したハサウェイのI Dreamed a Dreamを帰宅後につべで聴いてみたら、そこだけ抜き出して歌のみ聴いてもあの感激には及ばず。やはり映画の中でこそ成り立つんだなぁと妙なところで感心してしまいました。いや、それでいいと思います。それでこその映画用キャストだし、だからといって、あの歌で涙を流した説得力は微塵も揺らぎませんよ。

ところで、このレミゼがゴールデングローブで作品賞を獲ったというニュースが。ううううむ、いや、泣きまくったし素晴らしい映画だけど、作品賞には正直驚いた。と、なると来月行われる2013年度のアカデミー賞の最有力候補・・・なんでしょうか?

・狼たちのノクターン<夜想曲>

年末年始は、とにかくこの香港映画祭りとやらで忙しかった(笑)。
なにも前情報を知らずに観たら、タイトルが出て『大追捕』で驚きました。サイモン・ヤムとニック・チョンという影帝共演。監督は我々のド肝を抜いたあの『殺人犯』(アーロン・クォック主演)のロイ・チョウ(周顧揚)。

のっけからスローモーションの痛そうなアクションが。場所と設定がよくわかんない!と面喰っていたら、ある意味それがミソだったりして。ちらりとロー・ワイコンの姿も。
動作指導はジャック・ウォン(黄偉亮)。最近観たものだと『アクシデント 意外』とか『盗聴犯 死のインサイダー取引』、『やがて哀しき復讐者』『開心魔法』でしょうか、あとどこにアクションあったっけ?と思ったけれど『最強喜事』や『八星抱喜』にも名前が。
サイモン・ヤムはさすがの安定感刑事役、と思っていたら対するニック・チョンもまたまたワケあり容疑者(笑)。おまけにこの人、可愛い女の子のストーカーまでしちゃう。こわいよ、彼女を見つめながら泣くその顔がとにかく怖いよニック・チョン!
ストーカーされちゃうのは人気モデルのジャニス・マン(文詠珊)。そういやこの子も『やがて哀しき復讐者』に出てました。その時の彼女はヤク中不良娘だったけど、今度は一転清楚なお嬢様役。彼女がまた綺麗に撮れてるのなんのって。

ところでロイ・チョウさんはドンデン返しがお好きなようですね。これもまた「おお」と思わせる流れに。演出面やカメラワークもなかなか見どころたっぷり。さっきも、どうして香港モノになるといきなり身内気分になるのか?と申しましたが、しかしこれに関しては監督のロイ・チョウがいまひとつ身近でないためか、残念ながらそのえこひいきは存分に発揮されず、という乱暴な感想。すみません。
終盤のサイモン・ヤムの男泣きでぐっときただけに、エンドロールのところは彼と女刑事とのやり取りでなく娘とのちょっとした心温まるエピソードだったら相当嬉しかったのになぁと。

ニック・チョン先生の演技はさすがの一言。この演技で台湾金馬奨主演男優賞をまたかっさらって行きました。そんななか、私の心を掴んで離さなかったのは、父親役のマイケル・ウォン。セレブでありながら非常にエキセントリックなこのキャラは相変わらずイケてました。ほんとアクの強い役がとことん似合うわ~。

そういえば、今絶賛公開中の
・燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激突

この映画のパンフにつたないながら原稿書きました。突然電話がかかって来て「締め切りあさってだし、発売できるかどうかもまだ分んないんだけど、やってくれない?」と言われました(笑)。
無事にパンフレットになってよかったです。すでに香港版は持っておりましたが、素晴らしい作品なのであらためて日本語字幕で公開されてとっても嬉しいっす。
おまけに初日からお客さん一杯のようで・・・。ますます嬉しい!
功夫映画を観たことなくても、出ている俳優を知らなくても絶対におもしろいです、香港金像奨の作品賞は伊達じゃありません、是非、ぜーひーご覧ください!

初見の感想はこちら。
打擂台 GALLANTS(2010年・香港)

 

 

カテゴリー: film | 2件のコメント

画皮 あやかしの恋 のお詫び

あけましておめでとうございます。
と、10日以上も経ってからなんですけど・・・。

ところで、ものすごくヘコんでます。と、いうのも以前ここで大喜びした広東語トラックつき『画皮 あやかしの恋』。なんとその広東語、実はドニー・イェンの生声じゃありませんでした。アイヤ———!

98年『COOL』以降、広東語版は(『建国大業』に広東語バージョンが存在するのかどうかは調べてない)ほぼ本人の声だったのでこれもてっきりそうだと思こんでいたら(いや、ほんと)、広東語では当然あったのですが、なんと驚愕の別人吹き替えでした・・・・。

うっわ、ひょっとして私の記事読んで予約し直した人って、ひえぇぇ、何人かいらっしゃるのでしょうか。もしそうなら、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!

私もてっきりそうだと早合点しました。ショックです。考えたら発売元からは「広東語バージョン」としか聞かなかったんですよね、ううううう。

・・・・・・・海より深く反省します。

 

カテゴリー: 甄子丹 | タグ: , | 3件のコメント

ビースト・ストーカー/証人 ほか香港ノワール映画続々発売

12月5日にキングレコードから発売されたダンテ・ラム監督の『ビースト・ストーカー/証人』のセル盤DVD、BDのリーフレットにコラムを書きました。

すっかり遅くなりましたがお知らせ。
タイトルは「無情の果てに広がる青空」。

そして来年2013年2月13日には、
『コンシェンス/裏切りの炎』

『強奪のトライアングル』

『やがて哀しき復讐者』も発売。

この世知辛い世できちんとブルーレイも発売してくれますよ!考えればすごいことです、キングさんえらい。
コンシェンスは劇場用パンフレットに寄稿いたしました。

キングレコードの担当の方は、頑張って香港映画を一生懸命日本に入れてくれる大事な人なので、心から応援したいです。

余裕があれば是非お買い求めください、で、なくてもレンタル店で迷ったらこの作品のなかからどれかを!バレンタイン前後は、当然香港ノワールで決めるっきゃない!

 

カテゴリー: film | 2件のコメント