蔵出し その7

・スカイフォール

近年の007で一番好き。この映画に行く前にアデルの主題曲スカイフォールを聴き倒したので大きなスクリーンでOPを観るのを非常に楽しみにしていたのです。
そしたら運悪く隣の席のオジサンがポップコーンをガサガサボリボリしまくって、とっても残念。
「オープニングの間だけ我慢してください、お願いします」と言おうかどうしようか迷っているうちにOPシーン終了。ああああああああ、集中できなかったよう。ぐすん。

にしても、ダニエル・クレイグはいい男だなぁ。世界中の人が言うように私も彼は超ド級にセクシーだと思います。ボンドのロートル感が許されるのもクレイグさんだからこそでしょうか。

50周年の節目に過去のシリーズに対するリスペクトがテンコ盛りで、すんごく好感を持ちました。そういえば、こんなに年齢のいったボンドガールも最初で最後かも、というジュディ・デンチの設定がよかったですね。その分、いつにも増して他のボンドガールの付け足し感が際立ってしまった風もあり。
あれやっちゃったら今後、どうするんでしょうねぇ、ボンドガール。そういえばミシェル・ヨーの時も同じように思ったけど、何事もなかったようにさらっといつもの仕様に戻ってたから、次回も忘れたように軌道修正するのでしょうか。

さてさて注目のアクションもスピード感あふれ美しい映像で見応えがありました。あの屋根の上をバイクで追いかけっこするシークエンスをアクション監督の谷垣健治さんが「やられたよなぁ~」とおっしゃってたのを思い出したりして。そういえば『捜査官X』では屋根を疾走するのは人でございました。
とりあえずもう1作クレイグさんは007の契約があるそうなので次回も期待します。ほんと彼セクシーだから!んま、要するに彼にお金払ってるようなもん。

・ブラッド・ウェポン

なんというかもうね、ダンテ・ラム監督がヨルダンで本物の銃器や戦車を使い喜び勇んで爆破や銃撃戦を撮りまくったかと思うと、それだけで観客の自分も満面の笑みで嬉しいです。なにしろ始まって5分もたたないうちにロケットランチャーで車吹っ飛ばしてましたからね(笑)。マレーシアでもモール内のカーチェイス(当然のことながらン・ホイトン担当)やヘリコプター3機の低空チェイスなど、派手なシーンいっぱい。
今回監督が堂々クレジットされていたアクションデザインもストーリーも落とし所も、必ず登場して悲惨な目に合うリウ・カイチーも含め、どこから切っても非常に「Theダンテ・ラム」な仕上がり。しかも予算は増え、ゲリラ撮影じゃなく心おきなくリアルに爆破しまくるバージョンアップ仕様でございます。さぞ監督は楽しかったことでしょう。

それにしても、この香港関係に対する見事なまでの身内感ってどこから湧いてくるんだろう。めくるめくようなアクションと爆破と銃撃、そしてことごとく痛めつけられる登場人物に、それだけで「よかったじゃん!ダンテ・ラム!やったじゃん、ダンテ・ラム!」と心から喝采を送ってしまう、まるで親戚のような気分です。そういう意味でも大満足な映画。

ところでロビーに、劇中登場した銃のモデルガンがスチールとともにうやうやしく展示されていたのには笑っちゃいました。自分にはSIGくらいしか馴染みはありませんが、せっかくなのでガン見しておきました(笑)。世の中の銃マニアはこの映画の存在を知っているのでしょうか。ガンマニアとしても有名なダンテ・ラム監督の事だから、多分同好の士にしか分らないニヤリなマウントとかしてたんだと想像するのですが。

そうそう最後に、冒頭のアンディ・オンが非常によろしかったと付け加えておきます。制服たまりませんね。後半もう少し彼とのアクションが際立つとよかったのですけど。その期待はドニー・イェンの『特殊身分』に託すことにします。(てか早く公開しやがれ!)

・最愛

チャン・ツィイーの新作を観るのは、実は結構久しぶりです。
相手役がアーロン・クォックで香港映画祭りと銘打たれて公開された1本ですが、なにもかもこれは紛うこと無き中国大陸映画でございました。
中国映画をそんなに数観ているわけではないので断言はできませんが、恐ろしいまでに自分のことしか考えない利己的な人達が登場すると「ああ、中国映画だなぁ」と感じたりすることがあります。かと思うと、一方で淡々とした日常を美しい映像で完璧なファンタジーとして描いてしまう一面も中国映画にはあり・・・。
そういう観点では、この作品には「自分のことしか考えない」人物が結構登場します。それでいて自分はそういうのが嫌いじゃない。
題材が90年代の中国の農村で実際あった「政府主導の売血によるエイズの蔓延」という話だからでしょうか、いろんな立場の人間の利己的な感情が余計に心に訴えかけてくる。しかもここではHIVに感染した患者たちも「清廉な人達」というわけではありません。なかでも主役2人がくっつく経緯など実にいい加減な成り行きで、それがまた妙に生々しい。人間ってそういうもんだよな、と。

にしても、大陸の俳優は演技がうまい、うますぎる。
校長先生なんか冒頭、長男になり代わり村人に謝るシーンだけであやうく泣きそうになってしまいましたよ。またその長男を演じるプー・ツンシン(濮存昕)も実に嫌な男でね、調べたらアンディ・ラウの『三国志』の諸葛孔明役の人。ぜんっぜん顔からして違うし!

そんな芸達者な役者の中で主演2人は頑張ってます。が、あんなド田舎にあれほどの美男美女がいるのかよ!と突っ込みたくもなる・・・。けど考えれば、その美しさがリアリスティックに振れ過ぎず、『最愛』というファンタジーに仕上がった重要なキモでしょう。

なのにそのファンタジーをお気に召さない人もいるようで。実は私の知り合いの男性にツィイーファンがいて、たまたまこの映画の話になったらなんだか随分ガッカリしておりました。「え~よかったじゃない~彼女」と言うと、近年のスキャンダルやなんかもあって少々気持ちが萎えてしまったとか。
ええ、いい加減『初恋のきた道』とか『グリーンデスティニー』のイメージを期待されるのもご本人はさぞウンザリしてることでしょうよ。あれから何年たったと思ってんだい、喋りながら秘かにそんな意地悪な気持ちにもなってしまったりして(笑)。

とにかく、最後のツィイーとアーロンがアメを食べながら婚姻証明書を読み上げる場面だけでも自分には観る価値が充分ありました。ここは2人の演技力が(特にツィイー)炸裂しております。このキャラ、ストーリーにして美しいスター俳優を配したことがファンタジーに着地できた一番の要因でしょう。
これがリアリティあふれる田舎の農民風のよく知らない大陸俳優だったら・・・多分ここまでヒットしなかったでしょうね、でもそっちもちょっと観たかったような。しかしそうなるとストーリーも変わるし、もっとエイズに比重が片寄ってしまい恐らく検閲通らないかも。

そういえば、劇中機関車の運転士役で姜文を発見。一瞬だけでしたがあの声ですぐにわかった。それと拡声器を手から離さなかった男、誰かと思ったら中国大陸で最高の興収を記録した『人再囧途之泰囧』のワン・バオチアン(王寶強)。彼は今もっとも輝いている大陸スターのひとりですが、現在撮影中のドニーさんの新作3D『冰封侠』に出演。そこでリアル少林寺仕込みのアクションを披露してくれるらしいです、楽しみ!

・レ・ミゼラブル

東宝の舞台は初演時から観ています。すべて、とは言わないまでも時々思い出したように公演があると観に行くし、日本人キャストのCDや記念コンサートのCDなんかも持っています。世の中には自分よかはるかにコアなレミゼフリークはたくさんいることでしょう。そんな舞台を愛している人はもちろん、観たことがない人もふくめ沢山の人が楽しみにしてただろう映画。こういう高揚感は自分としてはとっても嬉しい。
年末の某日、最終回に行ったんですが、バルト9は長蛇の列で自分が最後の1席でした。ヒットしてるんだなぁ。

とにかくもとの楽曲がいいから、それだけでものすごくアドバンテージは高い。すでにミュージカルの舞台に立ってるヒュー・ジャックマンはもとより、不安だったアン・ハサウェイもラッセル・クロウも非常に好演と評判が。しかも歌は後からのレコーディングではなくて同時録音なのだとか。
1800円は、アン・ハサウェイの歌うツ黴€I Dreamed a Dream(夢破れて)のために払いましたよ、ええ。それほど彼女のシーンは素晴らしかった!特に、舞台と違い、髪も売り娼婦として最初の客を取った後に歌われたのが効いた。(舞台ではたしか工場を解雇された後に歌ったはず)あのシチュエーションとしつこいくらいの顔のドアップで「夢はかなわない」なんて歌われた日には号泣です。
彼女に限らず、歌ってる俳優はほとんど超クローズアップで、中には「いい加減にカット割れ!」と思った人もいるでしょうね。自分は舞台で「ああ、叶うならばこの顔を間近で観たい」と思っていたクチなんで、むしろ嬉しかったですが。

と、ここまでは誉め倒しておりますが、若干気になった部分も。ええと、監督、これ映画ですよね?舞台をそのまま撮ったフイルムじゃないですよね?
そう、だいぶ映画手法を(わざと)ないがしろにしていました。自分は舞台に愛着があるので勢いで観ることができましたが、慣れてない人には果たしてどう映るんでしょう。
あと、ラストのDo you hear the people sing?はジャン・バルジャンとファンティーヌも同じ画面に入れて欲しかったな。
面白いもので、あんなに感激したハサウェイのI Dreamed a Dreamを帰宅後につべで聴いてみたら、そこだけ抜き出して歌のみ聴いてもあの感激には及ばず。やはり映画の中でこそ成り立つんだなぁと妙なところで感心してしまいました。いや、それでいいと思います。それでこその映画用キャストだし、だからといって、あの歌で涙を流した説得力は微塵も揺らぎませんよ。

ところで、このレミゼがゴールデングローブで作品賞を獲ったというニュースが。ううううむ、いや、泣きまくったし素晴らしい映画だけど、作品賞には正直驚いた。と、なると来月行われる2013年度のアカデミー賞の最有力候補・・・なんでしょうか?

・狼たちのノクターン<夜想曲>

年末年始は、とにかくこの香港映画祭りとやらで忙しかった(笑)。
なにも前情報を知らずに観たら、タイトルが出て『大追捕』で驚きました。サイモン・ヤムとニック・チョンという影帝共演。監督は我々のド肝を抜いたあの『殺人犯』(アーロン・クォック主演)のロイ・チョウ(周顧揚)。

のっけからスローモーションの痛そうなアクションが。場所と設定がよくわかんない!と面喰っていたら、ある意味それがミソだったりして。ちらりとロー・ワイコンの姿も。
動作指導はジャック・ウォン(黄偉亮)。最近観たものだと『アクシデント 意外』とか『盗聴犯 死のインサイダー取引』、『やがて哀しき復讐者』『開心魔法』でしょうか、あとどこにアクションあったっけ?と思ったけれど『最強喜事』や『八星抱喜』にも名前が。
サイモン・ヤムはさすがの安定感刑事役、と思っていたら対するニック・チョンもまたまたワケあり容疑者(笑)。おまけにこの人、可愛い女の子のストーカーまでしちゃう。こわいよ、彼女を見つめながら泣くその顔がとにかく怖いよニック・チョン!
ストーカーされちゃうのは人気モデルのジャニス・マン(文詠珊)。そういやこの子も『やがて哀しき復讐者』に出てました。その時の彼女はヤク中不良娘だったけど、今度は一転清楚なお嬢様役。彼女がまた綺麗に撮れてるのなんのって。

ところでロイ・チョウさんはドンデン返しがお好きなようですね。これもまた「おお」と思わせる流れに。演出面やカメラワークもなかなか見どころたっぷり。さっきも、どうして香港モノになるといきなり身内気分になるのか?と申しましたが、しかしこれに関しては監督のロイ・チョウがいまひとつ身近でないためか、残念ながらそのえこひいきは存分に発揮されず、という乱暴な感想。すみません。
終盤のサイモン・ヤムの男泣きでぐっときただけに、エンドロールのところは彼と女刑事とのやり取りでなく娘とのちょっとした心温まるエピソードだったら相当嬉しかったのになぁと。

ニック・チョン先生の演技はさすがの一言。この演技で台湾金馬奨主演男優賞をまたかっさらって行きました。そんななか、私の心を掴んで離さなかったのは、父親役のマイケル・ウォン。セレブでありながら非常にエキセントリックなこのキャラは相変わらずイケてました。ほんとアクの強い役がとことん似合うわ~。

そういえば、今絶賛公開中の
・燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激突

この映画のパンフにつたないながら原稿書きました。突然電話がかかって来て「締め切りあさってだし、発売できるかどうかもまだ分んないんだけど、やってくれない?」と言われました(笑)。
無事にパンフレットになってよかったです。すでに香港版は持っておりましたが、素晴らしい作品なのであらためて日本語字幕で公開されてとっても嬉しいっす。
おまけに初日からお客さん一杯のようで・・・。ますます嬉しい!
功夫映画を観たことなくても、出ている俳優を知らなくても絶対におもしろいです、香港金像奨の作品賞は伊達じゃありません、是非、ぜーひーご覧ください!

初見の感想はこちら。
打擂台 GALLANTS(2010年・香港)

 

 

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蔵出し その7 への2件のフィードバック

  1. SPUTNIK のコメント:

    ご無沙汰している間に新年になりました。

    そして年明け早々、香港映画怒濤のがぶり寄りで額に汗。
    「ブラッド・ウェポン」「ドラゴン・ゲート」と続いて
    本日やっと「燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激突」鑑賞してきました。
    うえー、パンフレット買えば良かった!!
    オープニング・クレジットだけで感動して泣きそうになる自分に喝入れつつ
    最後まで楽しませてもらいました。
    できれば、もうちょっと上映回数を増やして欲しい・・・・。

    「レ・ミゼ」、ラッセルのジャベールが意外にハマっていて好印象でした。

    大元の80年のフランスオリジナルバージョンがまた良いので
    ケイコさんにも聞いていただきたいデス。
    特にガヴローシュの銃弾に倒れるシーンの歌は、感動的なので是非是非。

    • ケイコママ のコメント:

      SPUTNIKさま
      おお、ご無沙汰です
      じじぃドラゴンご覧になりましたか!おもしろかったですよね~
      上映一日一回なんですね・・・自分もまだ劇場に行ってないので早く行かないと(パンフ書いたけど試写もなかったし)
      事情は配給によって様々のようですが、もともとDVDスルーのつもりでちょっとだけお披露目するくらいの気持ちで公開する作品も多いと聞きました。じじぃの場合はパンフが出来ただけまだいい方かもしれません。FREEMANの筒井さんの努力の賜物ですね。

      レミゼの仏バージョンは見たことも聴いたこともないです、いいこと教えてもらいました。今度探してみます。
      実は映画観てから10周年記念コンサート(Colm Wilkinsonがバルジャン) のCDを引っ張り出してまた聴きまくっていて、鼻歌でも歌ってしまうくらいの今日この頃(笑)

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