蕾のままで

雪景色から一転、よく晴れ渡った今日は母親とふたりで西武線に乗って所沢にある霊園に飯干家の墓参りに。
今年は父親の十七回忌。先月身内だけで自宅にご住職をお招きし読経していただきました。
またこの節目は父ゆかりの様々な方々と久しぶりにお目にかかる機会ともなり、皆さんと父の事を話すにつけ、あらためて様々なことが胸をよぎります。

さて、霊園への道中、母に今やってることや終わる仕事、また春から新たに始まる仕事などを報告。
母の友人のお孫さんがどれほど優秀かという噂をひとしきりした最後に、彼女が「それにくらべて、我が家の子供達はみんな心配事が絶えへんわねぇ」と言うので「私達兄弟が何の問題もなく安心してすぐ死んじゃっても困るんで、心配事があったほうが、いつまでも元気で長生きできるかもよ!」と言っておきました。

で、さっき母と別れて自宅に戻り、さて原稿でも書くか、と思ってその前に(いつもこんな調子)ネットでつらつら色々ニュースを見ていたら、なんと「功夫・詠春」(2010年、日本未公開)という功夫映画の主演を務めた女優、白静(バイ・ジン)が亡くなった、というニュースが。

えええ、と驚いていたら、もっと驚くことに彼女は、夫によって彼女の母親とともに自宅で刺殺され、その後その夫も自殺してしまったというではありませんか。
このニュースを知るまで、彼女が結婚していた事も知りませんでした。
夫の職業は弁護士。仙居県政治協商会議の常務委員、台州市の人民代表大会代表も務めていたという超エリートで資産家の生まれ。この2人の結婚には、当然周家は大反対。

彼女が友人に生前漏らしたところによると、夫は束縛が激しく、飛行機に乗る直前、降りた後など常に自分の居場所を電話で報告しなくてはいけない状態だったそうです。
記事によると、今年1月に亡くなった夫の母親のことをめぐり最近は口論が絶えなかったとか。

ただこれは自分が読んだ一つの記事なので、これからもっと色々な事が取り沙汰されたり、真偽のほどはともかくほかのエピソードが出てくるのかとは想像します。
こういうことはどの国でもそうですが、報道されてることのどこまでが本当やら。

私は彼女をその映画でしか観ていませんが、とにかく明るく溌剌とした女の子という印象が強烈で、撮影前に葉問師父のご子息である葉準さんのもとで半年訓練を受けた成果か、見事な木人椿稽古姿を見せていたことを思い出します。

作品も女性が主人公のアクション映画では近年稀にみる秀逸のデキ。彼女がこれで弾みをつけて本格的な武打女星になってくれることを大変期待していました。

その後は、ストレートプレイの電視劇などに出演したのち、昨年2011年に「自古英雄出少年」というドラマで「功夫・詠春」でも動作監督を務めた江道海(コン・タオホイ)から再び指導を受け、久々に功夫を披露。彼女がまた銀幕でアクションを見せてくれることを心待ちにしていたのです。
まだ28歳。あまりにも早すぎる衝撃的な幕切れです。

大輪の花を咲かせることができたかもしれない白静が、蕾のまま、短いその生涯を閉じたことを心から悼みます。

彼女の映画での遺作となってしまった「功夫・詠春」レビュー

 

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