レフトから眺めた42番

9月23日、鳴尾浜球場、対オリックス戦。
今年でタイガースを去る下柳投手の縦縞ユニフォーム姿を観ようと、1300人のファンが集まったそうです。

2回2安打無失点。残念ながら現地に行くことはできませんでしたが、丁寧にコーナーワークをつく投球は健在だったと新聞で読みました。

私は東京で暮らしているので、観戦は関東球場のほうが圧倒的に多い。
席種も様々で、内野外野バックネット裏、たまにはユニフォームを脱いで神宮の1塁側でまったり観戦、なんてこともあります。

東京ドームのレフト席はシート数が少ないぶん、ひょっとすると甲子園のライト側より「密度が濃い」場所かもしれません。いい意味での必死感が隅々までみなぎってる。
ここで壮絶な打ち合いなどというゲームに遭遇した日には翌朝声がガラガラなんてことも。

そんな東京ドームのレフト席から眺めた選手で、私が一番気に入っていたのが下柳投手でした。

左投手がマウンドに立つと、ちょうど背番号をレフトスタンドに向ける格好になります。
面白いもので、同じ左投手でもマウンドに立った時のニュートラルな姿勢は人によってそれぞれまったく違う。

自分にとって、その立ち姿が一番格好良よく思えるのが下さんなのです。

腰を折ったりせず、かといってピシッと背筋を伸ばすわけでもなく、軽く腕を下ろし(この肘の角度がまた絶妙で形が毎回ほぼ一緒)キャッチャーのサインを見やる後ろ姿は「居合抜きのタイミングを計る時代劇の素浪人」を連想させました。

しかしそれは平静時の下柳投手。

調子が悪い日や打たれ始めると、過去彼の球を受け続けた矢野さんがよく言ったように「パドックをぐるぐる回る馬みたいに」マウンドの周りをウロウロ。
あんなに離れたレフトスタンドからからでも、まるで間近で投げているような感覚を与え、その背中はタイガースファンである私を一喜一憂させる特徴がありました。

こればかりはテレビ中継でも映らない、スポーツ新聞の写真にもならない、いわばあの場所から彼の投球を見た観客だけの記憶。

もう一度あの42番の背中をドームのレフトで観たかった。

いや、今度は別のユニフォームの背中を見られることを期待しましょう。あなたの野球人生がこの先も続くことを願っています。

タイガースでのたくさんの勝利と2度の優勝を、心からありがとう。

下柳剛オフィシャルサイト

 

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