李小龍 マイブラザー(2010年・香港)

新宿武蔵野館に行ってきたよ!日本語字幕だ、広東語だ。
いやぁ、公開されて良かった良かった。

しかし、これ香港版から編集してある?なんかシーンが少なかったような。と思って公式サイトを見たらどうやら日本用に編集したらしいです。

以前香港版を見た時にも書きましたが、なんといっても1950年代の香港の風情がやっぱり素晴らしい。大家族の暮らしぶりや、匂いまで漂ってきそうな当時の街並みと撮影所の雰囲気、音楽、ファッション、そしてそこに生きる若者たち。
初見では父親の李海泉がアヘンを吸ってるところが出てきて驚いたのだけど、この設定がのちの警察とのやり取りや友人との関係の伏線になってるので必要だったんですよね。
本来ならそういう部分は身内としては描いて欲しくないのかもと想像しますが、原作がプロデューサーでありブルースの実弟ロバート・リーであるということも踏まえて結構な「本気度」を感じました。

また格闘家になる前の李小龍が普通の若者であったところにもすごく好感をもったんですよね。女の子にポーっとなるとか(英国帰りのパールちゃんはニコラス・ツェーの妹ジェニファー・ツェー)、いいとこ見せようとするとか。たとえば女子にモテたいと思ってギターを始めるのと同じで武術を習う、そんな思いが自然に沸いても不思議はない。武術の場合「気に入らん奴をぶっ飛ばす!」というシンプルな動機もあるとは思うけど。
(蛇足ですが、劇中のセリフであった「小龍のお姉さんに猛アタックをかけた」という俳優の“パトリック・ツェー”はジェニファーのお父さん )

今回日本語字幕で観て、同時にこれは香港映画の礎を築いた先人たちへのリスペクトも織り込まれているんだよなぁという気持ちを新たに強くしました。
李小龍の子役時代や若者たちが見学する撮影現場。そこでは当時のヒット作の再現や映画人がたくさん登場します。

子役として初主演した『細路祥』(1950)の監督であった馮峰(フォン・フォン)。演じたのは張達明(チョン・ダッメン)。当時の有名監督俳優でもありますが、実はこの導演、あの馮克安(フォン・ハックオン)のお父さんだったりもするのね、今回調べて驚きました。

一方、仲間を連れて上から覗き見る映画は『黃飛鴻河南浴血戰』 (1957)。ここではその作品の撮影風景を再現したのだとか。
張兆輝(チョン・シウファイ)が曹達華(チョウ・ダーワー)役。彼は30年代から多くの映画に出演し、中文wikipediaによるとその数なんと700本以上。まさに香港電影を一時期支えたスターの一人です。
武打星として、關德興(クワン・タッヒン)の黃飛鴻シリーズで一番弟子の梁寬(リンチェイのワンチャイシリーズでは、1でユン・ピョウが、2以降でマックス・モクが演じた役ですね)として70作以上に出演。また武侠映画の主演も多く務めました。後にバイプレーヤーとして『悪漢探偵』シリーズや『大福星』『七福星』等で存在感を示したものです。

その曹達華と仲が悪そう(笑)だったのが、錢嘉樂(チン・ガーロッ)扮する石堅(シー・キエン)。
そう、『燃えよドラゴン』のMr.ハンでございますよ。『Mr.Boo!ミスター・ブー』や『ヤングマスター 師弟出馬』でもお馴染みでしょうか。
幼いころから功夫を習った武術家でもあり、こちらも300本近くの映画に出演。そのほとんどが悪役でした。
↓石堅(左)と曹達華

また、曹達華と于素秋の映画『龍鳳雙劍俠€』(1957)では、于素秋の声の吹き替えを別の女優が現場でつけていたという興味深いシーンも。

余談になりますが、MGMの往年の大ヒットミュージカル、ジーン・ケリーの『雨に歌えば』(1952)では舞台が1920年代のトーキー誕生期のお話で同じように主演女優の吹き替えを生であてる撮影の裏側が描かれていました。
現在でも広東語や普通語などの吹き替えが必須の香港中国映画ならではのクスリとするシークエンスかもしれません。

ちなみに于素秋の父親は、サモハンや成龍、ユン・ピョウなどを育てたことで有名な于占元。
他にもたくさんの有名な映画人が登場しますが、私のつたない知識ではこれくらいが精いっぱい。

とにかく今回あらためて観て、この『李小龍 マイブラザー』という作品が、世界中に影響を与えた巨星ブルース・リーの知られざる青春時代を描くとともに、一方で香港映画のある時代の歴史もまた丁寧に描いているのだということに気がつきました。
そういう意味では、家族としてのブルースの姿を伝えるだけでなく彼の原点であるこの時代の香港映画の記録をも、そして今はもうない英国統治下の香港の姿も残しておきたいと、ロバート・リーは考えたのかもしれません。

それだけに日本公開版では、李小龍のラブシーン撮影の場面や曹達華、石堅との記念撮影の場面などがカットされていたのは残念だったかなぁ。
あ、しかし日本ならではのパンフレットはすこぶるよかったです。
メインは谷垣健治さんが語るブルース・リー。この方が語るのだから当然ブルースだけでなく、ドニー・イェンや成龍サモハン、倉田保昭さんなどのエピソードや比較もテンコ盛り。いかに香港映画人が李小龍からの影響をいまなお受け続けているかが実感できます。映画をご覧になる際には是非お買い求めください。

最後になりますが、今作で出演もしたアクション監督の錢嘉樂がプレスではチン・カー・ロクになっておりました。いきなりの英語表記?いまや香港映画に欠かせない存在のお人なんですからそろそろ日本での呼び方を統一して欲しいですねぇ。

李小龍 マイブラザー公式サイト
香港版予告
日本版予告

香港版を観た時のレビュー
映画 李小龍 Bruce Lee My Brother(2010年・香港)

しかし、この映画を見たら、同じ時代の香港を再現したというアンソニー・ウォン主演の『イップ・マン 最終章』も俄然楽しみになってきました。こちらは9月日本公開。
「イップ・マン 最終章」 予告篇

というか、今気がついた。今日7月20日は李小龍の命日なのでした!!まさに没後40年かぁ。
そこで、超有名なこちらのREMIXをおまけ。初めてこれを見た時は椅子から転げ落ちるかと思うほどたまげました。
Be Water My Friend! – Bruce Lee Remix
↑ちなみにこの冒頭でリー先生にIt’s like a finger pointing away to the moon. と言われ分ってんだか分ってないんだか分らない顔をしてるのは、若き日のトン・ワイアクション監督です。

 

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李小龍 マイブラザー(2010年・香港) への2件のフィードバック

  1. 岐阜の『ともっち』 のコメント:

    こんにちは、ママさん。
    『李小龍 マイブラザー』岐阜でも8月10日から公開予定なので、観に行く予定です。
    しばらくコメントできなかったので聞きそびれてしまいましたが・・インド映画の『きっと、うまくいく』という映画はご覧になりましたか?あまりに良かったので、ネット上で知り合いの方におススメしまくりでした。僕的には今年のナンバーワン確定です!

    • ケイコママ のコメント:

      おお岐阜でも公開ですか、よかった!
      『きっと須磨区いく』(いま、マジで打ち間違えた)じゃない『きっと、うまくいく』観ましたよ~。予想を超える大ヒットで結構驚きです。あの優等生がもっと悪い奴ならスカッとしたんだけどなぁ。それとも入寮の際に新入生を脱がせてた意地の悪い先輩を徹底的にやっつけるとか、さ。
      嵐の晩にみんなで協力してベイビーが生まれるシーンはグッときました。

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