西遊記 ヒーロー・イズ・バック(原題:西游记之大圣归来、2015年・中国)

「闖將令」のテーマに乗って登場したそのヒーローの名は、斉天大聖!!

今年中国で公開され、爆発的な人気となった中国国産3Dアニメ『西游记之大圣归来』。
観ましたよ、なにこれめちゃくちゃ面白い。絵柄はピクサーっぽいのかもしれないけど(特に子供ね)、いやぁさすが西遊記、どんだけ西遊記好きなんだい中国人、とにかくアクションてんこ盛り。

オープニングからもうね、しびれっちゃう絵なわけですよ。雲海の広がる天界で、水墨画で描かれたような岩の先にちょこんと座り天兵と対峙するのは、斉天大聖、孫悟空の後ろ姿。本来はマントのはずですがここでは3D効果やヒロイズムを際立たせるためにまるで赤い長いマフラーの如くたなびいております。

始まりは大鬧天宮の最後の戦いから。聞こえてきたのは、ドニーさんの『カンフー・ジャングル』のエンドクレジットでも使われた「闖將令」。お約束~~~~~~~!
このあたりの闘いはダイジェスト気味ながら原作にかなり忠実。うおー孫悟空かっこいい、しかし数分もしたら五行山に閉じ込められちゃう。

・・・と、父が話すその物語を聞いていたのが、この映画のもう一人の主人公、まだ赤子の江流兒。彼の両親は山に住まう妖怪山妖に襲われ絶命。が、生き残った彼は托鉢の僧法明に拾われ、長安で師父のもと和尚としての修業を積む少年へと成長しました。
彼の英雄は赤子の頃聞かされた斉天大聖(孫悟空)。唯一の形見である大聖の人形を大事に持っているほど。

その少年が山妖から女の赤ちゃんを救ったことから、追われて五行山にたどりつき、そこで大聖の封印を解き見事復活!と思いきや、彼は釈迦によってその法力を緘されたまま。ただの喧嘩の強い猿と化し、すっかり自信を失って・・・。というお話。

正直、話としては充分想像の範疇です。
ラストバトルは妖怪というより、もはやKaiju。いいぞもっとやれ。この悪役よかったわ。
こちらの心を掴んで離さないのは、滲みでる作品への情熱と愛情を感じたからでしょうか。映画にとっての最大の魅力は何なのか、その答えのひとつは間違いなく、迸る作り手のパッション。
近年では『るろうに剣心』シリーズ、そして今年の夏は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でとどめを刺された感があったのですが、ここにきてまたそんな気持ちになるとは嬉しいことです。

キャラがいい表情がいい、特に斉天大聖、かっこよすぎます。といっても見慣れた無敵な孫悟空とは一味違う。法力を失くしたかつての英雄は、クールでシニカル。キラキラした目で自分を見上げる少年の眼差しはかえって彼に現実との落差を突きつけ落胆させる。誰かがこのコンビを称して「疑似父子」と言っていましたが、なるほど子のヒーローであり続けるというのはかくも至難の業なのか。

その彼が「クソガキ」と呼んでいた少年の名を叫ぶところは涙が出てきました。
満を持して猿が、少年の憧れた大聖として赤いマフラーを翻し変身するシークエンスなんか、色んな要素も相まってなんと神々しい。
そしてあのラストショットがよかった。これは絶対に口が裂けても言わない。観てもらわないと!

構想8年制作3年、完成まで様々な難題を乗り越え、また出資者からの要望をはねのけてまで自らのアイディアを守り最後は田晓鹏監督自身が資金を捻出して完成。宣伝費はほとんどなく、まさにそのクオリティの高さとそれを応援する観客の力と口コミで大ヒットをもぎとりました。

これは是非日本でも公開してもらいたいです、できたら3Dで。たくさんの人が気に入ると思う!

この作品のヒットを伝える日本語ニュース
映画「西游記之大聖帰来」、孫悟空が中国で再び旋風(人民網日本語版)
この映画を知ったのは、こちらの井上俊彦さんの記事を読んだこと。中国の人達がなぜこんなに応援したかがよく分ります。
新解釈で若者を魅了『西遊記之大聖帰来』(人民中国インターネット版)

あ、そういや、いいところで『小刀会組曲 序曲』もかかってたよ!!!もうね、死ぬまでにあと何作の映画でこの曲聴くことになるのかな、すでにそんな気分です(笑)。
小刀会組曲 序曲

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西遊記 ヒーロー・イズ・バック(原題:西游记之大圣归来、2015年・中国) への4件のフィードバック

  1. 龍熱 のコメント:

    こんにちわ!「西游记之大圣归来」面白そうですね。飯星さんのレビューを読むと、その映画を観たような気持ちになれるのが素晴らしいです。私も「小刀会組曲 序曲」と言うと「血斗!龍門の宿」か「ワンチャイ天地大乱」の白蓮教を思い出します(^_^)。

    • ケイコママ のコメント:

      龍熱さま
      小刀会組曲 序曲は本当に名曲ですね。きっとこれからもどこかの映画でかかるかもしれないと期待しています。
      ところで、FBの記事のブログ転載ありがとうございます、すごいボリュームで毎回楽しいです。これからもブログ読んで勉強させていただきます!

      • 龍熱 のコメント:

        こんばんわ!
        こちらこそ何時もブログを読んで下さりありがとうございます(^_^)。Facebookもあの張午郎師父がFBを開設したりと盛り上がっていますので、機会ありましたら是非!

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