パン・ホーチョン祭り AV(2005年・香港)


↑実は日本発売されているのだ!是非ご覧ください

監督:
彭浩翔(パン・ホーチョン)

出演:
周俊偉(ローレンス・チョウ)
黄又南(ウォン・ヤウナム)
曾國祥(デレク・ツァン)
周振輝(チャウ・チャンファイ)
天宮まなみ
徐天佑(チョイ・ティンヤウ)
詹瑞文(ジム・ソイマン)
張達明(チョン・ダッミン)

オープニングから、恐らくAVソフトの最初に登場するWARNING文章、映倫のマーク、注意書きやらが延々流れてくる。当然日本語。新作の『低俗喜劇』でもそうでしたが、彼のOPはとてもキャッチー。
やがて今作のヒロイン、天宮まなみ嬢の粗い画像のショットにナレーションが重なる。AVに詳しくない自分でも容易に想像がつくぞ、これは単体AVによくあるオープニングの手法ですね。
なんてことを思ってたら、唐突に1971年のニュースフィルムが。これは沖縄返還にともないアメリカが尖閣諸島(中国名・釣魚台)も一緒に返還したことに対するビクトリア公園での抗議デモの様子を映したもの。この逮捕者の中には数人の大学生もいた、とある。
正直これには面喰いました。そういう描写がありそうな映画なら覚悟をもって臨めますが、これに関してはまったくのノーガード。

と、うろたえていたら、すかさず男どものアホな本音下ネタトークへと突入。そしてここで盛り上がる周俊偉(ローレンス・チョウ)黄又南(ウォン・ヤウナム)、曾國祥(デレク・ツァン)周振輝(チャウ・チャンファイ)という4人の男どもが今作の主役。
そう、これは間違いなく『ダメ男映画』という名のファンタジー。

就職面接でもまともに答えられないような男たちが、一念発起「日本のAV嬢とやりたい!」とあの手この手でAVビデオを製作するというストーリー。
「世界の発展の起源はすべてエロと軍事である」とは誰が言ったか忘れましたが、そんな言葉を思い出す彼らの奮闘ぶりや監督が仕込んだ小ネタ(例えばまなみ嬢のマネージャーの名前が暉峻創三/てるおかそうぞう、とか)笑わずにはおられません。すごく好きです、この映画。
六本木シネマートはたった10人程度の客入りでしたが、気にせず声を出して笑ってしまいましたよ。
笑いのクライマックスはアクション監督として錢嘉樂(チン・ガーロッ)本人の登場でしょうか。そのあとのアクション振り付けには・・・もう・・・ね。

途中まで、ヒロインのキャラと彼女の立ち位置が自分にはどうにもこうにも違和感バリバリだったのですが、仕事をやめてくれ、いや、これが私のお仕事よという辺りから「そうこなくちゃ」と思っていたら、最後の最後にパン・ホーチョンにしてやられました。いや、お見事。

自分の考える『ダメ男映画』とは、どーしようもないダメ男が、どんなことでもいい、何かを成し遂げることでほんの少しでも成長して映画が終わる、というジャンル映画のこと。
そして最初に登場したまなみ嬢のショットでの台詞にも実は意味があったのだと、後から分った次第。よく構成できてるわ。
のっけに面喰ったビクトリアパークでのデモのことも「71年、ここでデモした彼らも大学生だった、なのに俺たちはどうだ?同じ場所で大きなおっぱいのことしか考えてない」などと言わせていました。

まぁ、こっそり本音を言うと89年の天安門事件の際のデモを引き合いに出した方がいいんじゃないの、香港人?なんで釣魚台?ともちらり思ったりしたのですが、同じ日本つながり(一方では抗議し一方では幻想として憧れるものとしての矛盾)や、ハナから大陸市場は考えてないにせよ、今後どう展開していくか分らない業界だしね~、というひょっとしたら代替案だったのかもしれません。事実、大陸では『青春梦工厂』という(なんという爽やかな!)タイトルでマニア映画として秘かに人気があるそうな。

とはいえ、そんなことは些細な事。
これは紛うことなき素晴らしい青春ダメ男映画でした。機会があれば是非ご覧いただきたい秀作です。

なお、エンディングで流れる痺れるラップナンバー。
劇中、海賊版AV販売の詹瑞文(ジム・ソイマン)がアホな大学生にかました説教が、そのまま使われております。センスいいなぁ。タイトルもずばり『AV教父』。
いやー、この演技とビジュアルが本当に秀逸。まるでアメリカのライブ宗教番組の胡散臭い牧師みたいなノリ。この人の説教シーンだけでも一見の価値あり。

AV (2005) Trailer
↑の予告にこの曲を使うのはある意味必然ですよね。こういうダメ男映画の予告に一体どれくらいの頻度で使われているのか(笑)
サントラ、いやってほど聞き倒しましたよ。

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