パン・ホーチョン祭りその2 『恋の紫煙』『恋の紫煙2』

恋の紫煙(2010年・香港)

まずは、この原題『志明與春嬌』(主人公2人の名前、志明/ジーミンと春嬌/チョンギウ)に『恋の紫煙』という邦題をつけた方に乾杯したいと思います。すんばらしい。
おもしろかったです。本当におもしろかった。何度も声を出して笑っちゃった。
オープニングからね、もうなんというかパン・ホーチョン(笑)。
キャストが最高でした、楊千嬅(ミリアム・ヨン)に余文樂(ショーン・ユー)。ほかにも喫煙所に集まる人達のキャラがね、またすごくいい。共同脚本は麦曦茵という女性。香港金像奨では脚本賞を受賞しています。

自分は広東語を何一つ分らないのですが、それでも相当口が悪いというのはうっすらと想像がつきました。これ理解できる人は結構目が点になるのでは?という気もします。そういう点では日本語字幕で薄まったくらいがちょうどよかったのかも。

恋をする、ということはとても素敵な事だけど、以前なら目を瞑ってエイヤ!と飛び込めたことも、年齢を重ねるごとにいつの間にか大きな決心を必要としたりする。そんな感情が丁寧に描かれていました。傑作。

恋の紫煙2(2012年・香港)

続編のほうの原題は『春嬌與志明』2人の名前を入れ替えただけ(笑)。2になるともう紫煙でもなくなってしまいましたが、ここはいたしかたない。

今作も共同脚本は€陸以心という女性です。
前作は香港が舞台で、ものすごい土着な趣が非常によかったのですが今度の舞台は2人が仕事で飛ばされた北京。
続編を作ることには興味がないという監督がわざわざ作ったのですから、この設定はさすがですね。しかも2人が同棲を解消して別れるところから物語はスタート。

ジーン・ケリーの有名な代表作に『パリのアメリカ人』というのがありますが、これはさしずめ『北京の香港人』。
監督の2010年作品『ドリーム・ホーム』では大陸からの大きな圧力に晒される香港の現実というのが物語のベースにありましたが、今作では反対に大陸における香港人の立ち位置、というのが描かれていて、そこも興味を引きました。
特に谷德昭(コク・ヒンチュウ)演じる香港広告マンのゲスっぷりときたら!いやいやいや、すんごくリアリティあったわ。多分、ああいう香港人、大陸のあちこちに一杯いるはず。このどっちもどっち的なバランス感覚のよさには脱帽です。

さて、肝心の主役たちですが、赴任先の北京でそれぞれで新しい恋人を作るわけです。

ショーンのお相手は、今最も忙しい女優なのでは?と思わせる大陸女優の楊冪(ヤン・ミー)。いい役でした。特に最後のシーンは最高だった。なんだかんだと彼女の出演作を観る機会は多いのですが、自分の観た中で一番の演技とキャラ。初めて彼女を素敵な女優さんだと思いました、他の監督ももっと見習ってほしいよ。

一方ミリアムのお相手はハゲてますがまだ41歳の徐崢(シュウ・チェン)という、今年公開され大陸映画の興行記録を更新したメガヒット作『人再冏途之泰冏(Lost In Thailand)』の監督兼主演。そう、今もっとも旬なキャスティングです。この辺りの配置も抜け目ない、パン・ホーチョン。

ほかにもカメオ出演が豪華で、特に前作のエピソードの回収を豪華な出演陣でやらせたところに唸りました。
王馨平(リンダ・ウォン)や鄭伊健(イーキン・チェン)の本人役とか、前作でこっぴどく振られた女子と黄暁明(ホァン・シャオミン)とのくだりとか。ここでまた彼が最悪の詐欺師だったりしたら、パン・ホーチョンを大嫌いになるところでしたが、そうじゃなかったので一安心。

あらすじだけ書くと別に目新しくもないかもしれないけど、このシリーズはとにかくキャラがよく、主人公の心の変化をきめ細かいエピソードを積み重ねて描写しているうえに、役にリアリティを与えたミリアムとショーンの演技のさりげなさ(と時には大袈裟な演技のバランス)が秀逸。映画というものの持つ本来の可能性というものをまざまざ見せてくれます。
ミリアムはこの演技で2013年第32回香港金像奨で主演女優賞を獲得しました、納得。
文字通り泣きながら笑っちゃう、本当に観客の感情を両極に大きく揺さぶる映画というのはそうそうありません。大ヒット作の後の続編は難しいものですがパン・ホーチョンはやりました、2作続けて傑作を撮るという奇跡を起こしましたよ。

正直言うと両作ともに自分には色々思い当たる行動や感情がテンコ盛りすぎて、なんともはや心穏やかではいられませんでした。同じように感じた人も多かったかも。
それでも断言します。だからこそ素晴らしく、日本で一日も早く正式公開もしくはソフト化するべきだと。
この2人の恋の行方を、沢山の人に見てもらいたいです。

Love in a Puff (2010) – Official Trailer
志明與春嬌official website

『恋の紫煙2』”Love in the Buff” 予告編 trailer
春嬌與志明official website

最後に、パン・ホーチョンって本当音楽の使い方かっこいいなぁ。

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