燃えよデブゴン/ 豚(トン)だカップル拳(1978年・香港)

デブゴン祭りかと思いきや、地味にひっそりと劉家榮祭り開催中・・・

監督
劉家榮(ラウ・カーフェイ)

出演
劉家榮(ラウ・カーフェイ)
洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
梁家仁(レオン・カーヤン)
石天(ディーン・セキ)
麥嘉(カール・マック)
李海生(リー・ホイサン)
火星(マース)
林正英(ラム・チェンイン)
陳會毅(チェン・フォンイー)

武術指導
劉家榮(ラウ・カーフェイ)
洪金寶(サモ・ハン・キンポー)

ひとこと、傑作!
もうね、痺れるような功夫要素がギュっとつまっていて、観てる間中、ずっとニヤニヤしっぱなしの、どこを切ってもめっちゃくっちゃ面白い作品。

それだけに今となってはこの邦題に例えようのない悲しみがこみ上げてきます。
ひと目見て腰から崩れ落ちそうな邦題はこの世に数あれど、これは我が映画ファン人生でのワースト3に間違いなくランクインされるでしょう。ひどい、ひどすぎる(涙)。

日本ではなぜかデブゴンシリーズとしてカテゴライズされているのですが、本来はまったく関係なし。監督もサモハンじゃなくて、もう一人の主役を演じた劉家榮だし。
作りは、オーソドックスな功夫ものです。のっけから18種類もの武器の説明から演武に雪崩れ込む、実に劉家印な始まり方。
(そして、劇中またもや、あの「小刀会序曲」が!なんというサモハンと序曲のシンクロ率!)

さて槍の達人、劉家榮と、剣の達人、サモハンは昔からの因縁のライバル。
この2人、年に一度は勝負する高手同士なのですが、いい加減ジーサマになってもまったく決着がつかないことから「弟子を育てて10年後に勝負だ!」と次世代に勝敗を託すことに。そこで劉家榮師父がサモハンを(1人2役)サモハン師父は劉家榮を(同じく1人2役)弟子に取るという流れ。

この弟子の取り方も個性が違ってすごく笑えました。
特にサモハン師父、やることが無茶苦茶です(笑)。んなアホな~。その常軌を逸した方法は是非その目でお確かめください。

それにしても、この映画、師父と弟子をそれぞれが2役するという発想自体で、もう勝ったも同然です。そのうえ、キャラが各自立ったうえにストーリーに破綻も少なく、お馴染みの脇役が彩りを添え、エンディングも非常に丁寧で素晴らしいデキ。

なにしろ両者合わせて4役ですからね、全体の9割近くはこの人達が出ています。でもって、そのほとんどは闘ってるか修行してるかですよ!
キレのいい2人の動きとその高度な功夫技術、カット割りの少ない長回しにロングショット多用のシンプルな絵作りは、なんというか実に理想的。
かといってダラダラ長すぎず適度にカットは変わるしリズムにも充分変化があって、まったくもって飽きない。
もうね、こんな幸せな映画はそうそう多くはありませんってば。

ラスボスは長柄刀を手にした梁家仁(レオン・カーヤン)。
以前彼が映画界に入ってから功夫を始めた俳優であると知り、驚いた覚えがありますが、今作ではこの難しい武器を手に堂々と劉家榮やサモハンと渡り合っており、あらためて彼の並々ならぬセンスの良さに感激しました。
片や京劇の大家、そして片やあのリアル黄飛鴻の直系の孫弟子にあたる劉家の5番目の子供ですよ!カーヤンすんばらしい。

大好きな劉家榮ですが、兄弟で出演しているものより、なにげにサモハンと組んだ作品の方が彼のいいところが活かされているのでは?と秘かに思っている自分。
デブゴンシリーズのカエル拳対カニ拳も良かった。(残念ながら、この邦題もひどすぎますが)
サモハンのコメディセンスと劉家榮の武術愛って何気に相性が良かったのかもしれませんね。

とにかく、誰が何といってもこれは功夫映画の傑作です。

 

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