新感染 ファイナル・エクスプレス(부산행、2016年・韓国)

ゾンビ初心者への親切設計がすばらしい。従来のファンにもゾンビ事始めにも最適!おそらく韓国映画として世界で一番稼いだ作品、日本でやっと公開

この映画の事を知ったのは、昨年香港でハリウッド映画も含めた年間ランキングで『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』に次ぐ第2位になるほどの大ヒットを記録したから。華語映画の香港興行記録を塗り替えた香港映画・寒戦2こと『コールド・ウォー香港警察 堕ちた正義』をも興収で抜き去りました。

アジアどころか自国の映画すらあまり観ない香港でここまでヒットするのだから、それだけですっごい面白いんだと分ります。この香港公開時にあんまり香港人が誉めるものだから、どんなんやと調べたのがきっかけ。

もともとはアニメーションの監督だったヨン・サンホが製作したアニメ映画『ソウル・ステーション/パンデミック』に端を発し(企画はアニメが先だけど完成はどうやらアニメの方が後になったそうな)、続いて同監督が「その後の物語」として実写化したものです。カンヌ国際映画祭で喝さいを浴びるや、人気作家スティーヴン・キングをはじめ、ギレルモ・デル・トロ、エドガー・ライトやイーライ・ロス、ジェームス・ガンら皆が大好きな映画人から絶賛された作品でございます。

私はゾンビ映画をほとんど観たことがありません。本家ジョージ・A・ロメロ監督作どころか、今まで観たのは『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ワールド・ウォーZ』『ゾンビ・ファイト・クラブ』『アイ・アム・ヒーロー』ぐらいという体たらく。

しかし、この作品はそんなゾンビ初心者にとても親切設計でした。

理由もなく、早い段階で突然ゾンビ化する人々。中心人物たちの描写も結構駆け足で、こういう前振りのなさはとても好き。あとは、どう逃げ対抗するのか、そしてそのパニック状態においてのキャラクター描写を楽しみに観るわけです。私にとってはゾンビ化する原因とかなくて結構。

列車という限られた空間がまず素晴らしくて、この列車の撮影をどうやったのかと思ったら、LEDリアプロジェクションを使ったと公式サイトにありました。時速300キロというスピード感をリアルに見せる照明技術のことも書いてあってなるほどー。

ここに力を注いだのでお金のかかるCGがより必要になるグロ表現が控えめだったのか、もともとそういうつもりだったかは分りませんが、残酷描写が想像よりずっと少なかったのも助かりました。

にしても、美人がゾンビになるのは興奮しますね。特に客室乗務員が素敵。あの歩き方、たまらん。そして斜めになった列車の割れた窓から大量のゾンビが流れ出てくるところ。うは、息が止まりそう。

銃火器もないので超接近戦です。これがよかった。つい先日、RE:BORNを観たばかりだったので「零距離戦闘術をコン・ユが習得していれば!」などとアホな事を考えてしまったのことよ。いや、この映画に無双はいらないから。

男3人が車両を移動する際、開けた扉の向こうに野球部員ゾンビがいたところで「きっつ」と声が出ました。ゾンビ映画で一番つらいのは愛する人や仲間がゾンビになって襲ってくること。その点で身重の妻を残して散ったマ・ドンソクの変体後がなかったのはよかったのか悪かったのか。

終盤の回想は意見が分かれるかもしれませんが、私はあそこで涙線決壊しました。日本語吹き替えと字幕を両方観たのですが、個人的には字幕の方がよかったと思います。韓国の子役ちゃんはほんと上手すぎる。

走るゾンビいいじゃありませんか。走り去る列車を全速力で追ってくるの怖かったもん。そのあと鈴なりに折り重なって引きずられるのには笑っちゃったけど。そこだけスケールちっちゃくなったワールド・ウォーZかい!

いやはや噂にたがわぬ秀作でした。おもしろかった!ゾンビ映画を観たことないけど、観てみたい、そんな友達がいたら真っ先にお勧めする映画です。

そして、この前日譚にあたる同監督のアニメーション映画『ソウル・ステーション/パンデミック』もこの9月30日に全国ロードショーするらしいっす。劇場予告を見て驚いた。いいぞ、もっとやれ。

新感染 ファイナル・エクスプレス公式サイト
「新感染 ファイナル・エクスプレス」予告編

アニメ『ソウル・ステーション/パンデミック』公式サイト

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