モーターウェイ(2012年・香港)

プロデューサー:
杜琪峯(ジョニー・トー)
監督:
鄭保瑞(ソイ・チェン)

脚本:
司徒錦源(セット・カムイェン)
ジョーイ・オブライエン
馮日進

動作導演:
錢嘉樂(チン・ガーロッ)
動作指導:
黄偉輝(ジャック・ウォン)
カースタント:
呉海堂(ン・ホイトン)

出演:
黄秋生(アンソニー・ウォン)
余文樂(ショーン・ユー)
郭曉冬(グオ・シャンドン)
林家棟(ラム・カートン)
李海濤(リー・ハイタオ)
徐熙媛(バービィー・スー)
葉璇 (ミシェル・イェ)
何超儀(ジョシー・ホー)

うおー、大きなスクリーンで観られてよかったぜ!
大ヒットした映画『頭文字D』から7年、香港飛車電影が帰って来ましたよ。
頭文字Dでは日本の誇る「タカハシレーシング」の社長、高橋勝大さんが飛車特技で参加していたりもしたのですが、今作は言わずもがな「錢家班」の登用です。
正直な感想、この映画はまず「錢家班」ありき。錢嘉樂そしてカースタント担当の呉海堂がいなければ成り立たなかったでしょう。すごい。錢嘉樂 、呉海堂、黄偉輝の3人は第49屆金馬獎で最佳動作設計を受賞。当然、錢家班の代表作ともなりました。

さすが銀河映像、のっけから香港映画の匂いがぷんぷんしてそれだけでこちらのギアはえこ贔屓にシフトチェンジ。
最初から惜しげもなく繰り広げられるカーチェイス。世界中でカーチェイスは撮られておりますが、お国柄と言うかなんかこうそれぞれの国でやっぱり違うんですよね。当然、予算の差が一番かとは思うのだけど、香港には香港の個性がある。今、香港で飛車特技といえば、この錢嘉樂の「錢家班」と羅禮賢(ブルース・ロウ)の「猛龍特技」が二大巨頭というところでしょう、この2つのチームはそれぞれ絵作りが絶妙に違う(最近それが分るようになってきて面白い)でも、そこはやはり香港、映像から伝わってくるボンネットの熱は結局同じ、という印象を持っています。

本当は自分、クルマのことなんかほとんど知りません。そこで『ベストカー』編集部のうちの弟に聞いたら、あの大陸人が大事に乗ってた日産180SXというのはどえらい名車というわけでもなく、それがそんな風に描かれるというのは「またマニア向けな・・・」らしいですな。
DVDプレスによるとほかにもBMW Z4 M、シルビア、フェアレディZ、アウディA4、メルセデスSLKがガンガン疾走し、また割合地味(笑)にぶっ壊れてました。

そんなクルマ音痴でも充分楽しかったのは、ひとえにこの映画が飛車モノでありつつもDNAにすりこまれた功夫、武侠テイストを内包していたから。

未熟な若者が高手にしてやられる→身近にいたただのジーサンと思っていた人が実は達人だった→修行→再戦→大事な人が殺される→復讐に燃える主人公→決戦
ほら、ユエン・ウーピンの成龍映画とどこが違いますか?功夫映画好きに何の違和感もなし。

事実、監督のソイ・チェンも「これは武侠片テイストをもった映画。彼らはクルマを剣の代わりに武器としている」というような話をしていました。「你€攻我守、我攻你€守」という言葉もそのまま、功夫映画の修行シーンではお決まりの台詞。

しかも8千回転時速2キロという、助走なしのアクセルターンという必殺技もあり。
アクション監督の錢嘉樂が「CG使ってないんだよ!」とドヤ顔で解説していたカースタントや上述のアクセルターン実技をメイキングで見た瞬間から、この映画を絶対に観ると決めてました。
もうもうと上がるバーンナウトの白煙と悲鳴のようなエンジン音。そして対称をなす暗闇の中に潜むマシンと不気味な響き。この駐車場の場面でなぜか李小龍の『燃えよドラゴン』の鏡のシーンを思い出してしまった功夫バカ。

役者衆もすこぶるよろしく、安定のキャスティングと演技力。
秋生さんがとにかくかっこいいいいいい。ショーンも青臭い役柄がいい、男泣きが似合います。そしてきらりと光る林家棟。嫌な奴かと思わせて実はいい人、をやらせたら右に出る役者はいないでしょう。
大陸からきた高手の走り屋は郭曉冬。この人調べたらドニーさんの『エンプレス~運命の戦い』の裏切り者、胡覇の人で驚いた。大陸の俳優は役によって全然違う人に見えることが多いのですが、写真検索かけて色んな意味で2度驚き。
そして、その大陸人バディの強盗、李海濤は『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘』でブルース・リャンと戦ったあのお人。元警察官で散打チャンピオンだそうですが、こうした派手なアクションなしの悪役も多いみたいで。

とにかく面白かった、だって修行する技が、ぎっちぎちの路地を停止状態から8千回転時速2キロでジワジワ動く直角アクセルターンだよ!こんな絵にしにくい地味な動きを鍵にしちゃうとこが「真功夫」を尊ぶ香港しかありえない。

錢嘉樂の解説付きメイキング
寰亞電影《車手》電影製作特輯之技術解構篇 6.21 速勢待發

寰亞電影《車手》電影製作特輯之死亡彎角篇 6.21 速勢待發

今作でもバービィー・スーを真ん中にしたぎゅいぎゅいアクセルターンが登場しましたが、錢嘉樂ご本人もレースに出場するドライバー。香港のTV番組で同じように女優さんの周りをグルグル回ってるし。
錢嘉樂飄移
↓秋生さんのかっこいい姿を見たい人はこちら(ちょっとネタバレ)
《车手》主题曲 – 《沉迷》余文乐

 

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モーターウェイ(2012年・香港) への6件のフィードバック

  1. 綾瀬 のコメント:

    こちらにも失礼します。
    あんな地味なテクニックをメインに置いて、クライマックスはどうするのか正直言って不安になっていましたが…
    いや、さすがですね。あの駐車場内での緊迫感と言ったら!
    ソイチェンは、初期にはバイオレンスがやや多めのイメージも強かったんですが、最近は違う演出も出来て安定して見られます。
    にしても、やっぱり最終決戦がGT-RとS14(シルビア)だったのはグッジョブです(笑)いかに高性能でも、アウディじゃなぁ、ってカンジです。

    • ケイコママ のコメント:

      綾瀬さま
      そうあの大陸人は何台か車を乗り継いでましたね、最後はS14でしたか。御面倒でなければ時間のある時にでもクルマ解説してくださいよ!
      自分はまったく音痴なので、クルマ好きが観たら自分の何十倍も楽しいんだと思ったら軽く嫉妬しました、うらやましいい。

      • 綾瀬 のコメント:

        ケイコママさん、こんにちは。連日すみませんです。

        では生半可なりに、少しご説明をば。ちなみに今回は、ちゃんとお話しに没頭していたので(笑)見落としや勘違いがあるやもしれませんことを、ご了承ください。

        まずはざっくりと、冒頭のBMW Z4(逃亡する方)と覆面パトカーのアウディA4は、それぞれドイツ製の高性能車ですから、そりゃあ高速道で追っかけあいするには真っ当すぎる車種で、しかも鼻持ちならん金持ちっぽいイメージですよね。ぶっちゃけ、金の力で早く走れて当たり前、的な。

        対して余文樂が後半に乗り継いだのが、いわゆる走り屋イメージの日本車であるS14もといS15のシルビア(だったと思います…)それに超うろ覚えですが、大陸人が180SXからフェアレディ(Z32)へ、そしてラストはスカイラインGT-R(R33)だったような?

        まぁ現実的には、予算の都合で高級車をツブしちゃうのは無理だったという理由かもしれませんが、BMWとアウディのバトルよりもGT-R対シルビアの方が燃えるワケで「判ってんなァ」と。どちらも、「イニシャルD」にも登場している車種の後継機種ですし、またD1グランプリ(ドリフト選手権)の常連だった系統のクルマですので、あぁいうドリドリした走りが似合います。

        ちなみに、大陸人が中盤に乗っていた180SXってのがS13型シルビアとの同じ型番の姉妹車ですね。だもんで、新旧シルビアのユーザーの対決でもあったと。

        ちなみにちなみに、GT-Rはダンテラムの「綫人(密告・者)」で、強盗団に接近するために公道レースをしていた謝霆鋒が乗っていたり、イニDでは主人公のライバル中里/余文樂の愛車(R32)だったりもしますので、ある種「走り屋といえば、コレ!」な車だったりします。

        以上、長々と失礼しましたm(_ _)m

        • ケイコママ のコメント:

          うわお、早速ありがとうございます!
          シルビアは余文樂だったんですね、しったかしちゃいました(笑)
          にしてもイニシャルDからのネタもしっかり盛り込んでいるとは、まったく音痴には知る由もなく・・・
          日本車をガンガン登場させたのも予算の関係じゃなく、おっしゃるような意図があってのことなんでしょうね。
          今作のカーアクションもそうですけど、予算がないならないなりに余所(ほかの大作映画やハリウッド)と少しでも違うアクションをアイディア勝負で考える人達ですもんね

          明日から、この映画の話をどこかですることがあったら(あるのか?)100年前から知ってたような顔でこのネタ使わせてもらいます(笑)

          • 綾瀬 のコメント:

            どうぞ、どうぞ、我が物のように語ってください。
            その前に、弟氏にウラ取っていただいたほうが良いかと思われますが(笑)

            また別項ですが、自分も「AV」を観てきました。
            実はストーリーとしては、大友克洋氏の過去作品に「任侠シネマクラブ」という短編があって、そちらも同じようにボンクラどもが「プロのお姐さん」を雇ってフィルムをこさえるという仕立てでした。いやもちろん、パクリとか言うのではなく。

            錢嘉樂の登場に爆笑し、リーダー格の彼(ドリカムの中村正人似)の成長にほっこりしつつも、当然のように意地の悪いオチに「さすがパン・ホーチョン」と声を上げて笑ってしまいました。

          • ケイコママ のコメント:

            弟にウラ、いつになるか分りませんが・・・聞いてみます~
            そもそもあいつはこの映画を観ることがあるのだろうか?
            ドリカムw
            大友さんのその映画は観たことがありません、今度機会があったら観てみたいですね!

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