掌門人(1983年・香港)

監督
劉家良(ラウ・カーリョン)

出演
劉家良(ラウ・カーリョン)
恵英紅(べティ・ウェイ/クララ・ウェイ)
劉家輝(ラウ・カーフェイ/リー・チャーフィ)
小侯(シャオ・ホウ)
江禹(ワン・ユー)
張展鵬(チャン・チェンポン)
麥徳羅(マック・タックロー)
王龍威(ワン・ロンウェイ)
谷峰(クー・フェン)
孫建(スン・チェン)
林輝煌(ラム・ファイウォン)
龍天翔(ツ黴€ロン・ティエン・ション)

武術指導
劉家良(ラウ・カーリョン)
唐桂(トン・ガイ)
小侯(シャオ・ホウ)

もうね、キャストを並べただけでワクワクしちゃいますな。
これが制作された頃はすでに成龍やサモハンがゴールデン・ハーベストでガンガンヒットを飛ばしていた時期。(ちなみに83年は五福星、キャノンボール、プロジェクトAが公開されている)

だからか、劉家良監督も様々な模索をしていたらしく、今作は初の現代劇。

お上から「ここ、高速道路にするからさ、立退きなさい」と言われてしまうほど寂れた武館の師父が劉家良。
その弟子が劉家輝(ラウ・カーフェイ/リー・チャーフィ)小侯(シャオ・ホウ)江禹(ワン・ユー)張展鵬(チャン・チェンポン)麥徳羅(マック・タックロー)の5人。おおお劉家班の若手勢ぞろい。
この人たち、華強國術會の門下なのだけど、そこへ、かつてアメリカに渡った掌門人(総師)が喝を入れに香港にやってくるという電報が。
兄弟子(谷峰)や弟子5人とともに空港に迎えに行くと、なんと総師の代理としてその娘(恵英紅)が来港したのでありました。

この恵英紅、たしかに功夫は強いのだけど、なんといってもアメリカ育ち。
上下関係はないわ、中華服なんてダサいとタンクトップに短パンで稽古しちゃうわ「もっと若者にアピールするプロモ展開しなくっちゃ」とディスコで生徒を掻き集めちゃうわとやりたい放題。

威圧感も厳しい訓練もないこのフレンドリーでキュートな師伯に男5人はメロメロです、80年代といえどもかなり奇妙な格好で、いそいそディスコにお供したりする様はかなり笑える。

↓これが

↓なぜか、こうなる(笑)

(左から、小侯、張展鵬、麥徳羅、江禹、劉家輝、恵英紅)

劉家良師父としては、このハチャメチャで強引なやり方についていけるはずもなく、かといって掌門人の娘、つまりは師妹。じっと我慢するしかない。
映画とわかっていても、なんだかとっても切ないです師父。

やがて、ある事件を巡って無謀にも彼女は黒社会を敵に回してしまうことに。
そこで登場するのが、王龍威(ワン・ロンウェイ)孫建(スン・チェン)林輝煌(ラム・ファイウォン)龍天翔(€ロン・ティエン・ション)という黒社会のみなさま。なかなかよろしい面子でございます。
しかもチンピラ役に、あの「ドラゴン危機一発’97」で甄子丹と「バババババ」という効果音とともに目が点になるほどの高速バトルを展開した麥偉章(マク・ワイチュン)の姿も発見。そういやこの人も劉家班だった。

話は逸れますが、以前、この「ドラゴン危機一発’97」に関する彼のインタビューを見たことがあります。あのバトルのラスト、キックを受けて回転して吹っ飛んでゆく動作はワイヤーなしだったそうで「あのバトルは一切ワイヤーがないんだよ、あれは自力で廻ってるんだよ、すごいだろ?」と大層誇らしげでした。
そして「現場がひどく暑かったことは覚えてる、冷たい飲み物もなくてさ、ひどいよなぁ」と何度もボヤいていたのが印象に残っています。ずいぶん時間が経ったあとのインタビューかと思いますが、撮影の思い出が冷たい飲み物がなかったこととは(笑)。よほど腹が立ったんでしょうね。おい、制作部!あとは劉家班にいたことの自負と劉家良師父へのリスペクト を、映画そっちのけで熱く熱く語りつくしたインタビューでありました。

話を戻します。
黒社会とトラブり、悪人どもに拉致された彼女を救出すべく立ちあがる師父と5人の弟子。
この作品、恵英紅の無茶ブリのワガママさと弟子5人の振り回されるアホさ加減がかなり笑えるのですが、そこは、なんといっても劉家良。
やはり彼女が主役であった「レディ・クンフー激闘拳」と同じで、最後は見事に監督自らが一手に美味しいとこどりをしております。

敵のナイトクラブに乗り込んでの大立ち回りなどは、それまで散々な目にあってきた師父だけに「やっとキタ―!」と、信じられないほどの解放感。

そしてラストの体育館でのラストファイトへとなだれ込むわけですが、平均台やあん馬、平行棒などの道具を使った力強いその設計と、動きが良く見えるシンプルなカメラアングルとカット割りに思わず血沸き肉踊ってしまう。
また劉家輝の「少林寺三十六房」(しかも相手は五毒の孫建)、小侯の「マッド・クンフー猿拳」(この人の身軽さは絶品)のセルフパロディもあるうえ、最後はとうとう劉家良対王龍威というファンとしてはたまらない対決で、たぎらせてくれちゃいます。うっひょ~いいよいいよ!

(谷峰さん、今作ではとてもいいオッチャンでした。この人が出るといつ裏切るかと最後まで気が抜けないったらありゃしない)

当時この映画はあまりヒットしなかったということですが、むしろ今見た方がうんと新鮮で、その高スキルに驚愕したり感激したりできるのではないでしょうか。とにかくラストバトルがすごい。師父がこの世で一番の男前に見えるくらいカッコいい。

劇終も期待を裏切らないオチとストップモーションで、どこから切っても劉家良印。
残念ながら日本では未公開未発売作品ですが、劉家良、恵英紅ファンだったら、世界中のネットショップを捜して買っても損はないと思う。

Lady Is The Boss, The (1983) Trailer

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掌門人(1983年・香港) への2件のフィードバック

  1. きんこん のコメント:

    こんばんは!

    恵英紅さんは新作「武侠」でも大活躍のようですね!

    去年のカンヌの写真
    http://saenulee.com/board/33482

    谷垣さんのブログで、ケイコママのコメント発見(笑)

    「武侠」は未見なので、絶対に観ます!変な邦題だけど(笑)

    • ケイコママ のコメント:

      きんこんさま
      はい、恵英紅さんは「捜査官X」でも大活躍しておられます。
      彼女のシーンはもうね、素晴らしくて美しくて最高ですよ!
      是非、劇場でご覧ください。感想お待ちしていますよ~
      去年のカンヌの写真ありがとうございます。

      谷垣さんのブログ、よく拝見してます。
      アクションへの情熱や裏話など、毎回感心してしまいますねぇ。

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