映画 「ラップランド・オデッセイ」(2010年・フィンランド)

今日、マネージャーからロケの日取りが決まったとメールが。
するとチケットを取ったシルヴィ・ギエムのバレエ公演に行けないことが判明。
これにはかなり凹みました。

気を取り直して友人と有楽町にフィンランド映画祭2011に行く。

映画「ラップランド・オデッセイ」(2010年・フィンランド)

監督
ドメ・カルコスキ

出演
ユッシ・ヴァタネン
ヤスペル・パーッコネン
ティモ・ラヴィカイネン
パメラ・トラ

「ダメ男映画」というのは洋の東西を問わず、ジャンルとしてしっかり確立されてると思う。
世の中には、そういうダメ男映画が好きって人は結構いて、「フルモンティ」だ「トレインスポッティング」だ、いや「ビッグ・リボウスキ」だ、なんの、松尾スズキいるところダメ男ありじゃねーかと、実に話が弾んだりします。

そういえば森繁さんの「夫婦善哉」も考えれば結構なダメ男。
そして私がなぜか市川雷蔵で一番好きな映画「ぼんち」もまごうこと無きダメ男です。

そこでフィンランドで昨年、一番愛されたという「ダメ男」映画を観ました。
失業中のヤンネは長年同棲している恋人からデジタルチューナーを買って来いと50ユーロを手渡される。
しかし、そこはダメ男、いつの間にやらその金を友達とのビール代に使ってしまい、恋人の逆鱗に触れ、「翌朝までにチューナーを買ってこないと追い出してやる!」と放りだされるわけですな。
そこで仕方なく、ダメ友達2人を連れて遠く200キロ離れた町まで買いに行くことに。
金はなし、意気地もなし、生きる気力もなし、そんな男たちは果たしてチューナーを翌朝までに買って帰ることができるのか?

それにしても寒いよ、フィンランド。
午後3時でマイナス15度って。暗いし。の、わりに結構薄着だし。

監督のインタビューによると、フィンランドは極めて男女平等な国であるにもかかわらず、機械を修理する仕事、ビデオカメラやデジタルチューナーを購入する仕事、それは全部男性の役割だとされているらしい。

日本以外のダメ男映画を観ると、いつも思うのは「なんだかんだいって日本って実はすごく男にとって住みやすい国なんじゃないか」ということ。

だって別にドアを開けてくれなくても女は別に文句言わないし、重い荷物をトランクから出してくれないタクシーの運転手なんか腐るほどいる。
デジタルチューナーを自分で買えない女なんて、電球を取り換えたことがないというお嬢さんくらいなもんで(実際にそういう女性もいるにはいるけど)。車がなくてもデート後の彼女を家の玄関まで送る日本人男性はどのくらいいるのでしょう。

そういうと、きっと男性陣はあれこれ文句を言うんだろうな。
「いや、お前らは俺らの苦労を分ってない」と(笑)。

ダメ男が存在するためには、相対的な存在である「女」がいてこそで。
彼らは母親なり恋人なり妻なりがいてこそ、ダメ男としての本領が発揮されるわけです。
そして、世界中の女にとってダメ男は、どこの国の男であろうとも一緒。
現実は「ダメ男」がダメじゃなくなることは多分難しく、むしろダメ男が「クズ男」にならなければセーフだったりするのかもしれません。

でも映画のなかのダメ男たちは違います。
彼らはちゃんと100分過ぎには「今までの自分と決別する」瞬間を見事にむかえます。
この作品の主人公と友達も1晩の間に起こったたくさんのハプニングを通して、わずかではありますが、変化を遂げました。
とにかくこれは、男たちのロードムービーであるわけで。
フィンランドの雪に埋もれた風景やオーロラ、ブリザードなんかも話を盛り上げます。

劇中、恋人の昔のボーイフレンドてのも登場するのだけど、仕事をもっていて羽振りも良く一瞬まともな人に見えたものの、結局そいつも別の意味で超ダメ男でして(笑)。これには笑いました。
この映画、誰ひとりとしてダメじゃない男が登場しねーじゃないか!(笑)。

日照時間や歴史的宗教的背景もあって、メンタル的にはラテン系ダメ男より、日本人にはずっと共感しやすいこのフィンランドの男たち。
そんな男たちの、冒険とちょっぴりの成長を観るのはやっぱり楽しいものです。

「ラップランド・オデッセイ」フィンランド公式サイト
「Napapiirin sankarit」予告編
フィンランド映画祭2011
ドメ・カルコスキ監督インタビュー(日本語訳)

 

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