ローマ法王の休日(Habemus Papam、2011年・伊仏)

超おじいちゃん映画。ここまで画面を埋め尽くすおじいちゃんの映画は初めてかもしれない。なにしろあの緋色の礼服だし。ファンタジーとわかってからは、とにかく「うふふ、わわわ」としてるうちに終わった感じ。観てるだけで楽しかった。思いっきりネタバレ

見ることのないコンクラーヴェ(教皇選挙)の様子(しかも皆選ばれたくないんかい)、キャストの9割を占めるおじいちゃん。枢機卿の白いレースと緋色の礼服。そしてバチカンのスイス衛兵の控室だよ!制服脱いで甲冑磨いてるし!

出演もした監督のナンニ・モレッティは美味しい役だったなぁ。彼のシーンがことごとくいいんだもん。周りを取り囲まれてカウンセリングする構図や「聖書にある記述はどれも鬱を示唆する」なーんてカトリックの中枢に向かって言っちゃうし。

ぶっちゃけひねくれ者の私は、枢機卿達の純粋無邪気ぶりを前にしてもなお「いつドロドロの権力闘争の神経戦が始まるんだ」としばらく身構えておりました。『ローマ法王の休日』という邦題であの予告だったにも関わらず、です(笑)。

本作のバチカンはとってもファンタジーなバチカンでした。そう確信を持ったのは教皇の部屋から聴こえてくる歌に合わせて全員が手拍子を打つシークエンスだったでしょうか。そこからカードゲームへの流れ(遅いよ)。トドメは、バレーボールのリーグ戦。オセアニアの1点には私も胸が熱くなりました。

バレーボールといえば、一昔前のイタリア人って日本のアニメ「アタックNO.1」が大好きだったのよね。昔イタリアに行った際にも夕方放映していて鮎原こずえがグラッチェグラッチェ言ってました。彼等が日本アニメで不思議なことのひとつに「最後に必ず出るあのマークはなに?」というのがあって、実はそれ「つづく」の文字だったりする。なるほど彼等にはマークに見えるか。

さて、今作で賛否の分れるラストについて。

日本公開時の2012年に観た人達は、作品の好き嫌いはさておき教皇という地位を辞退するなど「は?ありえないでしょ」と感じた人も多いと思います。が、現実には2013年、終身制とばかり思ってきた教皇の座をベネディクト16世が辞任しました。就任から8年後のことです。歴史上でも異例の辞任の理由は「高齢による健康上の不安」。

真の理由は他にあるのだと憶測されておりますが、いずれにせよ「自らの意思による退位」は1415年のグレゴリウス12世以来およそ600年ぶりのこと。

さすがに世界中が驚いたこの事実を先に知っていると、ラストの衝撃度はかなり和らぎます。この前に観なかったのは誰のせいでもない自分のせいなんだけど、それが良かったのか悪かったのか。

邦題が邦題だけに、観賞前は逃げた教皇と市井の人達との交流が楽しく繰り広げられるのかと想像しておりました。劇団との交流もひょっとして代役で舞台にあがっちゃったりする?と一瞬期待させといて、チェーホフの「かもめ」をモチーフに持ってくることからしてモレッティはそんな展開には意地でもする気はなかった。とはいえ、いつの間にか厨房でドーナツもらって食べてるのは笑ったけど。

劇中歌がよかったなぁ。アルゼンチンのフォルクローレ歌手で、60年代から70年代にかけラテンアメリカを中心に起こった、音楽を通した社会変革運動「ヌエバ・カンシオン」の旗手であったメルセデス・ソーサの Todo Cambia (すべてが変わる)。彼女はその影響力の強さゆえに軍事政権から弾圧を受け、亡命しなければならなかったほど。

教皇に選ばれてしまったことで初めて本来の自分に気がついたメルヴィルの気持ちを一番表していたのはこの曲だったかもしれません。また曲のいわれを知ってか知らずか微笑みながら手拍子する枢機卿たちの姿も示唆に富んでおりました。

『ローマ法王の休日』予告編
HABEMUS PAPAM – NANNI MORETTI – TRAILER UFFICIALE HD(イタリア版予告)
『ローマ法王の休日』メイキング映像(コンクラーヴェ)
映画『ローマ法王の休日』頑張るおじいちゃんたちの撮影風景
Mercedes Sosa – Todo Cambia

カテゴリー: film, music タグ: , , , , , , , パーマリンク