大根の月

●神0ー5ヤ @神宮

先発安藤投手と聞いて「是が非でも先取点を」と願っていたのですが、3回、ミスもからんで2点を先に与えることに。

嬉しそうに傘を振るヤクルトファンの頭上には三分の一ほど欠けた大きな赤い月がぽっかり。

そういや、ついこの間中秋の名月だっけかと、ぼんやり考えていたら、今度は二番手の久保投手が、まさかの伏兵川本捕手から2HRをくらってしまいました。

何が悲しいって、逆風逆風と台風明けの強風のなか2回表の金本さんのレフト方向のフライがフェンスギリギリだったのに対し、この川本選手のライナーが簡単に入ったこと。

力が抜けました。寒さが身に染みました。せっかく買った生黒ビールも作ってきた鳥飯おむすびも喉を通りません。

対岸を見ると、ライト側の狂喜乱舞の傘の上、さっきよりはるか上空に、先程の月が、より小さく白くうっすらと形を変えて浮かんでいるのが見えます。

その月を見て、ふと昔読んだ向田邦子の小説を思い出しました。
あれは、なんというタイトルだったかしら。

試合は館山投手に手も足もでずに完封負け。

自力3位もなくなり、失意のまま帰宅して、凍えた身体を熱いお風呂で暖めていたら、突然題名を思い出しました。
「大根の月」
向田邦子の<思い出トランプ>という短編集のなかの一編。
「昼間の月は切り損なった薄切り大根のように見える」

力が入りすぎると、大根の薄切りはうまくいかない。
大事なところで空回りしないタイガースの戦いを、見たことがないような気がしてきました。
切ないです。

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